あかのたにし@福岡の観てきた!クチコミ一覧

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スカ☆ブラ

スカ☆ブラ

グレコローマンスタイル

西鉄ホール(福岡県)

2010/06/18 (金) ~ 2010/06/20 (日)公演終了

満足度★★★★

本当は難しく考えなくてもいいのに
観後しばらくたつのにむず痒い感覚が今でも残っている。
ドラマ部分が微妙、なのにゲスト陣のパフォーマンスは最高、でもドラマ部分が微妙。
要は、筋立てがもう少しだけでもしっかりしていたならば、本当に最高の舞台になる可能性があったはずなのだ。

ネタバレBOX

物語の導入部分からすでにやや冗長な語り口。その割にあまり主人公・須賀兄弟の魅力を描くような仕掛けが無い。むしろ次のシーンで恋愛模様を予感させるサーモ(林雄大)の方に観客は興味が向いたのではないか。
しかしそのサーモの恋愛についてもあまり掘り下げられはせず、そこからは三撥の兄弟関係に話題がシフトし、最終的には、敵対していたスガブラザーズの手助けをするための布石扱いに終ってしまった。
ゲストパフォーマー達がそれぞれの得意な仕事で客席を湧かす中、役者たちの仕事といえば“人間を描く”ことではないのか。ただパフォーマンスとパフォーマンスの間をつなぐだけの存在に収まってしまわれては、「演劇」を期待して行く者としては寂しい気分になってしまう。
(ただ一人、高山役の瀬口寛之氏は見応えのある芝居をしていたと思う)

バブル崩壊という時代背景も、あまり重要ではなかった気がする。須賀の「恩赦による出所」と、クライマックスでさらりと持ち出される「不動産融資総量規制」によるどんでん返し、あたりにしかその効果を見出すことはできず、またそれらは他の理由付けでも充分に成立させられる要素だ。
もっとモダンな、あるいは時代背景不明の設定で組み立てても、この座組みの魅力は損なわれなかったのではないかと感じる。

・・・等々の細かなツッコミも些細に感じるほどに、繰り返すが、ゲストのパフォーマンスについてはひたすら楽しめたことも事実だ。
ダンス、スカバンドももちろん良かったが、中でも三撥は突出していた。
きちんと芝居ができるメンバーである(中村公美・国武彰の両氏はこの団体の正劇団員でもある)ということも強みで、それがドラマを動かすのに一躍買ってもいたし、和太鼓の演奏は静寂まで織り込んだ緊張感のある構成で非常に素晴らしかったと思う。
(ザ・サラリーマンのコントコーナーの重要性については「?」だったが・・・)

まとめてみると、いやらしい話になるかもしれないが、これだけのものを観られてこの料金ならばコストパフォーマンスとしてはなかなかのものだ。ゆえに満足度は高く設定できた。
しつこいようだが、ドラマ部分、役者陣がもっと頑張れていたならば、もう一つ星をつけられたのに、と悔しく思う。
家族耐久 〜野口家〜

家族耐久 〜野口家〜

劇団HallBrothers

ぽんプラザホール(福岡県)

2010/06/05 (土) ~ 2010/06/08 (火)公演終了

満足度

耐久してるのはむしろ観客
上演時間は久保家と同程度。
久保家に比べれば少しは役者が自分の演技を固めてきている(ベテランチームと新人チームで分けていた事は後から知った)が、それでも脚本と演出の薄っぺらさを埋めるまでには至らず、だ。

ネタバレBOX

四兄弟の「チームワークは抜群」だったとかいう、あらすじにちょこんと書いてあるだけの設定はいったい何の役に立っていたのだろうか。
それを匂わせるような兄弟間のやりとりは舞台上では見受けられなかったし、むしろ会話といえばどうにもハッキリしない言い淀みばかりで、そこで兄弟らしく何かを察してやるというような事もない。まるで昨日今日会ったばかりの他人同士の会話だ。
せめてもっと無意識下にある繋がりが見えれば兄弟らしく見えただろうに。例えば似たような癖(口調や仕草)を持っているとか、食の嗜好があるとか、方法はいくらでもあるはずだ。なのに、長男はファンタ、次男はタバコ、末女は酒呑み、といったような不必要な書き分けをするものだから、ますますこの家族の持つべき雰囲気がぼやけてしまう。
兄弟関係の他に、長女の旦那の人物像にも大きな問題がある。なんだ「ニャ〜」て。それが許されるのは付き合いたて1〜2週間までだろう(個人的意見)。
この旦那からはかつて我が子を失った悲哀が欠片も感じられない。むしろそんなトラウマなんか知ったことかと、嫁に耐久レースへの参加を促そうとする。いくらなんでも無神経すぎやしないか。
他にも末女に関するサイドストーリー(恋人と何かあった?本当に仕事で戻るの?実は拾い子?etc・・)への思わせぶりな誘導があったようだが、特に結末に活きるわけでもないのになぜ挿入したのか?
そんなもので物語に奥行きをつけたつもりなら完全に見込み違いだ。観客にとっては無駄・以外の何ものでもない。

