満足度★★★★★
もっと色々たくさん観せて!と言いたい
まず、蚕をモチーフにここまでの世界観を創り上げるアイデア力に脱帽。子供に蚕を飼育させる小学校は多いと思うけど、あのぼてっとして飛べない成虫を見て、その意味を考えたことのある人間は、自分を含めてそうはいないだろう。
全ての登場人物が、それぞれ「そうせざるを得ない」故にとる行動は、悲しく激しく、時には残酷きわまりなく見えても、特に、終盤で判明する「真相」は、悲劇を通りすぎてグロテスクでさえあるけれど、とてもひたむきで優しい。個人的には「神官」に惹かれた。先祖の偉業の恩恵に預かって身分社会の際頂点に立ち、サディスティックな差別主義者だけれども、どの登場人物よりも淋しい。その彼にさえ、彼なりの「ハッピー」を用意する末原拓馬さんの創り手としての温かさに胸を打たれた。そして、すべての登場人物に感情移入ができてしまうほど、キャストが全員、個性的で魅力的で、すばらしかった!末原さんが生み出した人物達の持つ「もの哀しさ」のようなものを、役者さん達がそれぞれの立場から深く追求していった結果なのでしょうね。
ひとつだけ苦言を呈するとすれば、セリフの量などもう少し削ぎ落とすことができれば、より物語の真髄というか骨格が分かりやすくなるかと。
今回のようなギャラリースペースでの観客巻き込み型の演出も臨場感があって素敵な体験だったが、これだけ美しい世界を創り出せるメンバーなのだから、今度はぜひ、オーソドックスな劇場でも上演してほしい。コクーンを目指すことについて何故か批判の向きもあるようだが(1人だけだけど)、この目標は、大いに結構だと思う。彼らなら、路上でもギャラリーでも小劇場でもコクーンでも、のびのびとこのオリジナルな世界を創りだして、我々を魅了してくれるだけの成長を遂げてくれるだろうし、そうなった後でも、末原さんが今日のスタンスに立ち返ることを忘れることはないと思うからだ。
2011/05/11 00:12
ハッピーになりたい。
震災後に一番苦しんだことでした。
震災後すぐに自粛の話がシビアに流れ、
実際に僕が出演するはずだった大きなイベントもふたつが流れ、
他のみなさんも、たくさんの公演を中止なさったようにおもいます。
しかししばらくすると、経済のために、自粛モードは大禁物である、というすごく数学的な事実が常識のようになり、こんなときだからこそ、遊ぶのがよいことだ、お金を使うのだ!と、そういう風潮。
僕自身も、自粛という考えは確かになかったし、こんなときこそ必要になってくるのが、僕らの稼業であると思ったものですが、しかし。じゃあ、酒を飲んで、わらえるか、というと、これはとても個人的な問題として、どうしても、何かが引っかかる。「俺らは元気でいなきゃ!」という理論は完全に理解をして、推奨をしたかったけれど、おいしいものを食べること、すきなひとと時間を過ごすこと、たくさん眠ること、その他すべての“ハッピー”が、やはり、とても後ろめたい。楽しい気持ちになんかなれやしない。
それが、今回の、核にあったのでした。
たくさんのカイコが残酷にしていく様を15年間みつめながら、なにもできなかったタクという存在は、まさしく、無力な僕らでした。よくがんばってくれた、タク。そんな気持ちでいっぱいです。
俳優陣をおほめいただくのは、なんだか身内自慢にはなりますが、鼻が高い思いです。
切磋琢磨。おたがいを 尊敬しあえる現場というのは本当に素敵だ!とおもういっぽう、負けじ!と、自分を磨こうと誓うのでした。
これからのこと、よくよく考えてみます。劇場公演。そちらへのモチベーションももちろん、十分に抱いています。心して、さまざまな空間に挑戦してゆけたらと思います。
誠心誠意精進してまいりますので、
シアターコクーンでのその日まで、なにとぞ見守っていただけたら幸いです。
本当に、ありがとうございました!
拓馬