白い花を隱す
Pカンパニー
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2018/08/31 (金) ~ 2018/09/04 (火)公演終了
満足度★★★★★
キレッキレでエネルギッシュなスタッフの面々は、さすがドキュメンタリー制作会社といった感じで輝きがあって頼もしい。
女社長もなかなかの男前っぷり。
チームワークもフットワークも抜群な会社が政治的圧力によって壊れていく様はそれだけにヒリヒリ感を伴って、凄く勿体ない事をしたなと思えます。
作品では視点をその社員の婚約者(彼女も元制作スタッフ)に据える事で、より登場人物達の輪の中にとけ込みやすく、且つ彼等の人となりが伝わってきやすい内容になっていました。
会社関連以外の登場人物である、家族役の円城寺あやさん、近所のおばあちゃん役の福井裕子さんの存在も印象的。
渾身の思いで制作した映像が、不本意な形に姿を変えて身に降りかかってきた彼等の動揺と無念さは舞台からも強く伝わり、出来る事なら報道で晴らしたかったかもしれませんが、これをちゃんと問題視する人達がいて、現にこうして演劇というカタチで語り継がれるという事は立派に意味があったという事なのだと思います。
ジャッジノット!!審理編&評議編
演劇企画アクタージュ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2018/08/30 (木) ~ 2018/09/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
『審理編』からつづけての『評議編』
「評議編」は当然そのまま「審理編」での裁判シーンのつづき。かと思いきや、場面がガラッと変わって裁判所の控室。(つまりセットが入れ替わります)
「審理編」では基本 後方にて傍聴スタイルだった6名の裁判員達の、その後の話し合いが行われ、こちらは暗転無しノンストップのリアルタイムスタイル。
本件の事案に対して「被告人は黒か白か」持論をぶっちゃけ合うこの「評議編」は、「審理編」の時に垣間見えていた裁判員それぞれのキャラクターが炸裂し、これってまさしくアクタージュ版『十二人の怒れる男』
ただし『十二人の怒れる男』と大きく違うのは、前の「審理編」で私も一緒にこの裁判の成り行きをしっかり見届けているところ。
「審理編」で湧き起った「気づき」や「引っ掛かり」をここでは彼等がガンガン発言してくれるので「そう、そこだよ!そこっ」と、完全に吸ってる空気は一緒です。
「審理編」での体験を経ての「評議編」は作品全体をすごく立体的に観せてくれるのでメチャクチャ相乗効果アリまくり!
尚且つ「評議編」を観終わった後になって、またもや「審理編」を観たくなるという自身に湧き起ったまさかの衝動。
ええ観ましたとも、ぶっ続け2度目の「審理編」(笑)
一度目の「審理編」では受け身体制で転がされっぱなしだった私も、二度目では完全なる訳知り体制。
すると同じ作品なのに一度目で見えなかったモノまで逐一見えてくるではありませんか・・・これって快感です。
一気に連続3公演、予定が大きく変わった『ジャッジノット!!』づくしの1日。すっごい疲れましたが、すっごい貴重な体験でした。
ジャッジノット!!審理編&評議編
演劇企画アクタージュ
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2018/08/30 (木) ~ 2018/09/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
『審理編』
入場してみると舞台にはジャ~ンしっかり法廷が。
裁判スタート(開演)で下手に検察団、上手に弁護団、要所々々に事務官、更には奥手の横一列に裁判官をセンターとした裁判員がズラリと並んでもう圧巻の絵面。
あぁこのパターンは発言者以外のリアクションにも是非注意を払いたくなる、どうにも目が忙しいやつ~ッ(笑)
ここまで本格的な裁判モノとなると堅苦しく小難しい内容になる心配があろうものの、そこはさすがのアクタージュさん。
