赤鬼
こどもの城 青山円形劇場/ネルケプランニング
青山円形劇場(東京都)
2014/06/04 (水) ~ 2014/06/15 (日)公演終了
満足度★★★
基本に忠実ぽかった
初めてこの舞台を見た時より、今回の方がステージの振付けや舞台セット等から、風景やアンサンブルの心情など寓話性がより強く思えた。
スピード感は中屋敷版も負けておらず、疾走感ある動き多い。
これまでの野田マップ=ひびのさんの衣装、というように固定化された見せ方から、今回のアイヌ民族風に見えた衣装も役柄にあってて良かった。能のような音遣いや、全員のバランス感覚の上手さとか違いも思い出し、中屋敷流古典ニッポン演劇見ているみたいだった。面白かった。
約100分。
ネタバレBOX
異人が島に漂流し、匿う兄妹、排除しようとする島の村人達。
時代は変わっても、その寓話は今もなお継続しているような印象をより強く感じる。中屋敷さんの劇団公演で見せるような手法がもっとでてくるのかなと想像していたが、多人種コミュニケーションの複雑な言葉いじりや動きのようなものは独自性があって違いを思い出したが、後半部分は野田さんの戯曲そのものはいじらず、見事な程ストレートにやっていたような気がする。総じて素晴らしかったが、真面目にやっているんだなーという感じも。それが悪い訳ではないけど、もう少し振り切れた面も見たかった気もする。
【不帰の初恋、海老名SA】【カラシニコフ不倫海峡】
MAパブリッシング
草月ホール(東京都)
2014/06/03 (火) ~ 2014/06/05 (木)公演終了
満足度★★★
初日「不帰(かえらず)の初恋、海老名SA」観劇
高橋一生×酒井若菜 編。
2012年の作品らしいが、今回の作品は一部変更しているらしい。初見。
PARCO劇場のLove letters 同様、舞台上にあるのはソファ2脚のみ。あらすじのバス横転事故の一文に、2011年のシアタートラムの「往転」をつい思い出しちゃったけど。
中学生時代の初恋相手との手紙から、成長してメールのやり取りに変化はあるものの、読み手は手元の戯曲に視線を落とし、顔を挙げる事なく淡々と話を読み進める。
ピアノの音や暗転で転換があり、静寂な中、聞き入るうちに読み手の姿勢や佇まい、繊細な節回しに感極まわりそうにはなる。一緒に傷つき傷つけて儚い時間が過ぎてったようなと切なさと、後半の場面に近づくにつれ最後の言葉の深さが印象に残った。
坂元さんの脚本ドラマをあまり見た事がないが、かなりシンプルな舞台演出だな、と思った。
当日パンフや物販、アンケートなし。
約90分。
関数ドミノ
イキウメ
シアタートラム(東京都)
2014/05/25 (日) ~ 2014/06/15 (日)公演終了
満足度★★★★
恐面白い
イキウメのスタンダート作というか今回も同じようで、全く違う良い意味で予想を裏切る展開の舞台でした。
左門兄の一瞬で変化する態度が時に不気味で爬虫類とはまた違うよくわからない変な動き方に釘付けw。それとは対照的に存在する真壁の普通さがまた強烈に印象に残った。
人間の第六感を刺激するような、精神科学の分野に踏み込んでいくような錯覚も感じ、中盤から気持ちが前のめり気味で見ていたので終わったあとは、疲労感まではいかないが椅子の座りも相まって身体が痛いw でも、この終わり方、好き。
役者さんもいつも通り巧みで、音響の加減とか照明の入り方で恐怖感を植えつけたりと、この舞台に関わってる人、みんな良い仕事するわぁw。
約1時間50分。
大谷亮介ひとり祭り『男の人生六十年』
壱組印
ザ・スズナリ(東京都)
2014/05/27 (火) ~ 2014/06/01 (日)公演終了
満足度★★★★
圧巻のひとり舞台
劇団公演の過去演目の一部とモダン蓬莱氏、扉座横内氏による書き下ろし新作舞台。
開場同時に客席ロビーも埋まり、かつてないほどの盛況ぶりに大谷氏パッション全開、魅力爆発で大ハッスルするの巻。
劇団員の草野氏、大塚氏、他2名、黒子として参加、舞台上には「大谷印」の白幕をバックに、たった一人で2時間近く歌い、喋り、踊り、生着替えし、時々水飲んで、と大忙しだったが見ている方は楽しかった。
劇団員の草野氏、大塚氏は場繫ぎとして、お知らせやら物販やら演奏やってりして。これまでの劇団公演では「物販なんかいらん、役者なんだから舞台の芝居を見てほしい」主義を貫いていたのに、今回の記念公演は「物販?イイよー」と軽くGOサインが出たらしいw。
全てに於いて、濃いい一人舞台を満喫、舞台上での奮闘についウルッとしたとこもあったけど、大谷満漢全席みたいな味わいで終わった後はお腹いっぱい。堪能しました。
野球や音楽の分野に殿堂入り、という言葉があるが演劇の分野でそれが設置されたら、確実にノミネートされそうな方。今後の活躍も応援していきます。なにはともあれ最終日まで大谷さんの喉が持ちますように!
