『タダノヤサイダ』
7millions-ナナミリオンズ-
小劇場B1(東京都)
2015/01/14 (水) ~ 2015/01/18 (日)公演終了
満足度★★★
もう少し深みがほしい
育てる男、枯らす男という真逆のコンビが巻き起こす農業研修先でのお話。その研修先の同僚など、多くのキャストが登場し、それぞれが自己紹介する場面から、人物描写が均一であまりメリハリが感じられなかった。
しかし、アグリビジネスに絡んだところから人間くさい話に展開しだすが…
ネタバレBOX
育てる男が耕した土地で収穫できた野菜は、その形が大きく(酵素もたっぷり含むと誤解)、”奇跡のヤサイ”として販売することになった。その甘い話に便乗しようとする研修生たち。しかし、それが実は”タダノヤサイ”であることがわかったときの反応。人間の魂胆がアリアリと感じられる愁嘆場ならぬ醜態場であるが、なぜか笑い転げ、開き直る姿に白けた。「奇跡のヤサイ」から「タダノヤサイ」への転換は、一瞬の暗転で大きさく状況が変化する。突然の状況変化は、観客の心を置いてきたのではないだろうか。少なくとも自分は丁寧な説明が欲しかった。その後、研修先が閉鎖することになり、研修先の人間や、育てる男の元妻、枯らす男を恨む女…など、全登場人物の身の振り方を説明する。更にその後が続き、結末とその余韻が残らなかったのが残念である。
もう少し、日本の農業問題を絡めて、社会性が垣間見えても良かった。
今後の公演に期待しております。
キネマ狂想曲
シノハラステージング
戸野廣浩司記念劇場(東京都)
2015/01/20 (火) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★
映画ファンとしては、少しガッカリ
タイトル通りカプリッチオというのが第一印象である。
初日に観劇した際、視覚障害者の方のため、通常の前説に加え、舞台セットの配置の説明をしていた。多くの観客に観てもらいたいとの思いが伝わる。そのセットは、間口6m、奥行き4mの全体スペースに、上手・下手に長辺2m、短辺1m、高さ60~20cmの長方形台座が横向き、縦向きに5台置かれているシンプルなもの。ただし、このセットが演出上、どのような効果があったかは分からない。
さて、公演であるが、シネマに関する…
ネタバレBOX
映画業界の裏本・噂本の類が描かれるが、その中心的ストーリーが姉弟の恋愛感であり、話の広がりがない。
映画監督が、実姉を主演女優にしたいとの思いが、周りを巻き込んでてんやわんやの騒ぎになる。しかし、そのプロットに新鮮味もなく、納得性も感じられない。単に、姉弟の近親恋愛(U15はこの場面ではない)であるが、そこに愛欲が感じられない(設定上も肉体関係はなかった)。ストーリーを引き立たせるエピソードもなく、40歳過ぎの熟女を主演女優にするためのスタッフによる裏工作(一般的に仄聞できる程度)が…。もう少し業界暗部を炙り出す、抉り出すような見せ場がほしかった。
また、キャストの演技力に差があり、バランスを欠いていた。その結果、感情移入ができなかった。初日で緊張か?左右の手足が同時に出る、また歩くときに手を振らず体(腰あたり)につけたまま、まるで機械仕掛けの人形かロボットのような演技であった。
全体的に未完成のような気がしてならない。
今後の公演に期待しております。
雪のくれた時間
メガバックスコレクション
キーノートシアター(東京都)
2015/01/17 (土) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
温かい心に…
笑みがこぼれる公演である。メガバックスコレクションという劇団の芝居としては、ずいぶんと優しい感じがするが、楽しめる。
まず驚くのが、いつもそうだが、その舞台美術の素晴らしさである。今回も小劇場…といっても貸スタジオといったところが、見事にミニパーキングエリアを作り出していた。
そこで繰り広げられる人間模様。説明にあるとおり「大きな謎やどんでん返しがあるわけでもありません。ただ、日常の風景を切り取った」だけであるが、やはり終盤まで”謎”を引っ張り観せようとする。
しかし、「今回、キャストの半分が新メンバーと言うこともあって挑戦」ということもあり、いままで本劇団の公演を観て来た方には物足りないかも…。