リアルとエンタメを織り交ぜて軽快に観せてくれました。
事件内容は至ってシンプルなものの決定的目撃者が不在で、且つ被告人が犯行を否認してしまうと、もう真相は藪の中。
その藪をかき分けるが如く状況証拠をもとに攻防を繰り広げる検察団と弁護団。
もう最初から双方戦う気満々、タイプは違えど、どちらも攻撃タイプの対決で、それらのやり取りを傍聴しているうちにフムフムナルホド、事件の独特の色合いが段々と見えてくるではありませんか。
とは言っても生ものの裁判は予定調和とはいかないようで、時には阿鼻叫喚。
裁判員と一緒になって、はぁ~(ため息です)いいように転がされてきました。
たまに難しい用語や怒涛の局面があっても、風格ある裁判長が一般人である裁判員に理解を促す体(てい)でしっかり指揮をとってくれるので助かります。
「サギムスメ2018」人生晴れたり曇ったり
劇団たいしゅう小説家
ワーサルシアター(東京都)
2018/08/29 (水) ~ 2018/09/02 (日)公演終了
満足度★★★★
客入れ時間の30分。舞台上では大衆演劇の楽屋ならではのちょっとしたパフォーマンスが。
女性には興味深いものらしく、しっかり凝視されている方は多いものの、自分はフ~ンと当日パンフ等のウオッチングタイムに。
しかし15分経過した頃に目をやると「アレっ、へぇ~っ」と思わずシフトチェンジ。
いつしか笑いも起き出します。(パフォーマンスは開演5分前に終了)
その後、突入する本編の冒頭から一気に大衆演劇一座の世界へと引きずり込んでしまう手腕はお見事で、否が応でも雰囲気が盛り上がります。
あらすじだけ読めばコメディーに結構ありがちな設定にも思えますが、実際始まれば演出と演技が持つ力というのでしょうか、とても新鮮。
人と人とのやり取りがめちゃくちゃ可笑しくて、その出来があまりに良かったために「化かし合いストーリー」のどんでん返しがおまけの様に感じてしまうほど。
楽~な気持ちで、たっくさん笑える作品です。
同情するなら金を積め
怪奇月蝕キヲテラエ
新宿眼科画廊(東京都)
2018/08/24 (金) ~ 2018/08/28 (火)公演終了
満足度★★★★
ショッキングなタイトル。そしてそれに負けず劣らずのショッキングなスタートながら、主人公マドカを筆頭とする登場人物の「意志」がハッキリとブレがないので、観劇前に予想していた悲壮感はかなり少なめ。
ただ、自身の存在のせいで皮肉にも家族の「意志」がバラバラになってしまい、それらが一直線上に並ぶ事はどうにも難しく「もう一度家族みんなで過ごしたい」マドカの奮闘はちょっと痛々しく映ったのもたしか。
小気味よくハイテンポな展開の為、実際の公演時間以上のボリュームを感じます。
しみじみ感情移入するというより、めくるめくストーリー展開を楽しむタイプの作品だと思いました。
それにしても15歳のモデル少女、度胸とお色気ありすぎ。
白雪姫という女
ライオン・パーマ
駅前劇場(東京都)
2018/08/23 (木) ~ 2018/08/26 (日)公演終了
満足度★★★★
ハッピーエンドから年月を経た白雪姫の続編には、世間の手垢がいっぱい付きまくりの可笑しくもほろ苦い、もう一つのエンディングが用意されていました。
長い人生は「めでたしめでたし」で簡単に終わるはずも無く、女の業と男の打算が入り乱れて一筋縄ではいかないのですね(笑)
もはや童話の登場人物としては全く相応しくないキャラクターが沢山。
毒りんごの義母もしっかり登場し、場末感あふれる大人の小演劇仕様な作品でした。
二代目なっちゃんの愛人。
なかないで、毒きのこちゃん
OFF OFFシアター(東京都)
2018/08/21 (火) ~ 2018/08/30 (木)公演終了
満足度★★★★
こちらの劇団さんには“毒きのこちゃん”なるモノが棲みついていて、公演中この“毒きのこちゃん”を泣かせたくないらしい。
“毒きのこちゃん”って一体・・・
初見である私が独自に推測させて頂くと、この“毒きのこちゃん”はどうやら退屈が大っ嫌いらしい。
加えてオブラートに包む行為は好まないらしく、剥き出しなものを欲する性質であるらしい。
