満足度★★★★
愚劣極まりない凡人(=私たち)の群像劇
駅前劇場中央に舞台があり、2方向から客席がはさみます。私はいつも客席がある方に着席。その方向から見て下手に一般家庭によくありそうなリビング。上手は築数十年経ってそうな一軒家の玄関先。室内と野外の2つの空間が隣り合っています。中央の通路は人がすれ違う度に空間のゆがみを生み出し、この世に存在しないはずのものを想起させる見事な美術です。
自分の欲望のままに行動し、それが満たされないと他人にやつあたりする。自分のことしか考えていないのに、他人がわがままだと批難する。当事者意識がなく、何が起こっても誰か・何かのせいにする。そしてそのことに自覚がない。登場人物全員がそんな人間であることが驚異的です(笑)。全員に対して「そんなこと言ってるけど行動が全然ともなってないYO!」とツッコミができるほど、約2時間の中に緻密に描き込まれた戯曲でした。
言動や行動がバカ過ぎてうんざりするしイライラするしムカつきます。さらにはそれを通り越して苦笑・失笑するしかない、というところまで徹底した人物造形と空気づくりが素晴らしいです。
1対1の密度の高い会話やほぼ他人同士の3人がおそるおそる話す場面など、緊張が続くことが多いです。それをフっとほぐすポップでメロディアスな音楽と、パっと色を変えるカラフルな照明がいいスパイスになっており、劇団独特の持ち味だと思いました。
劇団員が増加し、集団としての力を蓄えて次の段階へと着実なステップを踏んでいると思えた作品でした。役者さんの中では、リビングにいた主婦役のザンヨウコさんが、いつもながら安定感と説得力のある演技を見せてくださいました。