リタルダンド 公演情報 キューブ「リタルダンド」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★

    役者陣は皆さん好演
    先日の三谷さんの作品同様、これも、役者さんに功労がある舞台でした。

    私は、母のお腹にいる頃から、演劇界の大人達に囲まれて育った一人っ子のせいか、どうも、子供の頃から、お涙頂戴物が嫌いで、どこか芝居も斜めに観る癖がありました。

    たぶん、そういう、可愛げのない自分の性格故と思うのですが、この作品、最初から、泣かせよう泣かせようとする意図が随所に見えて、やや鼻白む脚本、演出ではありました。

    最初の内、しばらくはストレートプレー調で進行していたのが、いきなり、突拍子もない、歌が始まった時には、幾らミュージカル好きな私でも、さすがに、気持ちが引いてしまいました。

    でも、役者さんの力量と、コツを熟知した脚本、演出の技に乗り、知らず知らずに、舞台に同化する気持ちが芽生えたのも確かなところ。

    ただ、どうしても、ストーリー展開に、ご都合主義を感じてしまいました。

    余談ですが、主人公の吉田さんの名演に、先日亡くなった、中村とうようさんを想起してしまいました。
    あーいう気骨ある批評精神のある、その道の通が、どこの世界からも姿を消されてしまって、実に無念でなりません。

    ネタバレBOX

    アルツハイマーや痴呆で苦しむ家庭が、幸いごく身近にいないため、この主人公の男性の病気の進行具合が、リアルなのか、虚構的なのかの判断はできかねるのですが、疑問に思ったのは、家族や知人が、主人公の男性の書いたメモを、しょっちゅう出入りしている部屋なのにも関わらず、あの幕切れの時点まで、誰も目を通していなかったのかと、とても不自然に感じました。

    こういう細部に、脚本の真実味が感じられず、虚構色が色濃く出てしまうのです。

    たとえば、妻の兄は、自分の母親が、やはり重度の痴呆で、入院中で、そちらに行ったきりになる状態が普通なのに、何度も、妹の婚家先にやって来ます。編集部の面々も、原稿の締め切りに悩殺されるような忙しさの筈なのに、主人公の症状がかなり進行しても、相変わらず、この部屋に昼間から足しげく通います。一番驚いたのは、母の葬儀の日に、兄が「やっぱり妹と別れてくれ!」と懇願に来る場面。普段は、自分のこともわからない母を見るのが辛さに、病院から足が遠のくのを納得できたとしても、幾らなんでも遺骨になった母を置き去りにして、深夜にそんなことを言いに来る人間がいるでしょうか?

    あまりにも、できすぎた話で、まるで、夢物語のようでした。

    ただ、ひっくり返りそうに違和感を感じた歌は1曲目だけで、2幕の皆さんの歌は染み入るように心にふわっと浸透し、なかなか素敵な舞台になっていました。

    初舞台から、その伸びしろに注目した松下さんまで、とにかく、役者さんが、皆さん、とても好演されて、その点では、後味の良い観劇となりました。

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    2011/07/27 02:00

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