“毒きのこちゃん”ってば、かなり厄介 おかげで楽しめました。
そして主役のエロ可愛い“なっちゃん”を凌駕する“芝生みどり”の存在は賛否両論必至。
ネタバレBOXに本公演には向かないと思われる人の要件を記しますが、もう観に行かれる心づもりの方は絶対見ないでください。(ネタバレに抵触します。観劇後に確認頂けると幸いです)
あと、やむなく寝不足で公演に向かわれる方、安心してください。ウトウトなど出来ません(笑)
スマートコミュニティアンドメンタルヘルスケア
ホエイ
こまばアゴラ劇場(東京都)
2018/08/18 (土) ~ 2018/08/27 (月)公演終了
満足度★★★★
滑稽にしてショッキング。これが集団ヒステリー状態なのかと。
まだ中学生ゆえに「やっぱり子供だなぁ」という発想でさえ、その微笑ましさは姿を変えて逆にちょっと怖い。
かなりの異常事態だと客観的に傍観できたとて、もし彼等と同年代にして本作と同じ状況と切り口で事が進むとなると、はたして自分はこの渦の中へのみ込まれずにいられるのか、ちょっと自信がないので余計に怖くなってきます。
本作を観ていると同調してしまうというわけではないのですが、「そういえば中学の頃、ノストラダムスの本を一気に読んで、その夜熱を出したなー」とか「あの頃、〇〇先生が偏見に満ちた発言を堂々としていたけど、今もいびつな光景として残っているんだよなー」といった、とりとめのない変な記憶がポロポロこぼれ出してくるから不思議です。
登場人物のほとんどを占める中学生役は、そこそこの大人の役者さんが演じますが、完全になりきった結果、ブラックな可笑し味が染み出し、作品の持ち味となって成立していました。
新任の女教師はとんでもキャラで、超胸糞悪いタイプにも関わらず、あまりに突き抜けているので思わず笑ってしまう事も。
何気に悪酔いしない様、配慮がなされていたのではないかと思えます。
バンブーオブビッグ
劇団マリーシア兄弟
Geki地下Liberty(東京都)
2018/08/16 (木) ~ 2018/08/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
お笑いライブの舞台裏、楽屋には、期待通り観てみたかったモノが沢山詰まっていました。
私にとって芸人さんをつくづく「スゴイな~」と感じるのはネタを披露しているスポットな部分よりも全体の空気を操る人間力にあります。
たまたまこの前日にヨシモトのイベントを観てきたのですが(ここから先ちょっと長くなりますが申し訳ありません)
大勢の芸人さん達が自身の面白エピソードを競い合うイベント、最終戦まで勝ち残った、ある芸人さんが、まさかここまで勝ち進むとは思っていなかったらしく用意したネタが尽きてしまいました。
これはかなりヤバい状況。
先攻、対戦相手の芸人さんは前回の優勝者でもあり、そつなく面白エピソードを披露して、ますます彼にプレッシャーがかかります。
結局、その芸人さんは心が折れてしまい途中で逃げ出してしまいました(笑)
まさかの「えぇぇぇぇ」です。
そして審査発表。発表前にその芸人さんは、くやしさに泣き出してしまいました(笑)
これらの(笑)は決して馬鹿にした笑いではなく、なんかもう一生懸命に足掻く姿に対して、切なく感情に訴えてくる笑いです。
しかし当然、優勝は前優勝者。
涙が止まらない芸人さんに、周りから「その賞金譲ってやれよ~」といったヤジが飛び交い、優勝者は「え~っ、泣けば賞金もらえるのかよ~」と舞台は大混乱。
ネタを用意していなかったとか、途中で逃げ出すとかいった事はプロとしてどうなのかという見方もあるかもしれませんが、もし接戦レベルのエピソード対決が出来たとしても、決してこんなカオスな笑いは生まれなかったと思います。
何が凄いって、ヘタレた姿をライブに披露してしまう芸人さんの人間味もありますが、それをいじる司会者芸人さん、囃し立てる周りの芸人さん、悪態をつきながらも賞金を彼に差し出す優勝芸人さん(受け取りませんでしたが)
普通なら「失敗」に対して盛り下がるであろう事態を大爆笑に変換してしまう全員の機転が利きまくった見事なチームプレイです。
