コロラド
いびき
新宿眼科画廊(東京都)
2015/03/20 (金) ~ 2015/03/24 (火)公演終了
満足度★
合わなかった(女性バージョン)
自分の感性が鈍ったかもしれないが、本公演は何をテーマまたは主張したかったのか理解できなかった。
説明にあった脱獄シーンに興味を持って観ただけに残念な描き方だった。
ネタバレBOX
監獄内での女性囚人の会話は、普段よく見聞きするような「嫌らしい」「いじわる」「悪口・陰口」の類…別に収監されている状況にしなくてもよい。興味を持った脱獄の手口は、警察内部の手引きという安易な方法。拍子抜けするような話で残念だ。
演技…というよりコントを見ているようだが、わざとらしい笑いネタでは、真に笑えない。ドタバタ騒動は見苦しかった。
次回公演に期待しております。
モルフィンの伽唄
企画団体シックスペース
荻窪小劇場(東京都)
2015/03/18 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了
満足度★★★
幻想的であるが...
照明は公演全体を通じて薄暗く、時に妖艶もしくは幻想的な雰囲気を醸し出すような色彩光を照射する。そのビジュアル的な観せ方は魅惑的であった。
ネタバレBOX
衣装は妖しげな演出効果を上げるため独特であったが、その統一感があったのだろうか。自分にはその意図が分かりかねた。支配人のチャイナドレス、(紅い花/母親)役の赤い肌襦袢...薬物に侵され堕ちたイメージだろうか。その割には髪は梳いており、襦袢も洗いたてのようだ。
さて、舞台上は、4個のBOXを置いただけで、その組替え、積重ねで現実状況や心象風景を説明する。使用しない場合は隅に寄せ、スペースを広げて舞踊(男性だけの群舞...中毒患者の苦痛表現か)する。群舞姿は力強いが、その苦悩度合いの多くまたは大きさを表現したのだろうか。
ストーリーは、薬物による幻影...そこで繰り広げられる世界観は神学的、哲学的なもの(登場人物名が、エンゼル、アダム。ちなみにモルヒィン、ヘロインもいる)...それは抽象的な表現になっており、その演出も有りかもしれない。しかし、話を進めるための伏線(例えばシャルルの腹にある傷跡)は、その後の話にどう繋がったのか。説明(回収)しきれているのか疑問に思った。
演出上の重要な問題として、上手・下手のそれぞれ中2階に相当する場所(上手では階段途中か踊り場)での演技は、場内両端の客席からは見えない(見切れ)。このようなことは、稽古時にチェックするべきであろう。
今後の公演に期待しております。
鷹と雀
劇団ORIGINAL COLOR
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2015/03/20 (金) ~ 2015/03/22 (日)公演終了
満足度★★★
ふわふわ感
各地の領主が治める街は、「富豪区」と「貧民区」に分かれており、それぞれを「鷹」と「雀」という鳥に比喩し、端的にいえば、羨望・対立の構図になっている。実は、もっと根深い話であろうが、公演の印象としては掘り下げが足りなかったと思う。
比喩は、貧民区の住人が書いた一冊の本...鷹は翼を大きく広げ高く飛ぶ、雀は小さな翼で高く飛べない、と貧富の差を嘆いたもの。
ストーリーはストレート、演出は特色なし、演技はキャストの力量差が見て取れる。
主張したいことは何となくわかるが、芝居としての印象が薄かった。
ネタバレBOX
「富豪区」と「貧民区」の堺は、高い高い壁で隔てられている。この各区域の成り立ちと、その関係性がよく理解できなかった。成り立ちであるが、例えば江戸時代の士農工商のような身分制度、ヒエラルヒーなのか。序盤の会話からすると貧富(イメージ概念は「下町」と山手」)という経済的なことかと思った。終盤になって貧民区の民(叛乱分子)の処刑という話になり、支配・被支配層という対立構図が分かる。貧民区における不自由さ、叛乱を起こす原因・動機は...その描きこみが足りないと思う。
舞台に設けられた窓(枠)...そこから見える富豪区の風景とは、それが観客、少なくとも自分にイメージ出来れば良かった。情緒的な演出ではなく、力強い人間ドラマに仕上てほしかった。
今後の公演に期待しております。
子供の時間
劇団俳小
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2015/03/18 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
