満足度★★★
物語内の嘘と物語外の嘘
若くして自殺した一発屋の小説家の四十九日の日に生前に関係があった人たちが集まり、それぞれの秘密や嘘が錯綜する物語をシリアスなトーンを基調にしながら時折コミカルな要素を織り混ぜて描いた作品でした。小劇場演劇界で活躍する脚本家、演出家、役者のコラボレーションで良く出来ていて面白かったのですが、このメンバーならもっとそれぞれの個性が活かせたのではという印象を持ちました。
謎が積み重なり、明かされていく展開に引き込まれて楽しめたのですが、表現の現実感/非現実感のバランスに引っ掛かりを覚えました。
リアルではない設定の登場人物がいて、前半はまだ演劇的虚構としてありだと思いましたが(虚構が明白にされたときの笑いへの持って行き方が良かったです)、終盤での展開はそれまで積み上げてきたリアリティーを壊してしまっていたと思います。
新作を書けない小説家を象徴する、舞台下手の壁を覆い尽す丸めた白紙の山も登場人物たちには見えてない扱いで、違和感を覚えました。
人の怖さを描くミステリー作品では、非現実的な要素を入れない方が説得力が出ると思いました。
役者に関してはそれぞれのキャラクターがしっかり打ち出されていました。少し陰がある未亡人をほとんど出ずっぱりで演じた李千鶴さんが良かったです。エキセントリックな役の千紘れいかさんも怖さが出ていました。
話の性質上、当日パンフには配役が書いていなかったのですが、終演後に役者の名前と写真入りの人物相関図を配布していて、ありがたかったです。