舞台終了後には、毎回大谷氏に縁あるゲストを迎えたアフタートークを実施。観劇日のアフタートークは、篠井英介氏、深沢敦氏の3軒茶屋婦人会のお二人。こちらも普段語り満載で面白かった。
休憩なし約2時間+AT約30分?弱。
余談だが、ここでも上半期話題になったスタッ◯細胞ネタが・・・
今年は舞台でこのネタを何回見る事になるんだろうw
ネタバレBOX
上演順
壱組印:「劇、ということ」より「MJの魂」の一部。久々のムーンウォークに拍手喝采。ポォ!
夫婦宇宙旅行:蓬莱さん作
落語の噺家同様、高座設置してるがいつの間にか動き回る一人芝居。
福引きで当たった火星旅行、家で説明の段階からスッタモンだと尻に敷かれてる亭主とPower全開のカミさん、一緒に銀河新幹線に乗っていざ、出発。だけど火星までの道中、乗車したらしたでダイナミックなアクシデントがあったりで、トホホで仲良しな指輪騒動の顛末。モダンスイマーズとは違う喋りまくる面白さ、蓬莱さんの最近の舞台をややメランコリックな感じで見ていたので、この蓬莱さんの笑わせ方は久々で面白かった。時間的にもいい案配。普通に落語家さんの演目で通用しそうな話だった。
三蔵法師剃髪千四百年追善〜八戒法話〜:横内さん作
飲酒、殺生、舞、俗物禁欲エロ法話、諸々八つの戒めを肝に、孫悟空のお話の猪八戒は元々煩悩だらけの人間だったと、その語りをするのが白法衣姿の猪八戒ご本人(豚の耳付き)。仏の道を悟りつつ、成仏出来ずに俗世界の人間界に居座り、妖怪退治から図太い煩悩丸出しで坊主丸儲け。
人間、妖怪、馬とありとあらゆる形態に変化し乱舞する姿は豪快だし痛快で爆笑してしまう。黒子2人による孫悟空と妖怪の見せ場もあるが、他はほぼ一人で演じている分、話の抑揚が一辺倒にも見え全体的に長く感じた。
自分が完全に楽しめるのには、まだ達観出来てなかったか。精進精進。
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
祝祭公演と云う事もあり、スズナリロビーには自筆?の「大谷亮介全部見せますよ 展」と銘打った、ご自身の幼少時の姿からこれまでの経歴を網羅した各劇団時代から現在までの出演舞台、演出家、映像出演、舞踊家、等々と多方面の活動を一同に集めた貴重な資料や衣装、思わず懐かしいと呟いてしまいそうな若き日の写真やポスター、戯曲等々、それら手に取って眺められる大盤振る舞い展を同時開催。
開場、終了時と限られた時間だったが、大量の貴重な展示品に時間が経つのを忘れ見入ってしまった。
終演後、大谷氏とゲスト篠井氏、深沢氏の、終始ユルいながらも笑いに包まれた、途中から英介さん仕切によるアフタートーク開始。
連日ゲストによる大谷氏への表彰式を行っている模様。
以下、覚え書き。発言概略記述。
2人で表彰状読みあげようとするが、ここあっちゃん、え、どこどこ?な、やり取りがあってグタグタになりつつ、終始アットホームで賑やかに。
「還暦おめでとうございます。(篠井)大谷さんの事、昔は嫌いで、本にまで大嫌いと書きました。でも今は大好き!(深沢)お酒呑みなところも大好き、ペースも早い!これからもよろしくね(→みたいな感じ)」
・深沢さん、大谷さん、篠井さんで着席。司会は大谷さんだったらしいが、自然に篠井さんが司会者的に進行。
篠井/平日(昼間)なのに、こんなにお客さん来て頂いて仲間として嬉しい。満員御礼ありがとうございます。
大谷/劇団始めて、今回(の公演で)初めて満席になった。
篠井/だったら毎回一人でやれば良いじゃない。相棒辞めたから出来るんだしw・・・(客席に向かい)って、ここ、みんな笑うトコだからw!