ネタバレBOX
メガバックスコレクションという劇団の得意とするシチュエーション(限定条件下での人間観察・模様)は同じようであるが、決定的に違うのは、そのエッジの利かせ方である。今まではもっと極限状態・緊迫状況であったが、今作はそのスリリングさに欠ける。もっとも説明文からそのことは承知した制作であることがわかる。
劇団特長の”光”ともいうべき魅力に陰りがあり、訳あり女性の苦悩も、少し肩透かしの理由だった。
少し気になった点は、大雪という前提であるが、出入り口のドアが開放されたままの時があり、厳冬感が損なわれるシーンが何回かあった。寒ければ誰かしらドアを閉めると思うが。
上演後、脚本・演出の滝一也 氏に聞いたところ、また深層を抉るような芝居をすると話してくれた。
(Aチーム観劇)
今後の公演も楽しみにしております。
琥珀-elektra-
EgHOST
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2015/01/16 (金) ~ 2015/01/18 (日)公演終了
満足度★★★
今後が楽しみ
ギリシャ悲劇「エレクトラ」「オレスティア三部作」を題材にした公演であるが、西荻小虎 氏の真面目な?性格を反映してか時間、場所も「書」と同じイメージで制作したようだ。その描いた内容は、王家での愛憎劇そのままであったが、もっと自由に扱っても良かったと思う。いわゆるモチーフとして、その核心だけを租借して、自分なりの劇に挑戦してほしかった。
ネタバレBOX
2014年12月公演「the end of evrything(兼忘年会)」は、宇宙の壮大なストーリーから身近な恋愛観へ呼び寄せる巧みな芝居(客席が舞台になっていたので公演とは言わず)を見せてくれた。今回公演でも宇宙(特に「太陽」や「月」との会話)をイメージした場面がいくつかあった。
もう一つ特徴的だったのは、ダンスパフォーマンス…導入部で女性キャストが踊っていたが、妖艶や神秘とは違い、そぅ呪詛をかけている印象だ。
公演を経ることによって、その劇団のイメージが出来てくると思う。EgHOST
に対する自分の感じ方は”宇宙との関わり”と”不思議なパフォーマンス”である。劇団カラーを確立しつつ、一方、いつでも変化する柔軟性が大切だと思う。それにはしっかりと潮目(時と場所)を捉えてほしい。また、「何か」をモチーフにしたEgHOST版愛憎劇(時)と劇場(場所)を見極め、西荻小虎 氏の特長が感じられる脚本・演出を楽しみたい。
今後の公演にも期待しております。
子どもの頃から
演劇企画集団LondonPANDA
小劇場 楽園(東京都)
2015/01/16 (金) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
確かな芝居
東北地方における家庭の何の変哲もない日常生活が描かれている。坦々と話しが進んでいくが、表面上は穏やかな生活が実は…。
文章でいう起承転結のある分かりやすい脚本だと思う。その演出も手堅いように感じた。もちろんキャストの演技力は素晴らしく、演技のバランスも良い。ホームドラマはその導入部が、その後のストーリーの牽引に影響すると思うが、この公演では見事にクリアーした。とても確かな公演であった。
しかし、気になることが…。
ネタバレBOX
次の点が気になった。
1.衣装から冬季であることは間違いないが、東北地方のわりには外出から 帰ってもその寒さが伝わらない。
2.季節感だけでなく、東北地方の土着性のようなものが感じられない。確か に、青年団、婦人部という地域コミュニティの名は出ていたが、台詞が方 言でないことも一因しているかも。それよりも、少し前(昭和50~60年 代、黒電話等)の雰囲気が漂う(この時代に携帯電話、スマホ等はないの で矛盾もするが)。
3.カレンダーへの丸印…アフタートークで時間堂・黒澤世莉 氏も同様の疑問が出された。 いろいろな解釈ができるとのこと、観劇してイメージしてほしいとのこと。
4.最後に、これが最大の疑問であるが、実姉妹であっても自分の妹が夫と 浮気し、堕胎までしていることを聞き、結末のような思いに至るだろうか? ハッピーエンドという予定調和のような気がした。
