舞台「スマホを落としただけなのに」
ニッポン放送/ニッポン放送プロジェクト
日本青年館ホール(東京都)
2021/06/09 (水) ~ 2021/06/14 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
昨年観る予定だったが観られなくなり、今回ようやく拝見できた。
物語の面白さやキャラクターの魅力、映像を生かすメリハリの効いた演出、そしてこの真っ白な美術。扉座勢の御活躍も楽しくて充実の2時間10分でした。
滅多滅多
柿喰う客
本多劇場(東京都)
2021/05/21 (金) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
B列なんだけど、劇場に行ってみたらA列は使用してないので実質最前列、しかもほぼセンター。この劇場でこんな席はめったにないのでワクワク……というか、こんな近くで柿を浴びるのはちょっと怖いかも、などと思ったり。
ループしグルーブする言葉・言葉・言葉。
一見バラバラに散りばめられた場面たちからしだいに浮かび上がる切なくも残酷な物語。赤と緑の照明を浴びた田中穂先さんの笑顔にゾクッとする。
帰りの電車の中でパンフレットを開き、キャラクターの役名を確認しつつ何度も舞台を反芻した。
容疑者Xの献身
ナッポス・ユナイテッド
THEATRE1010(東京都)
2021/05/28 (金) ~ 2021/05/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/05/29 (土) 13:00
多田さんの湯川、筒井さんの石神、渡邊さんの花岡、それぞれ原作のイメージにあって魅力的だった。語りを使って原作の文体を生かす脚本が物語に説得力を与え、テンポよくまとめられた105分の中に登場人物たちの抱えてきた想いが細やかに描かれていた。
原作を読んでストーリーは知っていて、タイトルが最大のネタバレだろうとずっと思っていたけれど、まさにその献身が胸に響いてラスト近くで涙が滲んできた。上記以外のキャストもハマり役で、ことに柿喰う客の永島さんが演じた草薙刑事が好印象だった。
Smells Like Milky Skin【5月8日~5月11日公演中止】
MCR
ザ・スズナリ(東京都)
2021/05/08 (土) ~ 2021/05/16 (日)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★★
予約した日が緊急事態宣言発令で公演中止となってしまい、上演された期間に観に行くのが難しかっため、配信で観た。
観終わって思った。私はやっぱりMCRが好きなのかもしれない……と。
相変わらず切実で胸が痛むけれど、予想より少し優しくて、登場人物たちがちょっとだけ大人で、それも含めて自分の気持ちにしっくり来た。
もちろん劇場で拝見したかったけど、せめて配信で観られてよかった。
ミュージカル『スリル・ミー』【4月25日(日)~5月2日(日)公演中止、大阪公演中止】
ホリプロ
高崎芸術劇場スタジオシアター(群馬県)
2021/05/04 (火) ~ 2021/05/05 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2021/05/04 (火) 16:30
自分にとって初のスリル・ミー。
東京公演は予約した回が中止となり、この日も急遽のキャストチェンジになる、という波瀾万丈な(?)観劇だったが、期待に違わぬ圧巻の舞台に満足。
トリプルコールで客席がひとつの生き物みたいに一斉に立ち上がり、続いて4度目のコールが起きた。
53歳の「私」が語る34年前の犯罪の顛末は、ヒリヒリするような緊張感で2人の若者のあやうい関係性を描き出す。ピアノの響きと2人の歌声が会場を満たし、物語の進行を固唾を飲んで見守る客席の集中が心地よい、充実の約100分でした。
ドップラー
KOKOO
シアター風姿花伝(東京都)
2021/04/20 (火) ~ 2021/04/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
重なり合う物語の断片を繋いでいくのは、躍動する人々の息遣いだ。
浦島太郎。うさぎと亀。月の上の足跡。お弁当箱。
積み上げられていく断片がしだいにひとつの出来事を形作っていく。
クセになりそうな疾走感とそこからにじみ出る切なさ。
不思議で楽しい時間だった。
てくてくと【4月28日~4月30日公演中止】
やしゃご
