満足度★★
脚本・演出・役者の技量不足
原作が好きな為、初めての劇団を観劇に行きました。
キリン食堂、事前にHPで確認したら殺陣に自信あり、前回公演の評判も上々とのうたい文句。
期待していましたが、がっかりしました。
殺陣は、確かに数人巧みな方がいるものの、大部分のキャストが修練不足。
ゲストの若手俳優達の芝居もいまいち。
山田風太郎原作、と謳うには、あまりにも脚色が激しすぎる。
『魔界転生』というタイトルに惹かれて観に行った人間にとっては、残念なことだらけです。
ネタバレBOX
以下、箇条書きになりますが感想を。
・ダンスシーンの衣装をもっと考慮すべき。
天使と悪魔のストリップまがいの衣装に不快感を抱く人は少なくないと思います。
ダンスの技量は申し分なしなだけに、そういった衣装の面でのマイナス感があるのは非常にもったいない。
・伊豆守の威厳というものがさっぱり感じられない。
原作とは違い登場シーンも多く、重要な役回りなだけに、もっと厚みのある芝居をしたほうがよかったのではないでしょうか。
伊豆守役の大島つかさの、江戸っ子調の軽い芝居は演出ミスだった。
・柳生十兵衛が、完全に伊豆守の下で動く幕府直属の人間となっていて、原作の飄々とした感が失われていた。
・柳生衆の死に際に、個々に見せ場を作っていたが、立ち回りに不慣れな感が否めない若手の役者達は、せっかくの見せ場が生かしきれていなかった。
正直、一人死ぬたびにテンポが遅くなるだけであまり効果的ではなかったと思う。
・宝蔵院の転生シーンがないのはおかしい。
佐十郎のエピソードを削って、宝蔵院のエピソードを見せてほしかったです。
せっかく一人だけ槍で戦うという特異性があるのだから、そこをもっと生かした脚本にしてもよかったと思う。
存在感のある役者を使っていただけにもったいないです。
舞台オリジナルの登場人物や設定が、はたして必要だったのか。
演出家が何を見せたかったのかがさっぱりわからない舞台だった。
役者の技量不足も目立っていました。
特に若い女の子達が、着物の着方が汚い。
声も小さく、舞台に立つだけの基本が出来ていない人ばかり。
その割にはアンサンブル的な立場で色々なシーンに出ているので、舞台全体の質を下げてしまっていました。
以下は個人的によかったと思う役者さん達。
・荒木又右衛門役の永友イサム
身体が小さいので最初は荒木としては迫力不足かと思いましたが、転生後の魔人としての不気味さ・凄みが素晴らしい。
殺陣も見せ方を心得ていて安定していました。
・伊豆守役の大島つかさ
伊豆守としては軽すぎるキャラクターになっていましたが、役者の技量は申し分なし。
軽妙な語り口が面白いので、もっと明るく軽い演目で拝見してみたいです。
・年老いた巫女役の古内史子
出番があの一場だけなのは非常にもったいない。
舞台上では年齢不詳な老婆でしたが、チラシを見ますとまだ若い役者さん。
老婆役のためにしゃがれた声で喋っていましたが、それでも声に張りがあり、セリフも聞き取りやすかったです。
今後はメインの役どころで拝見したい。
・お品役のいぬいりさこ
クララとの2人での会話の部分は、演技は素人のヒロインをぐいぐいひっぱって、うまくテンポを作ってくれていました。
佐十郎とのシーンも、お品が巧みにセリフに緩急をつけて、棒立ちな芝居しか出来ない若いイケメン俳優を、「佐十郎」という役柄として成り立たせていたと思います。
今回の舞台、天草役の中村以外のゲストは、お品がいなければもっと酷い出来になっていたのではないでしょうか。
・子役の2人
子役というだけでほほえましく、高評価になるという部分を差し引いて。
芝居をしっかりとしていて、とてもよかった。
チャラチャラと喋るだけだったアンサンブルの女の子達よりも、よっぽど役者として完成されていました。