大谷/(舞台)蓬莱さん、横内さんにお願いして書いてもらったが、稽古まで付き合ってくれた。公演開始直前まで手直ししながら作った。
深沢+篠井/60(歳)なのにパワーあるのね〜、この年齢でこれだけの情熱を持って芝居を続けている方って、大谷さんくらいじゃない?なかなかいない。あとは流山児さんくらいじゃない?
大谷/60、還暦と言われると棺桶に足入れてる年寄りと思うから、毎日20歳だと思うようにしてる。朝、お風呂入った時に目元が下がっていると歳とっていると思うので、シャワー浴びながら(目元に手をやり)鏡見て皮膚上げてる。
篠井+深沢/あっちゃんはパンっ!としてるわよね。え?なに?そう?
大谷+深沢/この中で一番しっかりしてるじゃない、ほら、年金だって‥。今52でしょ、年金、後3回しか払えないと思ったら悲しかった〜(ややトーンダウン気味)
大谷+深沢+篠井/(深沢さんに)でもいろいろ(人生の?)計画立ててるじゃない〜あれ、言って良いのかな、ほらあの話・・・。え?え?あ‥。なぁに、それ私知らない(話、と英介さん)。やだ、人前で言う話じゃないでしょ!止めて〜!(と赤面する深沢さん。この辺りの女子かって思うような会話中、壇上が淡いピンク色に見えた)
・3軒茶屋婦人会について
もとのキッカケは、深沢さんが40歳になった時から企画が始まって〜(この辺りは過去公演時等でよく発言している内容)
3人入り乱れて発言/いつの間にか(大谷さんが)60歳って、早いわね〜
来年の7月頃、3軒茶屋婦人会の公演を予定している。詳細は今年の7月頃から発表予定、次回はエロチックサスペンスロマンを目指す。作と演出はいつのもG2氏。まだ解禁出来ない情報が多い。ただ、これまで〜婦人会の制作を扱っていたG2プロデュースは解散してしまったので、次回は完全自主公演!になります!失敗したら借金出来ちゃう!
ロビーに前回公演の(大谷さんの)ステージ衣装が展示してあるから見てね♡ 衣装着て、メイクして気持ちよく写真撮ってるけど出来上がったもの見るといつもプロレスラーみたいなのよね(とかなんとか)
・誰か何か聞きたい事ありますか〜と、突如客席に質問を振る英介さん。
相棒の三浦刑事を見てファンになり初めて舞台を観に来た若い女性、その違いにビックリ。いつも舞台の芝居はこんなんですか?と。それを受けて英介さんと深沢さんの「これが最初!?初めて見たのがこんなんで驚くわよね〜(大谷さんは)楽屋でもうるさいし、汚いのよ〜」ありがとうございます、嬉しいですねと大谷さん。
大谷/三浦刑事は真面目だしね、相棒やっている時(役作りらしい事ではないが)近所の警察署通る時も(ちらちら)見てたりしたくらい。出てたよね(と、深沢さんに)
深沢/始めの頃、準レギュラーだった。いつの間にか呼ばれなくなったけど。今も再放送をやってて懐かしいけど、みんなそれ見てるもんだから稼いでますね〜とか言われる。けど、今は出てないの〜。
他に、大谷さんの学生時代の後輩さんがいらしたり。老眼鏡持参していなかったので、一目では判別つかず、舞台上、椅子から立ち上がって客席近づきその方に向かってご挨拶。日常生活でも裸眼だとよくわからないので、度々ジッと見つめる時が多いそう。
趣味であるサッカーの練習に参加すると、若者の集団と時間が重なる時間があるそうだが、自分達の集団はみんな頭が白いから「あ、あそこだ」と、すぐ見分けつくんだよ、と。
篠井さんの次の舞台告知と、大谷さんの次の舞台予定はパルコ劇場で公演した舞台の再演作。公演時期やタイトルも話されたが、公式発表がまだされていないので、ここでは省略。
・今後の目標や夢は
大谷/本多劇場やスズナリでいつでも出来るように。呼ばれたらどんな作品でも出たい。やりたいと(率先して)思ったのは3軒茶屋婦人会くらい。歳とってくると、いろんな事が自分流になる、これはこうってビシって言ってもらって習わなきゃダメだなって思う。出来ない事をやろうと。日常的にやろうとしたい。練習しないと手抜きになる。舞台前にマイケル(ジャクソン)のDVD復習の為見たら、ダンスとか似てると思ってたのに全く似てなくてビックリした!(自分では)憑衣してると思ってたのに!まあ、演劇はイメージだから!想像して!今日はどうもありがとうございました。
お話が楽し過ぎて、後半あやふやな記述箇所がありますがこんな感じでした。
個人の観劇歴史みたいになるのでいつから見始めて〜等は端折るが、以前から大谷さんの舞台を観ていて、今回の還暦公演の舞台を迎えられ、またその芝居を見られた事は幸福でした。今後も劇場の末席から応援してきます。良い舞台でした。
これからも頑張ってほしいし、トークゲストの後だし発表があったりとあったから、☆5つはつけないw!
