広い世界のほとりに
劇団昴
あうるすぽっと(東京都)
2024/10/02 (水) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
サイモン・スティーヴンスという作家の作品を初めて観たが、これは少々変わった作品のように感じた。全体として一貫したストーリー展開はあるのだが、個々の部分では違和感のある会話や場面があり、不合理で理解しがたいところがある。広い舞台を活かして舞台の位置で場面を分ける演出などは良いが、あまり労働者階級の家族に見えるようにはしておらず、少々矛盾や混乱を抱えた台本をあえてそのまま舞台にのせて観客に示しているような印象。
諸国を遍歴する二人の騎士の物語
劇団青年座
吉祥寺シアター(東京都)
2024/09/28 (土) ~ 2024/10/06 (日)公演終了
短編演劇アンソロジー 拾 「中島敦・光と風の彼方へ」
劇団キンダースペース
劇団キンダースペースアトリエ(埼玉県)
2024/09/24 (火) ~ 2024/09/29 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
敢えて言えば、中島敦のいくつかの小説を三島由紀夫の「近代能楽集」的な雰囲気の舞台に新たに編み直した作品。やはり有名な山月記の部分が最も魅せられる。
セチュアンの善人
劇団俳優座
俳優座劇場(東京都)
2024/09/20 (金) ~ 2024/09/28 (土)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
Aチームで鑑賞。脚本・演出家の前説通り、特に後半は大きく変えられている。ブレヒトの風刺や社会批判はそのままでは現代に通用しない面があり、このように新たな形を探る挑戦は評価できると思う。主役の俳優はとても良い声をしている。学生たちの演技も良く、少々頼りない神様の間の抜けた感じがぴったり合っている。
旅芸人の記録【9/8(日)13時・9/9(月)14時・9/11(水)・12(木)公演中止】
ヒトハダ
ザ・スズナリ(東京都)
2024/09/05 (木) ~ 2024/09/22 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
本当にこんな大衆演劇の一家が目の前にいるかのよう。各俳優の演技が素晴らしく、細かいところの演出も良い。ストリンドベリの引用が深みを与える。登場人物設定に見事に嵌まっているように見えるが、あれが本当の怪我とは、絶句。よく上演を続けてくれたものだ。
『ミネムラさん』
劇壇ガルバ
新宿シアタートップス(東京都)
2024/09/13 (金) ~ 2024/09/23 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
3人の作家がそれぞれ自由に描いた『ミネムラさん』像をつなげたのであろうか、全体として纏まるようなストーリーはないようだし、また纏めようという意図もないようであるが、各部分内ではユニークな展開を見せる。しかし、手練れた役者や気鋭の演出家を起用するほどの台本であったかは疑問が残る。
ヘッダ・ガブラー
ハツビロコウ
シアター711(東京都)
2024/09/10 (火) ~ 2024/09/15 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
登場人物の設定に若干のアレンジが加えられ、思考や言葉も現代風にされ、そのため現代的なストーリーになっていて新鮮に感じられた。イプセンの原作よりこちらの方が良いと思うほどだ。
かへり花
トム・プロジェクト
俳優座劇場(東京都)
2024/09/02 (月) ~ 2024/09/08 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
少々馬鹿げた話が終始穏やかに展開する。3人がそのベンチに至るまでの道筋は、主要な出来事二つを除いてほとんど明らかにされない。特に、大和田獏氏演じる高齢男性の過去は、わずかにあいまいに仄めかされるだけで何も明らかにされない(自分が聞き逃したか?)。そこは想像にお任せする、ということだろう。名前もはっきりしない登場人物たちが、ベンチの所に引き寄せられるように集まってきて、その時その時の気まぐれのような穏やかだがおバカなドラマが展開するところは、少し別役実の劇を思わせる。
世界 、
演劇企画集団Jr.5(ジュニアファイブ)
ウエストエンドスタジオ(東京都)
2024/08/28 (水) ~ 2024/09/03 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
舞台美術が印象的。座れるようにもなっている。ストーリーは宗教絡みでシリアスではあるがどこかカラッとしていた印象。しかしいろんな問題が提起されている。あの劇場の階段まで使う演出も興味深い。
奇ッ怪 小泉八雲から聞いた話
イキウメ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2024/08/09 (金) ~ 2024/09/01 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
幻想的で美しい演出で怪談の世界に引き込まれていく。ゆめとうつつの境界が怪しくなるというか。いつものように少し笑いを取りに行く場面も劇全体の雰囲気をいささかも壊さない。イキウメらしい優れた舞台作品。
妻の感覚
公益社団法人日本劇団協議会
東演パラータ(東京都)
2024/08/12 (月) ~ 2024/08/18 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
