リズム
643ノゲッツー
OFF OFFシアター(東京都)
2010/03/10 (水) ~ 2010/03/16 (火)公演終了
満足度★★
すみません 辛口です
赤組と白組の2チームが交代で上演。私が観たのは白組。
レンタルショップの事務所を舞台にした劇で、途中からバイトの女性が、事務所の風景をドキュメントにして映像に収めるということを提案してから話が展開していく。
と、ここまで書いたのはいいが、そのあと何を書いていいのやら思い付かない。 劇が終わり、となりの若い女性二人が「なんか複雑だったねえ」と感想をもらしていたが、私もそれに近い思いがした。
どの場面が現実で、どの場面が撮影のためのものなのか錯綜して、なにしろ気持ちが落ち着かないのだ。それを狙ったのだと言われてしまえば、それでおしまいなのだが、観客が不安定な気持ちでいる場面は少しでいい。さらに、場面の種別が判明したあとの爽快感があまりないのだ。つまりどちらでもいいのだ、くらいにしか感じられない反転場面の連続なのである。
バリ島の**、*に*を突っ込み抜けないこと、そっと手渡されたD**が老婆の****ものだったことなど、あまり必要なかったのでは?
脚本を読むと、きっとまた違ったものがあるのだろう。脚本が原因なのか、演出なのか、あるいは役者の演技なのかは私にはわからないが、凝った(と思う)わりには効果はなかったと思った。
前半がかなり冗長で、何度も時計を見てしまうくらい。ギャグ風のオムニバスといった場面と暗転の繰り返しで、ここはもっとすっきりさせてほしい。後半の伏線になるものを整理して盛り込んでほしい。
かなり辛口かなと。
謎解きのおもしろさ、場面ごとの小ネタの痛快さ、市井の人達の触れ合い、反転するシチュエーションの工夫、なにを伝えたい劇だったのだろう。
劇を観た感想はそれぞれでいいと思う。
今回、私には残念ながら、主宰した方の思いは伝わらなかった。
気掛かりは、役者さんの感想がないこと。若いエネルギーに満ち潮満ちたパワーあり。
台詞があちこち役者を回り、落ち着いていなかったので、役者個々の批評ができないことは残念。
北枕動物園へようこそ
K.B.S.Project
高田馬場ラビネスト(東京都)
2010/01/30 (土) ~ 2010/02/07 (日)公演終了
満足度★★
次回を期待しています すみません
「北枕動物園へようこそ」 高田馬場ラビネストこけら落とし公演 K.B.S.Project
1月30日 14時の部
新しい劇場のこけら落とし、しかも初日、最初の時間帯です。縁起がいいですね。
内容は、「かわいそうなゾウ」の大人版といったもの。
軍の理不尽な命令により、動物は処分され、そこで働く人たちは引き裂かれ、多くが殺されていく、といった「重い」テーマを持った劇です。社会性のあるテーマに、大いに期待して会場に足を運びました。
さて劇について。残念ながら、見終わって「満足した」とは言い難いものでした。
一言で言うと、「浸れない」のです。それはどこから来ているか、考えてみると、次の4点になるかなと思います。
① 下ネタを入れる必然性。重いテーマの劇の中であっても笑いを入れて、所謂「緩急をつける」ことを否定するものではありません。ただ、それは「どこに入れるか」が大事な要素であると思うのです。あまり詳細に例示すると「ネタばらし」になるので、一例だけ。園長の娘が、事務所の園長の椅子に座り、「さなえちゃ~ん、あとで寝ようね」(女性事務員の椅子に向かって)「結婚しないと、蜘蛛の巣が張るよ」(すみません、正確なセリフではありませんが)と言う前後二度の場面。会場は誰一人として笑っていませんでした。別のセリフに替えたほうが、より効果的だったのかなあと思いました。計算尽くで挿入したとも思えるのですが、私には効果がなかったと思いました。
② ストーリーの急展開について。終盤で突然、実は~として、「工作員」「実の子」(こんな程度の最小限の表現にしました)が出てきますが、それまでの「リアル性」からアクションドラマ風にと展開を急ぐものとなってきます。とりわけ、前者については、この劇の中に盛り込まないでも、十分に「見せる」ものになったのにと、残念に感じました。
③ ②とも関連していますが、たくさんの銃殺場面について。最後に園長の娘だけにする設定のために、と考えて、登場人物を「抹殺」していったのでしょうが、これも私には「安易な方法」「逃げ」と感じました。上演時間との戦いといった側面も否定しませんが、もっともっと人物を生かしながら、それでいてそれぞれの苦渋を表現できる台本に練り上げてほしかったと思います。
④ 役者さんについて。若い人が多い劇団です。ですから、「飯島さん」のように、比較的安心して見られる役者と、「ちょっと無理があるかな」という役者との差が大きかったようです。限られた人数の中で配役を決めるのですから、その点しかたないと思うのですが、それは今後の可能性のある課題として。ただ一つ言えることは、役者の一人一人を見ていると、みなさんかなり個性的な(個性的になる)可能性を持った原石ばかりだったと思います。このスタッフで、例えば宮本輝の「夢見通りの~」、三浦しをんの「まほろ駅前多田便利軒」のような市井のものを上演すると面白いかもとも思いました。
ケプラーの憂鬱
シアターノーチラス
参宮橋TRANCE MISSION(東京都)
2010/01/22 (金) ~ 2010/01/24 (日)公演終了
満足度★★★
楽しく「聞きほれました」
ラップ、またはかつての新劇のように、たたみかけるようなセリフの速さ、それにもなんとかついて行きながら、楽しく観劇ができました。
私には、ストーリーの面白さというよりも、「言葉遊び」の世界のようで言葉の定義づけや、かなり凝った言い回しなど、それはそれで楽しむ要素として
聞き入っていました。
「言葉は、色のついた息だ」「磨くという言葉は消すという言葉と同義語だ」
など、新鮮な響きを持っていました。
役者さんは、客演の方も含めて、みんな若い人ばかり、まだ荒削りのところ
も、それがまた今後の可能性なのだというようにも思えました。
途中から、ふと気づいて、私は目をつむって劇を「聞いて」いました。そう、
この劇は、特に身体表現は必要のない劇なのだと思ったからです。
じゅうぶんにセリフとその背後の動きも伝わってきますし、豊穣なセリフが
この劇の全てだと思えました。
「ああ、この劇で一番楽しんでいたのは、きっとこの台本を書いた今村さんに違いない」とも確信。
言葉の豊かさの反面、舞台芸術としての、身体表現としての弱さでもあるのではないのかなとも思えました。
ただ、私はこの手の劇は好きです。私自身、シナリオを書くときは自分で遊びながら書いていますから。 どうか、「常識」にとられずに、冒険を繰り返していってください。