満足度★★★★
勅使川原×シェーンベルク
シェーンベルク作曲のソプラノと器楽アンサンブルのための『月に憑かれたピエロ』の生演奏と共に踊る企画で、この曲が持つ表現主義的な雰囲気がダンスによって増幅され、素晴らしい内容でした。
音楽祭のチラシや公式サイトには勅使川原さんの名前だけがクレジットされていたので、佐東利穂子さんも出演していて嬉しい驚きでした。個人的には同時期に公演している『サブロ・フラグメンツ』より良いと思いました。
調性がないため一般的な意味でのドラマ性が弱く、歌も普通のクラシック的な発声ではなく喋るような感じな歌唱法なので、取っ付きにくい印象のある曲ですが、ダンスが加わることによって曖昧模糊とした響きの曲に必然性が感じられて興味深かったです。また、この曲の中に退廃や狂気、耽美といった要素だけでなく、皮肉な笑いの要素があることもダンスによって炙り出されていました。
勅使川原さんには珍しく、顔の表情を表現に取り入れていたのが印象に残りました。
1回限りの公演でしたが、照明も細かく演出されていて、「音楽に合わせて踊ってみました」レベルのものとは全然異なるものになっていたと思います。
この日のラ・フォル・ジュルネの公演はこの公演ともう1つの公演しか売れ残っているものがなかったので、当日に買えるチケットということで事前情報なしで観に来た客が多かったのでしょうか、『ピエロ』が始まって10分くらいまでは結構な数の客が帰っていました。チャイコフスキーのバレエみたいなものを期待して来ていたのだったら気の毒ですが、最後まで観れば良くも悪くも何かしらのインパクトを与えられる公演だったので途中退場するのが勿体なく思いました。