満足度★★
等身大の、しかし「リアル」のない芝居
アパートもの、寮ものは、ドラマでもマンガでもたいていはラブコメだ。
しかし、この四つの部屋の住人は、互いにそんなには深く関わらない。別れはある。けれども現実のアパートの引っ越しが他の住人の生活と無関係に淡々と行われるように、この戯曲の別れもありふれた点景でしかない。
戯曲家は、あえて過剰な「ドラマ」を描くことを避けているようだ。「日常」は小さな変化の積み重ねであって、さりげなく過ぎていくもの、と考えているのかもしれない。しかしその方法論は、最も日常を表現するのに適していると思われる「現代口語演劇」の手法ではない。役者たちの演技は平田オリザ以前の大仰なもので、「日常らしさ」はない。
そこに、描かれている世界と実際の演技との間に「ずれ」が生じている。それが演劇としての緊張感を喪失させる結果になった。役者も演出も真摯だ。それは充分に伝わってくるから、嫌悪感はない。しかし真摯さだけの舞台では、やはり「演劇」には成り得ていないのである。