明日がある、かな
トム・プロジェクト
紀伊國屋ホール(東京都)
2017/10/24 (火) ~ 2017/10/30 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/25 (水) 19:00
Trashmaters の中津留章仁が、古巣のトム・プロジェクトに書き下ろした作品だが、真当な「社会派」の芝居になっている。「花粉症」という言葉がなかった1963年に「花粉症」を発見した医者がいた、というフィクションを医者を登場させず、息子のアレルギー対策に栃木の田舎に移り住んだ自動車会社に勤める男の家族を中心に描く。中津留らしい社会の見方や課題意識は確実に感じられるが、やや泣く芝居が多いのは中津留らしくない気もする。フィクションではあるが、実話の部分もあるとのことで、興味深い作品だと言える。
見果てぬ月
文月堂
劇場MOMO(東京都)
2017/10/24 (火) ~ 2017/10/29 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/24 (火) 19:00
従来の文月堂と少し違い、脈絡のない、いくつかのシーンから始まり、それらが収束していくという、ややミステリー仕立ては面白い。結局、3/4くらいでそれらの関連は分かるのだけれど、どうエンディングに持っていくかに興味を注いでいたが、答えがあるようなないような、若干の余韻を持たせるあたりは文月堂らしい作りと言えよう。
スーパーストライク
月刊「根本宗子」
ザ・スズナリ(東京都)
2017/10/12 (木) ~ 2017/10/25 (水)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/23 (月) 19:30
一人のミュージカル俳優を目指す男と、三人の女に、友情は成立するの、的な物語。いや、誤解やら距離感やら、いつもの「あるある」がいっぱいのネモシューらしい舞台だった。ある種のジェットコースター展開だが、最後ネモシューが少しハッピーになるのは、役得かなぁ。とにかく面白い舞台だった。
ハイツブリが飛ぶのを
iaku
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/10/19 (木) ~ 2017/10/24 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/22 (日) 14:00
日本中で火山が噴火し、廃墟ならぬ灰墟と化した近未来の日本。記憶傷害の女と、その夫と思われている男、実の夫に、若い「空気読めない」男が絡む会話劇。iakuとしてはちょっと変わった作りだが、その基本に人間に対する信頼があるのは分かる。最近の作品では、「空気読めない」男が物語を動かすというのも、ちょっと面白い。楽しませてもらった。
消滅寸前(あるいは逃げ出すネズミ)
ワンツーワークス
ザ・ポケット(東京都)
2017/10/20 (金) ~ 2017/10/29 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/20 (金) 19:00
限界集落、と言うか、タイトル通り消滅寸前の集落を舞台として、それを回避しようとする人々の奮闘を描く。ただただ暗くなるのではなく、エンターテインメントを意識した造りは安定感が一杯だが、エンディングはやや予定調和的で、予想できてしまうのが惜しい。久々に見た中村まり子が元気なのは嬉しい。
愛だ
X-QUEST
新宿村LIVE(東京都)
2017/10/18 (水) ~ 2017/10/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/19 (木) 19:00
ヴェルディの歌劇「アイーダ」をベースに、X-QUESTらしいダンス’&アクションで楽しい舞台を作ってくれていた。最近は、劇団員が前面に出ず、客演を軸に置く造りだが、それでもエンターテインメントとして素敵な作品を作ってくれる。今回は、ちょっとばかり言葉遊びが少ないかな、とは思ったが。
ベチャロンドン
くによし組
中野スタジオあくとれ(東京都)
2017/10/18 (水) ~ 2017/10/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/10/18 (水) 19:30
シュールで不条理な國吉のストーリーが、怪優・菊池美里を得て、新たな地平に進んだという印象の作品だった。いや、いつものヘタウマ感はいっぱいなんだけど、それでも何か不思議な感触を残してくれる。セリフのキレも素晴らしい。
第25次笑の内閣『名誉男性鈴子』
笑の内閣
こまばアゴラ劇場(東京都)
2017/10/12 (木) ~ 2017/10/16 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/10/12 (木) 19:30
