雨とベンツと国道と私
モダンスイマーズ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2024/06/08 (土) ~ 2024/06/30 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/06/14 (金) 19:00
一応は創立25周年記念公演だそうだが、ベテラン劇壇らしい、緻密ないい芝居だった。110分。
とある映画撮影現場を舞台に、過去にパワハラをしていた監督と、そのことに絡む事件に関わった手伝いの女性を軸に、関わった人々の群像劇。演劇にも通じるセンシティブな問題を扱った秀作。時間軸を前後させて、過去と現在を巧みに交える。後半は解決とは言えない展開だが、それだけにリアルを感じる。モダンスイマーズらしい芝居だと思う。軸になる山中志歩は何度か観ていたハズらしいのだが、気づかなかった自分にダメ出し。照明が美しい。
十字路
ミズタニ会議
王子小劇場(東京都)
2024/06/06 (木) ~ 2024/06/09 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/06/06 (木) 19:00
初見のユニット。分かりやすいSFチックなコメディ・サスペンスの連作短編集。(5分押し)100分。
『ドッペルゲンガー』『腹話術』『引っ越し』『十字路』の4つの20分前後の短編を、『十字路』の話題を広げる感じでまとめる20分。別の話だと思ってた4つが関わる構成は、よくあるものだけれど面白い。展開はものすごく分かりやすいが、ギャグがちょっとチープなのは惜しい。「ウェルメイド」とはこういうことか、と思う。
きなこつみ物語(再演)
劇団きらら
王子スタジオ1(東京都)
2024/05/31 (金) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/31 (金) 13:00
熊本のベテラン劇団が5年ぶりの東京公演。いい話でちょっとホッとする。観るべし!観るべし!!観るべし!!!(5分押し)前説3分、67分。
観るのは3度目の劇団で、昨年の5月に熊本で上演された作品の再演。和菓子屋でバイトすることになった大学生男子と先輩女子2人の日常、…、な話だが、twitter を軸に展開されるあたりが面白い。この劇団独特の手法として、役者が舞台上にずっといて、効果音なども役者の口から発する、というやり方に慣れてきたこともあって、スゴク楽しめた。
(株)デスゲーム工務店
電動夏子安置システム
赤坂RED/THEATER(東京都)
2024/05/29 (水) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/05/29 (水) 19:30
ベテラン劇団の安定の笑いだが、ちょっとブラックが入ったところも面白い。120分。
とある工務店はダークな仕事もしているが、その仕掛けに引っ掛かってしまった人々の脱出ゲーム、…的な展開。それぞれが個性的な登場人物の描き方も巧いし、ダークなんだけど笑える/笑ってしまう。前作『オスカーの教室』のネタを引っ張ってきたのも面白い。道井・新野・下平らのベテラン陣も相変わらず巧いが、前作に続いて出演した若手?の岡崎桃子・澄華あまね等の存在感が面白い。
レッドホットセックスピストルニルヴァーナ
MCR
ザ・スズナリ(東京都)
2024/05/23 (木) ~ 2024/05/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/05/25 (土) 14:00
櫻井智也快心の1作。面白くて泣ける。観るべし!観るべし!!観るべし!!!(2分押し)84分。
櫻井と堀の2人のおじさんが恋に恋する物語。初めは、しょーもねーなー、と笑っているのだが、終盤の展開に驚き、最後は明るく終わる。最後の歌って踊ってに大石とも子が出てこないので、何故、とか思うとビックリの展開。冒頭からとにかく珠玉のセリフの連打で、思わず上演台本を買ってしまった。女優7人のキャラの描き分けも巧いが、三澤さきの快演は特に見事。
デカローグ5・6
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2024/05/18 (土) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/23 (木) 19:00
C(5・6)を観た。A・Bに比べて物語に動きがあると思った。54分(20分休み)68分。
5「ある殺人の物語」は、偏屈なタクシー運転手・不道徳でいらだつ若者・新人弁護士の3人の物語が交錯し、出会うところで起こる悲劇…、な話。不条理な印象はあるのだが、エンディングはちょっとショッキング。
6「ある愛の物語」は、本シリーズ中で初めてと言ってもよい笑いを取る演出。画家の女性の部屋を覗く19歳の青年の物語。展開は読める気がするけど、青年と同居する友人の母役の名越志保の趣きが良い。
6では「覗き」を可視化するためにセットを大きく変えていたが、それも含めて、6が演劇にして面白い作品だと思った。尤も映画で観るところを想像しても良い作品にはなりそうだが…。
遠く吠えて花火をあげる
SUPER NOVA
王子小劇場(東京都)
2024/05/22 (水) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2024/05/22 (水) 19:00
【空組】を観劇。観るの3度目のユニット。2023年上演の作品の再演。ちょっとぼんやりしたファンタジー。(2分押し)124分。
自殺志願者8人が住むシェアハウスでの出来事。既視感のある題材で、展開も読みやすいのだが、一種のファンタジーと思えば観やすい。8人のキャラクターが特に際立つところまで描き切れていないところは惜しいし、シリアスな場面でいかにも演技というセリフ回しの役者がいるあたりは、役者の力量というより演出かなぁとも思う。
ハムレットQ1
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2024/05/11 (土) ~ 2024/06/02 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/18 (土) 18:30
有名な「ハムレット」を吉田羊がやるというので観に行った。面白い。71分(20分休み)87分。
Q1というのは最初期のバージョンということらしく、短いらしいのだが、そもそも「標準的な」ハムレットというのもよく分からないので、比較はできない。それよりも、シェイクスピアの時代には男優だけでやっていた舞台に女優を使うというところが特徴なのかとも思う。吉田羊はすぐ気が変わるハムレットを熱演、その他の役者陣も見事に演じて、熱の入った舞台になっていた。特に何か、というのではなく、普通に楽しめる舞台だった。なお、結婚報道直後の飯豊まりえだが、オフィーリアを普通に演じつつ、狂気のオフィーリアに観るべきところがあったように思う。
物語ほどうまくはいかない物語
wag.