雑多な部分に突っ込みを入れていくと、火を点けたばかりのタバコを次から次に消しまくったり、酒を注ぐ動作がほんの一瞬だったり、そんな小さな所作ひとつひとつ挙げつらっても、リアリティを追求するつもりは毛頭無いのだろう。

総じて、一本の作品としては、あまりにも低い完成度であると言わざるを得ない。

ここでこの企画自体への疑問が生じる。
「なぜ2つの公演に分けたのか?」という点だ。
本来、「2本立て」というものは、一度に2本続けて楽しめるというお徳なものであり、この企画のように別々に料金を払って見るのでは意味が大きく異なる気がするのだ。
それでも「2本立て」と銘打ったこの公演、久保家/野口家を両方とも見るためには、わざわざ倍の料金を払って、倍のスケジュールを空けて、倍の交通費を使って、倍の折り込みチラシを渡されるのだ。

劇団側はそんな観客の労力を考慮した上で本企画を進めていったのだろうか?
そんな観客の労力に見合うものを仕上げ、見せてくれたのだろうか?
家族耐久 〜久保家〜

家族耐久 〜久保家〜

劇団HallBrothers

ぽんプラザホール(福岡県)

2010/06/05 (土) ~ 2010/06/07 (月)公演終了

満足度

興行の体を成さず
ぴったり1時間程度の中編。そんなコンパクトサイズにもかかわらず、どうしようもなく薄っぺらい内容だった。

ネタバレBOX

ここに登場する人物たちは「疑似家族」での生活に何を求めていたのか。フライヤー/パンフレットのあらすじでは説明がついているのであろうその部分をほぼ完全に省略し、予備知識ありきの状態から幕を開くことがまず作/演出家の怠慢であると感じる。
集団内において個々の目的には大なり小なり違いがあるはずだろう。それとも、全員が寸分の狂いもなく、まったく同じ目的で集まったとでもいうのだろうか。そんなに都合よく物事は始まりはしない。ここがウヤムヤなままだから、誰に感情移入して観て行けばいいのかが分からない。
また、久保家そのものの歯車がかみ合ってすらいないうちに、「歯車が狂い始め」るきっかけとなる闖入者=亜由子が登場する、という展開は性急にもほどがある。最低でも1、2ヶ月は疑似家族を家族として成立させる、または、その可能性を見せる程度の期間を描いておくべきだ。それをしなかった結果、なんとな〜く最初から全員がよそよそしい空気になり、これじゃうまくいくはずもないよなという予感を裏切ることもなく、なんとな〜く疑似家族たちの距離は離れて行く。それを縮める努力は誰も見せようとせず、ただの気休めだったり身勝手だったりする言葉が空しく飛び交うだけだ。そんな調子だから、この物語が「家族」の本質に迫ることはない。
実は天涯孤独ではなかったという未成年たちの話についても、世の中にはゴマンとありすぎるせいでもはや普遍的なショーケースだ。わざわざ大げさに舞台で描いて見せるほどの事ではない。
ただ「家族ごっこしてみたけど所詮は他人だから無理でした」という事実を、だらだらと1時間かけて、付箋紙ゲームや、ポテトサラダのネタの繰り返しやら、余計な修飾を見せつけられるだけ。

そんな物語でも、役者の技量次第では各人物のバックボーンを匂わせ、多少は溜飲を下らせる事もできたのかもしれない。が、その点でもこの舞台は最低ラインにすら立てていない。皆自分のセリフを追うのに必死。自分の動線を確認するのに必死。相手役との空気を合わせる事は二の次である。
疑似家族である前に、疑似演技止まり。

この座組は本気で「家族」というものを掘り下げるつもりはあったのだろうか。「疑似家族」という題材を選んだ時点で、『問題提起』しましたよ、ハイ終わり。この舞台からはそんなふうにしか受け取ることができない。
・・以上の作品への不満に加え、この興行自体に対しての不満もある。それは野口家への感想で改めて述べさせてもらう。

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