タッキーの観てきた!クチコミ一覧

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ボンゴレロッソ

ボンゴレロッソ

A.R.P

サンモールスタジオ(東京都)

2014/08/12 (火) ~ 2014/08/17 (日)公演終了

満足度★★★★

女性の30歳同窓会って…
本公演、一部加筆した再演だという。そして作・演出のA・ロックマン氏のあいさつ文にはお気に入りとあり、自信作を窺わせる。実際、楽しく面白い、というのが第一印象である。
まず、脚本の面白さである。当然何らかの訳ありがあり、芝居は盛り上がるのだが、やはりお約束通りあった。結末は…観てのお楽しみだが、自分も他の方がネタバレで書いたことを想像していた。
演出は、同窓会メンバー一人ひとりを丁寧に紹介し、状況説明を上手く行っていた。それも主要キャストはピンで、それ以外のキャストは、ダブル、トリプルなど複数にすることで軽重を持たせるところが良い。演技はどのキャストもキャラ(メイク、衣装なども含め)を上手く作り込でおり上手い。そして演技力の差をあまり感じさせないところがよかった。
同窓会メンバー以外のキャストも含め、16名の女性の生き活きした芝居は元気がもらえる…と思う。
さて、もう一度あいさつ文を引用させていただくが、「最初に断言しておきます。この作品にメッセージも訴えたい事もなにもありません!!」とあるが、これは逃げ口上か、謙遜か、はたまた自信の裏返しか。
いずれにしても高校卒業後の12年間の女性のいろいろを観(魅)せてくれた好公演だった。

ネタバレBOX

自分も優等生(相田愛子)役の市川円香さんと上演後、坂本先生は性転換し、16番目の女性として登場していたと思った、と話たところ。本作では、最後まで坂本先生は現れないが、この演出方法はよく見かけるところ。映画では、話題になった「桐島、部活やめるってよ」などがあった。ストーリーを牽引するには上手いやり方で、もともと女性しか登場させない意図で制作しているのでしょうから当然か。
しかし、見事に”自分の記憶の断片にこびりつく作品”になった。
今後の公演に期待しております。
妖怪酒場

妖怪酒場

物の怪エンターテイメント企画 『妖-AYAKASHI-』

タイニイアリス(東京都)

2014/08/13 (水) ~ 2014/08/17 (日)公演終了

満足度★★★

妖怪もいろいろ
妖怪に関して昨今の話題…子供を中心に妖怪ゲーム(名前は略)がブーム、一方、鬼太郎ブームの漫画家の水木しげる氏が「最近戦友の夢を見る」とのニュース配信。妖怪の捉え方も世代や状況によって異なるものだと思った。
さて、本公演…主人公は妖怪作家であった父の七光りで生活している青年の物語。しかし世の中そんなに甘くはなく、人生に悲観した折、ひょんなことから妖怪酒場へ…。この主人公を通して見た妖怪との関わりが芝居の魅力を左右する。その描き方が浅かったと思う。
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

パンフには「人間って窮屈。人間て不自由。(中略) いつからか妖怪に生まれ変わりたいと願うようになっていた。」と…。妖怪酒場へ行くキッカケは自殺を図ろうとしたことだが、妖怪のほうが生き易いのか。妖怪の何体かが人間界へ関わりを持ち、さらには人間になりたい妖怪までいる。

当日パンフにあるキャッチの「くだらない、しょうもない、世知辛い世界で僕は真実も知らずに隣の芝生を羨んでいた」をもっと掘り下げて、妖怪との飲み比べも含め、主人公(佐藤信一)の心的変化を観せてほしかった。

脚本は、信一が幼い頃に父は交通事故で他界しているが、一通の手紙でここまで思慕するかがわかり難い。父他界後の信一の生い立ちにもう少し説明がほしいところ。演出は、せっかく妖怪を登場させているのであれば、その雰囲気(少なくともメイク、衣装などの工夫)を出してほしいところ。

