満足度★★★
四人四様
古びた喫茶店が閉店する前の4日間を、4人の脚本家がそれぞれ1日ずつリレー形式で書いた物語で、脚本家の作風の違いが良く出ていました。役者たちの演技もそれぞれのキャラクターがしっかり立ち上がっていて、多くの人が楽しめるウェルメイドな作品になっていました。
1日目(上野友之)は笑いを交えた日常的な描写で軽快に始まり、2日目(関村俊介)はその雰囲気を受けつつ、緩くてシュールなネタが盛り込まれていました。3日目(下西哲正)で急激に陰欝なトーンになり、妄想の入り混じる奇妙で痛々しい世界観の異質さが際立っていました。4日目(野坂実)はそれまでに出てきた要素をかなり強引にまとめあげていて、ドタバタな展開が楽しかったです。
全体として綺麗な起承転結の構成になっていて、上手くメリハリがついていたと思います。後に続く作家にネタを振ったり、そのネタを拾ってもらえなくてさらに後の作家がフォローしたりと脚本家同士の間接的なやりとりも面白かったです。
脚本はその作り方の性質上、ラフなところや無茶な展開があったり、ストーリーにあまり深みを感じられなかったりしましたが、演出や演技がしっかりと丁寧に作られているため安心して観ることができました。
喫茶店のマスターを演じた渡辺裕也さんの困った表情がチャーミングでした。藤田未来さんと川本亜貴代さんの嫌味たっぷりな口論も見応えがありました。人数が多すぎるため、あまり活躍しない役があったのが残念でした。
舞台美術がとてもリアルに作られていて良かったです。特に古い型の角張ったデザインのエアコンがいい味を出していました。室外の自然光を表す照明も場面毎の時間帯を的確に表現していました。
チラシのデザインが良くても当日パンフレットは白黒の不鮮明なコピーということが多いのですが、この公演では当日パンフレットも良い紙を使った洒落たデザインのもので素晴らしい出来でした。