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鼠(ねずみ)―2016―

鼠(ねずみ)―2016―

モンゴルズ シアターカンパニー

IRORIMURA・プチホール(大阪府)

2016/07/09 (土) ~ 2016/07/22 (金)公演終了

満足度★★★★

モンゴルズシアターカンパニー「鼠ー2016ー」みどころ(ネタバレなし)
モンゴルズシアターカンパニーさまより観劇ブログのご依頼を頂いたので、初日に行ってきました。

劇場は、本当に電車の音がするところにあります。
地下鉄で最寄り駅まで来て高架をくぐり、劇場に着いて座るとホンモノの電車の音が時折響く中、地下鉄のホーム下空間での物語が始まります。
のちの映像とも相まって臨場感がハンパないです。ぜひ開場したら早めに座って、しばらく場所の雰囲気を感じておくと楽しいかもしれません。

そして前情報としてもある程度公開されていたように、映像が照明その他の一部として特殊な効果を上げています。これが制服の二人の男とキッチリ溶け合っていてめちゃくちゃカッコいい。片方がシュッとしたイケメンで、片方が渋くてオーラ全開の男前です。喋ってなくてもシルエットとして存在してるだけで充分見世物として成立しています。
これを楽しむだけの為にもう一度行ってもいいかもしれないと思っているくらいです。

会話劇としてのクオリティも勿論高いです。
一時間、良く訓練された俳優二人が計算しつくした動作と会話で魅せる!!

…だけ、では済みません。そこからさらに、計算を越えにも来ています。
まず一明一人が演技上において内面の侵犯を許している。これは、これまでの彼の演技方法から一歩進んで、新たな一面を開拓したといえるのではないでしょうか。彼を知る人、これまでの演技を見たことのある人には目撃して欲しいポイントです。
さらに、無音であることもより俳優たちへのクオリティのハードルを上げていると思います。
我々観客も息を潜めて観入ってしまう。それがワナでもあるわけです。
それから…とあまり書くと本当にネタバレしてしまいそうになるので、我慢しておきます。


物語は人身事故のあった駅が舞台です。
必然的に、自殺した男、を取り巻くあらゆるものによって描写が構成されていきます。
飛び込む者、それを処理する者、轢いた者、見た者、残された者。
自殺する機能を持つ生き物、生きることに囚われている生き物、淘汰されて行く生き物。
その全てを彼らが背負わされて行く。
人生の時間を数分ロスさせられてしまう人、望まないのに人を殺させられてしまう人、自分がいつ飛び込んでもおかしくない人。我々の誰もが、このどこかに属してしまう可能性がある世界。観た人の風景の見え方を変えたい、という作家の意図にまんまと乗っていくのが、何故だか悪い気分ではありません。
俳優二人の頑張って生きている姿がそうさせるのでしょうか。

ちなみに、長編化するにあたって、めっちゃホラー!という前回までの作品とは違ったものになっているようです。ご安心ください。
ホラーが無理な方でも、身構えずに委ねていても大丈夫な作品です。
後味、悪くないです。

また、土日の午後公演なので、ちょっと変わった座談会がおまけについていました。
観客同士が意見や感想をシェアし、より作品への思いを深くすることができる、演劇界隈には新しいタイプの交流会です。関東の方ではまあまあ行われているイベントだそうです。
興味のある方は、座談会のある回に観劇してみてはいかがでしょうか。こういうの、関西でも流行ったら楽しそうかもしれないと思います。


二週間のロングラン。後半の方は評判が出回って混雑しそうな予感がする作品です。
もしご予定が合う方は、早めの日程で行っておいたほうがいいかと思われます。

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