そして演技が緩いような。”演技”における「妖怪と人間の境界線って」どう描いたのさ!と…。

今後の公演に期待しております。
おせっかい母ちゃんリビングデッド

おせっかい母ちゃんリビングデッド

ぬいぐるみハンター

駅前劇場(東京都)

2014/08/08 (金) ~ 2014/08/17 (日)公演終了

満足度★★★

役者のキャラ作りは面白い
母親にとって息子は、何時までも可愛く、また心配な存在なんだろう。金属バットをフルスイングされてもね。さて、この公演は特にインパクトがあるわけでも、演出においても特別技巧を凝らしているとも思えない。目立ったのは、作り込んだ役者のキャラ。その役者の競演…といいたいところだが、母ちゃん役=神戸アキコが牽引していたと思う。台詞にセリフを被せ応酬する会話は、テンポよく迫力もあった。即興・アドリブもあったようだが、あくまで演技だけに止まった感じである。やはり脚本・演出がもう少し練り込まれていたら、と思った。
今後の公演に期待しております。

UNIQUE NESS(ユニークネス)

UNIQUE NESS(ユニークネス)

劇団青年座

青年座劇場(東京都)

2014/08/01 (金) ~ 2014/08/10 (日)公演終了

満足度★★★★

虚勢もまた素晴らしい
舞台中央にベッド、そしてランダムに吊るされたような額縁や鏡枠、その傍らに椅子が置かれ、常時役者が座っている。このGADGET(ガジェット)?が面白い。”枠”のみは、まさしく虚そのもの。
さて、主人公(ハロルド)に関わった者が時と状況に応じてベッド周辺で絡むという演出だ。それまでは舞台上にいるが、あくまで傍観者を装っていたようだ。なにしろハロルドが台詞を噛んだ時にはニヤニヤしていたのだから。
さて芝居は、死期が近づいているにも関わらず…

ネタバレBOX

梗概は、 未確認動物“ネッシー” 1934年ネッシーの姿を捉えた写真、通称「外科医の写真」が新聞に掲載され、外科医は一躍有名人になった。 この写真の関係者のハロルドの死期が近づき、入院し次々と人々が見舞いに訪れる。 そうハロルドに人生を狂わされた人々だ。 妹で看護師のハンナは複雑な思いで見舞客を迎える。 そして彼の人生が終わりを迎えようとしたその時、真実の姿が現れていく、というもの。

普通の人が目立ちたい、人生に何らかの足跡を、と考えたことによる悲喜劇。誰もが思うような絵空事であるが、その内容(ことの重大性)の影響が大きければ...そのアイロニーがよく表現されていた。その観せ方が、色々な角度から見ることができるよう枠・鏡が配置されている。内心のありようが具象化されるという感じである。

自分の人生が身内・友人を巻き込み...その予想外だったかもしれない反響は、満足だったのか、それとも後悔だったのか。その生き様が役者の演技によって十分体現されている。ここが青年座の演技・表現力の素晴らしいところ。
この脚本・演出・演技と、その技術効果の完成度の高さが、この公演を面白くしている。

次回公演を楽しみにしております。
痕跡 〈あとあと〉

痕跡 〈あとあと〉

KAKUTA

青山円形劇場(東京都)

2014/08/10 (日) ~ 2014/08/17 (日)公演終了

満足度★★★★★

細い川が大河の如く…心魂へ
大袈裟に言えば、良くも悪くも引っ括めて過去にしか「痕跡」は残せない。本公演は登場人物の痕跡を細い脇筋のように扱っているが、結末はそれらを紡ぐ太い物語になる。その演出は日常が坦々と流れるが如くである。登場人物は決して善人ばかりではないが、人が持って生まれたもの、または形成されてきた人格を上手く描いていると思う。公演全体が大きな優しさに包まれ、心地よく感じたのは自分だけだろうか。そして感動的なラストシーンは…想ってほしい。
青山円形劇場という舞台を気にするなというのは無理であろうが、それにしても主たる演劇要素である、脚本、演出、美術・効果はもちろん、役者の演技も素晴らしかった。
ただ些細なことだが、気になる点が…
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

