『パ・ド・ドゥ』【ご来場ありがとうございました!】 公演情報 七里ガ浜オールスターズ「『パ・ド・ドゥ』【ご来場ありがとうございました!】」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★★

    物語を知っていても
    ずっと前に、観たことのある戯曲でしたが
    そうであっても、しっかりと
    物語に引き込まれてしまいました。

    ネタバレBOX

    入場すると
    なにかだだっ広い感じの劇場に
    接見室のセットがおかれていて
    その左右に座席が並べられている・・・。
    他の方も書かれていましたが
    なにか席を選びにくい・・・

    それでもほぼ満席となり客電が落ちて・・・。
    金属の扉が開閉する音が闇に響いて・・・
    再び明かりがついたときの
    その場の雰囲気にまず驚かされる。

    多忙を極める弁護士と何らかの罪を犯した女、
    カラスを挟んだありきたりな会話。
    紋切り型の会話からほどけていく雰囲気があって。
    やがて刑事事件の被告と弁護士というの裏側にある
    二人の関係が明らかにされていきます。

    事件の真相への興味に
    二人の距離感が織り込まれて
    接見室の空気にどっぷりと浸される。

    客席は接見室の窓と直角の位置にしつらえられているので
    二人の表情のどちらも真正面からみることはできない。
    でも、というか、だからこそ
    観る側はどちらかの立場に偏ることなく
    その場の空気で物語の進展を眺めることができるのです。

    絶妙な緩急、事件は紐解かれるように見えながら、
    一方で二人の結婚生活や今の思いと絡まりあっていきます。
    真実にたどり着くことが
    二人の過去の、そして今の想いを浮かび上がらせていく。

    接見室ですから
    二人とも座り芝居なのですが、
    二人の役者とも座してキャラクターを演じている印象は
    ほとんどなくて。

    幸運にも二人の役者の全身が見切れることのない席を
    選ぶことができたので、
    二人が上半身だけでキャラクターを演じているのではないことが
    しっかりとわかる。
    弁護士の苛立ちは開いた足の動きから生まれて
    その場の状況で全身に伝わっていくようにも見える。
    女性もつま先からの表現があって
    時に脚を椅子に絡ませて動かし
    つま先を立て
    あるいは靴の脱ぎ着で、
    想いの座標や
    感情のリラックスと緊張を表現していく。

    態は仕切られた部屋に座しての会話劇なのですが、
    気がつけば、
    観る側はいつしか、その会話のやり取りよりも
    二人の言葉や身体を含めた表現をひとつのものとして
    冒頭に釣り上げられた好奇心の先、
    そこに満ちる空気を追いかけているのです。

    事実が解けきった終盤、
    乖離していた二つのベクトルが一つに重なり合う感覚があって。
    幾重にも重なり目隠しをし合っていた互いの想いの先の
    真実が開ける

    まあ、装置まで動かしたラストシーンは
    もう少ししっかりと見せてもよい感じはありましたが
    でも、それはそれで、
    作り手の意図するであろうテイストをかもし出していて。

    観終わったあと、
    ちょっとのビターさと重さと、
    それを凌駕する充足感がゆっくりとやってきました。

    この戯曲、物語の顛末の記憶は、
    過去の上演を見て十分に知っていたのですが、
    そんなこと関係なく、しっかりと面白かったです。


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    2011/05/28 18:16

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