不合理、理不尽な行為への怒り
久しぶりに観た「子供の時間」(リリアン・ヘルマン作)は、脚本が優れていることは承知していたが、その内容を余すところなく観せた演出と演技は素晴らしかった。
上演時間は2時間50(途中休憩あり)であるが、最後まで飽きことはなかった。
ネタバレBOX
わがままな子供のちょっとした嘘...これが大きな波紋を広げ、せっかく築いた寄宿舎が潰れる。この理不尽な行いは、子供の行為ということ、また社会(世間)の同性愛に対する偏見が相まって破滅へ追い込まれる。しかし、これは表層であって、その実は子供の持っている無邪気で悪意のない行為が、実は恐ろしいこと。また社会に理解されない性癖は、それこそ男女という性差だけではなく、人間本質に対する差別そのものにほかならない。この鋭い問いをどう描くか、そして観客はどう感じるか。自分は本当に観せる芝居であり、時代を経ても色褪せることなく感動を与える作品であると思っている。それを劇団俳小は見事に観せて、そして魅せてくれた。
次回公演も期待しております。
誰も見たことのない場所2015
ワンツーワークス
赤坂RED/THEATER(東京都)
2015/03/13 (金) ~ 2015/03/19 (木)公演終了
満足度★★★★★
自殺を取り巻く状況が赤裸々に...
この劇団の公演はやはり素晴らしかった。この公演は「自殺」にまつわる体験談を積み重ねる...取材を通して得た、当事者でなければ語れない貴重な発言を役者の体を通して紹介していく。その生身の証言が本当に観る者の心に響く。「ドキュメンタリーシアター」という手法は、観客に向かって語りかける、それは「自殺」を考えた当事者の思いがそこにあるからだろう。
さて、この劇団の演出であろう、ストップモーションから始まり...自殺しようとする者の逡巡が現されており、ラストは...
ネタバレBOX
ムーブメント...運動いや生きている。顔を上に向け両手を挙げて、手のひらを大きく開く動作にホッとする。
日本の自殺率は、発表機関によって統計数値が異なるが、いずれにしても世界の国の中でも高率だといわれている。
この「自殺」に関わる人々を取材しているが、その自殺に追い込まれた原因の追求は...。本公演は個人レベルの視点からの「自殺」の印象が強い。
その取り巻く状況を赤裸々にした先は......やはり、その示唆になるようなものを描くのは難しいのでしょうか。
多くを書くには心が苦しくなる。本当に見事な内容だった。
次回公演も楽しみにしております。
忍ブ阿呆ニ死ヌ阿呆
企画演劇集団ボクラ団義
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/03/11 (水) ~ 2015/03/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
知らぬ阿呆に観ぬ阿呆…同じ阿呆なら観なきゃ損・損
史実のうち、確認できていない部分を創作し、演劇らしい新解釈を加えた面白い内容だった。その軸にこれまた闇の世界で蠢く集団に光を当てて、自由度を広げる手腕が素晴らしかった。また、観せ方としてミステリアスな部分も取り入れ、3時間(途中休憩あり)近い公演にもかかわらず飽きることはなかった。
この劇団の公演はいつも多くのキャストが出演する群像劇であるが、今回は若手バージョンの公演もあり、キャスト陣の厚みも感じた。
ネタバレBOX
時は戦国時代(織田信長が織田家当主になり、本能寺の変で死亡したとされる迄)、その終焉とも言える大阪夏の陣(大阪城落城)を遠目に回顧話をしている3名がストーリーテラーとして登場。
後の豊臣秀吉が伊賀の里出身の忍者、本能寺の変は豊臣秀吉、徳川家康、明智光秀の3武将共同謀反という設定。織田信長、明智光秀の遺骸は発見されていない、もしくは正確に確認できていない。それを根拠に明智光秀は後に天海僧正になったと...。
伊賀忍術を駆使し、時の権力者と渡り合うエンターテイメント...その奇想天外なストーリーが本公演の魅力であろう。脚本・演出の面白さだけではなく、演技もコミカルでありながら、迫力あるシーンをしっかり観せる。そして魅せる。
今後もこのような楽しい公演を期待しております。
うーまくー
さるしばい
OFF OFFシアター(東京都)
2015/03/11 (水) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
沖縄のゲストハウスは心温まる
沖縄のゲストハウスを舞台に、そこで生活し、または利用している人々の心温まる話。そこには診療所も併設されており...。