第一に、探し続けなければ子供を見捨てたに等しい…という旨のセリフがあったと思う。10年を経て余命半年と宣告されて、子の生死を確認しようと行動する点。行方不明(事故)になった当初こそ、必死に探したが、月日の流れとともにその気力も失う。現実にはそうなんだろうと思うと、探索動機としては弱いような気がする。
第二に、無国籍の状況説明に中国、韓国の不法就労を用いたところ。確かに新聞、雑誌等のメディアで見聞するが、偏見にとらわれないような工夫も必要であろう。
第三に、本公演の視点はどこか。当然、余命幾ばくもない母親であろうが、この事故/事件に関わった人の人生が大きく左右されるのであれば、加害者と見做される人物の苦悩の痕跡がもう少し描き込まれてもよいのではないか。

当日パンフで被害者・加害者と峻別している以上、逆立場の両者の苦悩を其々の痕跡として観せてほしい、というのは贅沢だろうか。

改めて、素晴らしい公演でした。
人狼 ザ・ライブプレイングシアター #13:VILLAGE VII 夏草がそよぐ村

人狼 ザ・ライブプレイングシアター #13:VILLAGE VII 夏草がそよぐ村

セブンスキャッスル

シアターKASSAI【閉館】(東京都)

2014/07/29 (火) ~ 2014/08/10 (日)公演終了

満足度★★★

セリフの綻びを…
脚本はなく役者が人間、人狼という与えられた役割を即興的に演じる。舞台上の人間と人狼の闘い(暴きあい)は、観客も参加し楽しめる趣向になっている。だから役者同士の理論・心理の綻びを見つけて悦に入ることも出来る。
ただし、過去に観た“人狼”に較べるとセリフの迫力とミステリアスさに欠けたと思う。また、ビジュアル的には、メイクや衣装が見劣りする。
さて、本論だが即興性が試される芝居は、自分だけの演技に陥った時ほど、観客は置いていかれるだろう。
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

人狼シリーズは、役者が場面状況を的確に捉え、即興的に演じなければならない。本公演についてみれば、役者が独善的になり、その都度、流れを確認するシーンが多かった。役者各々が自分の役割に埋没しまわりの状況を把握していない、即興を重視するあまり早口になっている。そういう意味では観客本位に立った公演になっていたとはいい難い。その証に”人狼当クイズ”のような観客参加の試みも前回同様あったが、誰一人当てることが出来なかった。観客に考えさせる、楽しませる余裕がなかったと思う。
公演全体として、前回観た時に比べると見劣りするところが多く、残念に思った。
今後の公演に期待しております。
(P・S)
出張があり、追記が遅くなり申し訳ございません。
スノードロップ

スノードロップ

みどり人

パフォーミングギャラリー&カフェ『絵空箱』(東京都)

2014/08/01 (金) ~ 2014/08/06 (水)公演終了

満足度★★★★

続きが”気になる”
連ドラ風四話完結公演の第一話と第二話を小空間「絵空箱」で上演…。
当日配付の案内には、「”許せない”気持ちを生き方にした人間の復讐劇」とある。ミステリー仕立てのようにいくつかの伏線を張り巡らしている。その張り方がストーリーのほんの少し先…さしずめ懐中電灯で足下の先を照らすような感じで目が離せない。細かいことはあるが、ほぼ素舞台ながら状況説明は十分で、上手い演出だと思う。そして最後にタイトルの意味と公演後半(第三話、第四話)の上演スケジュールの案内へつなげる。
ただ気になることが…。
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

全四話のうち、第一話第二話を上演し、後半二話を12月に上演するという。さて、映像(映画、テレビ等)は、編集という技術でダイジェスト版を放映することが出来るが、芝居ではどう演出するのか興味がある。一話が約60分(一話・二話は長短あるが、途中10分休憩を入れ2時間)とすれば、よほど前半部分を簡潔に説明しないといけない。第三話・第四話だけを観る人にとっては、そのダイジェスト部分が生命線になるであろうから…演出手腕に期待しております。