風間杜夫ひとり芝居『正義の味方』
トム・プロジェクト
本多劇場(東京都)
2014/05/27 (火) ~ 2014/06/01 (日)公演終了
満足度★★★
大衆演劇風一人芝居
風間さんの出演舞台は幾つか見た事はあるが、一人芝居は初見。今回、縁あって観劇。
下町の銭湯を舞台に、そこを切り盛りしてる男、大角卯三郎95歳のお話。
いつのまにか老人の部類に入ってしまった男の、愛情ある皮肉や暴言、巷で話題になっているワイドショーの中心人物の与太話などを銭湯に来た常連客相手に街角評論家のように毎日喋りまくる。
ビジュアルは内田裕也氏を彷彿させるが、この舞台の主人公は例えるなら仙人みたい。歳を取るとそれまでの破天荒ぶりは落ち着き、幾分角が取れて老若男女、誰にでも相手が出来るような人だった。好々爺にならない、憎まれ上手なクソ爺ぃといった所か。
軽やかな動きや、時折出てくる落語家のような情景や心情がわかりやすい喋りに聞きいった。 約80分。
ネタバレBOX
甲斐バンドの「HERO」をド派手なライティングを浴び、熱唱しながら登場する卯三郎氏、それにのど自慢方式の手拍子で応える客席には冒頭から戸惑ってしまったw。なるほど、あの年代の人気バンドはあの辺りか、と参考になりました。
大正生まれは2回も戦争を体験し、現在は観光地と化した外国の戦時下の出来事も昨日の事にように話す。青年期に戦争があり、生きるか死ぬかの毎日を体験しながら、国に残した婚約者の事を思いそれだけを希望に帰還するも、相手は既に嫁いでいた。そこから銭湯に関わる話へ繋がるが、自身の記憶をリピートするように戦時中から現在をシンクロする構成で、各国の戦争や原発問題、昭和から平成、バブル崩壊、震災、等々、体験した事を映像として見せる。
一人の人間としての正義観、正義の暴走の怖さ等が透けて見えるような近年の世界状況を想像もしたが、どこか漠然とした人生模様で終わってしまったような気も。
それにしても昔からテレビや舞台で活躍している役者さんは、あんまり年齢を感じさせないと思っていたが、私生活ではお孫さんもいる方なんですね。役柄で見る分には全くなんとも思わないんだけど、実生活の記事を目にすると妙にリアル、いや居ても全然平気なんだけど。
今後もお元気で活躍してください。
グレイトハンティング
劇団HOBO
駅前劇場(東京都)
2014/05/20 (火) ~ 2014/05/25 (日)公演終了
満足度★★★★
最終日観劇
都市山間部集落で暮らす人々、パソコンが家電に浸透する頃の話。
環境変化に土地を去る人、残る人。身の丈にあった台詞とおバカな会話のオジさん達。苦難と幸せの形は人それぞれ、模索しながら誰しも一番良い時の事は忘れず覚えてて、それを糧に前向きに人生は続く。
達者な役者さんたちの良い感じに肩の力抜いたその普通さに魅了され、何も特別な人は出てこない、けれど、その定番さが活きている中年の青春話というような舞台で今回も面白かった。細かい所まで作り込んだセットも素敵だった。前回は犬、今回の隠れ主役は猿‼︎ 約2時間。
ネタバレBOX
「チンチロリン」ネタの使い方は流石にギャップを感じたけど、それ以外のオジさん達の下世話で緩い雑談は面白かった。その時代の社会情勢も加えた内容になったけど、恋愛模様を端折ったのは、あまりそっちに重点を置きたくなかったのかな。
こいけさんの起用なんだか不器用なんだかよくわからないけどコメディアンヌぶりの絶妙さとか、有川さんの小狡い生き方とあの口調に笑い、古河さん、紀保さんの夫婦の素敵な大人カップルは理想的に見えた。シアトルでカツカレー食べたいw。
景色は変わっても実家のような居心地を提供させる喫茶店を引き継いだ林さんのそこに溶け込む馴染みぷり、凄い。
前回は南の離島が舞台だったが、省吾さんは行く島はあの島なのか?