韓国作家の作品には優れたものが少なくなく、近年触れるチャンスが多くなって喜ばしいが、本作品も凄い。独創的・幻想的でやや不条理な展開の不思議な物語に観ていて引き込まれる。俳優たちの動きも独特の演出で興味深い。実力派の俳優を揃えた万全の公演と思える。
犬の刺客 2024
友池創作プロジェクト
OFF OFFシアター(東京都)
2024/07/30 (火) ~ 2024/07/31 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
主宰によるチャらい前説を見て不安に思ったが、ストーリー内容は意外にまともで演技もしっかりしている。コンビの衝突と解散は、細かい食い違いの数々が積み重なった結果でいかにもありそうな話。出演者のブロマイドを販売していたのがまるで昭和の時代を思わせた。今でもやるものなのか。
日曜日のクジラ
ももちの世界
雑遊(東京都)
2024/07/25 (木) ~ 2024/07/30 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
演技や登場人物関係にやや過剰感がありストーリーの設定にもちょっと無理があるような気もするが、そんなことを難しく考えなければ総じて楽しめる舞台。出だしのチンピラ同士の映画についての会話が面白い。雑遊の座席が狭すぎて満席だとかなり窮屈だった。
オーランド
パルコ・プロデュース
PARCO劇場(東京都)
2024/07/05 (金) ~ 2024/07/28 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
ほぼ全編、宮沢りえ演じるオーランドの、詩を朗読するような独白の台詞が延々と続き、ヴァイオリンの独特の背景音楽が加わる不思議な雰囲気の芝居。宮沢りえ氏は大量のあんな台詞をよく覚えられたものだと感心するし(間違えたとしても観客にはわからないが)、ところどころ入る4人の男優との掛け合いも面白い。ウェンツ氏があんな役者になったとは。
ゴールデン・エイジ【7月12日~15日公演中止】
劇団俳小
駅前劇場(東京都)
2024/07/10 (水) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
この作品が戯曲として書かれたとは驚き。日本語上演においては明らかに独特の難しさがあるだろうし細かい場面も多いが、全体的にうまく捌けている。俳優たちの実力は高くその演技は見事という他はない。
駅前劇場の座席の椅子がかなり狭く、休憩を挟んで2時間半の公演を耐え抜くにはお尻が痛くてたまらなかった。
心の声など聞こえるか
範宙遊泳
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2024/07/06 (土) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
前半がつまらなかった。途中で出ようかと思ったほど。しかし、後半から少し面白くなり観客の反応も良くなった。この路線の作風は、ちょっと外しただけで陳腐になってしまう難しさがあるのかも。自分の好みには全然合わないが、ほとんど満席で人気は相当あるようだった。
神話、夜の果ての
serial number(風琴工房改め)
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2024/07/05 (金) ~ 2024/07/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
この作家は作品によって作風がかなり変わることがあるように思うが、今作は独特の雰囲気がなかなか良い。カルトが描かれた作品にふさわしい。舞台上はベッド一つだけで場面が展開されるところや、主人公と弁護士役が対照となるのが興味深い。若い俳優たちも相当の実力を有している。しかし、タイトルの「神話」とはどういうことだろ?
デカローグ7~10
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2024/06/22 (土) ~ 2024/07/15 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
7-10を1日で通して観たが、これまでと同じく、どれもなかなか面白く印象に残る短編の佳作。劇的な展開をみせるものもある。何度も観てくると、あの舞台上の建物がそこに住まう者の運命を操り見つめているように思えてくる。
オリジナルの映画がそうだからか、どれも短い場面が次々連なって展開するが、うまく舞台上で捌いている。最前列の場所によっては建物の2階で演じられる場面が角度的に死角になってやや見えにくくなる。
地の面
JACROW
新宿シアタートップス(東京都)
2024/06/14 (金) ~ 2024/06/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
詐欺師側の登場人物がなく、椅子にスポットライトを当てて「ここに詐欺師が座っている姿を想像して下さい」という演出がなかなか面白い。あくまで視点は詐欺という犯罪ではなく人間組織の暴走に向いているのが明確になった。
阿呆ノ記
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2024/06/04 (火) ~ 2024/06/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
このような世界観をこれほどの迫力をもって描ける作家は他にいないといってよく、何度観ても飽きない。よく発想が尽きないものだ。演劇が始まると観る者は2時間その別世界へ連れて行かれる。少々の入場料を払っただけでそんな体験をさせてくれるとは誠にありがたい。だいたいどの作品でも次の世代への継承というテーマが含められているのも感銘を受ける。