(P・S)
出張があり、追記が遅くなり申し訳ございません。
The Kaidan アルプス一万尺 Final

The Kaidan アルプス一万尺 Final

劇団 CAT MINT

シアターサンモール(東京都)

2014/07/30 (水) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★

実は悲しい話
説明にある「最後に少女の口から語られた怪談話とは…」ラストは悲しみでいっぱいだ。
背筋がぞっと寒くなる怪談話で紡いだ一夜の物語。ハートフルミステリー、とあったが、実は悲しい百物語。
観ればわかるが、上演後に「登場人物アフタープロフィール」の配付…、心遣いが嬉しい。
さて、繰り返すが怪談話と言うよりは悲哀話のようだ。
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

全員が若くして亡くなっている。当日「登場人物アフタープロフィール」には、亡くなった時の状況説明が記されている。
さて、芝居は篝火を囲み、怖い話を披瀝するはずが、可哀そうな話に終始したように思う。夏場=怖い話ではなく、パンフレットにあるような事故死、自死に相対した無念、悔恨・怨念などの情を語るほうがわかりやすかったと思う。それこそ霊を迎え・送る(盂蘭)盆の時期なのだから…。
さて、ラストは冒頭、怖い話をしている輪に闖入するような形で参加した娘…実は山荘の主人の亡くなった(交通事故死)三歳の娘が大人の姿を借りて会いに来ていた。自分としては、背筋が凍るより胸打つシーンで終幕になったのが救いであった。

(P・S)
出張があり、追記が遅くなり申し訳ございません。
祀(MATSURI)

祀(MATSURI)

劇団め組

吉祥寺シアター(東京都)

2014/08/01 (金) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★★

時代劇とDJのコラボ
勧善懲悪の典型的な時代劇…安心して観ていられる。趣向を凝らしたといえぱ、DJとのコラボレーション。邪魔ではないが、敢えて入れる必要もない。
さて、説明を読んでみよう。「~その森には事実古来から七人の神々が棲んでいた。大黒天、恵比須、毘沙門天、弁財天、寿老人、布袋そして吉祥天の七神(略)」は変じゃないか。吉祥天は七福神だったか?

ちなみに公演場所は、吉祥寺シアターであるが…。
(ネタバレBOX)(後日追記)

ツナガル

ツナガル

セロリの会 

「劇」小劇場(東京都)

2014/07/31 (木) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★★

母娘の確執…知られざる真実
母が病に倒れ入院した。母に対し快く思っていない一人娘が帰ってくる。子供の頃に母親に厳しく躾けられたことに対するわだかまり。説明には、女三世代とあるが、実質は母と娘の確執。
しかし、ラストでは怒涛のように氷解する。
そして真実が明らかに…娘の哀願するような叫び「おかあさん~」は感動!
その真実とは…
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

母は、口癖のように世界をまたにかけて活躍するピアニストに育て上げるため、友達付き合いにも苦言を呈すというもの。
子供心に相当傷ついた思い出の家(音楽教室経営)。母親のことを「あの人」と呼ぶほど苦々しく思っている。
しかし、母親には娘を一流のピアニストにしたい理由と役割があった。
実は娘は、大学時代の親友の忘れ形見(遺児)であった。親友はピアニストの才能に恵まれながら、妊娠中に結婚していた男性とドライブ中に交通事故で死去。奇跡的に助かった赤ん坊(主人公娘)を引き取り育てる決心をする。どうしてもピアニストへ…その思いは子供に知る由もない。自身は独身のまま…いわば他人の子供を育てる大変さ。
ラストまで母親は娘に対し厳しく接した姿しか見せない。その切ない思いは語ることなく死去する。

