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Lobby

Lobby

VOGA

マスギビル地階特設会場(京都府)

2015/09/26 (土) ~ 2015/10/12 (月)公演終了

満足度★★★★★

時代に翻弄されたビルと女性の物語
Lobbyの舞台は黄昏時の光が差し込むビル内で佇む老婆の後ろ姿から始まる。1929年に貿易会社の社長だった父親がこのビルが完成させたと同じ頃この女性も生を受け、生涯をこのビルと共に過ごしてきた。今まで何者の侵入も許さず、オーナーとしてビルの中で閉じこもって暮らしてきた彼女だったが、人生も黄昏時に差し掛かった今とうとうビル管理会社に所有権を売却することを決意し管理会社社員をビル内に招きいれる。招かれた社員達はさっそく見学しようとエレベーターで上階を見て回るのだが、どの階にも老婆と同じ名前の女性がいる。しかも、階を上がる程に、その女性は若く、幼くなっていくのだ。
「このビルは、私そのもの。」

ネタバレBOX

1929年から現代に至るまでの動乱の時代を、老婆はビルと共に生き抜いてきた。このさびれたビルが、老婆の身体そのものを表象しているのである。そのビルを明け渡し別の人間を招き入れることは人生の終わりを受け入れることを意味するだろう。しかし、過去と向き合うことができた彼女はおだやかな顔でこう言う。
「ようこそ、私のロビーへ。」
面白いことに、この公演は実際のビルの地下、つまり老婆にとっての「未来の世界」を特設舞台としている。(戦争によって心に傷を負った老婆にとっては、安保法の成立する時代が未来になるとは皮肉な話だ。)観客たちはこの「未来の世界」から、舞台上で繰り広げられるタイム・トラベルを経験する格好になる。

地上の世界から離れて地下に足を踏み入れれば、そこはまさに非日常の空間。その場所ならではの奥行きを利用した舞台美術や、単語の繰り返し・不可思議なリズムの音楽、さらにモダンダンスを取り入れ、目でも耳でも楽しめるおしゃれな作品。とってもお勧めです。

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