帰還
燐光群
ザ・スズナリ(東京都)
2013/05/31 (金) ~ 2013/06/09 (日)公演終了
満足度★★★
題材は良いが…
川辺川ダム,八ツ場ダム等の題材を、坂手風に料理して、燐光群らしい作品に仕立て上げている。もともとは大滝秀治に当てて書いた作品だそうだが、老境の画家である主人公の過去と現在が混在する中で、社会的な話題を個人の感情を元に表現する手法は坂手らしい。ただ、作品の性質もあるのか、どうしても説明的なセリフが多くなってしまうあたりは勿体ない気がする。
キャンベラに哭く
桃尻犬
王子小劇場(東京都)
2013/06/05 (水) ~ 2013/06/09 (日)公演終了
満足度★★★
何だか切ない
普通に笑わせる芝居かと思っていると、笑いが不条理な方向に向かい、不条理な切なさ、不条理な日常、普通の日常、等、いろいろな要素が入り交じって最後は少し切なく終わる。惜しむらくは、やや冗長かな、と。個別のエピソードを整理したり、収束をスッキリさせたりして、100分の芝居だったら、とても良い感じになるのだろうという気がしてしまった。メインの長井短は19歳らしいけれど、ヴィジュアルも含めた存在感は強い。
お客様の中にツリメの方はいらっしゃいますか?
ツリメラ
VUENOS TOKYO(東京都)
2013/06/03 (月) ~ 2013/06/03 (月)公演終了
満足度★★★
とりあえず楽しんだ
3人の女優が、独特の設定の下でユニットを作っての、CD発売イベント。それぞれが女優として出ている舞台を何度も観ているので、舞台上のキャラが「作られた」ものであることは分かってしまうから、そこを楽しめるかどうかがポイントかな、と思う。こういう「遊び」(余裕という意味)があってもいいと個人的には思うし、楽曲やパフォーマンスにも力を入れているのも分かって、ライブとして楽しいものだった。
今後の展開がどうなるか、注目したい。
ひょうたん池のたまりBAR
浅草リトルシアター
浅草リトルシアター(東京都)
2013/06/01 (土) ~ 2013/06/07 (金)公演終了
満足度★★★★
ストリップと演劇は巧みに融合
電動夏子安置システムの渡辺美弥子が出るというので観に行った。通常はストリップ小屋に出ている踊り子さんと女優が合体しての舞台で、通常はお笑いや一人・二人芝居用の小さな小屋での公演。浅草にある「あの世」と「この世」の境目にあるBARを舞台に、そこに関わる女たちの物語を、ストリップを交えて展開する。BARのママとしての渡辺と常連客の水野さやかが環境を作り、次々と4人の踊り子の人生が踊りを交えた芝居で展開される。
このユニットの旗揚げを観損ねていたのだが、正直言って踊り子さんの演技は大丈夫なのか、という不安がなくもなかった。しかし、考えてみれば、毎日シッカリ舞台に立っている人達なので、下手な小劇団の若手役者よりも遥かに確実に自分の存在感を主張できている。それらを必要以上に絡めないことで、芝居として何となく各々の女の人生/半生が透けて見えてくるのが巧い。その意味で、脚本の経験は少ないらしい牧瀬茜の力量はなかなかのもの。楽しい舞台だった。
客のほとんどは踊り子さんの本拠地での常連らしく、芝居の小屋とは少し違った雰囲気もまた楽しい。
短編集2013
ピンズ・ログ
劇場MOMO(東京都)
2013/05/22 (水) ~ 2013/06/02 (日)公演終了
満足度★★★★
地味だが丁寧で秀逸