この劇団はいつも日常の出来事をデフォルメして描きつつも、その奥には人間讃歌が流れている。自分は、前回観た公演「どっかこっか」のように強く印象に残る結末でなかったことが少し残念であった。
当日は最前列(ミニ椅子)もぎっしり詰めた満席状態...約2時間は窮屈であったが、芝居は面白かった。
ネタバレBOX
ゲストハウスの住人は、元経営者の おばー(眞知)、現経営者 勝男(早戸 裕)、その友人 六助(天晴 一之丞)を中心に、大勢の人が出入りする。この人達の交流を通して精一杯生きる人達への讃歌になっている。また自然との共生をさりげなく訴えている。診療所に通う余命短い男の子と、姉の弟(既に亡くなっている)を想う追憶が交錯する終盤は感動的である。
コミカルでオーバーアクションのような演技と細やかでさりげない演出が見事に調和していた。
沖縄ではタイトルの「うーまくー」は、「いたずら」という意味らしい。少し気になるのは、おばー が台詞の中で「第二次世界大戦における沖縄戦のことを”いたずら”」という捉え方をしていた。多くの老若男女の方が犠牲になっているのに...。どうしても自分は違和感を持った。
今後の公演も楽しみにしております。
春ベリー
順風男女
しもきた空間リバティ(東京都)
2015/03/13 (金) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
笑った...
脚本家8名による短編コント12作品を女性キャスト7名が演じる。春光のような穏やかな気持ちにさせる良作ばかりであった。
しかし、作品の中に世間を騒がせた問題や芸能ゴシップに対する風刺...それも棘のように小さく控えめであるが、気になるように描く。
今回は何人か見知った女優の方が出演していることから観劇してきた。笑いコントであるが、そこはやはり芝居達者な方ばかり。観せて魅せていた。
ネタバレBOX
演目は次の12作品
1.春ベリー始まる
2.そこそこ
3.春とイケメン
4.血の通った教育
5.サンリオ万歳
6.オクラ
7.天使にショートコントを!
8.忘れられない男
9.禁断の幹事
10.トモちゃん、佐々木ちゃん、犬
11.イン・ザ・トイレ
12.天使にショートコントを!2
騒動...「2.そこそこ」では、パンを買いに来た客が、「そこそこ美味しいパン」という発言に対し、店員が怒り、客に土下座を要求する。
風刺...芸能ゴシップでは、矢●真●の浮気騒動などを取り上げていた。
コントであるから、あくまで楽しくカラッと観せていた。笑い笑い~~の連続であった。
今後もこのような楽しい企画を楽しみにしております。
妄想家の弟子
劇団ガクブチ
pit北/区域(東京都)
2015/03/12 (木) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
現代的な描写が…
秀逸である。特に芝居としての構成は面白かった。
しかし、そのモチーフの捉え方に一抹の不安を感じた。
それは自分のなかで、現代的ゆえに思うことであるが、一方その表現手段は見事であるという矛盾が…。
ネタバレBOX
まず、一抹の不安は偶像崇拝(宗教的意味合いは別)…現代的にはインターネットで実体がない世界で人生相談をするということ。相手がどんな人物かわからず、自分自身をさらけ出すという怖さ。
悩み事の解決者としてネット上では有名な”マリア”...いつしかその正体が気になり探り当てるため、過去ログを覗く利用者たち。さらにはIPアドレスまで特定する…個人情報の流出に繋がる暴走をした。
その結末は意外である。舞台上では顔を合わせ直接話をしているが、本当は通信手段を利用した虚構の世界であることを忘れてしまう。
マリアは存在せず、悩み事に応じて利用者(元相談者)が回答していた...結果として集団方式でサイトを維持していたことになる。
さて、危惧しているのは、架空の人物像を創り出し神格化することである。本公演では、その方向を肯定したような終わり方であったと思う。
芝居の観せ方としてはありえるかもしれないが、自分は架空の人物または死人による求心力を保つことに疑問を持つ。強権確立の手段に利用しかねないと思うからだが...。
今後の公演も楽しみにしております。
肝っ玉おっ母とその子供たち
東京演劇集団風
レパートリーシアターKAZE(東京都)
2015/03/13 (金) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★★
やはり”風”の公演は素晴らしい!
