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ジパング青春記 ー慶長遣欧使節団出帆ー

ジパング青春記 ー慶長遣欧使節団出帆ー

わらび座

男鹿市民文化会館(秋田県)

2020/09/27 (日) ~ 2020/09/27 (日)公演終了

満足度★★★★★

伊達政宗の黒船建造は慶長の大地震からの復興施策だったのではないか、という説をベースに、家族を失った若者の魂の再生を描くミュージカル。
何度も観ている作品なのに、人々の想いがこれまで以上にくっきりと立ち上がり、場面場面で涙腺を刺激した。ことに強い感情を歌で表現する部分で、音楽の持つエネルギーを感じた。
多くの情報と出来事をテンポよく配し、物語としての完成度とメッセージ性が同居する魅力的な戯曲、キャラクターの魅力と印象的な数々のセリフ、楽曲のクォリティ、劇団が得意とする民謡民舞の活用、そして、それらを活かすキャストとスタッフの力。遠征した甲斐のある舞台であった。

LOVELOVELOVE23

LOVELOVELOVE23

劇団扉座

すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)

2020/02/09 (日) ~ 2020/02/16 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/15 (土) 18:00

扉座研究所の卒業公演という位置づけで例年上演されている『LOVE LOVE LOVE』。研究生による実話を交えた短編をロミジュリの名場面でつなぐ構成は例年通り。演技だけでなく歌でも踊りでもアクションでも楽器でも持てる武器はすべて投入して生み出す渾身の作品を今年も目撃できた。
熱量だけでなく構成やテンポのよさも含めて2時間40分の長さを感じさせない舞台だった。ロミジュリは決闘の場面の迫力と、ひばりの声で朝を迎える場面での人を殺してしまったロミオの動揺からの2人のやりとりが切実で心惹かれた。

楽屋 —流れ去るものはやがてなつかしきー

楽屋 —流れ去るものはやがてなつかしきー

ことのはbox

シアター風姿花伝(東京都)

2020/08/22 (土) ~ 2020/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/08/29 (土) 17:00

岡崎さん演出版を拝見した。
箕輪さんは、ニーナの台詞の若い娘らしい真摯な声色から、場数を踏んだある種の余裕とその一方で多忙や年齢による余裕のなさとが同居する生々しい女優Cであった。
女優Cのプロンプターだった女優Dは、自分がニーナ役に選ばれた、という妄想を抱いている。「この前電話で作者と話した」などと口にする精神状態のあやうさと、そこまで追い詰められほどの役への思い入れ。女優Cとのやり取りは観ているこちらまでハラハラした。
そして、女優Aと女優B。あらためて観ると最初から最後まで出ずっぱりで台詞も膨大な、見せ場の多い役だ。それぞれの時代感。報われなかった過去への鬱屈とそれでも楽屋から離れられない執着。2人の個性の違いとバランスの良さが作品をきれいにまとめていたように思える。
この芝居の面白さは、劇中で使われるたくさんの過去戯曲のセリフにもあるだろう。『かもめ』を中心に、さまざまな戯曲が各場面を彩る。彼女たちの生きた時代ごとの翻訳の違いなども面白い。

その膨大な台詞と劇中の場面の心情と。彼女たちの生涯の憧れの1本は何だったのか、観終わってから気になったりもした。

たくさんの方々が演じてきた戯曲を、今回の岡崎さんの演出は真正面から丁寧に立ち上げて、執着や報われない哀しみの中にもどこか甘やかな憧れを感じさせた。

江戸系 宵蛍

江戸系 宵蛍

あやめ十八番

吉祥寺シアター(東京都)

2020/11/12 (木) ~ 2020/11/16 (月)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/11/15 (日) 19:00

楽隊の演奏が振動となって身体に伝わる。人々の足取りが床越しに感じられる。観に来てよかった、と客席で思う。
幻の2020オリンピックと昭和39年のオリンピックをつなぐ怒涛の物語に引き込まれ、巧みなミザンスから目が離せない。現代劇でさえ古典のエレガンスが香る、あやめ十八番らしさ。
終演のアナウンスをかき消すように拍手が鳴り続け、上手から飛び出してきた主宰が楽隊とキャストを手招きする。立ち位置を確認するように登場した人々がもう一度客席に向き合うと、一際大きな喝采が響いて会場内の温度が微かに上がった。

All My Sons

All My Sons

serial number(風琴工房改め)

シアタートラム(東京都)