今後の公演にも期待しております。
新宿版 千一夜物語
Project Nyx
東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)
2015/01/16 (金) ~ 2015/01/25 (日)公演終了
満足度★★★★
寺山ワールドを現代風に
説明にあるとおり「新宿版 千一夜物語」は、寺山修司が1968年に書いた問題作。古書店で手にした時、200頁を超えていたような気がする。それを途中休憩をはさみ2時間30分程の上演時間にまとめた。
1968年といえば、日本は東京オリンピックを終え大阪万博の準備をしている、いわば活況を呈していた時だったと思う。自分はよく知らないが、東京(新宿)では男性は長髪、女性はミニスカートが流行っていたと聞く。そんな中心街(特に夜)での華やかで幻想的な様子が描かれていた。
とはいえ、当時の時代感覚をそのまま描かず、敢えて現代風に演出しているところが良かった。
ネタバレBOX
1968年当時の風俗的な描写を入れても、それはその当時を知る人たちのノスタルジーを彷彿とさせるだけだろう。もっと若い観客を意識した、新しい「新宿版 千一夜物語」にしたことで、今後も寺山作品が生きていくと思う。そういう意味では寺山修司の作品らしいエッセンスを取り入れながら、時代に相応した見応えのある公演であった。
また、この1968年は寺山修司と羽仁進が共同で「初恋・地獄篇」という映画のオリジナル脚本を執筆している。「第36回PIA FILM FESTIVAL」(2014年9月)で鑑賞したが、この映画はドキュメンタリー8㎜作品であるが、その時代を切り取った映像は見事。
翻って、やはりその時代の一部を切り取った「新宿版 千一夜物語」…”歌舞伎町で繰り広げるアラビアンナイト、詩と幻想とエロティシズムとロックパッション!!”の謳い文句に大いに酔いしれた。
今後の公演も期待しております。
マナナン・マクリルの羅針盤 再演 2015
劇団ショウダウン
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2015/01/15 (木) ~ 2015/01/18 (日)公演終了
満足度★★★★★
やはり素晴らしかった!
2014年池袋演劇祭参加作品として観た時も素晴らしかったが、再演も色褪せていなかった。一人何役も演じ分け、人物像もイメージ出来た。また物語の背景・状況説明などストーリーテラーの役割もキチンと行い、その演技力には改めて驚いた。
些細だが、”おぉ”という驚きと”あれ”という傾げの両方があったが…。
ネタバレBOX
まず、”おぉ”の方だが、演劇祭の時にはなかった小ネタの演じとラストシーンの彩りの2つである。
前回観た時以上に表情が豊かになったと思う。それだけ感情表現が上手になったということだろう。なお、小ネタは舞台上手にある船甲板で海軍軍人(副官)が「命などいらない」旨のセリフを吐いた後の部下達の表情…一様に驚いた顔・顔がコミカル。屈んでの演技だけに後ろ席では観にくいかもしれない。
ラストシーン…前回は単に暗転しただけであったが、今回は少し色彩が添えられた。これは観てのお楽しみ。
”あれ”は、前回に比べ立ち回りが小さくなったと思う。前回の劇場・シアター風姿花伝では、舞台をフルに使用していたと思うが、今回は舞台中央での演技が中心であった。大海原に船出するイメージ、格闘・乱闘シーンのスケールが小さくなったなど、物語の壮大さが少し失われたような気がした。立ち回りと引き換えに感情表現が豊かになったのかもしれない。
もう1つ、客いじり的(休憩)シーンがやはり前回と比べ長くなったようだ。
観客の集中力が途切れない程度に(ギリギリだった)…。逆に役者としての集中力はどうなのだろうか?
しかし、公演全体は素晴らしいの一言。
自分は前回公演との比較で書いているが、初見の人は十分楽しめるのではないか。
次回、9月の あうるすぽっと での公演を楽しみにしております。
空飛ぶコーポレーション
HiRunder
ザムザ阿佐谷(東京都)
2015/01/13 (火) ~ 2015/01/18 (日)公演終了
満足度★★★★
楽しんだ!