(本作に戻ります)
楽しく笑えるからといって仲良しこよしの仕事仲間とはまた違った芸人さん達の関係性。
何より自分が目立ちたいでしょうし、ひがみや焦りの感情も常に隣り合わせでしょう。
どうすればこんな関係が生まれるのか、そのヒントがいくつも散らばった作品だったと思います。
本作はヨシモトに比べてずっと小さな事務所のお話しで、舞台ではスベリを笑いに転換できなかったくせに何故か楽屋で笑いをとっちゃったりの、まだこれからの芸人さん達でしたが、この日ライブや楽屋で繰り広げられた出来事を通して確実に何かが変わっていく姿を見る事ができました。
「笑い」に肥料が与えられた瞬間とでもいうのでしょうか。
毎日がプロとしての成長過程。
更に明日からの一日一日が彼等にどう繋がっていくのか楽しみでもあり怖くもあります。
サラリーマンには全く不向きな人ばかりでしたが、こうした日々を送り、「笑い」にハングリーでありつつ低収入や挫折を乗り越え、いずれ成功を掴んでいくような芸人さんには、そりゃもうかなわないと改めて実感する公演でした。
あなたも知らない舞台裏
バードランドミュージックエンタテインメント
新宿村LIVE(東京都)
2018/08/15 (水) ~ 2018/08/19 (日)公演終了
満足度★★★★★
華やかなテレビ、映画等の芸能界と隣接する2.5次元舞台制作内部にスポットを当てた作品。
小劇場演出家からプロデューサーに抜擢された青年のトンデモ奮闘記みたいな出だしから突然、えっそんな言い方しちゃっていいの?!・・・最近の2.5次元舞台に向けての辛辣な表現が飛び出し「ど~もこの舞台は只者ではないぞ」という予感が。
案の定、本作で描かれるショービジネスの世界は、メーカー脳の私にとって、希望、欲望、侮辱、打算、色んな思考が公然と渦巻いて、もう魔性の世界としか言いようがない。
段々何が正しくて何が悪なのかという単純な事すら混沌としてくるのですが、同時に非常に奥深く吸引力のある世界観に魅了されてしまいます。
遊び心ある攻めの演出で業界内部、というかそこで生きる人々の内部に踏み込んだ描写力が、ガツンと胸に響きまくり、初プロデューサー青年をはじめとする多くの舞台人、そして崖っぷち女優の生き様にグッときます。
こんな清濁合わせ持った業界だからこそ、時にはとんでもない名作を生み出し、時には全て裏目の失敗作を輩出する場合もあり得る事なのかと思わず納得。
今回のテーマである2.5次元舞台はこちらの新宿村LIVEでも多数公演されており、実際今回の観客にはファンの方も大勢いらしていたのではないかと思うのですが、本作を観てどんな感想を持たれたのかを想像すると、何だかザワザワしてきます。
恐らくキラキラした2.5の世界観に憧れる中高生ファンにとっては大人の事情がスーパー生々しくエグイ内容。
終演後、呆然と席を立つ姿が浮かんできます。
しかし大人の観客となると、こうした闇の匂いも薄々感じ取っていた部分もあるのではないかと。
闇があって、より輝く光の世界。
そりゃ舞台に魔物が棲むのも当然と思えてきます。
疑惑の教室にて
カスタムプロジェクト
調布市せんがわ劇場(東京都)
2018/08/10 (金) ~ 2018/08/12 (日)公演終了
満足度★★★★
謎の校舎に閉じ込められた12人の中に番長(殺し屋)が一人。
初の参加型推理劇に、もう謎を解く気満々です。
登場人物はそれぞれの職種がバラバラで、更に覚えやすい工夫もされていていたので、とりあえずは「人間関係が複雑だったらどうしよう」という心配はあっさりクリアー。
何より頼もしい高校生探偵がいてくれるので、彼の着眼点、発言は要チェックでしょう。
第一夜の犠牲者。高校生探偵の仕掛けを掻い潜ったトリックは、事前に頂いた状況案内パンフに目を通していた甲斐あって何とかイメージできたものの犯人までは分からず。
第二夜では高校生探偵のナイスアイデアも虚しく謎のまま殺人が敢行。
こんな事ができる犯人って誰?
第三夜ではなんと頼りにしていた高校生探偵が死亡、犠牲者に!
マジか~っ、ど~するの、犯人誰?