東京演劇集団風の好きなところは、中学校・高校へも巡回公演を行い、演劇を通して、社会に対する見方、考え方を投げかける...それもお仕着せでなく。
2014年からは文化庁”文化芸術による子供の育成事業”に基づく巡回公演で、学生による参加型公演も開始している。
前回公演ではシェイクスピア「ハムレット」の時も、劇団ラウンジに巡回公演先の学校名とその様子が写されたパネルがところ狭しと飾られていた。
今回公演「肝っ玉おっ母とその子供たち」は、北欧であった三十年戦争が舞台である。パンフには、演出の浅野氏が「戦争という限りない悲惨さの発見と同時に、このような苦境にあってなお生き続け、笑い、泣く、人間の原初的な力強さを発見してほしい」という想いを込めていると、記している。
その公演は本当に素晴らしかった。
ネタバレBOX
ブレヒトの「叙事的演劇」の代表作であり、各情景のはじめには幻灯、今回はストリーテラーによって幕開けする。
北欧・三十年戦争時代のドイツおよびポーランドが舞台である。主人公は「肝っ玉」とあだ名される女性アンナ・フィアリングで、軍隊を相手に商売をする酒保である。彼女にはそれぞれ父親の違う3人の子供がいるが、長男、次男は相次いで軍に徴用される。会計係の次男シュワイツアーカース(スイスチーズ)はやがて戦死し、長男アイリフは百姓を殺して略奪をしたために処刑され、残された唖の娘カトリンもまた、軍の襲来を町に知らせようとして射殺される。
「肝っ玉」は子供を次々と奪っていく戦争を呪いながらも、戦争を相手にした商売を最後までやめることはできない。
どんなことがあろうと”生きる”。その力強さは、最後の場面で荷馬車を一人で引きながら、大きく足を前に踏み出すと、砲声が響き鼓舞するようだ。
空気のようにあるのが当たり前と思っている”平和”。しかし、それを勝ち得るまでに流した先人の血と汗を無にしてはいけない。今を生きる我々が後世へ引き継ぐために...。
今後も素晴らしい公演を楽しみにしております。
奇妙な果実
奇妙な果実制作委員会ストレンジフルーツ
シアター711(東京都)
2015/03/11 (水) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★★
.戦前の銀座カフェが下北沢に再現
小劇場「シアター711」に戦前の銀座カフェが再現されたようだ。舞台中央にバーカウンターが大きく据えられ、その後の棚にはウイスキーなどが並ぶ。照明は多少薄暗く魅惑感が漂う。
説明では、このカフェ「カヱムル」を舞台に歴史ミステリーとある。しかし、ミステリーというよりはサスペンス風の要素が色濃い感じがした。確かにミステリーの基本となる犯人はあとから明かされるが...。
ネタバレBOX
1941年冬、銀座のカフェ「カヱムル」に東北地方から農家の寡婦ふみがやってきた。 ふみは、蒸発した兄(記者)を探しに来たと言い、「カヱムル」の女給におさまる。 兄が残した一冊の手帳をたよりに真相を探るうち、コミュニストや助教授の男たちと出会い、彼らのある秘密を知ってしまう。
この時代、国内の政治や軍部の動きに対し、反戦運動に身を投じた男女。その行動に対する軍国当局の弾圧を通して、活動を継続する不安と恐怖、仲間に対する疑念と暴虐が顕わになる。知識人の正義の脆さ、”ひらがな”しか読めないが、純朴な主人公ふみの生きる逞しさ、極限状況下における人間の本質を観せる。
蒸発したと思われた兄は猜疑心に駆られた仲間の手で..
