満足度★★
現代に蘇るハムレット
戦後の日本を舞台とした物語と劇中劇としての『ハムレット』とシンクロして展開する、意欲的な構成の作品でした。
叔父が座長の劇団でハムレットを演じる主人公がハムレットと似たような境遇に陥り、夢と現実の境が曖昧になっていく話で、どんどん進んでいく世の中に対してどう対応すればいいのか分からない主人公の葛藤が描かれていました。観ている方もどこからが劇中劇の『ハムレット』か分からなくなってくる展開(『ハムレット』の中にある劇中劇も演じられます)で、とりとめのない浮遊感が面白かったです。原作を知らずに観ると、話について行くのが大変だと思います。
戦中から戦後の繁栄の記録映像を舞台後方に大きく写し出し、ハムレットの「このままでいいのか、いけないのか」という有名な台詞を現代の社会に対して問いかける意図は分かりますが、映像が直接過ぎる内容だったため、逆に原作の普遍性を薄れさせて広がりがなくなっているように感じました。
歌、ダンス、能、殺陣など様々なタイプのパフォーマンスが盛り込まれていて、シリアスな内容にエンターテインメント性を付加しようとしていましたが、統一的な質感が生み出されていなくてチグハグな印象を受けました。主に女性3人で歌われる流行歌は美しいハーモニーで素晴らしかったのですが、能を模したシーンは表層的な動きで残念でした。パロディーとして笑いを狙ったのであれば、そう見えるように演じて欲しかったです。
レアティーズを演じた平田広明さんのしっかりとした台詞回しと、ハムレットの妹(ということに設定を変更した)ホレーショを演じた染谷麻衣さんの芯の強さが大変印象に残りました。