おかやまさんは前回同様、前面に出て絡む事は少なかったが、わかりやすい存在。
98〜01年頃て、あそこまでネット環境良かったっけ?ダム開発で携帯アンテナの設置で電波受信も発達したんだろうか。
こいけさんの衣装似合ってよかったけど、バイク乗りであのストール姿は有りなんだろうか、運転時はストールの巻き方調整してたのかな。
この手の話に無粋なツッコミは不要だけど、少し気になった。
THE BIG FELLAH ビッグ・フェラー
世田谷パブリックシアター
世田谷パブリックシアター(東京都)
2014/05/20 (火) ~ 2014/06/08 (日)公演終了
満足度★★★
重かった
IRAというと当日パンフに書かれたあった脚注事件とジャガイモ騒動、イギリス、位の認識。
今作は米国が舞台、30年近い年月を費やし、IRAに関わるメンバーの隠れ家と日常生活と活動について話は進む。高い理念に基づいて入った集団で得たものと失うもの、淡々と進み、見終わった後ではどこか絶望感や虚無感のようなものに覆われた。
各時代で体型や口調や貫禄等、の経年変化も面白く、内野さんと小林さんとの対峙場面は緊張した。
各役者さんのその世界に引きずり込ませる迫力のようなものは良かったんだが、まだ上演間もない所為か多少ぎこちなく見えた場面もあり。
森さん演出だから、舞台も日々変化するんだろう。淡々とドライに描いているようにも思えたが、後半に見たらもっと濃厚な舞台と変化しているのかも。また、男性メンバーに焦点を当てている為、男性の感想はもっと違ってくるのではないか、と漠然に思った。
休憩込み約3時間。
ネタバレBOX
軽妙なやり取りもあったが、負の連鎖や、報復には報復しか生み出さない、という展開話は人間の愚かさが溢れて見えるので苦手。
実の娘が薬物中毒で死亡、妻も去り、たった一人になってしまったコステロ。長年のIRA隠れ家のアジトで、スパイである事を吐露するクライマックス場面の「ビッグフェラーと呼ばれたかった」発言は、なんとも切ないやら情けないやら。あの結末は因果応報というか自業自得というか。
消防士のマイケルのアパートでの静かな幕引きも印象的だった。
このやるさなさはなんなんだろう、って感じの観劇だった。
昭和レストレイション
パラドックス定数
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2014/05/16 (金) ~ 2014/05/25 (日)公演終了
満足度★★★★
適度ナユーモア描写ガアリマス
今回もデリケートな題材で更に深刻度が増すのかと思いきや、軽快な会話が多く緊張感は薄い。
あの人の扱い方をこうさせるかと感心して見たり、若者と大人の対話についハッとさせられたり。この作品の中で例えるなら大人側の年代に片足を突っ込んでいるし、自分も歳を取ったもんだw。
近藤さんが参加する事で、役者のパワーバランスみたいな物が崩れるのではないか、と不安もあったけど、全く違和感なく馴染んでいたのにも嬉しく、今回の陸軍中尉役の植村さんのスラスラした美声から軍人としての誠実さや乱れぬ姿勢まで、とにかく良かった。ってか全員良かった。
この話には絶対必要な雪と木製スケルトン仕様のセットも見やすい。
面白かったです。約110分。
ネタバレBOX
首相官邸襲撃直後、首相と護衛警察官2人の血だらけの場面から話は始まる。この場面だけで一気に世界に惹き込まれるが、一旦陸軍一派がその場を立ち去った後から絶命していたと思っていた血だらけの3人が息を吹き返し何事もなかったかのように(自分の身に起きた事に理解しているけど)会話し始めるのである。撃たれても死なない首相、軽い、明るい、ゾンビかw。首相をこの立ち位置に見せたのはとても効果的で面白かった。
首相たちと陸軍兵たちの追いかけっこや交流に、途中まで‥ドリフか?等と、今回かなり異色作品だなーと思ってたら、自然に核心でもある事件の話に焦点が移ってた。
青年将校達の国を思うが故の行動、若い思考の根底に純粋さや熱意があり、それが無謀や愚行に繋がる事にもなり、それを穏やかに指摘する彼等よりも30年先を生きて来た、大人は子どもに説教する警官の実感こもった発言と、それに対し「歳月を言い訳にして僕たちを上の方から見ているだけだ」という返答にそれぞれハッとし通しだった。
いずれにしても「少年兵」なんて言葉は、今後も死語として使わないにこした事はないが。