主宰・平林亜季子による短篇を4本。それぞれが独立していて、全体の流れのようなものはない。『ナポリの男』は夫婦とウェイトレス3人でやってるイタリアンレストランの隣の男が夫婦の知り合いに似ているという話。何だかほんわかする。『花嫁の友』は、ある女優の結婚を機に同じ劇団にいた女優陣が集まった夜の物語。明確かと思われた心情の背景に、実は…、的な話題を盛り込むことで、切なさと心安らぐ感じが共存し、4作の中で、最も私にフィットしてた。『鍵』は、退職する男と上司が、送別会の帰りに交わす会話。なるほどね、的な面白さはしっかりある。『スナックこいわ』は小岩のスナックで働く女性陣・常連に、突然入ってきた若い女性を交えた、そういうこともあるかも、的な真当な物語。ネタは途中で分かるけれども、それは作品の味わいを損なっていない、というより、やはりそうか、的に楽しめる。
全体に、物語の激しい起伏はないけれども、丁寧に言葉を積み上げていって、秀逸な舞台を作り上げていると思う。これでしばらくピンズ・ログとしての公演がないとは勿体ない。
獣の柱 まとめ*図書館的人生(下)
イキウメ
シアタートラム(東京都)
2013/05/10 (金) ~ 2013/06/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
これは凄いぞ
イキウメは、一種SF的な仮設フィクションの世界を描くが、今回の設定も極めて興味深い。そして、それに動かされていく人々の描き方が巧妙で、2時間を少し越える芝居の中で、息をも継がせない展開と緊張感が見事である。このところのイキウメ作品では大窪人衛が面白い役割を演じているが、今回もなかなかの存在感である。ゲスト的存在の池田成志の演ずる役割も、彼ならではのものである。とにかくスゴイ舞台だった。
全長50メートルガール
踊れ場
RAFT(東京都)
2013/05/21 (火) ~ 2013/05/26 (日)公演終了
満足度★★★★
確かに会話劇
池亀三太は、ぬいぐるみハンターでは割りとブッ飛び系の芝居をやるのだけれど、この踊れ場では様々な試みをしている。今回は、23歳田舎女子5人が深夜のファミレスでとりとめもない会話を続ける形で物語が繋がれるけど、最初の4人のキャラクターが定まったところに、「あーぽん」ことあやかが登場し、このキャラが周りの4人にとってもブッ飛んでいて、なかなか手に負えない、という展開。3つの大きなフィクション(ありえない設定)を加えて、それらをまとめる作りは楽しい。ファミレスのウェイトレス役の中園も、一見マトモながら実は結構変なキャラで、全体として楽しい舞台だった。
アジア温泉
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2013/05/10 (金) ~ 2013/05/26 (日)公演終了
満足度★★★
予想とは違ったが面白い
『焼肉ドラゴン』『パーマ屋スミレ』に続く、鄭義信の新国立劇場3部作のラストというので、同じ系列の舞台を予想していたのだが、作品は新宿梁山泊に書き下ろした最後の作品なんだそうで、韓国演劇界の重鎮・芸術劇団の孫桭策が演出したことで、前2作とは相当にテイストが異なった作品となっている。歌と踊りを加え、観客も巻き込んでの、一種祝祭り的な舞台は、マダンノリの手法を感じる。物語は基本がロミオとジュリエットなのだけれど、寓話的な要素や希望を感じさせるエンディング等、観ていて安心できる楽しい舞台だった。
て
ハイバイ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2013/05/21 (火) ~ 2013/06/02 (日)公演終了
満足度★★★★
安定した舞台作り
2008年の初演、2009年の再演、2011年のプロデュース公演を経て、劇団として再々演される。作・演出の岩井秀人の代表作と評されるだけの価値がある、安定した舞台だった。ほぼ実話に近い岩井の家族を描いたらしいのだが、同じ時間と空間を共有したはずの家族の間で、記憶や認識が食い違っていくのを、時間軸を何度も前後させながら巧みに描く。役者陣も手慣れたメンバーではあるが、それゆえに新しさよりも安定感が目立ってしまうというのは、贅沢な願いだろうか。しかし、面白く過ごさせてもらった時間だった。