小劇場 楽園(東京都)
2024/05/18 (土) ~ 2024/05/26 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/05/18 (土) 13:00
Route 4 を観た。須貝英の作・演出作品は久々で、2019年に上演された作品を別ユニットで上演。とてもよくできた、いい話。ちょっとばかりホッコリする。(4分押し)107分。
新人賞を取ったばかりの小説家の卵・紗那(井上みなみ)の所に、失跡してた父が戻って来るが…、の物語。よくできた物語で、ちょっと展開が急過ぎる気はするけど、次々に起こる出来事には興味を引かれちゃうし、登場人物達のキャラが濃くて、見入ってしまう。終盤はちょっと切なくなるけど、それも予想の範囲で、須貝らしい話を達者な役者陣が演じて、とてもよくできた芝居になっていた。
こどもの一生
あるいはエナメルの目をもつ乙女
王子小劇場(東京都)
2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/05/17 (金) 19:00
中島らも1990年作品の世界観を王子小劇場で見事に再現した。面白い。観るべし!観るべし!!観るべし!!!115分。
1990年の初演から、いろいろな所で何回か再演されているが、元々がTOPSで上演された作品。これを王子で上演して、世界観を再現しクウォリティも高い作品にしたキャスト・スタッフがスゴイ。元々の話は笑わせておいてオドロオドロしい展開というG2っぽい流れだが、それとはちょっと違うテイストで笑わせて驚かせてくれる。役者陣が実に見事だが、ムトコウヨウの不気味さは夢に出て来そうな気がする。
略式:ハワイ
劇団スポーツ
OFF OFFシアター(東京都)
2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/16 (木) 19:00
観るのが3度目のユニット。2017年作品の再演で、一種のタイムスリップものだけど面白い。(10分押し)92分。
初演は観てない。悩み多き高校生活を送る山戸(内田倭史)の前に現われたのは10年後の自分(田島実紘)で、山戸がしようとしている決断を「後悔するから」と言ってやめさせようとするが…、の物語。時間軸を何回も戻ってやりなおしができる、という無茶な設定が巧くて、笑って観ていられるのだが、終盤の切ない展開が急でちょっと驚く。いい話、になりきれない所が勿体ない。ただし、教師が暴力で部活を強くする、って、10年前だとしても、いつの話だよ、とかは思う。
入場のハンドリングで手間取り、ダダ漏れ的に10分押し。このままでは帰りのバスに間に合わない、というのが気になってしまい舞台に集中できなかったのが悔しい。
ファンタスマゴリ3
ガラ劇
中板橋 新生館スタジオ(東京都)
2024/05/15 (水) ~ 2024/05/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/15 (水) 19:00
Aチーム『#ガラ版銀河鉄道の夜』を観た。ちょっと驚くダークファンタジーだが面白かった。101分。
風雷紡の吉水雪乃が出るので観に行ったのだが、タイトルから予想される寓話的な物語ではなかった。歌舞伎町の雑居ビルの屋上に集まる不良少女達の物語で、「銀河鉄道の夜」と似通った部分はないのだが、寓話的な感触は似ているかも。ちょっと心が痛くなる台詞が不穏な感じを醸し出すが、興味深く観て、ちょっとだけホッとした。期待の吉水は、あまりやらない役だと思ったが、しっかり演じ、っていうか、役者陣は皆しっかりしてた。面白い作品だと思った。
深い森のほとりで
秋田雨雀・土方与志記念 青年劇場
紀伊國屋ホール(東京都)
2024/05/10 (金) ~ 2024/05/19 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/14 (火) 19:00
日本の科学研究状況を丁寧に描いた佳作。とても面白い。60分(15分休み)59分。
あるウィルス研究室の4年ほどを描く。日本の科学研究の困難さが主たるテーマだとは思うが、さまざまな問題を取り込んだ脚本が実に巧い。展開に都合の良過ぎるところはあるが、それはドラマなのでしょうがないとして、儲かる研究、とか、女性が不利、とか、実に多くの題材をバランス良く点在させて、しかも笑いもあるというのは見事としか言いようがない。演じる役者陣も巧いが、研究者の卵役を演じた五嶋佑菜が印象に残った。
セリフフェチの私としては、「少数民族」という言葉にリアリティが少なく、架空でもいいから「○○族」と表現した方がリアリティがあるように思った。
『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2024/05/08 (水) ~ 2024/05/15 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/05/10 (金) 19:00
『想い出せない…』を観た。静かな演劇だが、起伏はある。(3分押し)72分。
