満足度★★★★
名作は色あせず
「ノバ・ボサ・ノバ」の上演記録をみると、ちょうど日本経済が低成長期にさしかかった71年に初演され、オイル・ショックを経て完全に右肩下がりとなった76年を最後に上演が途絶えた。
バブルが弾けた99年に再演されて以降、上演されていない。
奇しくも東日本大震災、原発事故による大打撃を受けた直後、「ノバ・ボサ・ノバ」を観てみたいと思っていたら、東京公演があると知って観劇を決めた。
先日、「いまの日本には、眩しすぎる作品」との劇評を読んだ。
そうかもしれない。だが、代々、この作品に憧れ続けたタカラジェンヌたちの思いがこもっている名作だ。
初演の真帆しぶきを観て、「いつかソールを演じたい」と切望した安奈淳は76年に花組で念願かなって主演を果たし、作・演出家の鴨川清作と安奈淳の狂おしいまでの師弟愛はいまや伝説となっている。
一方、雪組の汀夏子は何回か出演しているにもかかわらず遂にソールを演じる機会がなかった。
今回も、尚すみれ、室町あかね、御織ゆみ乃、若央りさといった、歴代の代表的ダンサーで本作の大ファンであるOGたちが各場の振付を担当している。
若央りさは「演じたい役、ソール」と言い続けた生徒でもあった。
今回主役のソールを演じた柚希礼音は初舞台が「ノバ・ボサ・ノバ」で私も観ているが、あの研1生がもうトップなんですねぇ。
40年たったいまも色褪せぬ宝塚の財産ともいえるショーである。鴨川は、日本のレビュー演出家としては、やはり不世出の名手と、今回の上演でも再認識させられた。
暗い時代にこそ、眩しくともサンバのリズムは心に響く。
出演者の大半が黒塗りするラテン物は、たいてい2演目のうちの後に持ってくるのだが、今回はなぜか白塗りの西洋芝居が後。
メインの演目とはいえ、後に持ってきたほうが、フィナーレ演出も映え、生徒の化粧の負担が軽かったのでは?