満足度★★★
奇妙なモヤモヤ感
何かが起きているらしいのに、その背景が説明されないまま話が進み、非現実的な展開を経て、さらっと終わる、掴み所のない作品でした。明快ではないけど難解というわけでもない微妙なラインを狙っていて、不思議な心地良い違和感を覚え、前半は世界観に入り込みにくかったのですが、後半は何とも言えない奇妙な雰囲気に引き込まれました。
外にいると殺されるということで外部との関係を絶って、ある部屋の中の箪笥や箱に隠れる7人の奇妙な生活がその中の1人の日記を交えて淡々と描かれ、次第に閉塞感が高まって人間関係のバランスが崩れていく様子が現在の日本の状況、あるいはもっと普遍的なシチュエーションに重なるようで不気味でした。後半、奇妙なことになっているのに登場人物たちには何ごともないかのように会話を続けているのが、存在することについて考えさせられて印象的でした。
いくつかある回想シーンが照明の変化と台詞の内容で、自然な流れで挿入されているのが良かったです。
美術の仕掛けが良く出来ていて、後半のシーンでとても効果的でした。照明も色々切り替えているのが気にならないスムーズな流れで奇妙な雰囲気を演出していました。
前半が少しもたついてように感じます。後半の畳み掛けるような展開と対比を狙ったのかもしれませんが、もう少し前半もスピーディーに進んだ方が良いと思いました。