小さなエイヨルフ=罪過
クリム=カルム
新宿眼科画廊(東京都)
2019/11/22 (金) ~ 2019/11/27 (水)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/11/20 (水) 14:00
大島朋恵が出ているのは知っていたが、評判が良いので観に行った。独特の美学を持つ作品だった。イプセンの有名な戯曲で、まともにやれば2時間になる作品を70分程度にまとめるため、マジックリアリズムの手法を使っているというが、何よりも兄妹をヴァンパイアにしたという換骨奪胎振りは見事である。元の戯曲をそのまま使っているのではなく、エッセンスを詰めたという印象の舞台か。残念ながら凝った舞台美術は私にフィットしなかったけれど、努力の跡は買いたい。興味深いユニットなので、この後もちょっと追っかけてみたい気がする。
鎌塚氏、舞い散る
森崎事務所M&Oplays
本多劇場(東京都)
2019/11/22 (金) ~ 2019/12/11 (水)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/11/26 (火) 19:00
楽しく見せてもらった125分だった。貴族制が残ったという架空の日本で、全国ナンバー1執事として知られる鎌塚アカシ(三宅弘城)の活躍(ドタバタ?)を描くシリーズの5作目。シリーズすべて観ているのだが、どれも面白く、また、続けて観ていることで分かる部分もあり、今回が初見という観客には、味わいが分かりにくい部分もあったのではないか。今回は、今までになかったタイプのシーンがあり、今後の発展が期待される(^_^;)。ただ一人だけ本物の貴族の役を演じる大空の風格は見事だった。
下山と帰国
くによし組
東中野バニラスタジオ(Vanilla Studio)(東京都)
2019/11/20 (水) ~ 2019/12/01 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/11/22 (金) 19:30
2人して「ひきこもり」になった兄妹を、互いに秘密にしておこうとする母が、兄は登山、妹は海外旅行中ということにするが、その母がいなくなり、秘密がバレる…、という展開。作・演出の國吉本人もひきこもった時期があり、実話っぽい部分も含むが、いつもの切れ味は今一つな印象が惜しい。MCとか受付とか、役だか何だか分からない存在を入れたあたりは、いつもの「異常で、正常で、シュール」な國吉だったが、永井があんまり変な人に見えない、という点が勿体ない。劇団員の音が田舎に帰ったのだが、彼女を失ったことは意外に大きいのかもしれない。
掬う
ロ字ック
シアタートラム(東京都)
2019/11/09 (土) ~ 2019/11/17 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/11/15 (金) 19:00
作・演出の山田佳奈が口字ック本公演で初めて「家族」を描いたと当パンに書いてる。確かに家族が重要なテーマになっている。しかし、山田が描く人物は奇抜な性格になっていることが多く、「家族」を描いた、というより、「家族という面倒な繋がり」を描いたものになっている。何より、共感できる人物が一人も登場しない辛さがあると思う。劇団員をあまり登用せず、客演を軸に描いているが、馬渕英俚何・千葉雅子の使い方は巧いと思う。
『Q:A Night At The Kabuki』inspired by A Night At The Opera
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2019/11/09 (土) ~ 2019/12/11 (水)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/11/10 (日) 19:00
書き忘れていたが、東京第1ラウンドを観た後、大阪・北九州と回って東京第2ラウンドの3ステージ目に2回目の観劇。滑らかになっている。特に、初舞台の広瀬すずは、第1ラウンドでも違和感がなかったが、今回もよい役割を果たしている。全体に、初野田地図の役者が多い中、重要なセリフやきっかけは、松たか子が担っているのだなぁ、と改めて思った。エンタメ性が強く出るかと思った舞台だったけれど、テーマ性があり、重たい内容になっているのは、近作では『ロープ』に似ているだろうか。
ハケンアニメ!
