kingの観てきた!クチコミ一覧

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吐くほどに眠る

吐くほどに眠る

ガレキの太鼓

APOCシアター(東京都)

2010/08/19 (木) ~ 2010/08/26 (木)公演終了

満足度★★★★★

見事な演出
実に巧みで、見事な演出でした。

ネタバレBOX

物理学の世界では(専門ではないので俗的な話ですが)、
生命活動においては時間とともにエントロピーが増大していくと
いう話があります。つまり、エントロピーがある量まで増大すると、
生命活動は終わる=死ぬということをさすわけですが、

この話を無理矢理今回のお芝居に当てはめると、
ある女の積み上がっていく人生とともに、
無情に、それはまさに情の介入しない物理的な力で
強制的に、女の人生が収束に向かっていく様は、
観ていてはっとさせられるものがありました。
演出家の人間という生き物にたいする深い観察力と、
生命に対する思慮深さと、豊かな感受性、
何よりそれを表現する演出力に
脱帽するばかりでした。

年齢を重ねていく中であるとき問題が起こると、
それも一番ヘビーなのは家族の問題なのですが、
人はそれまでの積み重ねを振り返り、
時に懐かしさを感じ、時に滑稽さと不思議さを感じ、
時に身震いするような気持ちになるものです。
一生を綴る物語はわりとよくある手法ですが、
(それはそれで面白いのですが)
これだけ、グロテスクなくらい真面目に、
人の人生の積み上がりに向き合えるのは、
演出家の人間性の高さと
類い稀な才能というほかないでしょう。

配役を固定しない演出も◎でした。
斬新で奇をてらうというよりは、
むしろ純粋に丁寧にストーリーだけを追わせてくれる
観客への配慮がなされている気すらしました。
「配役」などどうでもいいのかもしれないと
思わせてくれた点では、
この演出はもう本当に最高です。

一方で、最後に服を全部消化しないというところが、
演出上の落ち度というよりほかなく、
ラストに向かうにつれて物語の緊張感を緩慢にしてしまった
(終わるのか終わらないのかわからない)
ことは多少なりとも残念だったかもしれません。

いやはやそれを差し引いても
じゅうぶんに素晴らしい作品でした。
止まらずの国

止まらずの国

ガレキの太鼓

サンモールスタジオ(東京都)

2010/03/25 (木) ~ 2010/03/30 (火)公演終了

満足度★★★★★

たいへんよい作品
感想書くのもいまさらですが。。。

非常に秀逸な脚本だったと思います。
反面、演者自身のテーマ性への理解?というか
押し出し方のバラつきが気になるものでした。

ネタバレBOX

おそらく、多くの観客は物語の途中でラストのオチに気づくのでしょう。
私もその一人ではありますが、
オチに気づいてからが、実はヤバく、
脚本家が「しめた」とばかりに、
私たちに堂々と、私たちの愚かさに
背後からさくり、と鋭くメスを入れるように感じました。
なぜなら、劇中の登場人物の、
戦争や死の恐怖に怯える滑稽さを目の当たりする私たちは、
自分たち自身のそれに重ね合わせるのですから。

だからこそ、その滑稽さを、
そのまま滑稽に演じてしまった役者が数名いたのは、
大変残念すぎました。
そんなことは観客には関係ないのですから。

いずれにしても、
この拍子抜けさせるような滑稽さこそが
私たちの無知や常識(=非常識)、視野の狭さを晒し、
(私たちを怒らせない程度に)辱しめ、
「旅行」にせよ、「人生という名の旅」にせよ、
「旅」というのは得てしてそういうものなのです、
ということに気づかせてくれたことは間違いありません。

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