いやむしろわすれて草
こどもの城 青山円形劇場/ネルケプランニング
青山円形劇場(東京都)
2013/05/16 (木) ~ 2013/05/26 (日)公演終了
満足度★★
もっと面白いはずなんだが…
作・演出の前田司郎が、自身の劇団である五反田団で2004年に初演し、再演・再々演を経た作品を、今回はプロデュース公演として上演する。4人姉妹とその周辺を描いた切ない物語だが、中心となる三女に絶好調とも言える満島ひかりを配し、天才子役として注目された福田麻由子が2度目の舞台で四女、4度目の舞台の伊藤歩を次女、初舞台の菊池亜希子を長女、と、4人姉妹は注目の人材で、脇に五反田団周辺を配する座組。私が観た再々演は非常に面白く、時間軸の移動を暗転せずに認識させる巧みな演出など、今回も基本的には変わっていないと思うのだけれども、今一つ乗れなかった。この作品をこのサイズの舞台でやるためには、それなりの工夫が必要なのではないかと思った。
磁界
浮世企画
新宿眼科画廊(東京都)
2013/05/17 (金) ~ 2013/05/22 (水)公演終了
満足度★★★★
地味だが練られた芝居
実際には登場しないある男に関わった人々の物語。さまざまな場面が展開されていくが、それらはある種つながりがないようでいて、その男に関わっていて、それらの中から男の「像」が徐々に見えて来る。時間軸の移動もあるので、観る側にある種の覚悟というかエネルギーというか、そういったものが必要になるが、全体には実に地味に物語は展開されるけれども、内容は相当に面白い。エンディングは、ちょっとホッとさせてくれる感じさえある。
シュナイダー
青年団若手自主企画 マキタ企画
アトリエ春風舎(東京都)
2013/05/15 (水) ~ 2013/05/19 (日)公演終了
満足度★★★★
よりコアに、よりタイトに
作・演出のマキタカズオミが主宰する劇団elePHANTMoonで2006年に上演された作品を、青年団の若手を中心として上演する。私は初演を「メンタルに痛んだ人たちが簡単に他人を傷つける存在になる、というドラマが展開される」と評したのだが、その基本構造は変えないまま、登場人物も減らしつつ、よりコアな部分を取り出してタイトな芝居として作り上げられている。やはり面白かった。にもかかわらず、満足感が少し足りない印象なのは、やはり再演だからなのだろうか。役者陣が頑張っていないとは思わないが、何か足りない感じは残ってしまった。
バブルのヒデキ
あなざーわーくす
ラ・グロット(東京都)
2013/05/17 (金) ~ 2013/05/19 (日)公演終了
満足度★★★★
あー下らない(誉めています)
内容は下らない、ってゆーか、ある種馬鹿馬鹿しいお話なのだけれども、それを本気で取り組んでいることで、とても楽しい空間と時間が生まれている。「お遊び」でやっちゃよくないけど、「遊び」は大切っていうことだと思う。説明にある通り、ある特定の映画を知っていると(ま、ヒット作ではあるが)、相当に楽しい。時々、観客も無理矢理参加させられるのも面白い。狭い空間なのに相当な動きの量なので、観客はちょっとビックリさせられるシーンもあるけど、役者陣はいろいろな意味でトレーニングされているのが感心させられるところだ。タイトルにも深い意味があるって、終わって気づいた。
ぬけ男、恥さらし
MCR
駅前劇場(東京都)
2013/05/15 (水) ~ 2013/05/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
面白いったらありゃしない!