最終的には五日目にして出題パートは終わったのですが、「なんで」「どうやって」の連続でした。
推理パートでは4つの質問に答えなければならないのですが、特に4つめはかなりの難問。
余裕だと思っていた30分がめちゃくちゃ短く感じられました。
結局、資料のある部分をヒントに犯人の目星をつけたものの、犯行過程までは想像がつかず時間切れに。
当然の如く、解決パートはもう食い入るように拝見。
やっぱり引っかかりを感じたところには必ず意味があったのですね。
とはいえ考える時間が倍あったとしても全問正解は無理だったかな、謎解きの大胆さと意外なところにもあったヒントの多さに思わず笑ってしまいました。
私の正解率は4問中2問正解、うち犯人は的中しながらも犯行手口はひとつしか解けなかったのでこれも不完全かなと。
やはり推理モノだけに謎解き場面はとても面白く「そう解釈すれば良かったのか~」と、のたうち回りたい気分です。
同時にこういったタイプの作品はトリックの難易度加減が、観劇後の満足度と大きく関わっている様に思われ、今回は絶妙さの中にもかなり難しめの部分アリといった感じでしょうか。
とはいえ、あまりの大番狂わせにのけぞったり、ニューリーダーの台頭に眉をしかめたりと大いに楽しみ且つ頭を使わせて頂きました。
例えば観客も人質の一員になるといった作中に取り込まれた設定だと、より一層体感度アップになると思えたりもして、今後も参加型推理劇のパイオニアとして頑張って頂きたい劇団さんだと思いました。
千秋楽を迎え情報解禁のお許しが出たのでストーリー部分に言及しましたが思わず長文となってしまい失礼いたしました。
Kanagawa Music REVUE Show
MPinK(ミュージカルプロジェクトin神奈川)
溝ノ口劇場(神奈川県)
2018/08/05 (日) ~ 2018/08/09 (木)公演終了
満足度★★★★★
子役として実績を残してきたプロのミュージカル俳優でもある現役高校生がここに集結!
それだけに歌唱力はもちろん、ミュージカル特有のリズミカルな演技も実にスムーズ。
音響や舞台セット、スペースといった設備的な面では、さすがに大劇場と比べて不利なところはいくつかあったものの、それと引き換えに等身大の高校生役の伸びやかなステージが小劇場ならではの近さ、親しみやすさでもって楽しめてしまう公演でした。
「神奈川について楽しく学べるアットホームなミュージカル」という認識で決して侮っていたわけではありませんが、コミカルな中にも派閥的な対立、社会問題の提示と模索、こそばゆい感じ(⇐ここポイント)の恋愛などミュージカルの大好物がちゃっかりと盛り込まれ、そのすごく巧くできた構成力には驚きです。
ミュージカルナンバーはオリジナルも含めて全18曲。
もう正真正銘のミュージカル作品にしてラストにかけての総勢からなるナンバーの連打は圧巻。
レミゼからの1曲もぐっときました。
自爆!
劇団 バター猫のパラドックス
「劇」小劇場(東京都)
2018/08/01 (水) ~ 2018/08/06 (月)公演終了
満足度★★★★
総勢21名が織り成す“学園”という小さな国家。
現在平井堅が唄うドラマ主題歌『知らないんでしょ』がテーマ曲として流れてもおかしくないくらいに高校生や教師の闇を映し出した作品でした。
とはいえ暗くジメジメした雰囲気はあまり感じられず、演出、役者共に若さ溢れてむしろエネルギッシュ。
もはや金八先生お手上げ状態の惨状でしたが、これくらい振り切った内容の方が、実際の現役高校生が観ても刺さるモノが大きいのではないかと思えたりもします。
ただし学校を通しての観劇提案の場合、先生サイドからの許可はおりないでしょうが。
「66-2 ~ロクロク2~」
円盤ライダー
山野美容専門学校マイタワー27階 〒151-8539 東京都渋谷区代々木1-53-1(東京都)
2018/07/27 (金) ~ 2018/08/06 (月)公演終了
満足度★★★★★
通常なら出入り出来ない場所が会場。
それだけでもポイントは高いのですがビル27階は両サイドがガラス張りで、まさにここでしか見る事が出来ない眺望。
代表渡部氏が先頭をきって絶景ポイントを力説してくれていたり、分刻みに夕陽の加減が変化していったり、何やら沢山物販が並んでいたりで、いつもの開演待ち時間は当日パンフに目を通す時間なのに全く忘れていました。