最後、反逆の行為を自覚した将校達と雪合戦の遊びに興じる大人達、降りしきる中に投降を呼びかけるビラが落ちてくるが、とても美しく切ない場面だった。
客席近くにそのビラが落ちて来たので、許可頂いて持ち帰った。
ハガキ大の用紙に、文面は縦書きで以下の通り。(旧漢字仕様)
下士官兵二告グ
一、今カラデモ遅クナイカラ原隊へ帰レ
二、抵抗スル者ハ全部逆賊デアルカラ射殺スル
三、オ前達ノ父母兄弟ハ国賊トナルノデ皆泣イテオルゾ
二月二十六日 戒厳司令部
青年Kの矜持
LAUSU
俳優座劇場(東京都)
2014/05/14 (水) ~ 2014/05/18 (日)公演終了
満足度★★★
怒涛の5日間
ネカフェ難民や家族や人間関係、現代的な悩みを体現してる青年と内向的な少女。重苦しくもならないが、やや地味で少し暗くて切ない終り方、でも最後は救いのある話で、少年少女の為の演劇って感じだった。
映像やセットの場面転換時、話の余韻を感じるより、暗転の「間」が盛り上がりを停滞させているように思えた。
個性的なキャストの集合も魅力的で、ついそちらに目が行ってしまうが、話に重点を置いてみた方がもっとこの作品の内容がすんなり受け入れられたかも。ゾンビ女の千葉さん家納さん弘中さんの場面には爆笑した。
約105分。
ネタバレBOX
繊細なK君の事を思い、泣いてくれる人が出来た事はとても幸せな事だと思う。それを丁寧に演じていた中村さん、良かった。
殺風景
Bunkamura
Bunkamuraシアターコクーン(東京都)
2014/05/03 (土) ~ 2014/05/25 (日)公演終了
満足度★★★
いつも通り淀んでる
大牟田を舞台に、一家の要である男とその家族の一生を、昭和と平成の時代を跨ぎ話は進む。
劇場の規模は変わっても話の本質はいつも通りの赤堀テイスト。
人の道にそれた事ばかりやってる家族、カッコ良いようでカッコ悪く、潰しが出来ない生き方、悪あがき、虚しさ。
毎度言葉に出来辛いグレイな終わり方。
観劇日、2階席はすっぽりと空席状態。あえてそういう配券だったんだろうか。人気ある公演と思っていたので、あの空席には久しぶりにビックリした光景だった。
チラシと当日パンフはロビーで自主選択持ち帰り。
休憩約15分あり、約3時間。
ネタバレBOX
青年クニオ=八乙女さん、父親クニオ=西岡さん
一度は繁栄を誇った町並みから炭坑の集落と共に一緒に荒廃していくような人々。それも要因なのか、この一家と関わり合う人達の心象もタイトル通りの殺風景、に思えた。栄えた町が過疎化していく様を見続けそこで生きていくのは、どこにも行けない閉塞感と諦めのような覚悟というか。明るい話題なんかそう滅多にない。
ゆめタウンとミニストップ、九州の県内関係とかよく調べてるなーと感心。
各々、父子、母子の殺伐なやり取りに見えて、根は優しい関係。それが血縁と云う事か。
大倉さんの独特なやり取りと八乙女君の鋭くも揺れる眼差しが印象的。
ドリさんの大牟田弁が流暢で字幕出したほうがいい位、良いw 荻野目さんとの対決は迫力あり過ぎ。若き日の母の姿の大和田さんも、勉強とは無縁で大きくなった感じでちょっと知能が足りない一途さと女の子はこういう格好が好き!を体現したかのようなワンピース姿がまたバカカワイイ。近藤さんの田舎を下に見ているかのようなインテリ刑事ぷり。
江口さんの幸薄さがまた不憫。
赤堀作品ではおなじみの、前の人の背中にカナブンくっつく件もありw。もうこんなに毎回使われると、M谷さんの赤い洗面器ネタみたいだよw。
映像とスローモーションで動く様は妙にカッコ良かった。
モヤモヤ感の残る魅力的な舞台でした。
ロンサム・ウエスト
シス・カンパニー
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2014/05/03 (土) ~ 2014/06/01 (日)公演終了
満足度★★★
大人気ない兄弟喧嘩に笑う
粗暴なバカ兄弟、でも兄は弟に偉そう。兄弟の父親の死亡原因や近所の警官自殺騒ぎ、その町で倫理、更生、努力を試みる、ややアル中気味の神父。
観劇前は作家特有の閉塞感を占める内容?と予想してたら、兄弟の言動からくる客席の笑いの多さと、歴代のアイルランドを舞台とした閉鎖的だけど泥臭さの少なさに「あれ?」と違和感。
なんかもう少し深層がある話のように思えたんだけど。
最近の翻訳劇は家族間、特に兄弟喧嘩で誹謗中傷、罵倒を繰り広げる題材が多いような気がするが、たまたまかな?