母の死去という悲しみを乗り越え、真実が明らかになった娘の今後の人生…清清しい余韻を残した好公演でした。
見果てぬ夢

見果てぬ夢

ランプの伯爵

上野ストアハウス(東京都)

2014/07/30 (水) ~ 2014/08/03 (日)公演終了

満足度★★★★

しみじみと
病院の中庭、そこには花壇やベンチがあり患者が集っている。そこに、がん告知された男性…妻は妊娠三ヶ月。状況設定だけで泣けてくる。
この男性を取り巻く病院関係者、家族、友人などの交流が胸を打つ。

当日配布の案内に、本作を書いたときの気持が記されており興味深く拝読した。その中で脚本に対するイメージを「ストレート」、「ベタ」と表現していたが、それは観客に伝えたいメッセージが明確なこと。それだけに強い印象を与える作品になっていると思う。

さて、主人公の病は進行して…ラストは感動。
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

主人公は手術に成功して、無事退院する。

糖尿病で入院している患者が倒れ、車椅子生活になった時のこと。患者は回復(リハビリ)に対して消極的な態度。半ば自暴自棄になるが、そんな態度に医師が放った言葉が衝撃的だった。

人はいつか死ぬ。人生は初めから負け試合のようなもの。それでも立ち向かっている。どう生きたかが大切なのだ。
がん告知が出来ず、その練習までする気弱な医師が、本音で諭すセリフ。まさしくストレートでベタなシーンであるが、胸が締め付けられる。
脚本は見事であるが、演出もあまり暗くそして重たくならないよう、所々に下世話なシーンを入れ工夫している(テーマに対して少し軽くなったかも)。
実に見事な公演でした。今後の公演にも期待しております。
グッドモーニング、アイスパーソン

グッドモーニング、アイスパーソン

天才劇団バカバッカ

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2014/07/24 (木) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★★

社会性も垣間見えて
文部科学省所管の研究施設におけるドタバタ劇。二万年前に氷結した人体の研究を進めるうちに、当のアイスパーソン(マン、ウーマン)が蘇生し…。
公演は群像劇のような感じで、生活様式・文明発達への警鐘など、示唆に富む内容が展開され見応えがあった。
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

発達した未来社会では127名しか存在しない。そこでは互いに干渉しないことから争いごとがなく平穏な日々が続いていた。未来ではロボットが生活手段(ハード面)や話相手(ソフト面)を担うという。しかし人類滅亡の危機に瀕した時、過去へタイムスリップ⇒氷結状態という選択へ。その間に秋葉原殺傷事件をモチーフした状況が挿入されるなど、ストーリーが破綻しそうになる(この件の状況説明が分り難かった)。
言い尽くされた言葉だとは思うが、人は一人では生きられない。人間同士に生まれる感情(負の感情-誤解や嫉妬などを含め)など、何らかの関わりがないと…。研究員の悪意による実験でアイスパーソンの行動態様を観察するシーンは現代社会に対する警告(人種・性による差別)として捉えた。
演出はポップ調であるが、その視点は鋭く冷徹のようである。見事な脚本・演出と、キャラクター豊かな登場人物を的確に演じた役者陣。とても素晴らしい公演でした。
今後の公演にも期待しております。
やめらんねぇ

やめらんねぇ

BuzzFestTheater

ザ・ポケット(東京都)

2014/07/16 (水) ~ 2014/07/20 (日)公演終了

満足度★★★★

笑い…とまらねぇ
売れない漫才コンビがケンカの末、コンビを解消し互いの道を歩き始めるが…。そこに色々なことが「やめられない」人たちが絡んで話が展開する。劇中漫才劇のような作風で、十分計算し仕込んだ笑いの連発である。タイトル「やめらんねぇ」は、性癖、ギャンブルなど多くの設定をしている。その個々のキャラクターは濃い。
さて、漫才コンビはどうなる…
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