1994年に緑魔子を迎えて書き下ろした作品。「芸能人」の由子(兵藤久美)と古株マネージャーの安井(大竹直)と若い付け人の貴和子(南風盛もえ)が列車で旅する間のさまざまな会話。由子の芸能人というキャラクターのせいもあって、会話の起伏は『阿房列車』より大きいが、エンディングの美しさはまた一味ある。
『阿房列車』『思い出せない夢のいくつか』
青年団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2024/05/08 (水) ~ 2024/05/15 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/09 (木) 19:00
『阿房列車』を観た。何も起こらない静かな演劇の典型と言おうか。(3分押し)66分。
内田百閒の紀行文をベースに、平田オリザが1991年に書き下ろし、何度か上演されていた戯曲。旅に出た夫婦が列車で出会う若い女性と、とりとももない会話を続ける。夢を見たかのようなエンディングが美しい。
ブルーアイデンティティ
X-QUEST
王子小劇場(東京都)
2024/05/03 (金) ~ 2024/05/12 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/07 (火) 19:00
ベテラン劇団のダンス&アクション作品。カッコイイ。73分(+フォトタイム10分程度)。
何回か同じテーマの作品を上演しているが、不老不死のベニクラゲマンと彼の能力を奪おうとする何人かの闘い、と、一応は物語があるようだけど、そういうことを気にせず、彼らのダンス&アクションを楽しむ芝居だと思う。カーテンコールで主宰のトクナガも話していたように、嫌なことを忘れて楽しめばよい作品だと思う。同劇団を初めて観たのが2003年なので20年以上も経っているのだが、劇団員も同じだけ歳を取っているわけで、それでも動くのが非常にカッコイイ。久々に男優のみの作品だが、私が女優の出ない芝居を観るのも久しぶり(-_-;)。
パレードを待ちながら
劇団未来
こまばアゴラ劇場(東京都)
2024/05/03 (金) ~ 2024/05/05 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
鑑賞日2024/05/04 (土) 18:00
関西の初見の劇団で、戯曲も有名だが観るのは初めて。73分(6分休み)54分。
第2次大戦下のカナダを舞台に、いわゆる「銃後の妻」たち5人の物語。5人の個性も巧く描き分ける戯曲も見事だし、演じる女優陣も巧いが、ちょっと古い印象がある。1962年創設の関西の劇団が、60年ぶり2度目の東京公演と言うことだそうだが、ファンが多いらしくて、いつものアゴラとはちょっと違った雰囲気がある。
フィクショナル香港IBM
やみ・あがりシアター
北とぴあ ペガサスホール(東京都)
2024/05/01 (水) ~ 2024/05/06 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/05/04 (土) 13:00
あまりにも面白かったので、2度目の観劇。ストーリーを知っていても面白いし、エンディングの感動もまた…。121分。
繰り返しを多用しつつ、少しずつ違う展開から、最後のまとめで泣く。2度目でも泣く。2つのマグカップにこそ泣く。作・演出の笠浦の頭もスゴイが、タイミング重視の演技を全うする役者陣も見事。
デカローグ1~4
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2024/04/13 (土) ~ 2024/05/06 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
鑑賞日2024/05/02 (木) 18:30
B(2・4)を観た。Aと同じく淡々と人生を描くが、ちょっとだけ激しい場面がある。50分(20分休み)56分。
2「ある選択に関する物語」は重病の夫を持つ妻と、内科医の会話をベースにするが、ある種の奇跡が起こり…、の物語。極めて淡々とした物語だが、前田亜季がそう見えなかったことに驚いた。益岡徹の渋さがとてもよい。
4「ある父と娘に関する物語」は、父と娘の物語。今まで観た4話の中でも、ちょっとした事件が起こるのだが、それでも終わり方は落ち着いたものになる。娘役の夏子は何回か観てるはずだが、その中でも鮮烈なイメージ。
原作が映像作品だったのだと思うと、極めて納得できる。どうして舞台化することを決めたんだろう。
フィクショナル香港IBM
やみ・あがりシアター
北とぴあ ペガサスホール(東京都)
2024/05/01 (水) ~ 2024/05/06 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
鑑賞日2024/05/01 (水) 19:00
頭オカシイとしか思えない(褒めています)傑作。観るべし!観るべし!!観るべし!!!120分。
何を書いてもネタバレになるのだが、「IBMが作ったフィクショナルな香港の話」くらいなら書いてもいいかな、の感じ。とにかくスゴイ。見事。繰り返しや断片的なシーンの連絡が最後にまとまると泣く。