公演全体は骨太・重厚感があったが、時折、ふみ(25歳)とスエ(14歳)がコミカル?のように喧嘩するシーンは必要であろうか?重苦しくならない配慮なのだろうか。.登場人物は8名で、役者陣はみな芸達者。
脚本・演出の はせきょう氏 の当日パンフ「難しい話をわかりやすく壮大な
エンタメにした自分の才能が素晴らしすぎる!...」とあるが、本当にお見事でした。
今後の公演にも期待しております。
鈴木さんチ
劇団クロックガールズ
劇場MOMO(東京都)
2015/03/03 (火) ~ 2015/03/08 (日)公演終了
満足度★★★★
上辺だけの幸福家族の顔が...
鈴木家... 祝福ムード一色に包まれる中、ひょんなことから家族の秘密が次々と明るみに!という説明は、軽い冗談話、または暴露話かと思いきや...家族の存在とは何かを考えさせられる。
当日は電車人身事故の影響で開演時間ぎりぎりに到着し、受付の方を心配させてしまったが、丁寧な対応をいただき、最前列に空いていた1席へ案内された。
(Bキャスト観劇)
ネタバレBOX
舞台上手側にソファと応接、下手側にテーブルと椅子2脚。
鈴木家では長女の結婚相手が挨拶に来るというので、家族が集まった。家族構成は、父親、母親、長女、次女、三女、長男(末っ子)である。
この家族に父親の愛人とその子供(隠し子)、長男の同棲相手、さらには三女からの応募小説を出版したいと訪れた編集者を加えた面々がドタバタ騒動を狂い広げる。
この登場人物のキャラクターと役割は明確で、ストーリー展開する上でわかり易い。ストーリーは表面的には幸福家族の顔を見せているが、その実は深刻な問題を抱えて生きており、将来もその問題を背負わなくてはならないという。
この小説に書かれている内容は、家族が抱える暗部を抉り出すもので、どうしても出版したい、その許可を得るための編集者の説明が段々と家族を追い詰める。コミカルな演出からシリアスな演出へじわりと転換していく様が見事である。もちろん、伏線は張られているが...長男の同棲相手に子供ができても産ませない、家の引越しが多いなどである。
この姉妹弟以外に父親に隠し子がおり、鈴木家が引き取り仲良く育てていたが、或る日、実母が引き取りたいと...この子が実母を殺害し施設暮らししている(登場しない)。この子の手記が小説元になっている。このため家族は人目を避け引越を繰り返し、重い責を将来に残したくない...家族を持つことが怖くなっている。
家族とは...加害者であり、被害者でもある遣る瀬無い思いが切々と伝わる素晴らしい公演であった。
今後の公演も楽しみにしております。
白魔来る-ハクマキタル-
ラビット番長
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2015/03/05 (木) ~ 2015/03/09 (月)公演終了
満足度★★★★★
素晴しい! (Bキャスト拝見)
本当に素晴しい公演...というのが第一印象である。その理由は大きく3点。
第一、脚本と演出が見事にかみ合って、話のモチーフ等が鮮明であった。
第二、キャストのキャラクターや役割が明確で違和感がなかった。
第三、良い意味で過去のハートフル公演を裏切り、骨太・重厚な芝居に仕上げた。
そして、チラシ説明に”刺激的な芝居”である旨を記されており、制作サイドのPRが功を奏した。観客に観てもらう、という工夫と努力する姿勢がまた良い。
自分のなかで、ますます目が離せない劇団になった。
ネタバレBOX
脚本はしっかりとしたテーマ性(「差別」「共生」など)を捉えて、人間と熊(自分では自然・環境そのものも捉えているように感じた)のどちらが侵略者で理不尽な行為を行っているのか、そんな問いが投げかけられたと受け止めた。その象徴として、熊の襲撃が描かれる。主張すべき話の展開にしっかり演出ができている。確かに刺激的な描写があるが、それは必然的なものであり、どう印象付けるか…その点も観客の許容範囲が違うため難しいところであるが、自分としては絶妙だと思った。
キャストは役割を与えられているから多少、大人数が舞台にいても不思議ではない。劇団では若手育成にも力を注いでいることから、過去公演を見ると役割がはっきりしない人物もおり、違和感を持つことがあった。今回も大勢のキャストがチラシに印刷されていたが、一部ダブルキャストにすることで、その課題に対処する工夫をしていた。
ただ、演技について細かいことを言えば、兵士が外で暖をとっていた焚き火缶を素手で軽々持ってハケるなど出来ない(これは一例で他にもあった)。どんな役柄でも観客は観ている。その状況に身を投じているというイメージ作りが重要だろう(このシーンは、終幕後、他の観客も指摘していた)。
自分が観てきた公演は、どちらかと言うとハートフルコメディという枠の中で、その時々の社会的なテーマを取り込んで観せてきた。今作はそんな既成劇風を打ち破るようなバイオレンス・フィーチャアーである。
失礼な書きようであるが、本当に劇風が広がったようで、今後ますます公演が楽しみになってきました。
絶版・小動物の正しい飼育方
発条ロールシアター
タイニイアリス(東京都)
2015/03/05 (木) ~ 2015/03/08 (日)公演終了
満足度★★★★
タイニイアリスでの発条ロールシアター...不条理劇は素晴しい!