漫才コンビはめでたく再結成する。
ストーリーは、お笑いは好きだが、客受けせず売れない漫才師の苦悩。漫才師の一方は消費者金融へ就職。相方は新しいコンビを探しだす。
さて、消費者金融…サラ金だが、何故か良心的な経営姿勢。そのサラ金を中心に、漫才師の父とヤクザの親分(両人ともオカマバー勤め、互いに素性は知らない)、パチンコ狂の女性が出入り、さらにストーカーなどが加わりドタバタ。登場人物がそれぞれ微妙に関係を持つという演出の妙。序盤にいくつか伏線があり、終盤に向けて納得(漫才「ネタ」作成をめぐりケンカしたが、その「ネタ」の出来栄えに感心して和解)させる手法は見事である。作り込んだ笑いは上滑りしそうだが、見事に結実した公演だと思う。
今後の公演にも期待しております。
虚病

虚病

劇団虚幻癖

高田馬場ラビネスト(東京都)

2014/07/23 (水) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★

不気味さ
舞台セット・美術は、不自然・不安定を表現したようなアンバランスな配置や構図…具体的には斜めに置いたドア、多重構造の窓などである。そこには主人公のエゴが表れているようだ。
主人公はロボット工学の専門家で、最近、偏頭痛などに悩まされ妻から病院へ行くよう促され…検診結果「病気ですね、病名はわからない」と。病名が明らかにならないことに対する苛立ちは増して…。
さて、公演は人格面に重点をおいて、その深堀り・完成度を高めてはどうか、というのが正直な感想である。
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

セカンドオピニオンも試みたが、その成果を得られないことから、妻が勧めた最初の病院へ入院した。その病室は男女同室で、すでに癖のありそうな男性2名と女性2名が入院していた。その病院は人体実験や臓器売買をしているとの噂が。そして患者達は退院することなく、いつの間にか居なくなるという。
主人公はいろいろ想像・妄想を繰り返し、医師と対決する。そして医師から妻の手紙を聞かされる「自分は末期がん、自分がいなくなったら主人は何もできず、苦悩するだろう。思い悩まないよう処置してほしい」というもの。医師によって脳外科的処置が施され、感情を持たない非人間へ改造させられる。
文章でいう「起・承・転・結」のうち、「結」の部分、映画・演劇でいう三幕構成における「解決」が弱いと感じた。ストーリー中盤までは、その不気味な様相に見入っていたが、ラストは平凡だった。もう少しドラマチックな展開を期待していたので拍子抜けした。主人公が持つ(この場合は仕事)懊悩に焦点を当て、イッヒ-ドラマのような心的側面を抉り出して欲しかった。
今後の公演に期待しております。
舞台『鬼ヶ島』

舞台『鬼ヶ島』

ヒート•スピリット

萬劇場(東京都)

2014/07/17 (木) ~ 2014/07/21 (月)公演終了

満足度★★★

頑張って
旗揚げ公演おめでとうございます。
さて、公演であるが、「和ノ国」と「斉ノ国」の抗争が始まって久しい。そして「和ノ国」=「善」、「斉ノ国」=「悪」という明確な設定である。そういう意味では勧善懲悪の様相を呈すところであるが、完全にそうならない結末…。
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

国の争いと書いたが、そこは芝居の世界。経国するそれぞれの長のキャラクターが善悪のイメージを作り上げる。本公演では、悪が善を凌駕し人が持つダークな面…嫉妬、怨恨、嫌悪などを強調し、その心奥、心魂を描こうと腐心していたようだ。そして人の心にスルッと醜悪な面、弱い面に忍び込む「妖気」の怖さ。深層暗部を抉ろうとしていたと思う。その努力と熱意は伝わった。しかし、それを芝居にして見せるとなると、上手く表現出来ていない。脚本・演出など色々な課題があると思うが、一番気になったのは演技力である。特に役者間の力量差が大きいこと。稽古を積んで解消することを期待している。総じて若い役者が多いようなので、伸びしろはあると思う。
今後の公演を期待しております。
Get a Life(ご来場ありがとうございました!)