「犯罪が必要とされる現場に人材を派遣する犯罪会社だった。」という説明文の通り、ダーク要素が強いのだが、観て楽しむ芝居としては好きだ。
人の身魂を震わす、深淵を覗くことや、鋭く社会問題にアプローチするような、いわゆる”通”の演劇鑑賞者には緩い感じがするだろう。しかし、表層だけでも観て楽しむ者、少なくとも自分は面白かった。
この犯罪会社が本当にあれば、それだけでも怖い存在であるが、究極的にはその会社で行うことは犯罪であり、社会正義に照らせば許されることはない。そこで働く社員(犯罪者)の人間としての場面ごとの選択を問うているところに興味を覚えた。
その選択とは…
ネタバレBOX
最終的には、犯罪会社(国家の認知があるらしい)が国家権力によって壊滅させられるわけだが、その組織もろとも働いていた社員を抹殺しようとした時、自分の命と向き合うことになる。ここからは、いろいろな事情が絡み最終的には正義感へ…予定調和であるが、それはそれで結末をつけなければならない。
ストーリー的には疑問符がいくつも付くが、そもそもが犯罪会社の存在が不思議なのだから、些細なことは拘らないことが楽しむコツかもしれない。
なお、初日のせいか演技はかたく、セリフの噛みもあった。しかし全体的に迫力・緊張感が感じられた好公演であった。
今後の公演にも期待しております。
ビリーバーズイントウキョウ
ぷぐあんず企画
要町アトリエ第七秘密基地(東京都)
2015/01/10 (土) ~ 2015/01/11 (日)公演終了
満足度★★
描き切れない
人生において、あの時こうしてい“たら” “れば”、を言っても無意味であろう。それこそ、時空間移動できるのであれば、話は別であるが。
そんな空想劇のようで、ネバーエンディングストーリーを想起した。最もそんな壮大な話ではなく、関西から東京へ活動の場所を移したい、という身近な事が発端のストーリーである。
その演出が、自分の好みに合わなかったが…。
ネタバレBOX
舞台は、上手・下手に折りたたみのパイプ椅子が3脚づつ合わせ鏡のように置かれ、その後ろに衣類が散乱している。上手は、現在の生活の延長線上を、下手が現状打破を目指した後日談といったところだろう。さらに、男女(アプローチは男)の愛情または恋愛に対する表現が、繰り返し行われる。この反復がイライラさせるほどしつこい。テンポも同じであるから、その意図するところが分からない。
上演時間が50分と短いことを考えると、勿体ないと思う。
要約した内容で、描き切れなかったのでしょうか。
次回公演を楽しみにしています。
タコの娘
ハイブリッド渾沌
新宿ゴールデン街劇場(東京都)
2015/01/09 (金) ~ 2015/01/12 (月)公演終了
満足度★★★
物語の底流は…
「愛情表現」ということか。
さて、演劇ユニットのモットーは、“なるべくわざとらしくない極端な感情表現と不可思議な踊りっぽいもので、奇妙な世界の創造を目指す“…はよく現れていた。自分の父親がタコという無茶な設定で、オーソドックスな芝居を好む人には受け入れられないかも知れない。
もっとも最後のオチは…。
ネタバレBOX
自分の娘に父親がタコだった、と告白するところから物語が始まる。
擬態する方法を身に付け、家族のために身を粉にしてどころか、本当に身を削り(切り)守る…この件、「幸福な王子」(オスカー・ワイルド)を想起した。タコということで、8回の大きな支出(娘の学費等)を身を切って工面した。最後は…まさに家族のために犠牲になったかのようだ。
しかし、演出は暗くならず、不思議感を持ったまま公演は貫かれる。
さて、父親や娘を抱えた女が就いた仕事は、ストリップ嬢。生きる逞しさが救いだが…、最後に本当の父親は誰だったの、という問いで終わるところに女の強かさが見えた(母親の性癖への批判か)。
次回公演も期待しております。
月見草
劇団ヌカヅキ
北池袋 新生館シアター(東京都)
2015/01/08 (木) ~ 2015/01/12 (月)公演終了
満足度★★★
時代背景が…
感じられなかった。説明文にある「大正」という時代を”虚ろな、幻影の時代”という魅力的な表現で紹介しているが、その雰囲気が感じられなかったのが残念である。
「大正時代」にはそれなりに恋愛事件もあり、それらを題材にした小説家の話かとも思ったが、ストーリーはあまりにストレートというか単純すぎて見せ場がなかった。