「笑の内閣」は京都の劇団だが、作る芝居は全国区だ。今回も、政治の世界を揶揄しつつ笑い飛ばす勢いは見事だが、途中で起こる事件に対しても結論は読める。しかし、その「結論が読める」ことが問題だという問題提起なのだろうと思う。残念ながら、ちょっと演技がクサイと思える役者がいるのだが、久々に見た石原正一の存在感は見事だった。諷刺を分かりやすく笑いにするという手法は、東京のチャリT企画にも通ずるものがあるが、本劇団の方が直球だろう。
トロイ戦争は起こらない
新国立劇場
新国立劇場 中劇場(東京都)
2017/10/05 (木) ~ 2017/10/22 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/10/05 (木) 19:00
ホメロスの「イリアス」の前段として、戦争を回避しようとする主人公エクトール(鈴木亮平)の努力が、外交官だった原作者の意識と重ねた物語は、そういう観点で見てみると、やはりスゴイものがある。人間がなぜ戦争するのかという課題を、見事に扱った舞台である。エレーヌ役の一路真輝の美しさに目を奪われる。ただし、やや冗長にも思える。
LOVE 第1話
シンクロ少女
OFF OFFシアター(東京都)
2017/10/02 (月) ~ 2017/10/04 (水)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/10/02 (月) 19:30
名嘉友美の描く物語は、基本的に性的な要素を含んでいるのだが、それを含みつつも、ドロドロしたものにせず、微妙に揺れる男女の関係を巧みに描いた作品で、名嘉史上最高作と呼んでもよいような芝居になっていた。とにかく面白い。80分。見るべし。
人間風車
PARCO / CUBE
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2017/09/28 (木) ~ 2017/10/09 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/29 (金) 19:00
後藤ひろひと「大王」が遊気舎時代に書いた作品をパルコプロデュースで、2000年,2003年に続いて再演だが、観るのは今回が初めて。公園で子ども相手に語るだけの童話作家にファンが現われ、そのファンが巻き起こすホラー系ストーリーで、いやーな感じになります、といっぱい書いてあるけど、思ったほどは嫌な感じにはならなくて、切ないけれど少しハッピーに終わってくれるあたりは、「大王」らしい。カーテンコールで、ミムラが舞台2作品目で慣れていないのか、ニコニコして出て来たのが、むしろ不気味だった。(この人は、初舞台の初日でも共演者に騙されたりして、本当に純粋な人なんだろうと思う)
瘡蓋の底(かさぶたのそこ)
タカハ劇団
小劇場B1(東京都)
2017/09/27 (水) ~ 2017/10/01 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/09/27 (水) 19:30
終戦後、満州から密入国して日本に帰ろうとする男5人。実は、皆同じ名前の偽造身分証を持っているため、他人を追い落とそうとする。一方で、場面は変わって現代。母が入院したのを機に3人姉妹が久々に集まるが、今一つ仲の良くない姉妹の話はまとまらない。
交互に展開される物語は何でつながるのか、途中で分かってしまうし、とある現象も兆候の伏線が見え見えである。なんとも物足りない。2つの場面の繋がりにこそ、もっと明確なドラマが欲しい。高羽はそれだけの力があるものと思われる作家なだけに、やや残念な気分である。
ワーニャ伯父さん
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2017/08/27 (日) ~ 2017/09/26 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/26 (火) 13:30
ケラmeetsチェーホフのシリーズ第3弾。実は、本戯曲を観るのは初めて、だったりするのだが、今までのシリーズ同様、笑えるチェーホフになっているのはありがたい。豪華な役者陣を集めて、ケラ風味をふんだんに醸し出しているのだけれど、そもそものロシアの土地制度やインテリと農民の差が上手く理解できなかった。なぜ、セレブリャコーフの言いなりになるのかなぁ。黒木華が可愛くないとは、とても思えないという違和感もある。でも、よくできた舞台ではあると思う。
エフェメラル・エレメンツ
ティーファクトリー
吉祥寺シアター(東京都)
2017/09/22 (金) ~ 2017/10/03 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/25 (月) 19:00
近未来、人間とヒューマノイドが共生する世界を描く。原発事故の後始末にヒューマノイドを使おうとする一方で、母親役のヒューマノイドを作ろうとするロボット学者、また、家政婦として好みのヒューマノイドを作ろうとするロボット学者、等のさまざまな場面が出てくるが、まだ違和感がある第1幕。その20年後を描く第2幕では、違和感はなくロボットにしかロボットが認識できなくなっている。第1幕80分で14場、第2幕75分で11場という、短いシーンの連鎖で物語を描こうとしたことで、わかりやすく、印象的な舞台になっている。役者陣の衣装やメークも注目である。