こまばアゴラ劇場(東京都)
2021/04/17 (土) ~ 2021/04/30 (金)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
劇中に登場する障害者と呼ばれる人もそうでない人もそれぞれの「困ったこと」や歪みなどを抱えていて、能力も特性もさまざまだ。
(じゃあ普通って何?)という問いは当然浮かぶけれど、そういう一般論に落とし込むよりまずは劇中の彼ら・彼女らに気持ちが寄り添う。
細やかな感情表現、会話のリアルさ、ゆるやかなユーモアと切実さのバランスなど、脚本を存分に活かす俳優陣の演技の誠実さも印象に残る。
今回も何ていうか、一つひとつの場面が明日も明後日もここで繰り返されるのだということが信じられないくらいリアルで切実な時間だった。
斬られの仙太【4月25日公演中止】
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2021/04/06 (火) ~ 2021/04/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
4時間20分という長丁場にじっくり浸る。
『楽屋』で言及されていたのでタイトルだけは知っていたけど、そうか三好十郎氏の戯曲なのか、と改めて。上村聡史氏の演出の切れ味が冴え、オーディションで選ばれたキャスト陣も手練れ揃いで見応えがあった。
1934年初演の戯曲が今もなお時代の矛盾を抉り出す。観客の集中力も途切れず、充実した時間と空間。カーテンコールはトリプルとなった。緊急事態宣言により急遽翌日は休演となりこの日が実質的に千秋楽となった。
デスノート THE MUSICAL【大阪・福岡公演中止 (02/29 (土) ~03/01 (日)・03/06 (金) ~03/08 (日))】
ホリプロ
東京建物 Brillia HALL(東京都)
2020/01/20 (月) ~ 2020/02/09 (日)公演終了
満足度★★★★
約束事の多い物語を、わかりやすくテンポよく観せる。その約束事(デスノートのルールや効果)を楽しむのがこの作品のポイントなのかもしれない、などと思ったりもした。
物語の結末は舞台オリジナルらしい。原作だとまだ話が続くようだけれど、舞台版として収まりのいい結末だった。
ラストシーンが(心証は真逆だけど絵的に)わらび座『ブッダ』とよく似ていて、そうか、演出は栗山民也さんだった、と改めて思ったりもした。
豪華なキャスト、生のオーケストラ、いろんな意味で華やかな舞台。音楽と物語のバランスもよく、充実感のある時間となった。
カガミ想馬プロデュース「熱海殺人事件」
カガミ想馬プロデュース
キーノートシアター(東京都)
2020/01/29 (水) ~ 2020/02/09 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/02/08 (土) 12:00
『熱海殺人事件』は何度か観ているけれど、母と子の葛藤やある社会的な事件などを題材に加えた『サイコパス』は初見。
新着の刑事と木村伝兵衛のやり取り。大山の登場。白い花束での殴打。踏みしだかれる菊の花の匂い。そういう定番の場面はそのままに、母殺しと原発、そして神戸の連続児童殺傷事件等をからめて話は進む。
枠組の決まった世界観と思っていたが、こんなに違った顔を見せることに驚く。ことに終盤では、大きな社会的問題を浮き上がらせる重い展開となった。
観ているうちに、物語の行方と強い意志を感じさせるキャスト陣の熱演に引き込まれた。
今回のカガミ想馬プロデュース公演は『熱海殺人事件』4バージョン同時上演という離れワザだった。『サイコパス』以外のバージョンも観たかったな、と観終わって思った。
クリシェ
ティーファクトリー
あうるすぽっと(東京都)
2020/01/29 (水) ~ 2020/02/02 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2020/02/01 (土) 19:00
映画や演劇などで描かれてきたさまざまな物語へのオマージュが込められたエピソードやアイコン。女優や劇作家たちの暮らしはあきらかに作り物めいて、その胡散臭さと現実の歪さが怖いと同時に少し笑いを誘ったりもする。
それぞれのわかりやすい役割の裏に真実の顔があったり、それもまた見せかけに過ぎなかったり。
そして何より、姉妹を演じる川村 毅氏と加納幸和氏の存在感が独特の雰囲気を醸し出していた。
