笑の大学
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2023/02/08 (水) ~ 2023/03/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/03/04 (土) 13:30
いや本当に面白かった。たくさんの笑いをテンポよく見せる2人芝居の呼吸が気持ちいい。たくさん笑ったあとで、温和そうな椿の真意の吐露と翌日の向坂の言葉の切実さが胸に響いた。
観終わって、扉座の『最後の伝令』を思い出した。戦時下でのレビュー作家の物語というだけでなく、その作家のしなやかな強さが似ていたのかもしれない。ストーリーの切り口もキャラクターも異なっているけれど、主人公に託した書き手の矜持と意志はどちらも作品からもしっかり伝わった。
帰りの電車の中で三谷さんのインタビューを読み、『笑の大学』の主人公 椿一に菊谷栄さんが投影されていたことを知る。なるほど扉座の作品を連想するはずである。こちらはそのまま菊谷栄氏が主人公なのだ。
戦争に奪われる大切なもの。困難なときにも人々が物語や音楽や笑いを求めること。三谷さんも横内さんも、菊谷栄氏の生涯にご自身の仕事に欠かせない何かを見るのだろうか。
リボンの騎士2023 -県立鷲尾高校演劇部奮闘記-
劇団扉座
すみだパークシアター倉(東京都)
2023/03/02 (木) ~ 2023/03/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/03/04 (土) 18:00
弱小高校演劇部の奮闘を描くこの作品は、現在扉座研究生の卒業演目にもなっていて、何度も拝見しているし、そのたびに熱い思いが伝わってグッときてしまう。
今回観ていて、この作品と扉座『ホテルカリフォルニア』とは表裏一体なのだと今さらながら思った。一方は私戯曲として、もう一方はファンタジーを絡めつつ普遍性を持たせているけれど、どちらの作品も無関心や嘘を嫌う主人公たちの不器用な若さが眩しい。
15 Minutes Made in本多劇場
Mrs.fictions
本多劇場(東京都)
2023/02/22 (水) ~ 2023/02/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2023/02/23 (木) 13:00
6つの団体による15分の短編6つ。
どれも身体に沁みわたる芝居たちでした。15mm初めてという観劇仲間が「すごく面白かった!豪華過ぎ!」とおっしゃっていてうれしかった。あと6団体の上演順がマジ絶妙でした。
ロロ『西瓜橋商店街綱引大会』面白かった。日常的な風景と、なぜこんなことを思いつくの⁉️という不思議な要素とがしっくり混じり合って印象的だった。実はロロ初見💦
キャラメルボックスの『魔術』、戯曲化せずに小説そのままで緊張感のある舞台にした……と思ったけど原作を青空文庫で読んでみたら舞台と違ってる部分がけっこうあって、特に後半の展開は舞台の方が好き……というか、なるほどキャラメルらしい、と思った。文豪をもじった役名にニヤッとしたりも。
ZURULABO『ワルツ』、奇妙だけどこれはたぶんロマンチックな物語なんだと思った。そういうのもハッピーエンドと呼ぶのだろうか。木原さんの背筋が伸びた姿の良さが印象的。
休憩を挟んで、
ブリーズアーツ『真夜中の屋上で』、泣いた。亡き人を巡る若者たちの思いを若手声優さんたちの朗読劇で描いた作品。演出の緒方さんが声でも参加されてたんだけど、それがもう本当に素敵でグッときた。さすがというしかない。
オイスターズ『またコント』とてもよかった。奇妙な導入に、何、何事?と思って観ていたけど、しだいに引き込まれてじんわり胸に響いた。愛知を中心に活動する団体だそうだけど、東京公演をチェックしてみたい。
Mrs.fictions『上手も下手もないけれど』、名作。
初演・再演・再々演と観てるはずなのに、改めて観るとまた胸に響く。ギュッと濃縮された我々の人生がユーモアや愛情や後悔とともに本多劇場の舞台上にあった。
ロビーのポスターやステージ美術を見て、主催の挨拶を聞いてる時点でもう感無量だったのは、15mm自体に思い入れがあるからだろう。そういう観客も多い気がする。マチネとソワレでお目にかかれた方も残念ながらお会いできなかった方もたくさん劇場にいらっしゃったらしい。お芝居が好きな我々のお祭り。
オペラ『アイツは賢い女のキツネ』
オペラシアターこんにゃく座
世田谷パブリックシアター(東京都)
2023/02/17 (金) ~ 2023/02/19 (日)公演終了
実演鑑賞
オケピ目の前の贅沢なお席で観劇。
ヤナーチェク作曲『賢い女狐の物語』の日本語訳による上演。森に住む動物たち(やその他もろもろ)による物語は、小編成の生演奏や難易度高い楽曲といくつものエピソードを連ねて、入り組んだ恋愛模様やシニカルな死生観を描いていく。
カラフルでポップな動物たちの造形が、役者さんたちの歌や動きの素晴らしさと相まって、観ていて楽しい舞台となっていた。
桜姫東文章
木ノ下歌舞伎
あうるすぽっと(東京都)
2023/02/02 (木) ~ 2023/02/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/02/11 (土) 18:00