主宰側が描きたいことをキチンと持つことは大切であるが、一方、演劇は観てもらわなければ興行にならない。描きたい気持ちをどう観客に伝えるか、その努力の大きさが大切になると思う。
ネタバレBOX
「大正時代」を謳い文句にしている以上、そこを意識した演出をしなければ、今後の公演でも観客の期待を裏切りかねない。何事も相手に伝える時、多かれ少なかれ色々準備をすると思うが、公演にしても同様であろう。
旗揚げ公演で、色々経験したこと、アンケート等の感想・意見を真摯に受け止め、また次回公演に活かすという姿勢が大切だと思う。厳しい意見こそ、伸びしろがあると前向きに捉えては…。ここで、大切なのは継続して活動すること。
次回公演に期待しております。
「だいなし」/「本日昔噺」
劇団ウミダ
王子小劇場(東京都)
2015/01/08 (木) ~ 2015/01/12 (月)公演終了
満足度★★★★
好みが分かれるかも…本日昔噺
旗揚げで2作品を同時上演するという、無謀と思える企画だ。しかし、少なくとも自分が観た「本日昔噺」は、著作権無視、人権を考慮したのか、というようなパロディのオンパレードであった。しかし、面白さはあった。ただ、その描こうとした内容は「新年の勢い付けに是非!」という威勢のよい謳い文句に隠れてしまった。旗揚げということから、少しは印象に残る公演にしなくても良かったのか、という疑問を持ち、一方、そう思わせることが目的であったのであれば成功かもしれない。
日程の都合で、「だいなし」が観られなかったのは残念であった。
ネタバレBOX
時代、場所も架空の設定であろう。前田前次郎=前田慶次(傾奇者)、マリー・インタアネット=マリーアントワネット、理研の小○方さん、映画「桐島、部活やめってよ」の桐島など、実在、架空人物から、国、時代背景など、まとめて俎上にして、古今東西の人間の欲望に対する貪欲さを描いた、と思われるが…。誰もが自由に解釈できるような設定(もしくは無設定)だから、観客がそれなりに楽しめたのなら、それで良しの世界であろう。ここが観客の好み、感性によって分かれるところだろう。
まぁ、当日パンフにある「劇団ウミダの次回! 次回はあるのか?! 次もやるのか?!」という一種自嘲気味な文字が気になる。
ぜひ、次回公演も期待している。
一句頂一萬句 -出延津記-
タイニイアリス
タイニイアリス(東京都)
2015/01/09 (金) ~ 2015/01/11 (日)公演終了
満足度★★★★
一萬言に優る表現力
競演 東西南北 AliceFestivalの一環として上海戯劇学院(国立演劇大学)を招聘し公演したもの。この作品は現代中国屈指の若手ベストセラー作家 劉震雲 氏の原作で、若い陳一諾 女史が90分の編劇にした。
本公演は、原語上演で字幕は映し出されない。その代わりに当日パンフに粗筋(プロローグ、エピローグ及び全12場)が記載された資料が配られる。もっとも「下層の庶民の言葉が通じない孤独、やるせない流浪感を描いて」いるのであるから、芝居に集中してみるのも一興かもしれない。
本内容は、原作者、編劇者、そして舞台監督・演者は皆若く、それこそ、新しい世代が身体と心で挑む!という謳い文句に恥じない素晴らしいものであった。
ネタバレBOX
原作者が劉震雲 氏(「温故一九四二」の作者だったと思う)というところが、日本受けしたのだろうか。舞台は同じ中国・河南省という設定で、汽車の中で働いている楊百利が本当と嘘の入り混じった話をするところから始まる。
その物語は、自宅を出奔し、放浪しながら人の善意、慈悲、裏切り、愛憎などいろいろな場面が展開される。その演出は素舞台に椅子、棒、などの小物と衣装(下手に吊るしてある)を場面に応じて着替えるというシンプルなもの。しかし、その表現は、言葉が分からなくとも十分に伝わるという不思議感覚を味わえる。またテンポもよく舞台に集中させる力量はさすがである。
今後もこのような機会が得られることを望んでおります。
Sの悲劇【全日程終了致しました。ご来場有難うございました!】
Sun-mallstudio produce
サンモールスタジオ(東京都)
2015/01/07 (水) ~ 2015/01/12 (月)公演終了
満足度★★★★★
本格的推理演劇…
期待通りの素晴らしい公演である。本格的推理演劇の謳い文句に偽りはなかった。
まだ公演中のため、後日追記
は?