ことに加納さんが登場された時の美しさには思わずハッと息を飲んだ。
自分の日常の生活とは別次元の、奇妙な味の奇妙な物語。ゾワゾワするような居心地の悪さな奇妙な親密感を楽しんだ。
「キズツクキカイ」「お湯で流して」
たすいち
シアターKASSAI【閉館】(東京都)
2020/07/11 (土) ~ 2020/07/19 (日)公演終了
満足度★★★
『キズツクキカイ』
妖怪たちと共に暮らす陰陽師一家の次男坊を主人公に、人の心の「痛み」を描いていく。
個性的な登場人物がたくさん登場し、笑いも多めに散りばめられ、怒涛の展開から目が離せない楽しい舞台なのだけれど、観ていていろいろ染みてきたりもする。
きっと、キズミがいなくても私たちは傷付いてる。傷付いていながら、それに気づかないフリをしている。だからたぶんキズミがいることで救われる何かもあるのだろう。
そういう意味で、妖怪たちと共存する陰陽師である明神家の立ち位置と退魔師の正義とのすれ違いのどちらにもそれぞれの理があるのかもしれないと感じられる。
主人公の描く物語。それぞれの思い描く「こうありたい自分」。相手に対する、あるいは自分に対するたくさんの思い込み。立場ごとに抱える「正義」。そういう抽象的なアレコレが眼に見える形で舞台上で繰り広げられる。
陽気な妖怪たちと暮らす彼らのように、さまざまな傷や痛みとともに私たちは暮らしているんだろう。観終わってそんなことを思った。
オペラ『イワンのばか』
オペラシアターこんにゃく座
あうるすぽっと(東京都)
2020/02/06 (木) ~ 2020/02/11 (火)公演終了
満足度★★★★
トルストイの『イワンのばか』を基にしつつ、こんにゃく座らしい仕掛けのある新作オペラ。
軍人のセミョーン、たいこ腹のタラス、イワン、口のきけない妹マラーニャの4人の兄妹、そして大悪魔と三匹の小悪魔の話だ。
このオペラでは、トルストイが農民学校で自作の『イワンのばか』を生徒らとともに読み進めていく形で物語が進む。生徒たちが入れ替わり立ち替わり物語の登場人物を演じたりもする、入子構造の物語がいかにもこんにゃく座らしい。
後半は、同じトルストイの『イワン・イリイチの死』の主人公が登場し、トルストイを取り締まろうとしたりもする。
大悪魔を演じる大石さんがイワン・イリイチを演じる。神の名を聞いて消える悪魔が残した穴と、病床で死を迎える人間の葛藤が重なる。
トルストイと、2人のイワン。ここにしかない物語。ここにしかないオペラ。
生演奏と人々の歌声の余韻に包まれて会場をあとにした。
末摘花
オペラシアターこんにゃく座
俳優座劇場(東京都)
2020/09/08 (火) ~ 2020/09/13 (日)公演終了
満足度★★★★
この作品の原作は榊原政常氏の『しんしゃく源氏物語』。もともとは高校演劇のための戯曲だったらしい。
作曲は作曲家でありピアニストでもある寺嶋陸也さん。演出はこんにゃく座の大石哲史さん。
脚色や作詞はクレジットなし。その理由は見始めてすぐ気がつく。たぶんこれ、元の戯曲の台詞をそのままメロディに乗せてるんだ。
作曲の寺嶋さんがご自身でピアノの生演奏をなさっていて、観客にとってゼイタクなことである。
舞い散る雪や枯れ葉や花びらが季節の移ろいを示す中、女たちは夢と諦めの間でその人の訪れを待つ。
信じても諦めても、結局は朽ちていく屋敷の中でただ待ち続けることができるだけだ。
由緒正しい血筋の姫はおっとりとした人柄で、個性的な長い鼻の先はちょっと赤い。世慣れていないため人付き合いも不器用で、ただひたすらにあの方のことを信じて待ち続ける。しかしその方は遠方に追いやられ、姫の屋敷は寂れるばかり。わずかな使用人もしだいに逃げだしていく。
女性ばかり7名のキャストはそれぞれ個性的で、きれいごとばかりではない女たちの本音をにじませていく。
歌い上げられるセリフは時に辛辣であったり、俗っぽかったりもして、思わずニヤッとしてしまう。
ハッピーエンドに見える結末も、結局は待つことしかできなかった姫のセリフにほろ苦さを含ませて、面白くてやがて哀しき……という物語。
休憩を挟んで約2時間20分。休憩後の屋敷の寂れた様子と藤の花が印象的だった。
キャストはそれぞれはまり役で、物語に生き生きと生命を吹き込んだ。ダブルキャストなのに都合で一方しか拝見できなかったのが残念に思えた。
もうラブソングは歌えない
TBS
東京国際フォーラム ホールC(東京都)
2020/08/08 (土) ~ 2020/08/10 (月)公演終了
満足度★★★
『カラマツのように君を愛す』