小川さんと二村さんらしい舞台セットだった。神父とガーリーンの場面セットは面白かった。
約100分。
ネタバレBOX
コールマンとヴァレンの軽いアホな行動と怖さが入り混じった言動等、時々甘え上手な面も見せて牙を隠した凶暴なだめんずのような。いい感じにバランスも良く、役者さんはいつも通り上手い。
神父自身の宗教への苦悩からの行動と長台詞は見応えあり。
紅一点のガーリーンの神父への思いと、少女から女への成長と行動や兄弟へあれだけ言っても空しい兄弟喧嘩を繰り広げられると投げ出したくなるわな。
アルコールとマリア様と不毛な会話で喧嘩、見ていて喜劇悲劇の内に鈍詰まり感を味わったような感じでした。
ウージェーヌ・イヨネスコ『禿の女歌手』『椅子』
世田谷パブリックシアター
シアタートラム(東京都)
2014/05/10 (土) ~ 2014/05/11 (日)公演終了
満足度★★★★
気楽に見ました
去年のカミュのリーディング公演は都合つかず未見。
フランス人作家の西洋風駄洒落と戯曲全体は陽気にしたいけど、どこか陰気臭がプンプンする不条理さと独特な本読みを見た感じ。
この本を書いたイヨネスコって、結構神経質なんじゃないか?と思ったり。完全に理解出来た訳ではないが、場面事に違った面白さがあって見やすかった。当日立ち見が出ていたのにはビックリしたけど。
広岡さん、村岡さん、動きを封印しても存在が見え聞こえる巧みさと、まことさんや久ヶ沢さんは、読み方、演じ方それぞれ独特で荒唐無稽な素敵さ。暗号のような記号的な言葉使いを見事に発している内田さんと鬼頭さんの夫婦の存在も面白かった。
「禿の女歌手」60分、休憩15分、「椅子」50分
戯曲リーディング後に演出のピンクパンサー抜きの中屋敷さん、内田さん、鬼頭さん、久ヶ沢さんによる約20分のポストトークあり。
ざっくばらんな発言連発でこちらも楽しかったです。
ネタバレBOX
過剰過ぎるト書きの言葉使いの印象の強さと幾通りもあるエンディングのから「禿〜」も面白かったけど、話は「椅子」の方が好きかな。
ジョビジョバ
U-1グランプリ
赤坂RED/THEATER(東京都)
2014/04/25 (金) ~ 2014/05/06 (火)公演終了
満足度★★★★★
懐かしくも新鮮なコントばかり
大半の観客含めメンバーも同様に歳を取ったけど(^^;面白さは変わらず。
旬なネタから懐かしのネタまで2時間近くずっと笑い通し。
福田さんのジョビ愛がよく伝わり、ご自身も箸休めみたいな立ち位置で出演。ハセ、坂田さん、六角さん、マギーの柔軟な役まわりが素晴らしく、ここでも出るのな、相棒ネタw
石倉さんのいじられっぷりに明水さんのラジオネタにツボったw
約2時間。面白かった。
『十二夜』
日本の30代
駅前劇場(東京都)
2014/04/18 (金) ~ 2014/04/28 (月)公演終了
満足度★★★
ニッサンの日に観劇
小田島雄志さんの訳で鵜山仁さんの演出。若手?役者が揃って、メイクは白塗りでやや誇張はあるモノの、衣装やセリフもいじる事なくブレのない真っ当な舞台でビックリ。
最後の歌まで徹底した、賑やかで熱のこもったお芝居だったが、面白可笑しかく単純に楽しかった。
観た日は偶然にも23日(ニッサンの日)シェイクスピアの命日でした。
パン屋文六の思案~続・岸田國士一幕劇コレクション~
ナイロン100℃
青山円形劇場(東京都)
