満足度★★★★
コミカルで寂しい不条理劇
柄本明さんの自邸の地下に設けられた「アトリエ乾電池」の杮落とし公演。
時代はおそらく未来で、核戦争が終わって、ほとんど人がいなくなった世界を放浪する旅芸人2人と、途中で出会う不思議な能力を持つ男の道中を描いた作品で、ベケットの『ゴドーを待ちながら』やイヨネスコの『椅子』を思わせるシーンもあり、コミカルな中に寂廖感が残る不条理劇でした。
しっかりとした演技力のある上に見せるドタバタぶりや外しっぷりが鮮やかな3人のやりとりがとても面白かったです。小さな劇場ですが照明や美術がしっかり作り込まれていて、特に後半に出てくる演出は小さな劇場だからこそできる内容で良かったです。ラストシーンがとても美しく印象的でした。
戯曲も30年以上前に書かれたもので、この公演もたしか3月11日より前に決まっていったと思うのですが、コンピューターのエラーでミサイルが飛んだり、放射性物質が宙を舞っている描写があったりと、今の日本の状況とリンクしていてちょっとビックリしました。