不器用で誠実な2人のナイーヴな魂の遍歴を、天窓越しに月が見守る。
女の独白と男の日記。語られる声は柔らかく、物語は静かに進んでいく。
絵本に登場する少年。ツキノウラへ行って一緒に暮らす2人。小さなベーカリーカフェ。
雪深い土地で、小さな店を訪れる人々との出会い。
背後に映し出される窓と月のシルエット。丁寧に丁寧に紡がれていく言葉。
朗読劇といいながら振付もついて、重ねていく時間や2人の距離感なども感じさせる作品となっていた。
『大山夫妻のこと』
テンポの良い会話が続く、ちょっと辛辣でほろ苦い、でもどこか可愛いオトナのコメディ。
脚本家と売れない女優の夫婦。妻がある戯曲賞を受賞して、2人の関係が少し変わっていく。
気づいたきっかけは夫からのある誘い。素気無く断り続けるうちに、妻は自らの心に気がついていく。
一緒に暮らしていても、互いのことを大切にするって本当難しいよね。
キャストお2人の雰囲気がいい感じにゆるくて、情けなさも身勝手さも少しだけチャーミングに感じられた。
鶴かもしれない2020
EPOCH MAN〈エポックマン〉
駅前劇場(東京都)
2020/01/09 (木) ~ 2020/01/13 (月)公演終了
満足度★★★★
おとぎ話をベースにした恋物語を三台のラジカセと共に演じるひとり芝居で、再々演とのことだけれど、自分としては初めて拝見した。
二面舞台とアシンメトリーな髪型で男女を演じ分ける瞬発力。張り詰めた緊張感と楽しさ。恋することの煌めきと切なさ。喜びも哀しみも溢れ出すような生き生きとした表情。
作・演出・美術・出演とひとりで何役もこなすそのエネルギーの多才さとそれぞれのクォリティ、そして何よりそのチャーミングさに魅了された。
ミュージカル「空! 空!! 空!!!」【4月11日〜6月5日 公演中止】
わらび座
わらび劇場(秋田県)
2020/06/06 (土) ~ 2021/01/03 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/07/25 (土) 10:30
女性飛行士の草分けとなった及位ヤエの若き日の情熱と奮闘を描いた約110分のミュージカル。主人公を演じる川井田さんの熱量が、さまざまな困難に体当たりでぶつかっていくヤエの姿に重なる。架空の人物と思われる航平の個性的な人物像が物語にメリハリを加えた。脇を固めるベテランの説得力、多くの役を演じ分ける若手の存在感、希望を感じさせる美しい美術や工夫を凝らされた小道具、場面を成立させる照明や音響、困難な状況下で公演を支える劇場スタッフ。それぞれのご尽力で創り上げられた夢を追う人の物語が胸に沁みた。
松浦武四郎~カイ・大地との約束
わらび座
東ソーアリーナ&遅筆堂文庫(山形県)
2020/08/22 (土) ~ 2020/08/22 (土)公演終了
満足度★★★★★
蝦夷地を旅して多くの記録を残し「北海道」の名付け親となった幕末の探検家 松浦武四郎を描いたミュージカル。少人数のキャストで武四郎の見たアイヌと和人の関係や課題を多くのエピソードで綴っていく。自らの無力さを感じながらも書き続けた武四郎の情熱と誠意が胸を打った。
10knocks~その扉を叩き続けろ~
劇団扉座
紀伊國屋ホール(東京都)
2020/12/05 (土) ~ 2020/12/13 (日)公演終了
満足度★★★★★
10作品日替りリーディングのうち4作品を拝見。毎日が初日で千秋楽。公演が始まってから、ようやくこれがどんなに大変なことかわかったような気がした。単に台本を持ち替えれば済むという内容じゃない。朗読という枠組に留まらない多彩な演出で、劇団員やゆかりのゲストが入れ替り立ち替り濃密な芝居を繰り広げる。ことに脚本の良さが際立ち、物語の面白さを存分に味わえた。
リボンの騎士2020~県立鷲尾高校演劇部奮闘記~ ベテラン版 with コロナ トライアル
劇団扉座
すみだパークシアター倉(東京都)
2020/10/10 (土) ~ 2020/10/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2020/10/11 (日) 14:00
泣いた。もう何度も観て展開も台詞もほとんど覚えているのに。今回の上演は、青春への応援歌というより何かを創ろうとする人すべてへのエールのように感じられた。
ダブルキャストによる演出の変化なども面白かったが、何よりけだまや中島をはじめとするキャスト陣の演技が生き生きと魅力的で、物語の持つチカラを再確認させてくれた。楽しかった。