タイニイアリスという小劇場、その舞台奥に大量のダンボール箱が積み置かれている。舞台客席側の中央にテーブルを挟んで中年男性が向かい合ってラーメンを啜っている姿から物語は始まる。夜店で買ってきた「小動物」...小さな箱で飼っていたが、段々大きな箱になることで日に日にその姿が大きくなっていることを現す。この小動物を飼うルールが飲食(餌)を与えない、抱かない、という放置しておくことだという。この何もしない、という無作為の意味するところは...
ネタバレBOX
夜店で売っている「ひよこ」「金魚」「カメ」などの生き物は、商品としての売り上げ回転率を上げるため、早く殺す必要がある。だからこそ、無作為の殺生としての人間のエゴが描かれる。
本公演では、「小動物」を夜店の主人のいう方法で飼育する、律儀な男三人。今までなかった乾いた生活に何故か潤いが生じるという不思議感覚が面白い。飼育法を律儀に守る真面目さが、逆に怖い。言うが如くを信じ、自分で考えない無知蒙昧に対する警鐘...その問題提起がコミカルな演出の中にキラリと光り鋭い。
その小動物(実は2体)は、夜中に箱から出て活動する。その活動演技は2人の女優の愛らしい演舞で表現される。最後は、積まれたダンボール箱を崩壊させて、大きな鶴が...見事な公演であった。
今後の公演も楽しみにしております。
別れのミュージカル『チェスト寺田屋』
風雲かぼちゃの馬車
小劇場B1(東京都)
2015/03/05 (木) ~ 2015/03/11 (水)公演終了
満足度★★★★
熱血青春時代劇...楽しめた
劇団「かぼちゃの馬車」は歴史上、それもあまり名前が知られていない人物にフォーカスし、その視線を通してその時代の抱えている課題・問題を浮き彫りにする。前回公演では、一遍上人を取り上げた。本公演も「寺田屋事件」は有名であるが、そこにいた薩摩藩士は(幕末)歴史マニアでないと知らないであろう人物、有馬新七を主人公として登場させた。
近代日本の夜明けを見ることなく憂国の志士として道半ばで斃れる、そんな若者たちを描いた、熱血青春時代劇は楽しめた。
ネタバレBOX
寺田屋事件というと、坂本竜馬襲撃のほうが有名であろう。寺田屋は京都における薩摩藩の定宿であったから、日本の黎明期にあって重要な役割を果たした場所といえる。
本公演は、劇団の得意とする殺陣を”寺田屋における同士討ち”として見所を作った。しかし、幕末時における薩摩藩の立場・役割が描ききれていないため、なぜ主人公たちが決起し、同じ藩士が上意打ちに及んだのか...その説明が不足していた。
なぜか幼い頃に仲違いしていた集団・仲間内の諍いの延長線上のこことして映る。突き詰めていえば、一武士の想いが強調されただけのようだ。個々の武士の立場は、藩内における”ヒエラルヒー”も含めて描くと重層的になったと思う。
なお、演出はキャスター付の衝立5枚(襖と障子のリバーシブル)を上手く活用し、場所・状況の違い、変化を現しており観やすかった。
この劇団は、いつも前説が楽しく、終演挨拶が丁寧である。客席には若い女性を中心に常連客が...観客を大事にしている証だろう。こういう姿勢は大切である。
今後の公演も楽しみにしております。
メモリー・アンド・メモリー
もぴプロジェクト
新宿眼科画廊(東京都)
2015/03/06 (金) ~ 2015/03/11 (水)公演終了
満足度★★★
旅路の果
女子高生二人の何気ない日常会話から、最後は悲哀に満ちた話に転じていく。普通の高校生の他愛ない会話…耳を澄ませば、街中の雑踏も聞こえる立体感ある演出は面白い。
しかし、本公演は芝居の主要項目である脚本・演出・演技について、平均的な内容であったと思う。学生時代の成績表にたとえるならば、各項目を1点にして1+1+1=3点。しかし、演劇効果が上がってこない。要は、各項目の相関が1×1×1=1点になる。つまり印象が薄い公演になっていた。