愛と人生に関する哲学的な話題を、かなりの笑いに巻き込みながら展開される物語が、まず良い。ある意味極めて真当な話題を取り上げているのに、笑い続けてしまうのは、それを物語として展開する人々が「変な人」だからかと思う。そういった作り方が基本的に見事だと思うし、そういう役割をしっかり演じる役者陣も力を発揮していると思う。特に、出突っ張りの諌山と、その妻役で、体調の微妙な変化を細かい演技を用いて表現するザンヨウコ、そして、表情で感情の機微を巧みに表現する都留崎夏子を興味深く見せてもらった。その他の人々も一癖を百癖くらいにして見せる熱演ぶり。見られる人は見た方がいい。
完全姉妹
トム・プロジェクト
赤坂RED/THEATER(東京都)
2013/05/11 (土) ~ 2013/05/19 (日)公演終了
満足度★★★
確かに完全に姉妹だなぁ
眞野響子・眞野あずさの2人芝居を、中津留章仁の作・演出で上演する。仲のよい姉妹のさまざまな人生の動きを描く85分。細かいセリフの巧さはともかく、1場・2場の展開は、どこかにありそうではあるが、短い3場を置いたことで、中津留らしい面白さが出ていたように思う。姉妹でなければできない作品、ということではないが、観る側が姉妹であることを知っているのを承知の上で作られた作品であるとは言える。
あかいくらやみ~天狗党幻譚~
阿佐ヶ谷スパイダース
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2013/05/05 (日) ~ 2013/05/26 (日)公演終了
満足度★★★
原作からは一味違うようだ
山田風太郎「魔群の通過」をベースに、水戸天狗党を題材にした芝居、ということは事前の情報で分かっていたが、長塚圭史はそう単純には芝居を作っていない。昭和20年からスタートして、幕末が中心となるものの、時代が大きく前後し錯綜し混乱し幻惑する不思議な作りになっている。最近の長塚作品とは不条理さで通ずるものがあるが、ある意味分かりやすい面もあり、エンターテインメント性もそれなりに見せている。座組が豪華で癖のある役割を各々がしっかり演じているのは見応えがあった。
奥村さんのお茄子
こねじ
大吉カフェ(東京都)
2013/05/09 (木) ~ 2013/05/12 (日)公演終了
満足度★★★★
空間で印象が変わる
東京ねじの時代のカフェ公演を観ている。今回はユニットが変わったものの、佐々木なふみ作・演出で3バージョンの公演。その内、浜野隆之・両角葉のバージョンだけ観た。ほとんど変わっていないようなのだが、空間が洋風のカフェから縁側のある和室に変わったことで印象が大きく変わった。演者が変わったことによる変化はもちろんあるのだけれども、今回観た2人の関係性はマンガの感触に近いようにも思えた。
【全ステージ終了しました!ご来場ありがとうございました!】ハロー!新宿ちゃん。
なかないで、毒きのこちゃん
新宿眼科画廊(東京都)
2013/05/10 (金) ~ 2013/05/15 (水)公演終了
満足度★★★
意外なフィット感
3人の作家による2人芝居の約20分×4本。1本目はなかなか面白い仕掛けがあるのだが、アクシデントで一時はどうなるかと少し心配させた。終わり方はちょっと勿体ない。2~4本目は作家が異なるのだが、偶然、微妙な関係の男女の話になったらしく意外な統一感があり、全体が巧くフィットしていたように思う。好みで言えば、2本目が物語として好きなんだけれど、演じられたものとして観ると、4本目に安定感がある。狭くてライブなスペースなので、怒鳴るシーンでもあまり大声で演じられると、うるさくて興醒めな印象がある。
ビーチバレー
桃と虎
大吉カフェ(東京都)
2013/05/06 (月) ~ 2013/05/06 (月)公演終了
満足度★★★
ゆるゆるなコント集
今回は、「桃と虎とイギーとザッキー」というユニット名で、4人でのコント集。いつもながら、ゆるゆるで脱力しまくりのコントだが、体を張って頑張っているのは、なかなか立派。ただ、全般にオチは今一つ私にはしっくり来なくて残念。畔上嬢はまた痩せたような気がする。
さよなら日本-瞑想のまま眠りたい-
範宙遊泳
STスポット(神奈川県)
2013/05/04 (土) ~ 2013/05/15 (水)公演終了
満足度★★★★
この手法は…
レンタルビデオ屋の店長、そこのバイトですぐに呪いをかける女、店長の妻、ビデオ屋を利用する同棲中の男と女、その女の友人、そして、みみず。不思議な登場人物が、全編プロジェクタで投影される映像・色・言葉と芝居をする、という独特の手法で作られている。前作でも使ったらしいが、それは観てないので、新鮮に感じた。俳優同士が絡む部分は少なく、映像を巧く使って、場面によっては美しく、あるいは、奇妙な味わいを出しているとは思う。とにかく不思議な気分になったのは確か(^_^;)。