きんぺん村長の観てきた!クチコミ一覧

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白眉濛濛

白眉濛濛

海ねこ症候群

王子小劇場(東京都)

2023/06/21 (水) ~ 2023/06/25 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/06/21 (水) 19:00

座席1階1列5番

海ねこ症候群 第3回本公演。初日ソワレ、2日目マチネを観劇。
脚本を担当する坪田実澪が演じる、絵を描くことが好きな主人公ミソラが、ツキシロという人物にオークションへの参加を誘われるところから物語は動きだす。好きなことをすることと才能の有無という、きっと誰もが悩みぶつかることをミソラやその周囲の人間との出会いの中で問いかける。現実とファンタジーが入り交じる「リアルファンタジー」というキャッチフレーズがとてもしっくりくる話だった。演出担当の作井茉紘が13人の女優の個性を生かしながら、作品に彩りと陰影を与え一級のエンタメへと昇華させていた。全ての登場人物に背景がありそこにドラマが生まれ、その心情や言葉に共感できた。次回、令和5年12月に下北沢で行われる予定の第4回本公演にも期待する。

朝焼けとハミング

朝焼けとハミング

route.©️

王子スタジオ1(東京都)

2023/07/21 (金) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/07/21 (金) 12:30

座席1階1列

大内真佑花主演。「ユニットバスの人魚姫」の8年後を描く。
男の血肉を食べて生きる人魚姫の伝説が残る離島が舞台。元アイドルの美月が島に戻ってくるところから物語が始まる。大内さんの演技の幅広さ、かわいさから妖艶な美しさに変化していく表情に心を奪われる。同級生の美月への言動一つ一つに意味が込められ、最後に全てのパズルのピースが埋まるようなエンディングに鳥肌が立つ。映像美ともいえる舞台演出と美しい悲劇に心が震える作品。

ネタバレBOX

主演の大内真佑花さんの演技と表情がとにかくすごい。最初はいたって普通の女の子。そこから同級生や島の閉塞した雰囲気や人間関係に辟易する様子。お酒を飲んで口調が荒くなるシーン。島外からきた男性のストレートな行為に戸惑いながらも喜ぶ感情。そして、飲み物(血?)を飲んだあとの妖艶な、まさに人を虜にする人魚が乗り移ったかのような表情と動きは見るもの全てを虜にしていた。「ユニットバス人魚姫」では、人魚が女性を虜にして殺人をさせていた。今作では人魚は登場しないが、人魚伝説とそれになぞらえた祭りと習わしのために、島民みんなで男性を殺し生け贄とし、きれいな女性を人魚役にしたてあげる。集団心理や自衛のために人を犠牲にする人間の怖さというものが作品全体に落とし込まれていて、明るいシーンでも同級生の言動ひとつひとつに2面性が感じられ不穏な空気が流れる。最後は種明かしのような説明はなく、観るものの推測しかないが、きっとこれはこの先も繰り返される止めることができない物語である。
ユニットバスの人魚姫

ユニットバスの人魚姫

route.©️

王子スタジオ1(東京都)

2023/07/20 (木) ~ 2023/07/23 (日)公演終了

実演鑑賞

満足度★★★★★

鑑賞日2023/07/20 (木) 16:00

座席1階1列

全体的にホラーでエグい場面もありながら、芸術的演出と役者やmove actorの表現力によって美しさを感じる作品。主演の中村透子さんの鬼気迫る熱演や、人魚役のまひたんさんの妖艶さが光る。愛情の美しさと恐ろしさが心にささる。劇場に入った瞬間からroute©︎の世界観に包まれる。

ネタバレBOX

ある離島の話。そこには男の血肉を食べる人魚の伝説が残っていた。主人公の女子高生 朝陽は自宅のユニットバスに人魚姫を飼っている。正確にいえば朝陽は人魚を愛していた。
人魚は男の血肉を食べないと生きられない。朝陽は最初は自分の父親を殺害。次は見知らぬ男を部屋に誘い込み殺害する。それでも定期的にやってくる人魚の空腹。
朝陽はクラスでは本が好きな目立たない存在。それでも話しかけてくれる美月や晴には心を許していく。晴は朝陽に好意を寄せ、また朝陽も好みが同じ晴を嬉しく思う。「晴くんならあの子のために血を分けてくれって言えばきっと理解してくれるはず」朝陽は部屋に晴をつれていき嬉しそうに人魚を見せる。驚きと恐怖で逃げる晴。朝陽は晴を撲殺する。直後に美月から電話がかかる。美月が好きだったのは晴だったことを知り朝陽は号泣する。
刑事の取り調べ。人を殺すことは許されないと詰め寄る女性刑事。彼女には夫と子どもがいる。「旦那さんや子どもがお腹を空いたって言ったらあなたは見殺しにするんですか?」と言う朝陽。その目に迷いはない。
その後、朝陽宅のユニットバスを調べるが、残っていたのは綺麗な鱗のみだった。


朝陽の人魚への愛情は歪んでいながらも、人魚に抱きしめられた時の多幸感は何ものにも変えがたいものだったのだろう。殺人が悪いこととわかっていても人魚への愛情が全てにおいて優先する。リアルな同級生との友情や恋愛などを絡めることで、ファンタジーの人魚への愛情が引き立っていた。人魚は美月への愛情は特になかったのだろう。自分の食料を運んできてくれるいいやつという程度。そこにまた、まひたんさんの悪魔的な魅力、妖艶さが光っていた。
常にmove actorという表現者が3人舞台にいて、その場面の雰囲気や心の声を動きやセリフで表現していた。紙吹雪や風船など細かい小道具も使い、全てが作品を色鮮やかにする演出になっていた。もうひとつの作品「朝焼けとハミング」はこの話の8年後の世界。大内真佑花さん演じる美月が主人公の話。こちらもぜひ合わせて観るとより両作品を楽しめる。

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