Get a Life(ご来場ありがとうございました!)

613

劇場MOMO(東京都)

2014/07/16 (水) ~ 2014/07/21 (月)公演終了

満足度★★★★

堪能!
臨床心理士が末期がん患者のケアを通して、自身の成長と患者、その家族からの思いを聞き取る…そんな心温まる話である。しかし、死期が迫っている者の心魂に触れることが出来るのか。ケアルームでの会話劇は圧巻で暗涙するだろう。死んでいく者が今さら何を言っても仕方がない。
この当たり前の吐露に対し、臨床心理士はこう言い放つ…。
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

臨床心理士は言う…仕方がない、(死ぬ)順番なんだから。人はいつかは死ぬ、早いか遅いかだ。何て非情な説明だろうか。慰めの言葉でもと思うが、意味のないのは自明なこと。患者の自分より年齢が上の人がいるのに、何故と言う叫びは悲痛だ。

さて、感想の記載としては、前後したが上手いストーリー展開だと思う。後輩の相談に乗れず自殺させてしまったと悩む臨床心理士。その自責の念から勤務していた病院を辞めたが時を経て同病院に再勤務することになる。その仕事の手始めが末期がん患者のケアという設定である。

脚本を書くにあたり、取材を重ねたと思うが、末期がん患者から思いを聞き取るため、あそこまで積極的な姿勢をとるだろうか。どちらかと言えば「傾聴」では…。

今後の公演も期待しております。
河童

河童

DULL-COLORED POP

吉祥寺シアター(東京都)

2014/07/18 (金) ~ 2014/07/27 (日)公演終了

満足度★★★★

社会批判
芥川龍之介の「河童」が下敷。中学時代の読書感想文の課題図書だったと思う。だから遥か昔に読んだ記憶はある。しかし、内容は殆ど忘れていたので、観劇にあたり再読した。
芥川龍之介の命日である7月24日(河童忌)には、霊媒師を通じてアフタートークに現れるのだろうか。日程があえば当日観劇したかったが…。もし芥川が今の時代を見たらどう思うだろうか。河童の世界から見た人間社会の痛烈な風刺。(日本)人が思っている常識は、視点を換えれば非常識なものかもしれない。例えば人間界では男性主導、女性受動という構図が見受けられるが、河童界では逆発想である。男女平等、雇用切捨て、など発表された1927年当時と比べて現代はどうか…。
(ネタバレBOX)

ネタバレBOX

さて、公演であるが脚本着想は良いが、その演出は原作のエキスの大部分を取り入れようとしたこと、そして、その描き方がくどくなったこと。その結果、間延びし集中力を欠くことになった(休憩時間の踊りも含め)。もう少しシャープな演出にすることで印象深いものになったと思う。
演技は、キャストが癖のある役を見事に演じ、見応えがあった。

芥川は、師である夏目漱石が「猫」の視点で人間界を風刺したように、自身は「河童」を登場させた手法を、そして今度は芝居という手段で魅せてくれたこと、うれしく思います。
今後の公演も期待しております。
マーブルクレイフィッシュの憂鬱

マーブルクレイフィッシュの憂鬱

劇団さかあがり

吉祥寺櫂スタジオ(東京都)

2014/07/20 (日) ~ 2014/07/21 (月)公演終了

満足度★★

わかんねー
説明文によれば、妊婦三人が病室に集められ、医師から病名が告げられる…何やらミステリアスな感じがした。しかし、実はコメディだったらしいが、笑えなかった。
この公演は、何を表現したかったのか分からなかった。当日配付されたミニ案内の主宰:木村晃純氏の挨拶文には、「台本を書き上げた」とあったが、話が散漫で何を伝えたいのか?演出は、大袈裟な動作と緩いテンポで観ているのが辛かった。さらに、神様や妖精が…本当に必要なのか疑問に思った。もう少しテーマを明確にし、それに見合った演出を…。
先に記載したミニ案内の要旨からすると、偶然タイトルにある「マーブルクレイフィッシュ」(ザリガニ)に出会いネタにしようとした。しかし、その前文には、結婚、子供のことを考えている自分がいると書いている。実はこちらが描きたい本音ではと思っている。だから最後のシーンに繋がるのではないだろうか。(以下、ネタバレ)