2020/10/01 (木) ~ 2020/10/11 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/10/03 (土) 13:00

家族・罪・欺瞞・信頼・愛情・隣人……さまざまな要素が重なり絡まりつつ立ち上がっていく物語に息を飲む約2時間半。ずっしりと見応えがあった。キャストも皆さん素敵で、特に神野三鈴さんをはじめとする女優陣の演技に釘付けになった。

審判[加藤義宗 一人芝居]

審判[加藤義宗 一人芝居]

義庵

シアター風姿花伝(東京都)

2020/09/09 (水) ~ 2020/09/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/09/13 (日) 14:00

劇中で自ら何度も言ったとおり、ヴァホフは平静であった。何度も揺れ動きながら、平静に理性的に言葉を紡ぎ、その上で自分たちの罪について人々に問う。閉じ込められていた間のことを語る時より助けられてからのことを語る様子に胸が痛む。そしてこれは罪ではなく愛の物語なのだと、改めて感じられた。
ときおり、加藤健一氏の語り口に似ている、と思ったけど、それはたぶん親子だからではなく演出家だから、だった気がする。演出家が俳優の場合にはままあることだ。(残念ながら加藤健一氏の『審判』は拝見していない。他の作品で拝見した印象である。双方をご覧になった方の感想を伺ってみたい気がする)

風吹く街の短篇集 第二章

風吹く街の短篇集 第二章

グッドディスタンス

「劇」小劇場(東京都)

2020/08/26 (水) ~ 2020/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/08/29 (土) 12:30

『二度ところな!』を拝見。
ある家族の重ねてきた年月を、18年ぶりに会う兄と弟のやり取りで綴っていくオトナの会話劇。クスッと笑ったりじんわりしたり、気がつけばあっという間の約50分。脚本も演出も確かな手腕で、2人のキャストの魅力を引き出していた。

BLACK OUT

BLACK OUT

東京夜光

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2020/08/21 (金) ~ 2020/08/30 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/08/28 (金) 19:30

ネット上の感想に惹かれて観に行った。
商業演劇の演出助手をしつつ個人ユニットの主宰もしている主人公の葛藤とコロナ禍に翻弄された公演に携わる人々のを描く私小説的(?)演劇。ステージの上に新しい物語を紡ぐ人々の奮闘と誠実が胸に残った。

天保十二年のシェイクスピア【東京公演中止2月28日(金)~29日(土)/大阪公演中止3/5(木)~3/10(火)】

天保十二年のシェイクスピア【東京公演中止2月28日(金)~29日(土)/大阪公演中止3/5(木)~3/10(火)】

東宝

日生劇場(東京都)

2020/02/08 (土) ~ 2020/02/29 (土)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2020/02/15 (土) 13:30

戯曲の面白さは重々承知していたけれど、大劇場を満たす祝祭感に圧倒された。鮮やかな色彩と音楽、そして何よりたくさんの言葉が人間の業や愚かさとともに生きるエネルギーを描き出した。

ののじにさすってごらん

ののじにさすってごらん

やしゃご

こまばアゴラ劇場(東京都)

2020/10/22 (木) ~ 2020/11/01 (日)公演終了

満足度★★★★

近年個人的に赤丸急上昇の見逃せないユニット。

作・演出の伊藤氏の1人ユニットだけど常連の俳優陣もめちゃ好みで、ここ数年楽しみにしている。

今回も、なんていうか痛いくらい切実な日常を描いて胸にしみる。

細やかな生活感が今のリアルを映し出していた。

音楽劇 獅子吼

音楽劇 獅子吼

オールスタッフ

上野ストアハウス(東京都)

2020/10/21 (水) ~ 2020/11/01 (日)公演終了

満足度★★★★★

戦時下の動物園。老いた獅子と元飼育係の若者。

戦争という理不尽の中で、動物も軍人もそれぞれの矜持と愛情を試される。

浅田次郎の短編小説を音楽劇にした脚本と演出の手腕、少数先鋭のキャスト陣も見事。

特に、生演奏のお二人とコロスのお三方の確かな技術と表現力が物語に深みを加えた。

糸井版 摂州合邦辻

糸井版 摂州合邦辻

木ノ下歌舞伎

あうるすぽっと(東京都)