開演前、当パンを見ると人物相関図が載っていてありがたいけど、込み入ってる上にキャストが皆さん複数の役で登場するらしい。ちゃんとついていけるか、やや不安になる。
ステージ上に廃墟となった劇場があり、そこで演じられる桜姫の物語。棒読み調の台詞や寝転がる出演者に最初は戸惑ったけど、なんていうかその外から見ている感じと激動の展開との温度差が面白く感じられて。結局は怒涛の物語性と俳優陣の魅力が印象に残る舞台となった。
上演中、キャストはずっと出ずっぱりであった。(舞台上の)廃劇場のステージを降りるとその周囲に座ったり寝転んだりしつつ他の人の芝居を観て、水を飲んだり風船ガムを膨らませたりしながら大向こうをかけたりする。その大向こうがタイミングよく、ときに面白くて笑いを誘ったりもした。
禁断の恋から始まった桜姫の物語は、巡る因果と濃厚な人間関係を平坦な現代語訳で綴りながらさまざまな仕掛けによって古典のあり方を揺るがしたりなぞったりしつつ進んでいく。平坦さの中に浮かび上がる様式美と運命に翻弄された人々の悲哀が観終わってからも胸に残った。
ミュージカル「チェーザレ 破壊の創造者」
明治座
明治座(東京都)
2023/01/07 (土) ~ 2023/02/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/02/04 (土) 12:00
とても贅沢な舞台だった。生のオーケストラ、魅力的な登場人物、迫力ある歌声、豪華な美術や衣装などを楽しんだ。勢い余って(?)原作マンガを一気読み。こちらも読み応えのある作品で舞台との比較も面白い。15世紀末のイタリアにどっぷり浸る週末となった。
ジョン マイ ラブ2023 -ジョン万次郎と鉄の7年-
坊っちゃん劇場
サンシャイン劇場(東京都)
2023/01/26 (木) ~ 2023/01/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2023/01/28 (土) 11:00
坊っちゃん劇場で観た後も何度か配信で観てるけど、やはり劇場で観るのが似合う舞台。5期キャストはこの日が初見だったのでとても新鮮でした。加藤さんの万次郎はやんちゃな印象と頼もしさのバランスが素敵。ホームである坊っちゃん劇場を離れても頼もしいファンがいるらしく拍手や手拍子はもちろんABCや漂流ダンスを完璧に踊る方もいて心強かった。
(いつもながら)五十嵐さん佐藤さんの歌声が圧巻。梶さんの泣きの芝居に毎度もらい泣く。鉄が東一郎を「ほーら、白菜だよぉ!」とあやしていて思わずニッコリ。
ラスト、暗くなっていく舞台に浮かび上がる2人の姿が美しかった。
コチラハコブネ、オウトウセヨ
ポップンマッシュルームチキン野郎
王子小劇場(東京都)
2022/12/22 (木) ~ 2022/12/28 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/12/26 (月) 19:00
お久しぶりなのにいつものPMC野郎で、劇中劇的な短編の切れ味(バカバカしさも切なさも怖さも)に改めて感嘆したりもした。
メインのストーリーと各短編と、作品の上演に向けられた人々の思い。ラストシーンで彼が見せたやわらかな笑顔。劇中の物語と重なる追悼と祈り。静かに前に進もうとする意志が胸にしみた。
オイコラケンジ~何しれっと帰ってきてんだよ~(仮)
オイウチケンジ製作委員会
中板橋 新生館スタジオ(東京都)
2022/12/24 (土) ~ 2022/12/24 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/12/24 (土) 14:00
8年前(え、そんなになる?)の『オイウチケンジ』で俳優を引退し就職する……はずだった村松ママンスキーさんの、あの日から今に至る顛末を虚実織り交ぜて(なのか?)描く短編連作公演。
豪華作家陣と女優陣を迎えて綴ったいくつもの出会いの物語にたくさん笑ってちょっとほっこり。楽しかったです。
【兵庫公演中止】パンとバラで退屈を飾って、わたしが明日も生きることを耐える。
趣向
シアター風姿花伝(東京都)
2022/12/21 (水) ~ 2022/12/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/12/24 (土) 11:00
初演の際の感想を読んで、観たいと思っていた作品。それぞれの抱える痛みや不安定さを丁寧に描き、観る者の胸に深く届ける音楽劇。
観に行った回では、キャストが姿を消しても拍手が鳴り止まず、予期していなかったのか、長い間拍手が続いてからのダブルコールとなった。
噛み締めるように客席を立ち、台本を買って劇場をあとにした。観ることができてよかった。来年も生きていきます。
沈丁花―ジンチョウゲー
CCCreation
KAAT神奈川芸術劇場・大スタジオ(神奈川県)
2022/12/16 (金) ~ 2022/12/20 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/12/18 (日) 18:00
堀越涼さん作・演出、吉田能さん音楽監督というあやめ十八番コンビが描く、雨と山間の小さな温泉街にまつわる伝奇的な物語。仄暗いステージで行き交う現在と過去の因縁を生音・生演奏が鮮やかに彩った。