艶∞ポリス
OFF OFFシアター(東京都)
2015/01/07 (水) ~ 2015/01/11 (日)公演終了
満足度★★★★
悲喜劇のような
”喜劇”ということだが、観方によっては喜劇・悲劇が同居しているような感じだ。いずれにしても人間関係の醜悪な面だけど…。
ネタバレBOX
舞台セットは、上手に売店カウンター、下手に社員の談話控え室、中央が廊下、という作りである。
デパ地下における売り子女性(派遣)の嫉妬など、あぁそうなんだと納得できそうなシチュエーションが面白い。このデフォルメ感が表層的には喜劇。しかし、新人(派遣)が男性の正社員に取り入って正社員になって立場が逆転してからの対応(観方によって)は粛清?のようで、雇用形態への皮肉、批判がチクリと見える。
さて、結末については、観客によっては評価が分かれるかもしれないが…
さて、公演はその女性という同性から観た鋭く、また厭らしい視点が随所に見られて面白い、その反面怖いとも思う。そのグイグイと引っ張っていくテンポのよい演出は見事である。そして、それを上手く体現させるキャスト陣も素晴らしい。
さらに、女性の苛め、噂的な様子をインターネットでリアル中継するところは、現代社会の情報拡散(虚実綯い交ぜ及び誇張)の怖さが見える。面白くも楽しい芝居の中にしっかり問題提起をする。
全体的にアイロニの利いた観応えのある公演であった。
次回の公演も期待しております。
すっとこどっこい大晦日スペシャル
大川興業
ザ・スズナリ(東京都)
2014/12/30 (火) ~ 2014/12/31 (水)公演終了
満足度★★★
初笑い
「大川の大忘年会2014」の「すっとこどっこい大晦日スペシャル」は、大晦日から年を越した深夜1時までの公演。実に多くの芸人が登場し、漫才、一人芝居等を観せてくれた。大川興業以外のゲストは、モロ師岡、清水宏、Wコロン、藤田記子など。会場は「ザ・スズナリ」であったが、隣接する劇場「シアター711」からも観客が途中入場し、一時は「ザ・スズナリ」は通路にまで観客が座り、一緒に笑いに興じた。
年越しカウントダウンは外に出て劇場前にスクリーン映像を見ながらクラッカーと歓声で一体感あり。最高の盛り上がりを見せた。
さすがに高校生以下の子供・学生はいないが、アベック、夫婦連れの姿もチラホラ見受けられる。
ここ2~3年はこんな年越しを、それから初詣へ…2015年も初笑いは満足した。
お笑い裁判の歩き方2014
大川興業
ザ・スズナリ(東京都)
2014/12/30 (火) ~ 2014/12/31 (水)公演終了
満足度★★★
2014年の刑事裁判傍聴記
「大川の大忘年会2014」の一つ「お笑い裁判の歩き方2014」は、阿曽山大噴火 氏の刑事裁判傍聴記をイラストマンガのスライドを交えて面白おかしく聞くというもの。単にそれだけなのだが、なぜか聞き入ってしまい、アッという間に2時間が経つ。
毎月の面白そうな裁判ネタを取り上げて12カ月分を披瀝すらが、一応各月のトピックス的な話題も紹介する。ネタは、有名人などの話ではなく、一般人の起こした事件内容、とそれに関係した人物…裁判官、検察官、弁護士や被告当事者の人物描写が実に見事な笑いを誘う。
もっとも一番笑ったのは…
ネタバレBOX
阿曽山大噴火 氏 本人のこと。2014年は御嶽山の噴火があり、多大な犠牲者が出たが、それを想起させる名前でのメディア露出はできず、本名を使用せざるを得なかったらしい。芸名がアダになったようだ。
tHe End oF EveRyThing
EgHOST
新中野ワニズホール ( Waniz Hall )(東京都)
2014/12/29 (月) ~ 2014/12/29 (月)公演終了
満足度★★★★
楽しめた!
