満足度★★★
両作品観劇させて頂きました。
舞台セットが細部に渡ってこだわられていて、照明との相性も素晴らしく、素敵な空間が出来上がっていました。
ネタバレBOX
ここからは完全に好みの問題になるかと思いますが、この団体の次回作への期待を込めて正直な気持ちを書かせて頂きます。
両作品共に共通して『無駄に長いな』という印象を持ってしまった。勿論すべてのシーンと言う訳ではないが、余分な会話のやり取りが悪目立ちしすぎで大筋の物語がかき消されたような感覚に陥った。
『万華鏡』をテーマにしているという割に、万華鏡に対する知識、キャラクターたちの万華鏡への思い、何故、数あるキーアイテムの中で万華鏡である必要があったのか、という疑問がどちらの作品にも残ってしまう。
過去編の作品では、アンティークショップに若手の万華鏡作家の作品を置くところから主人公たちが万華鏡に触れていくシーンがあるものの、万華鏡からの影響力はそんなになく、相対性理論のほうに話が傾いてしまって、振り返ると『万華鏡』がついでのように感じたのだ。相対性理論の長台詞でのシーンもあそこまで細かく説明する必要性があったのか疑問に思う。醸一郎の告白への前振りだとしても、あまりに長すぎてせっかくの告白シーンで観ていて少し疲れてしまうような印象になってしまった。後半フィリーというキャラクターが出てきてからはテンポが格段に上がり、ストーリーの進行としても見やすくなった。友香とフィリーとの友情には目頭が熱くなるくらいだった。
その後急に5年もの月日が流れ、祖父の存在がなくなったが、海外旅行に行っただけなのか、もしくは亡くなってしまったのか、素朴な疑問を抱いた。前半での存在感があったからこそ、喪失感が凄かったので、その後をはちゃんと消化してほしいと思ってしまった。
現代編では、過去編の終わりから急に20年以上の歳月が過ぎていて、いつの間にか醸一郎も祖父も亡くなっている。ここに来るまでの間で一体どんな物語があったのかが単純に気になるところだ。
万華鏡専門店となった店を舞台に行われる婚活のためのワークショップで参加者たちが万華鏡に触れるが、ここでもやはり万華鏡からの影響力があまり印象にない。せっかくなら万華鏡作家の城之内とみゆきとの師弟のエピソードなどがしっかりと見たいところ。そして現代編でのゆりは、過去編の祖父と同じポジションにはなるんだろうが、あまり存在感がないように感じてしまった。万華鏡専門店にしたほどの万華鏡に対するゆり自身の気持ちをもっと掘り下げてほしかった。
メインが婚活ワークショップに参加していた女性になっていたが、どちらかといえばちょこちょこと出てきた鏡一郎と母親となったゆりとの関係性のほうをよりじっくり見たかった。
過去編で、母親になることなど今後への不安を漏らしていたゆりが醸一郎の言葉によって前向きな気持ちになる、という形で終わっていたので、現代編でもちゃんと家族の物語が見れるかと思ったが、あまりにも家族のエピソードが、ついで感過ぎた印象だった。鏡一郎は出てくるたびにイライラしている様子で、その意味も手紙を読むシーンだけでは正直遠回りすぎて解決されなかった。京一郎自身の今までの気持ちの流れがあまり伝わってなかったので、急に『万華鏡作家を目指す』という展開について行けなかった。
細かく上げるとまだ色々あるが、ただ良い言葉が並べられてるだけの状態で、『その言葉を言うのは、その店の人間だから』などとという必要性がないように感じてしまう。
ところどころのシーンだけを切り取れば、いいシーンも、心動かされるシーンもあったからこそ、そこにいきつくまでの前振りが膨大すぎたり全く関係ないところにこだわりがいったりしているのが、1番伝えたいはずの物語や思いをかき消してしまっていた気がした。
もしかしたら特典についていた小説などに、舞台では解消されなかった物語が書いてあるかもしれないのだが、やはり劇場まで足を運んで、観に行っている手前、舞台の中でしっかりと完結させてほしかった…
長々と書きましたが、あくまで個人的な感想です。無理に受け止めて頂くこともないですが、そう感じた人間もいた、というくらいに留めて頂ければ幸いです。
今後の団体の飛躍も心から願っております。故のこの感想をどうぞお許しください。頑張ってくださいませ。