私が拝見した前作「66ロクロク」の会場は渋谷シダックスでしたが、頭上にはキラキラシャンデリア、客席がL字で囲うステージスペースは前作よりも更に役者さんが近く感じられ、座る位置によって色んな個性アングルを楽しめる仕様。
リピートされる方は次回はあの席で、その次はあの席でと、きっと目星を付けられている事でしょう。
初見でも楽しめるという事は全く新しい設定?かと思いきや、出ました!日本を応援する会社「エール」
早々に「そうそうこれこれ」感が湧きあがり、設定とはいえあの後もちゃんと企業として生き残っていたのだな~と嬉しくなってきました。
そして前作から更にパワーアップした内容。会場いっぱいの熱演の中にも舞台を自ら楽しむ役者さんの余裕すら感じられ、いまだ進化し続けている劇団さんなのだと思わせます。
ステージスペースがあって客席に座って演技を観て楽しむのであれば、それは「観劇」という事になるのでしょうが、それ以上の意味をもったパワーで迫ってくるこの力強さは何なのか。
今回の公演を体感して、それってもしかすると「熱苦しいほどの連帯感」なのではないかと自分なりに思い至りました。
慣れ合いというわけでもなく、目に見えない不確かなモノに対しての確固たる自信と信頼。
それが舞台上に留まらず演者と観客との間にも波及していたのではないかと。
何だか良い“気”を注入してもらった様で非常にありがたいと思った公演。
あっ、でもセミナーとかじゃありません、コメディーです!
かざぐるま
ワイルドバンチ演劇団
中野スタジオあくとれ(東京都)
2018/07/27 (金) ~ 2018/07/29 (日)公演終了
満足度★★★★
劇団カラーという事でいいのでしょうか、3編とも信念ある登場人物が真っすぐに生き抜こうとする姿を描いた青春時代劇。
しっかりとした台詞のひとつひとつが、伝えたい内容を確実に観る者に届けたい!とする創り手の誠意の様に感じられ『地に足のついた台詞』の劇団さんだなーと思えます。
殺陣やアクションシーンは大きな見どころのひとつですがパフォーマンスに留まらず台詞等を盛り込みドラマを含ませている所が印象的でした。
ちょっと笑いを誘うような差し色があれば、より良かったと思いますが、ラストでの感情炸裂の連続は圧巻でした。
私は世界
ワンツーワークス
赤坂RED/THEATER(東京都)
2018/07/20 (金) ~ 2018/07/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
とても分かりやすく引き込まれる内容でありながら「危険地域取材の自己責任」と「若者の貧困の自己責任」どちらもなかなか正解を導き出せないテーマの提示であり、特に拉致問題に関しては人命が懸かっているだけに、いささかヘビーな気持ちが居残っています。
部外者としてただ報道で見聞きするのと、当事者やその家族、友人の目線になった場合とでは当然ながらモノの見え方が大きく異なり、改めて実際の事件報道内容に対して「致し方無し」と受け取っていた頃に思いが巡ります。
「自己責任」という座りの良い“突き放し”の正体が見え隠れする中、置かれた状況やとった行動が同じであっても、もし演者のルックスやキャラクターが変われば、心揺さぶられる色合いも微妙に変わってくるものと思われ、日本人は感情に流されやすく自分もその一人という事を実感せずにはいられませんでした。
忘却者来訪
ラビット番長
演劇制作体V-NETアトリエ【柴崎道場】(東京都)
2018/07/20 (金) ~ 2018/07/22 (日)公演終了
満足度★★★★
甘酸っぱい青春SFミステリーな感じは夏休みの香りがして季節的にピッタリ。
どこか懐かしい王道の面白さを楽しむ中、サイコパスを匂わす単語が出てきたあたりから不吉な香りも加わり、独特な光と影が生まれていました。
周りにサポートされつつフレッシュな役者さんが前面に出た演出は作品に合っていたと思います。
当日パンフで作者さんの指摘する本作と酷似した作品(映画化もされている)というのは、恐らく自分も実際舞台で観たことのある作品だと思うのですが、観ている途中では全く気づきませんでした。
私は上記のコントラストをもった今回の作品の方が断然好きです。
その作品が初演された10年以上も前に書きあげられ、しかも大学生時代の処女作とはとても思えないクオリティーでした。
顔!!!