今回のイベント・公演は、劇団の忘年会を観客と一緒に楽しむこと。そして一夜限りの公演…。
会場は、新中野にあるライブハウスで、劇団関係者・友人で満席状態だった。飲みながらリラックスして芝居を楽しんだ。キャストと談笑して、気がついたら結構遅い時間まで居た。劇団関係者の盛り上げようとする心配りが嬉しかった。
さて公演は、特に舞台セットはなく、観客が座っている間を動きながら、少ない動作と台詞で状況説明をする。説明文にある「アインシュタインの相対性理論」「マルクスの資本論」「エンデの“モモ”」をほぼ順番通り説明していくが、これがまた面白く、見応えもあった。
ネタバレBOX
宇宙誕生という壮大な話から、恋愛という極めて身近な話へ繋げてくる。理論は、証明が出来れば納得性が得られる。一方、恋愛はその証明が出来ないし、その必要もない。当人同士がその気持になれば良いのだから…。ここまでが宇宙・地球と人間個人の関係が描かれている。さらに人間の能力には優劣があり、だから生産性(出来・仕上時間の差)が生じるという。短時間で作業が出来る優秀者が、劣者から時間を買い上げ、更に生産性を増す、という”資本論“と“モモの時間貯蓄銀行”が絡んでくる。最後は時間貯蓄も含め愛情で包み込む、というハッピーエンドになる。
面白い着想と話の展開は見事だった。
アンコールも手伝って?…会話劇に酔いしれた。
ただ、狭い客席の間を動き回るため、接触、怪我が気になったが。
楽しいひとときをありがとうございました。
うぶ
INUTOKUSHI
駅前劇場(東京都)
2014/12/19 (金) ~ 2014/12/28 (日)公演終了
満足度★★★
笑いがあるが…
誰とも関わりたくない、一人でいる時のほうが心地よい。そんな無関心な人間が多くなったのだろうか。ある種の自己防衛であるが、逆に人間は一人で生きられないとも…そんなことをしたり顔で言われてもね~。
ネタバレBOX
主人公(女子高生)は愛らしく、外見はコスプレ紛いというギャップ感・奇抜さが印象強い。そして彼女を取り巻く人間関係が面白可笑しく描かれて、ほのぼのとした気持ちになる。タイトル「うぶ」は、人との関わりを持たない、ズバリ”純真で初々しい様子“を現しているのだろうか。ず~と続けられるか不安でもある。傍から見たらブーイングが聞こえてきそうだが…。
さて公演だが、随所に笑いがあるが、全体通じてみると印象が弱い気がする。公演の主張がデフォルメされた演出・演技で霞んだようだ。表層を面白くするのは良いが、テーマとのバランスも大切である。
突き抜けたコメディであれば、この演出・演技は受け入れ易いと思う。
今後の公演を楽しみにしております。
千と千尋の上石神井
(裸)ミチコイスタンブール
OFF OFFシアター(東京都)
2014/12/26 (金) ~ 2014/12/29 (月)公演終了
満足度★★
消化不良
主人公のような人間は少なからずいると思う。これからどう展開していくのか見守っていたが…。描き方が中途半端に思えて残念である。
ネタバレBOX
学生時代から自我不在、優柔不断、緊張過敏で、先輩から誘われるままにバンドを結成するが、恋人から将来の生活不安を言われ脱退する。そしてサラリーマンになるが、対人関係は上手く築けず、ましてや営業職など勤まらない。失敗の連続で上司の叱責…どう責任を取るのか、という攻めの常套句に悩む毎日。
気弱な人間の対処方法は、人と関わりを持たないこと。自分一人になれる場所が上石神井の神社のようだ。なんともやるせないが、今後に展望があるのか、更なる失意が待っているのか気が揉めた。
バンド仲間に戻れず、サラリーマン生活に疲れ、妻(恋人だった)の浮気…これからの展開を楽しみにしたところで終幕。これからどうなるの?
これからの展開は観客の想像で、ということだろうか。もう少し描き込んでほしかった。
さて舞台セットは、たぶん上石神井にあるバー(上手にカウンターと椅子4脚、下手にボックス席)であるが、場面転換として、中央の壁部分が観音開きになり神社境内(フライヤーの絵は狐か?)が現れる仕組み。なお、終盤は、暗転が多く集中力を欠いた。
今後の公演に期待しております。