ネタバレBOX
理屈っぽい感想になったが、脚本はどこかで見たような内容(女子高生の悲痛な過去に向き合い、前進させるというベタなもの)であり、その演出も意外性がなく、流れた感じである。演技は若いキャストであるがしっかりしており、演技力に差が見られないことからバランスは良かった。しかし、心的彷徨をしている想いが出ていなかったのが残念である。
さて、人間はその特性として喜怒哀楽という感情を忘却できる。特に恋人を交通事故で亡くすという悲しい出来事は、敢えて呼び起こす必要があるのだろうか。忘却という特性を活かし、悲しみは深淵に沈めたまま先に進みたいが...。
次回公演も期待しております。
家族
オーストラ・マコンドー
吉祥寺シアター(東京都)
2015/03/05 (木) ~ 2015/03/15 (日)公演終了
満足度★★★
時代感覚にズレが...
小津安二郎監督の映画「東京物語」の雰囲気は出ていた。特に台詞は鷹揚があまりなく、ゆっくりと話す。映画では広島県尾道市から両親が子供たちを訪ねて来るというもの。両親キャストはその口調(方言)を真似ていたようだが、第二の故郷が尾道市である自分には違和感があった。また台詞の「間」がやはり気になるほど...間延びしていた。
全体的に映画を意識したため、昭和時代が色濃くなり、平成版「東京物語」としての斬新さ、面白さを欠いたようだ。
ネタバレBOX
映画では高度成長期に向けた時代背景から、子供たちの生活(仕事の活況)に追われ、両親の面倒が見られない事情があった。今回の公演では、その子供たちの生活環境があまり描かれず、単に亡き息子の嫁に預けたという印象である。そこには子供のエゴしか見えてこない。
説明にある「今日の核家族化と高齢化社会の問題を先取り」という謳い文句は虚しいだけである。
脚本は「東京物語」をオマージュしており、新鮮さは少ない。演出についても、昭和時代なのか平成(現代)なのか曖昧な感じである。確かにスカイツリーという台詞があるが、その佇まい、衣装、台詞の”間”が昭和を引きずるようだ。
その時代感覚のズレが気になり、公演に集中できなかったのが残念である。
次回公演に期待しております。
屋根の上の魔女
劇団 浪漫狂
紀伊國屋ホール(東京都)
2015/03/04 (水) ~ 2015/03/08 (日)公演終了
満足度★★★
わかりやすい、そして優しい芝居
「超オバカ」×「美」×「ドタバタ」×「ファンタジー」が融合!子どもから大人まで楽しめる“ブッ飛びエンターテイメント!!...という謳い文句であったが、その印象は感じられなかった。
しかし、公演はわかりやすく、優しさがにじみ出るような物語。
田舎育ちのせいか芝居を観る機会が少なかった。今でも巡業公演を楽しみにするような地域である。今回、このような舞台セットに、多くのキャストが出演する公演を観劇出来て嬉しかった。
多くの公演を観ている方は、その志向が高い。そういうレベルになるよう、脚本・演出にもっと工夫等を凝らし、公演内容を充実・満足させていただくよう期待しております。
ネタバレBOX
シェアルームで起きる色々な出来事を、部屋の住人、記憶喪失の男、近所の人、ピザ宅配人、空き巣そして主人公の少女が登場する。この少女...実は未亡人母親が彼氏とハワイ旅行に行くため、この部屋に預けられた。何故か心を閉ざした少女...唯一、心を通わせる記憶喪失の男との交流が微笑ましい。
少女の父親は誰かに殺害された。しかし、少女には父親の姿が見え悲しさを紛らわせていた。その父親が49日目以降は姿を現せないという。少女の悲しい別れの時であるが、それを受け止め前向きに生きる...このシーンが一番の見せ所であろう。
