平田オリザ・演劇展vol.1 公演情報 青年団「平田オリザ・演劇展vol.1」の観てきた!クチコミとコメント

  • 満足度★★★★

    現代口語劇といえば。
    「走りながら眠れ」を見てきた。平田オリザ氏の舞台を観るのは二度目だったのだが、今作でも氏の劇世界にどっぷりと浸かることができた。現代口語劇の巨匠とはいえ今作は明治時代が舞台であり、アナキストである大杉栄とその妻・伊藤野枝の「生活」を綴ったものである。

    ネタバレBOX

     作品を評価する際にバックグラウンドの話を考慮するのはどうも苦手なのでその辺りは割愛するが、純粋にこの作品を観終わった際に感じたことは、「革命、愛、生理、その他行動――生きることにおける積極性」についてである。
     
     異国から帰国した栄の土産話の中からも、オサムシの習性の話からも、「本人の行動」と、「それを見る人」の両者の気配が実にユーモラスに漂ってくる。そしてその全体は切なさ、侘しさ、死の予感に包まれ、二人の存在の危うさが改めて意識される。
     
     そういったイメージが我々の普段の生活の中で感じる機微と上手く重なり合う際に、人々の心はぴくんと跳ねるのであり、それを体験するために私は劇場に足を運んでいると言っても過言ではない。

     本作で語られることは、いくらか「足らず」な印象を受けるかもしれない。しかし、その静けさこそが我々にイメージを抱かせ、思考させ、震えさせることがある。そしてオリザ氏はそういった理解の天才であると言わざるを得ない。

     日常的では無いはずのこの夫婦の間に、確かな「生活」を浮かび上がらせた良作であった。

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    2011/05/08 20:39

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