吉本興業
紀伊國屋ホール(東京都)
2019/10/31 (木) ~ 2019/11/14 (木)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/11/08 (金) 18:30
辻村深月原作の小説(読んでいない)をG2の脚本・演出で舞台化した。久々に観るG2作品だったが、アニメ愛に溢れた秀作だった。面白い。アニメ会社を舞台に、5年前に伝説的な作品を監督した王子千晴(小越勇輝)を迎えての新作を作ろうとする人々の姿を、主に新人制作者の川島加菜美(大場美奈)の目を通して描く。小説の全体ではないようだが、アニメ業界の実態も見え、プロフェッシュナルの姿を描いた作品として見事だった。大場と小越をフィーチャーしているようだが、群像劇として観るべき作品で、やや珍しい座組での各俳優の役割も興味深かった。
ただしヤクザを除く
笑の内閣
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/11/07 (木) ~ 2019/11/11 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/11/08 (金) 15:00
当初は書き下ろしの予定が、脚本家の病気で2016年に上演した作品の再演である。期待して観に行ったが、やややっつけ感があったのは惜しい。初演も観ていて、面白く問題提起として意味を持つ脚本だと思えるが、初演のクオリティに達していない気がした。残念ながら未消化のまま上演してしまったのでは思える。頑張ってほしい劇団だけに悔しい。
バチーダ
wonder×works
座・高円寺1(東京都)
2019/10/30 (水) ~ 2019/11/03 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/11/01 (金) 19:00
関東近郊の日系ブラジル人が多く住むマンションを舞台に、日系ブラジル人の苦悩や喜びを描く。悪くない。マンション1階のブラジル・レストランを軸に、多くのブラジル人が登場する群像劇だが、個々の人物の抱える問題や悩み、喜びを丁寧に描く。ただ、ブラジル語で話しているという場面も日本語で話すので、その区別が付かないところは勿体ない。演出などで工夫されていれば、もっとよかったのにと思う。エンディングの無言シーンは、なかなかよい。
MimitoMetoAo
劇団フェリーちゃん
王子小劇場(東京都)
2019/10/31 (木) ~ 2019/11/04 (月)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/11/01 (金) 15:30
独特の世界観を持った作品だ。いつ、どことも分からないところにアトレカウティムという島があり、ラングラント侯国が派遣した探検隊が、その島を発見する。1年後、また新たなメンバーで訪れた探検隊は、島の女帝トラクリエが娘シチョメを火山の爆発を防ぐため生け贄にしようとするが、探検隊は止めようとして…、という展開で、既に独特の世界観を持っていることが分かるだろう。作・演出の、なにわえわみが歌い、北村真帆が踊る、というのは、やや珍しい作りだが、世界観が共有できるかどうかが、面白いと思えるかどうかの分かれ目だろう。
なお、よく調べずに、「撮影可能回」というのに行ったために、シャッター音と液晶画面の明るさにはマイッタが、事前にしっかり調べなければと思い知らされたということもある。
ナイゲン 暴力団版
日本のラジオ
王子小劇場(東京都)
2019/10/23 (水) ~ 2019/10/28 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/10/27 (日) 18:00
書き忘れていたが、とにかく面白かった。アガリスク・エンターテインメントの代表作の名前をもらって、日本のラジオが暴力団の会議の様子を上演する。まぁ、ありえない会議であるのは当然だが、登場人物のキャラクターの立て方と、キャスティングの見事さで、本物の暴力団に見える(^_^;)ところがスゴイ。面白く見せてもらった90分だった。
コンドーム0.01
serial number(風琴工房改め)
ザ・スズナリ(東京都)
2019/10/25 (金) ~ 2019/10/31 (木)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/25 (金) 19:30
詩森の書く企業モノに外れなし、だと思っているが、本作もその期待に違わぬ秀作である。実在の相模ゴムをモデルに、薄いコンドームを作ろうとする男たちのプロフェッショナル物語で、女性用生理用品を作ろうとした女たちを描いた『アンネの日』と対になる作品とも言えるが、別に比較すべきものではない。詩森作品では常連となりつつ男優を集めて、気心の知れたスタッフが緻密な物語を描く。SEXという、ある種際どいテーマを扱いながらも、エンターテインメントにしているのは見事だと言えるだろう。初日のせいなのか、音響に若干トラブルのようなものを感じたが気のせいだろうか。
じゅうごの春
やみ・あがりシアター
アトリエファンファーレ東池袋(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/18 (金) 19:30
面白いじゃねえか、…、そんな印象の芝居である。1999年に15歳の「じゅうご」君は、ノストラダムスの予言を信じて世界が滅びるものだと思って、毎年表彰されている夏休みの宿題の自由研究を全くやっていなかった。8月に入って、世界は滅びず、予定がすっかり狂った「じゅうご」君は、どうすれば素晴らしい自由研究ができるかを考えるのだが…、という話はよくあるものだが、着眼点は素晴らしい。「じゅうご」君は父と姉と、あと2人の兄がいるようだが…、という展開は、異なる時間軸を同時に見せることの多い笠浦らしい作劇で、同じシーンを繰り返しつつ展開が少しずつ変わっていくのも笠浦らしいものと言える。エンディングは、もう少しスッキリ終わってもよかったように思う。
当パンに役名が書いてないののは、それなりの意味があることが、脚本を読むと分かる。
小刻みに 戸惑う 神様
劇団ジャブジャブサーキット
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/10/17 (木) ~ 2019/10/20 (日)公演終了
満足度★★★
鑑賞日2019/10/17 (木) 14:00