ネタバレBOX

最後は、妊婦の一人が夫の子供を宿したいと切に訴えるシーンである。しかし、不妊の本当の理由は夫側にあるという。そのことを正直に言えない苦悩が切ないところ。もっとも演出がコメディタッチだから泣けない。
しかし、このシーンこそが主題ではなかろうか(前文にも合致するし)。
不妊で悩む女性は多いと聞く。また、この治療には経済的負担を伴う。女性いや夫側も描けば人間のこと、さらには医療・社会問題と広範に描けるのだが…。
また「神様」も「妖精」も登場し、子宝へと繋がるのだが・・・。

「マーブルクレイフィッシュ」(ザリガニ)の特異性に目が向いて、描きたい本質を見失ったと思う。
確かに、珍しいことをネタに台本を書く、公演をするという感性は大切でしょう。素人にも解ります。しかし、作り手がいると同時に観客もいる。少なくとも、自分は何でもありの本公演は好きになれなかった。

力のある作・演の方だと信じております。今後の公演を期待しております。
新撰組哀歌 -びいどろ揚羽蝶-

新撰組哀歌 -びいどろ揚羽蝶-

劇団 歴史新大陸

座・高円寺2(東京都)

2014/07/18 (金) ~ 2014/07/21 (月)公演終了

満足度★★★★

新視点…新撰組
新撰組前期に起こった最大の事件「芹沢鴨暗殺事件」を扱った公演である。新撰組の公演は多く観たが、暗殺される芹沢鴨からの視点は初めてである。新撰組を演じる時は、必ず「芹沢鴨」=「悪役」である。しかし、本公演は何故彼が自暴自棄になり、女、酒に溺れ、挙句の果てに暗殺されたのか、その背景を上手く説明していた。その点では脚本はよく出来ていたと思う。

だが、やはり新撰組の公演、芹沢鴨は主役になり得なかったと思う。最後は近藤勇、土方歳三が話の中心になったと思う。できれば新撰組前身につながる集団化の過程があると、芹沢の立場や置かれている状況がわかり易くなったと思う。
芝居も中盤以降になり回想シーンで重要なことが説明されたが・・・。
(ネタバレBOXへ)

ネタバレBOX

幕末の時代状況・新鮮組について、詳しくない観客のために適宜説明が入るという親切な作り。
さて、芹沢鴨は水戸藩出身で天狗党にも関わっていた。もとは尊皇攘夷を謳っていたが、時代の流れで新撰組(前身は壬生浪士組)へ。そこからは、会津藩の元で幕府側暗殺集団である新撰組を率いることになる。昔の仲間を切るという…計り知れない無念の去来がよく表れていた。
一方、荒い面だけでは芝居にならない。菱屋(新撰組羽織を裁縫)お梅との色恋で華を添える。

さて、最後に時代劇であるから殺陣はもちろん素晴らしい。しかし、自分が観たマチネーでは、芹沢暗殺というクライマックスシーンで芹沢役(後藤勝徳)と土方役(斉藤潤樹)の息が合わず抜刀のタイミングが外れたのは残念であった。

公演全体を通じて見応えがありました。今後の公演にも期待しております。
0号 -2014-

0号 -2014-

ゲキバカ

東京芸術劇場 シアターウエスト(東京都)

2014/07/17 (木) ~ 2014/07/21 (月)公演終了

満足度★★★★★

王道エンターテイメント…堪能
昭和初期から戦時中までを時代背景とした「キネマ」に携わる人達の群像劇。映画好きなら登場人物は、容易に想像がつく。謳いにある「コメディーだけど切ない。観る人の魂を揺さぶる」は誇張ではない。実に見事な公演で堪能した。

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