2020/10/22 (木) ~ 2020/10/26 (月)公演終了

満足度★★★★★

昨年3月に拝見し、また観たいと思っていた作品の再演。

壮絶な物語に組み込まれたゆるやかなメロディと動きによる独特の世界観に引き込まれる。

玉手御前役の内田さんや合邦道心役の武谷さんをはじめ魅力的なキャストが揃って目が離せない。

シンプルながら場面によって姿を変える美術も印象的。

物語の随所に過去の幸せな時間が埋め込まれるように描かれいて、それを観るといっそう胸が痛んだ。

「あいまいばかりの世界」

「あいまいばかりの世界」

Flying Trip

こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)

2020/06/24 (水) ~ 2020/06/30 (火)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2020/06/27 (土) 13:00

感染症が流行している現在と3年前を行き来しつつ描かれる、ある男の生と死。

登場人物それぞれの思いが伝わってきて切ない。

両隣も前後も空席として密を避けた座席配置、係員が目視で確認したチケットを観客自らモギる入場方法、ロビーでの飲食や会話の制限など、感染防止対策についての運営サイドの工夫と努力が感じられた。

緊急事態軽演劇八夜

緊急事態軽演劇八夜

新ロイヤル大衆舎

ザ・スズナリ(東京都)

2020/06/11 (木) ~ 2020/06/18 (木)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/06/13 (土) 18:00

『新作・おもてなし』の追加公演を劇場で拝見した。
劇場での観劇は約3ヶ月ぶり。
観客35人でもアクリル板に遮られていても、舞台と客席の一体感が身にしみる。
手練れ揃いのキャストが生き生きと演じる姿と、いかにもありそうな登場人物たちのやりとりに笑いが絶えない。

客席と舞台上との感情の行き来が感じられる、生の舞台の醍醐味があった。

謁見

謁見

やみ・あがりシアター

スタジオ空洞(東京都)

2020/06/18 (木) ~ 2020/06/21 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/06/20 (土) 14:00

1公演につき観客8名限定とし、架空の国の女王への謁見という劇中の設定がそのまま感染症対策となる仕掛けにまず興味をそそられたが、観ているうちに物語や設定、そして登場人物たちの想いに引き込まれた。

ある国の女王が抽選で選ばれた国民1人と毎日謁見することとなり、職業も経歴もさまざまな相手と女王との会話を描くうちに、国の情勢や女王の人柄、評判、置かれた立場などが見えてくる。
そして描かれる思いがけない結末。
伏線も寓意もたっぷりの物語にひたる約80分、しっかり楽しませていただいた。

カストリ・エレジー

カストリ・エレジー

ゼータクチク&ACTACTION by TEAM HANDY

新宿眼科画廊(東京都)

2020/02/21 (金) ~ 2020/02/25 (火)公演終了

満足度★★★★★

途中でアッと思った。そうか、『二十日鼠と人間』がベースになってるんだ。

そう気づいてもヒリヒリするような緊張感は微塵も緩まない。抗えない運命のようにラストの一点に向かって行く人々の息遣いまで聴こえる。

あの空間であの芝居、贅沢が過ぎる。座席の位置を変えてもう一度観たかった。

かげぜん

かげぜん

オフィス・REN

紀伊國屋ホール(東京都)

2020/01/22 (水) ~ 2020/01/26 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2020/01/23 (木) 19:00

一人暮らしの老婦人みつの家に、孫になりすました詐欺師の神代大吾が住み着く。事業家だった夫を亡くし一人暮らしのみつは目が見えない。

財産目当てのなりすましだったのに、みつの言動に翻弄される大吾。たえというお嫁さん候補まで現れてますます思うようにことは運ばない……。

過酷な時代の中で営まれるささやかな人の暮らし。その中で行き交う人の想いを立体的に描いて、観終わったあとじんわりと温かいものが胸に残った。

ネタバレBOX

私怨を交えて大吾の過去の罪を追う特高の刑事 宮下、大吾の詐欺師仲間、女スリ、みつの隣人、どの人物も時代と各人の境遇に沿って丁寧に描かれ、生き生きとした存在感があった。

孤独に生きてきた大吾の人恋しさを静かに受け入れるみつとたえ。そして、なりすました男の代わりに戦地に赴き、罪を償って愛する人たちとともに生きようとする大吾。

それぞれの思惑もウソも戦争の続く緊迫した時代の空気も越えて、人と人とのつながりが温かく描かれていた。
雉はじめて鳴く

雉はじめて鳴く

劇団俳優座

俳優座劇場(東京都)

