満足度★★★
瞑想的な60 分
ダンサーの中村恩恵さんとパーカッショニストの加藤訓子さんという世界的に活躍する2人の女性アーティストによるコラボレーションで、ダンスとパーカッションという躍動感を期待させる組み合わせですが、意外にも瞑想的な雰囲気を湛えた静かな作品でした。
高揚感は感じられないけれども退屈さはなく、引き込まれる不思議な感覚でした。
1曲目の『ルボンa』(I.クセナキス)、始めは演奏する加藤さんにのみ照明が当てられ、舞台中央に仰向けに寝た中村さんが次第に動いていく構成で、曲の雰囲気と相まって原始的な感じがありました。
間にちょこっと即興演奏を挟んでの2曲目『オマー2』(F.ドナトーニ)は様々に変化する曲に合わせてダンスも多様なムーブメントが組み合わされていて見応えがありました。
加藤さん自身の作曲による3曲目は環境音的な音色の楽器が多用される即興的要素の多い曲でした。譜面台に置かれた楽譜あるいは本(照明が強すぎて良く見えませんでした)を客席に向けて見せたり、加藤さんが鈴を持って劇場内を歩き回ったり、2人が英語のテキストを読みあげたりと、「芸術やってます」感がちょっと鼻につき、また冗長な感じがしました。
4曲目はマリンバによる『プール・グラウンド』(H.デイヴィス)で、曖昧な調性感のある内省的な雰囲気の中、中村さんが黙々と踊っている姿がとても美しかったです。
中村さんのダンスは派手なテクニックや特異な動きは使わないながらも、体の隅々まで丁寧にコントロールされたムーブメントに引き込まれました。ターンの切れの良さや、ダイナミックな動きの中にクラシックバレエ的なふわっと柔かい動きが気持良かったです。
加藤さんも全身を使った演奏で、ダンスの様でした。太鼓の皮をゴム球でこすったり、ティンパニの上に小さな金属製楽器を置いて余韻を変化させたり、中にゴム球を入れたスチールドラムを振り回してランダムに鳴らしたりと、不思議な音色が面白かったです。
曲毎に変化する照明はシンプルで、それぞれ異なる空間を演出していましたが、黒い空間で黒い衣装だったので照明が当たってない所で踊ったり、前屈みの姿勢を取るとき姿が見えにくかったのが残念です。
この内容でチケット1000円は破格の値段だと思います。1回限りの公演なのがもったいない作品でした。