満足度★★★
ユートピア的世界
静岡の中高生10人(観た日は1人が体調不良のため9人)がカメルーン出身でフランスで活動している振付家・ダンサーのメルラン・ニヤカムさんの演出・振付で踊る作品で、子供たちの希望がポジティブに描写されていました。
唯一の男性ダンサー、高瀬君が見た、女の子にモテるという夢をきっかけに人間や自然との調和のイメージを連ねた構成でした。冷たい現実世界や、過去を懐かしむだけでなくさらに活動的に生きようとする年老いた姿などがスタイッリッシュな映像や、クラシックとアフリカ音楽のコラージュ的な音楽、遊び歌、そして沢山の台詞を用いながら明るい雰囲気で描かれていました。
伝えたいメッセージは素晴らしいと思いますが、その伝え方があまりに物事を単純化し過ぎているように感じられて、あまり共感できませんでした。大人が期待する「純粋な心を持った子供」像を子供に押し付けているみたいで違和感を持ちました。
物語的要素についてはあまり楽しめなかったのですが、純粋な身体運動として見たときの振付や、美術・照明・映像などのテクニカルな部分はクオリティが高くて楽しめました。
アフリカの民族舞踊的な力強く時には軽やかなステップを多く取り入れたキビキビとした振付が新鮮で、それに応えたダンサーたちの躍動感溢れるユニゾンの群舞が見ていて気持良かったです。大人でも子供でもない思春期のエネルギーに満ちた身体性がはっきりと感じられました。大きめの劇場では珍しい、床も含めて真っ白な空間に色彩豊かな衣装が映えていました。
急遽1人が出演できなくなり、おそらく関係するシーンなどを組み立て直すために開場時間はかなり押しましたが、半日で変更に対応できる臨機応変さにまだ若いダンサー達の将来性を感じました。