2020/01/10 (金) ~ 2020/01/19 (日)公演終了

満足度★★★★

iakuの横山拓也さんの脚本を俳優座の眞鍋卓嗣さんが演出。

チラシの文面や写真からの漠然とした(メロドラマチックな)予想などかすりもしない切実な内容にしっかりと惹きつけられた約2時間。

戯曲・演出・キャストそれぞれの確かさが美しく実を結んだ、見応えのある舞台だった。

老舗劇団らしいしっかりと細やかで誠実な舞台。よいものを見せていただいた、と思う。

ネタバレBOX

高校生。まだ大人とはいえない。けれどもう子どもでもない。さまざまなことを感じ、そして考えながら、理不尽な親から逃げ出す手立てはない。

彼が小学生だったら、迷うことなく抱きしめてなぐさめてやれただろう。

でも三十代の女性教師と男子高校生となると、相談に乗り、相手の心を落ち着かせるためのハグだとしても、いろいろと難しいこともある。

でもたぶん、それは恋ではない。そんな気がした。

そもそも彼女自身、人に言えない相手と関係を持っていたり、そのくせ結婚願望があったりもして、高校生相手に心を動かしてる場合じゃないのだ。

彼の方だって先生が好きと言いながら、それは恋というより頼るべき人を持たない彼がようやく見つけた安心できる場所だったのかもしれない。

父は家を出て居場所がしれない。母はいつも疲れて苛立ち、彼を怒鳴ったり脅したりするヒリヒリするような家庭。もう、無理かもしれない、と彼は呟く。姿を消した彼を皆が探し、その名を呼ぶ。「健、ケーン!」と繰り返される名前が、雉の鳴く声のように聞こえる。

途中で何度か挿入される中年の男と年老いた女性の会話は、少年の父とその母親だと思って観ていると実はそうではなくて。 たぶんこれは意図されたミスリードだろう。

クライマックスで彼女が示した強い意志は観客にとって小気味よかったけれど、それ以上に彼がその先も生きていく上で大事なことだったに違いない。

キャストはそれぞれにリアリティがあって、いろんな場面で身につまされる。なかでも健の母親を演じた清水直子さんの演技は凄まじかった。
笑う、夜の果てにて

笑う、夜の果てにて

オフィス上の空

Corus 赤坂(東京都)

2019/12/14 (土) ~ 2020/06/01 (月)公演終了

満足度★★★

不思議な力を持ち、テレビ等でも活躍していた「エスパーカズキ」のファンが集まる恒例の行事に、見慣れない女が現れた。

手の触れられる距離で演じられる物語は、その女性の動機、グループ内での疑惑、エスパーカズキの現状など、さまざまな謎を含みながら進んでいく。

劇中の時間が朝を迎え、物語は終わりを迎える。土曜の朝9:30に始まって、まだ10:30くらいの時間に「いってらっしゃい」の言葉に送られて会場を出る。いつもの少し違う週末の始まり。

いい時間だった。いずれまた観に来たいと思いつつ、土曜日の街へ歩き出した。

ネタバレBOX

臨場感と同時に、誰かの熱心なファンであることの滑稽さや切実さ、そして相手が生身の人間であることの難しさなどが他人事でなく身に染みたりもする。

日替わりゲストの役柄を見て(なるほど)と思う。ゲストが変わると観終わったときの印象も変わるだろう。
口火きる、パトス

口火きる、パトス

コロブチカ

live space anima【2020年4月をもって閉店】(東京都)

2019/07/13 (土) ~ 2019/07/18 (木)公演終了

満足度★★★★★

くっそ面白かった!

いやこれはつまり最上級の褒め言葉であって、なんていうかこういう問答無用に面白いモノを観たときに、美辞麗句より先にとりあえず(あーくっそ面白いじゃんか!!)と思うわけなのだ。

約45分間、自意識とプライドをこじらせた男子高校生の初恋の顛末を1人芝居で綴っていくんだけど、もうね、その間パトスだだ漏れ。

あーこれ汗びっしょりになるのも当然だわ、という熱演で、もちろんそれだけで面白くなるわけじゃなく、キャラクターも展開も演出も、なるほど1人芝居でこう見せるかと舌を巻く巧さだし、コロさんはもういまさらだけど、いい役者さんだなぁ、と改めて思った。

素直になれない柳の無駄なプライドや自負も、そのくせ古典的な一目惚れでジタバタする様子も、いや、これから全国47都道府県で上演するであろう作品だからあまりネタバレしないでおくけれども、とりあえず気持ちのいい演劇だった。

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