芝居は確かにドタバタはあったが、それは笑いの受け狙いというわざとらしさが見えていた。結末も、心を通わせた記憶喪失の男が父親を殺した犯人である。芝居の流れからそれとなく分かり、予定調和の印象である。
脚本の優しさ、温かさは感じられるが、それに感情移入できるような演出があったら...少し残念に思った。
次回公演に期待しております。
梅子と「ボクらの青春交響曲」
『熱きロマンを胸に、生きる勇気と希望を与えるべく突っ走り続ける奴ら。』
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2015/03/03 (火) ~ 2015/03/08 (日)公演終了
満足度★★★★
楽しく、そしてダーク...観応えあった
梅子と青春を過ごした仲間たち...個性豊かなキャラクターの子供たちが秘密基地で過ごした楽しき日々の追憶から物語は始まる。大人キャストがランドセルを背負った小学生から中学生を演じる時、その可愛らしい仕草は実に楽しそうだ。この青春群像劇の登場人物一人ひとりが、この芝居の重要な要素になっている。
説明では、ファンタジックコメディとあるが、実際は...
ネタバレBOX
ダークコメディだったようだ。
小説家・小鹿梅子が、出版社対抗「オンライン連載小説バトル」の題材として、幼馴染みの子供達を登場させ『ボクらの青春交響曲』を執筆しだす。しかし、その内容が不評なことから打ち切りの危機に直面する。 ある日、一人の若者・ユキオが梅子の前に現れ、つまらないストーリー展開に奇抜なアイデアを出していく。戸惑いつつも梅子は連載を書き続ける...という展開である。
さて、幼馴染の子供たちのキャラクターは優等生(学級委員)、大人しいなど個性豊かに描かれる。実は子供一人ひとりの性格は、梅子自身の断面を現した自画像という設定である。小説を介して自分の性格付けした子供たちの目や行動を通して心内彷徨するようである。段々と本当の自分とは、という姿見に映し出される過程が酷い。その一方で、自分に対する自信も芽生えるという成長が心を打つ。
しかし、ここまでが「小説の世界」であるという、二重構造の仕上げ方。まさしく劇中劇の醍醐味を味わった。
次回の公演も楽しみにしております。
GHOST SEED
カプセル兵団
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2015/02/26 (木) ~ 2015/03/01 (日)公演終了
満足度★★★★
世界観のあるハートフルコメディ
ハートフルコメディであるが、その描く世界観は大きく現代社会が抱える今大・課題を鋭く捉えていると思った。脚本には捻りも加え、観客(少なくとの自分)のハートを鷲掴みにし感動の渦に誘う。それは決して予定調和にしない展開が素晴らしかった。また演出も笑いネタを仕込んでいるが、そこは目くじら立てず小ネタとして受け止めた。
ネタバレBOX
世界は巨木の恵みによって生かされている。しかし、ある時、1本の巨木が枯れて新たな芽(種)が...その時に1体の人形がその種を奪い去ってしまう。その人形を製作した人形遣いの妻が亡くなり、その悲しみを受け入れらず、その種で蘇生させるという摂理への抵抗、冒涜を犯す。その頃、某国王女も亡くなり、幼き姫(娘)を守るため女王の人形(樫・期限10年)も製作した。
この人形遣いが行った自然節理への冒涜が世界(人類)滅亡の序曲になっている。
姫が途中出合った人形3体と絵師の旅人と冒険を繰り広げるというスペクタクル・ファンタジー...観て楽しめる内容であるが、その描かんとするテーマは壮大で現代性に富んでいる。
今後の公演にも期待しております。