名古屋を中心に活動する劇団として名前は知っていたが、初見の劇団。ちょっとばかり不思議な感じの会話劇で、面白いことは面白い。劇作家が亡くなり、娘2人と若干の家族での質素な葬儀が行なわれいるが、なんだかバタバタしている…、という群像劇。展開はやや奇抜な印象もあり、人物によってはありえない言動もあるのだが、そのようなキャラクターにしなくても成立する芝居だと思えて、やや残念な印象がなくもない。独特の個性は出ているように思うが…。
『Q:A Night At The Kabuki』inspired by A Night At The Opera
NODA・MAP
東京芸術劇場 プレイハウス(東京都)
2019/10/08 (火) ~ 2019/10/15 (火)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/10/14 (月) 19:00
そう来たか、という印象をまず持つ。Queenの "Night at the Opera" の楽曲を使い、『ロミオとジュリエット』をベースとした作品と聞いて、エンタメを予想した私の思惑は全く外れ、思いもかけないテーマを持った作品に仕上がっていた。プログラムによれば、このテーマは、野田が以前からやりたいものとして残していたものだそうで、このタイミングと状況でやるのが適切かどうかは分からないがインパクトのある舞台だったことは確かだ。志尊淳と初舞台の広瀬すずの身体能力の高さにはちょっと驚いた。
ただし、休憩込み3時間は、さすがに長い。
死と乙女
シス・カンパニー
シアタートラム(東京都)
2019/09/13 (金) ~ 2019/10/14 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/10/13 (日) 17:00
千穐楽前日の公演を2度目の観劇。やはりタイトでシビアな舞台だった。初日に観たものから大きな変化はないのだが、やはり表現に深まりを感じる。しかし、そもそもが非常に厳しい内容の作品なので、変化が見えにくいのかもしれない。初日は、多様な解釈を残すエンディングと書いたが、どうも真実は意外なところにある、という結末に思えた。台風の影響で開演時間を遅らせて上演。ところどころに見える空席は、来られなかった観客だろうか、と思うと、残念に感じる。
PROMISED LAND~遥かなる道の果てへ~
ネオゼネレイター・プロジェクト
「劇」小劇場(東京都)
2019/10/09 (水) ~ 2019/10/13 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/11 (金) 19:30
独特の感触を持つファンタジーで面白かった。宿屋の1階にあるカフェと言うかバーと言うか、2人の男(猪股俊明・井村昂)がカード・ゲームをしながら、取りとめもない話をしている。部屋には多くのドアがあるのだが、それは異次元的世界に続いているらしい…、という物語。ある種の『ゴドー』だと思ったが、他の登場人物に付与された特性も興味深く、何だか訳分かんないけど、何か面白かった、というタイプの120分だった。
boat
calmoプロデュース
劇場MOMO(東京都)
2019/10/09 (水) ~ 2019/10/14 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/09 (水) 19:00
新ユニットの旗揚げ公演は、劇団ブラジルが2003年に初演、2013年に再演した作品の改定版。面白かった(^_^)v。作・演出もブラジルの主宰ブラジリィー・アン・山田だが、ブラジルらしい苦笑系の作品。2013年の再演を観ているはずだが、あれこうだったっけ、と思う部分もある。遭難したボートの上での愛憎入り交じる群像劇という趣向だが、メインの会話でない部分で起きる出来事が重要な場面があり、そこも含めて、微妙な感触を醸し出す。ラストはかなりのブラックだが、とにかく苦笑させ続けられる120分だった。元グラドル役の笹峯の衣装が妙にエロい。
『アイラブユー』『日本演劇総理大臣賞』
ロデオ★座★ヘヴン
王子小劇場(東京都)
2019/10/03 (木) ~ 2019/10/13 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/06 (日) 17:00
『アイラブユー』を観た。面白かった。今回の公演で活動を休止するロデオ座ヘブンのため、qui-coの小栗が作・演出。ロジックというより、感触を残そうとする作劇が特徴だと思う小栗らしく、「アイラブユー」の感触が随所に溢れた作品になっている。過激が売りのラジオ・パーソナリティに憧れ、自分もそうなりたいと願う少女。その成長に合わせて周辺の人々の関わりを描く群像劇だが、「アイラブユー」の多様性を見せてくれて、エンディングは潔い。小口ふみかの成長が著しい。
ユー・キャント・ハリー・ラブ!
弦巻楽団
こまばアゴラ劇場(東京都)
2019/10/04 (金) ~ 2019/10/07 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/10/04 (金) 19:00
札幌で活動する劇団の代表作で、作・演出の弦巻が2003年に他劇団に書き下ろし、自劇団でも何回も上演しているという作品だが、とにかく面白い\(^_^)/~~。高名なシェイクスピア研究家だが恋愛未経験で、ロミ・ジュリさえ否定する大学教授が、ラジオの気象予報師の声に初めて惚れる。実は彼女は、教授の講義を密かに聞いていた教え子で…、という、ウェルメイドのシチュエーションコメディである。すごく巧妙に練られた台詞と、登場人物のキャラクターが実に見事で、エンディングの潔さも素晴らしい。とにかく楽しんだ95分だった。
MILANDA
Ne`yanka
ワーサルシアター(東京都)
2019/10/02 (水) ~ 2019/10/06 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/10/02 (水) 19:00
Ne'yankaは第4弾で少し雰囲気の違った作品を上演した。面白かった。元々は脚本の遠藤の劇団で初演されたものだそうだが、死んだ骨董屋が生き返る事件をきっかけに、島の秘密と言うか、島にかけられた「呪い」の謎が徐々に明らかになる展開が面白い。初日だからだろうか、台詞を噛む役者がやや目立ったのは勿体ないし、初日のせいなのか、笑えるシーンで笑いが起きない不思議もあったが、現代にも通じるテーマを扱った興味深く観ていられる110分だった。