ウロボロス
Straw&Berry
新宿眼科画廊(東京都)
2017/09/15 (金) ~ 2017/09/19 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/18 (月) 19:30
河西祐介は頑ななロマンティストである。そのことを今回も思い知る作品だった。時間軸が前後する展開やエンディングの幸せ感が、余計に全体を包む悲しさ・切なさを増幅させる。やや強引な部分があるけれども、見ておいてよかったと思えた。
SHERLOCKIAN Aの項目
Project S.H
ワーサルシアター(東京都)
2017/09/13 (水) ~ 2017/09/18 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/18 (月) 16:00
シャーロック・ホームズの世界観を借りて、新たな物語を紡ぐ。よくできた脚本で、いかにもホームズな推理や様々な登場人物も、しっかり活かされている。やや、「○○、実は△△」というのが多い気がするけれど、エンターテインメントと思えば許容範囲かと思う。
川を渡る夏
オフィス3〇〇
すみだパークスタジオ倉(そう) | THEATER-SO(東京都)
2017/09/15 (金) ~ 2017/09/24 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2017/09/17 (日) 18:00
渡辺えり子が31年前に演劇集団円のため書き下ろした作品をオフィス3○○名義で再演する。「オズの魔法使い」の物語を使いつつ、渡辺らしく、夢と現実/生と死が交錯する不思議な物語だが、演出の稲葉賀恵はある意味、渡辺の脚本を忠実に辿りつつ、独特の世界観を構築することに成功はしている。橋爪功に当て書きされたという小津を若松武史が怪演(^_^;)。老婆と若く死んだ双子の一方を2役で演技するサヘル・ローズはじめ、役者陣は皆しっかりと仕事をしている。描かれた時期を反映したセリフは、若い観客には理解されるのか、やや不安はあるものの、オジサンには存分に楽しめる作品だった。
光、さえも
Ammo
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2017/09/15 (金) ~ 2017/09/20 (水)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2017/09/15 (金) 20:00
1921年の独立芸術家協会の展覧会に出品された作品を、展示すべきかどうか議論する協会の理事会の様子を描く論争群像劇。こういった、「芸術とは何か」「美とは何か」をテーマにすると、しばしば演劇に戻って自己言及的/自己肯定的になりがちなのだが、そうなっていないところが良い。実話ベースではあるが、創作として人物の描き分けもできているし、役者陣もしっかり演じて熱演。楽しんだ。
ただし、20時開演で1時間56分という長さを考えると、開演が10分遅れ、その説明が全くなかったのは、時間通りに来ている観客をバカにしている/甘えていると思う。
そのため、本来は星4つとしたいところだが、あえて1つ減らして星3つ。
アンネの日
風琴工房
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2017/09/08 (金) ~ 2017/09/18 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/09/12 (火) 19:30
ノンケミカルの生理用品を開発しようとする女性8人の群像劇。初潮の告白から始まり、開発に向かう経緯と多くの困難を乗り越えて進む登場人物達は力強い。男である私には、生理に関して、理解はできるけれど「腑に落ちる」というのは難しいが、それでも、開発に向かう要因になるという状況は充分に伝わる。ともすると深刻になりそうな物語だが、最近の風琴工房らしくエンターテインメントを充分に意識した演出は楽しい。むしろ、プロフェッシュナルのあり方という視点が適切に思える作品だと思う。ししどともこが演じるような存在を出す必要があるのかと、少し心配したが、うまく収束させて取り込む作り方は見事だ。このような凄い作品で空席があったりするのは勿体ないとしか言いようがない。
学園恋愛バトル×3!
劇団だるめしあん
王子小劇場(東京都)
2017/09/07 (木) ~ 2017/09/11 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2017/09/08 (金) 19:30
坂本鈴が書いた短編が3本しかないとは驚いたが、その3本を上演する。どれも古典にプロットを得つつ、現代に振り替えた恋愛に関する作品だが、そのブッ飛びぶりには頭が下がる。そして、それを役者陣もしっかり意識して、あえて過剰に演技することで、大いに笑えるフィクションとして再生されている。実に見事。また明日から頑張ろう、という気にさせてくれる舞台だった。