艶∞ポリス
駅前劇場(東京都)
2018/07/18 (水) ~ 2018/07/25 (水)公演終了
満足度★★★★★
観客席から観ると大鏡の向こう側からテレビ局楽屋の様子を一望しているかの様な仕様。
幕が上がる(ライトアップする)と目の前にド~ンと出現しました、すっごい美人さん!
ただその冴えないオーラからすると、満たされていない事は明らかなのですが、いったい・・・
作者の方はTV局もしくはそれに関連した仕事経験アリか、でなければ相当な調査をされているものと思われ、舞台上の楽屋ではさもありなんと思わず納得に次ぐ納得の超現実的エッセンスが盛り沢山。
『ドラマ』よりもシビアで面白い『楽屋裏でのドラマ』が繰り広げられていました。
これまでTV番組等でも“業界モノ”はあったかもしれませんが、この舞台表現力の生々しさたるや本作の前では全て吹き飛んでしまいます。
登場する女優さんにしろメイキャップさんにしろ自分自身が売りモノなだけあって実に個性的。(いや局のスタッフ、マネージャーさんもかなりきっつい面々)
作者さんの意図するところは「美人はつらいよ」かもしれませんが、私には「美人であろうとなかろうと女はつらいよ」に受け取れました。
むしろ美人女優さんには「こんな生き馬の目を抜く芸能界に身を置くのなら、“枕上等”くらいのしたたかさがないと生き抜けないんじゃないのか」と思ってしまったのですが言い過ぎでしょうか。
何気に笑いどころ満載なところを含め、もう最高!!に楽しめましたが、女性の方なら、どこか身に覚えがある事もあったりして(無かったら無い事に対して)よりヒリつく様な面白さを味わえるのではないかと思いました。
招きたい客
座★ピカロ et teamDugØut 共同プロデュース公演
武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)
2018/07/14 (土) ~ 2018/07/17 (火)公演終了
満足度★★★★
オープン初日に仲の悪い女優同士が鉢合わせしたり、ミーハーなカップルがいたり、映画監督、パパラッチ等々クセの強いお客様が続々。
登場人物の一人が「あれっ何か前に見たことがあるような気がする」の台詞に「おやっ(別の意味で)自分もこの感じ観たことあるような気がする」と頭の中でつぶやいていました。
現代日本の設定とはいえ舞台は孤島に佇む洋館ペンション。そして外は嵐。
異なる部分も沢山あるものの、この感覚は昔観た『マウストラップ』じゃないのかと。
島の名前も「アガサ島」・・・確信犯決定ですね。
全員容疑者の殺人事件に、ペンションの中は疑心暗鬼の渦。
このままアガサ・クリスティーのエッセンスたっぷりの本格推理ミステリーとして正統に突っ走るのかと思いきや・・・
再演もあるかもしれないのでこれ以上は自粛ですが、結局しっかりオリジナルな作品でした。
大胆な構成、ラスト20分が本公演の本当の核なのでしょう。
このストーリーを制作する過程に興味が湧きました。
竹取物語 ~KAGUYA~
studio-TATE 殺陣道場
座・高円寺2(東京都)
2018/07/15 (日) ~ 2018/07/16 (月)公演終了
満足度★★★
舞台未経験者のチャレンジの場としては、なかなかに贅沢なステージ。
新生「竹取物語」。『バックトゥザフューチャー』テイストINのストーリーや途中スピンオフが入るアイデア等、演出にはパフォーマンスもふんだんに取り入れられて、ちょっとしたお祭りの様相。(もっとはっちゃけても良かったくらい。いやむしろそうして欲しい)
役者さんにとってはさすがにハードルが高いステージだったようにも感じましたが、光る原石探しの楽しみもアリ。
かぐやと信長は主役という事でナルホドといった感じですが、個人的には柴田勝家とザビエルも光って見えました。
これだけ若い役者さんが多いのであれば新生『コーラスライン』。セミドキュメントな感じのオーディションものを演ってみても面白いと思いました。