最後の伝令 菊谷栄物語-1937津軽~浅草-
劇団扉座
紀伊國屋ホール(東京都)
2022/12/13 (火) ~ 2022/12/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/12/17 (土) 18:00
浅草のステージと青森の座敷、どちらの場面もときに明るくときに切ない。ことに華やかな幻のレビュー場面に目頭が熱くなった。ステージに立つ人々の思いや心意気に加えて、それを観る我々のまなざしも包み込む物語の奥行きが見事。初演以上に見応えがあった。
日本人のへそ
虚構の劇団
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2022/12/01 (木) ~ 2022/12/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/12/03 (土) 18:00
井上ひさしさんの戯曲デビュー作とのことで、氏らしい反骨精神やわい雑なパワーがさまざまな仕掛けと呼応して観る者を惹きつける。ヘレン天津役の小野川晶さんをはじめとするキャスト陣のエネルギーが物語の勢いとよく似合って、見応えのある2時間半強となった。
薔薇とサムライ2 海賊女王の帰還
劇団☆新感線
新橋演舞場(東京都)
2022/11/01 (火) ~ 2022/12/06 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/12/03 (土) 12:00
「面白い」や「カッコいい」をこれでもかと盛り込んだ渾身のエンターテイメントを堪能した。
笑って泣いてハラハラドキドキワクワクして、公演コラボのお弁当とかおまんじゅうとかも含め全力で楽しんできました。もうね、始まって25分でコルドニアの愛国者になってました。
新浄瑠璃 百鬼丸~手塚治虫『どろろ』より~
みきくらのかい
ひの煉瓦ホール(日野市民会館)(東京都)
2022/04/09 (土) ~ 2022/04/09 (土)公演終了
映像鑑賞
満足度★★★★★
ストーリーや台詞など脚本の魅力を十二分に生かす朗読劇。老若男女、メインキャストからモブまで2人だけで演じているのに、聴いていてまったくストレスを感じない。それどころか登場人物それぞれの思いがヒシヒシと伝わって切なさや愛しさが胸を満たす。
建築家とアッシリア皇帝
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2022/11/21 (月) ~ 2022/12/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/11/29 (火) 19:00
すごかった。解釈とかラベリングとかそういうのはもう後回しにして、ただあの膨大なセリフとくるくる変わる役割とを猛スピードで走り抜けるお二人に釘付けになった。どこか突き抜けた明るさと乾いた孤独がひしひしと胸にしみる。
ベンガルの虎
流山児★事務所
ザ・スズナリ(東京都)
2022/11/23 (水) ~ 2022/11/28 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/11/27 (日) 19:00
アングラって結局自分を探す旅なのかもなぁ、などと主語のでかいことを思った。時も人も行きつ戻りつ、あるいは繰り返したりもしながら、観ているうちに感情とエネルギーの高まりが劇場を満たしていく。同時にある種のノスタルジーが甘酸っぱくも感じられた。
獅子の見た夢 戦禍に生きた演劇人たち
劇団東演
俳優座劇場(東京都)
2022/11/20 (日) ~ 2022/11/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/11/26 (土) 18:30
初演以上に素晴らしかった。戦時下で生きた演劇人たちの情熱と苦悩。初演を観て、いや歴史上の事実としてその後に起こることを知りつつ彼らの決断を客席で見守る切なさ。ラストで『獅子』を演じる場面の迫力と説得力に多くの観客が涙していた。拝見できてよかった。
戰御史 -Ikusaonshi-
壱劇屋
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2022/11/23 (水) ~ 2022/11/29 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2022/11/23 (水) 19:00
台詞のない芝居だけれど物語を伝える仕掛けがいろいろあってなるほど、と思う。
殺陣は大迫力で見応えあり、超カッコよかった。
離レ姫
劇団幻ノ國
劇場HOPE(東京都)
2022/11/17 (木) ~ 2022/11/20 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2022/11/19 (土) 18:00
美術館での深夜の出来事から物語は思わぬ方向へ動き出す。序盤はテンションになかなか乗れずにいたけれど、繰り返される台詞や移り変わりつながっていく登場人物たちにしだいに引き込まれ、後半の展開に魅了された。予想していなかった重い題材だけれど幕切れに救われる。
観ていて疾走感と題材から『パンドラの鐘』を連想した。