ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち 公演情報 東京演劇集団風「ヘレン・ケラー~ひびき合うものたち」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    渋谷愛の熱演が光る
    ヘレンケラーというと、私の世代には映画「奇跡の人」でのアン・ヴァンクロフトとパティ・デュークの名演技が目に焼き付いている。
    小学生のころ、クラスの子を集め、吉祥寺の三和銀行(当時)の中庭の噴水の前で「奇跡の人」ごっこと称して「ウォーター」の場面を繰り返し再現して演じさせてたら、行員にお小言をくらったことがあるくらい、夢中になった作品だ。パティ・デュークは当時、日本では大変な人気があり、私も大好きになり、来日時のフィーバーはいまも鮮明に憶えている。

    近年の大劇場の「奇跡の人」は映画の想い出や往年の有馬稲子さんの名演を自分が大事にしすぎて、あえて観ないようにしてきた。
    だから、今回のKAZE版には違うものを期待し、楽しみにしていた。

    サリバン役の渋谷愛は、いつもより声が低く地声を生かし熱演していて、新しい一面をかいまみせてくれた。
    小さくまとまらず、大胆に演じ、若手ホープとしての才能を存分に発揮したと思う。

    2時間弱にまとめ、なかなか楽しめる佳作だった。

    ネタバレBOX

    今回、ヘレンはWキャストで、私の観た回は稲葉礼恵だった。もう一人、3月に星の王子さまを演じた白根有子はボーイッシュな感じの人なので、少女役も似合いそうで、彼女のヘレンも観てみたいと思う。
    稲葉は顔が大きく、少女というより中年女性のような雰囲気で、この役に限っては、演技の質とともに私の好みではなかった。

    ヘレンには年の離れた異母兄がいるので、父親役は年齢が上の俳優でもかまわないと思うが、母親役は保角淳子では歳をとりすぎていて、子供を産んだばかりの母親には見えないのが気になった。昔の新劇とは違い、昨今は実年齢と近い俳優が演じることが定着しているので、配役に一考がほしかった。

    家政婦のビニー(清水菜穂子)の温かな母性が印象に残った。

    <演出面で気になったこと>

    異母兄ジェイムズ(中村滋)は、ちょっとひねくれた感じで登場するが、中盤は明るくさわやかな青年という感じでヘレンにも理解を示し、観ていてそのギャップに少し戸惑う。

    また、アニーのスカートがめくれ上がり、太ももを露わにする場面が多すぎると思った。自ら恩師のアナグノス(緒方一則)の前で、スカートをたくし上げて挑発する場面は理解に苦しむ。最近、「奇跡の人」の舞台でもそういう演出があるのだろうか。サリバンにはストイックなイメージがあるのでお転婆娘とはいえ、違和感があった。

    ほかのかたからも指摘があったが、アニーと弟ジェミーの心の中の問答場面のセリフをあえて棒読みさせているが、演出の意図がよくわからなかった。
    感情を込めたほうが、姉弟愛が伝わったと思うが。

    舞台美術では、ポンプを下手前方に持ってきて「ウォーター」の場面に躍動感が出た。ただ、下手最前列の私のところにはちょうど水しぶきが飛んできて、かなり服に掛かった。
    こういう演出の場合、開演前に傍の客にはスタッフからひとこと断りがあってもよかったと思う。
    前回の公演でも書いたがこの劇団は上演本位で、観客への配慮に欠けるところがある。常連客ばかりでなく、初見の客も来るのである。

    音楽は明るく懐かしいカントリー・ウエスタン調。クレジットが小室等となっていたが、フォーク・シンガーで作曲家の小室等と同一人物なのだろうか?

    カーテン・コールが大劇場並みに何度もあったのがKAZEでは初体験だったので驚いた。

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    2011/05/16 02:48

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