2014/04/10 (木) ~ 2014/05/03 (土)公演終了
満足度★★★★
モダンでハイカラでファンタジーな舞台
長丁場で座席の座り心地を噛み締めながら、円形劇場で見る舞台はこれで最後なのかなーと思ったら、ちょっとしんみり。
その当時のノストラダムス級のパニック騒動を下敷きに、岸田戯曲七篇をまとめた舞台。
ナイロン流にモダンハイカラ感満載なのに、老舗の〜〜座とかの上演目を見ているかのよう。衣装や振付けの素敵さはいうまでもなく◎
いい大人の愛嬌や理屈、しっかりしているようでダメ人間ぶりは現代のニート感覚に通じたりして。
きれいな日本語文体の古典派文学読んだような観劇でした。
休憩10分込み、約3時間10分。
ネタバレBOX
ニオイシートはかなりこすりましたw。バナナとゆずはわかったけど、「恋愛〜」の匂いがすぐにはわかんなかったw
「恋愛恐怖症」の恋愛の駆け引きが何とも言えず切なく「長閑なる反目」の居候のふてぶてしさにクスっとさせられたり。「ママ先生〜」はキャリアウーマンの苦悩する日常生活と仕事って感じだった。
現代人体型には袖丈が短い和装衣装もあり、踊るシーンでは上肢丸見えになるので、その時の衣装だけでも小袖の衣装でよかったような気も。ちょっとした仕草でもっと綺麗に見える所作もあったと思うが、軽妙な振り付けには似合っていた。
緒川さんの薔薇柄の訪問着?付け下げ?の着物姿がまた美しい!長田さんと安澤さんの羽織も可愛かった。
いのうえ歌舞伎 「蒼の乱」
劇団☆新感線
東急シアターオーブ(東京都)
2014/03/27 (木) ~ 2014/04/26 (土)公演終了
満足度★★★
観客をくすぐる遊び心満載
話の進展具合は例によって新感線王道パターン、ミュージカルや歴史好きの客の心をくすぐる内容だったが、全体を思い返せば余り興奮は得られず。でもここ最近の作品の中では好きかな。
やっぱ舞台のあまみんは凛々しくて華があるわぁ。最後の表情が輝いて綺麗だった。
早乙女兄弟の殺陣が早いわ美しいわ他の人の動きが止まって見えるw
みはるさん、伸びやかで綺麗で可愛く、変わらぬ歌声だった。
聖子さんの真っ直ぐさや粟根さんの役の違和感のなさ、黒馬鬼最高でした。
ネタバレBOX
壮大で無駄な場面はなかったけど、どこか「長い‥」と感じた事もしばしば。各曲は聞きやすかった。
相馬の国を守る為に行動を起こす武士(もののふ)と、その志を拒否し受け入れた蒼真。同じ発音にしたあたり、現代の福島を彷彿したり。権力者による国の強行手段で市井の人々の困窮ぶりが巷にあふれていく模様には現状日本への警告かな、とも見られたり。
ただ、この2人の恋愛模様は、どこら辺に惚れ込んだのか描写が薄く、見ていてどこか腑におちなかった。
舞台の松山さんを初めて見たが、結構恰幅ある事にビックリ。大らかな馬鹿性格には愛嬌あったけど、他は一本調子に見える箇所もあり。重要な位置づけの役だったが、脇で締める役割の方が良かったんじゃないかな、と思った。
一癖ありそうな狂言回しかと思ったら、意外とそうでもなかった善さんの健全な存在。
平さんの策士な面と公家の畏怖感と貫禄はさすがの存在感だったけど、それ以外はあんまり目立った印象がない。
ヴェニスの商人
チョコレートカンパニー改めディ・ショコラーデ
【閉館】SPACE 雑遊(東京都)
2014/04/10 (木) ~ 2014/04/13 (日)公演終了
満足度★★★★
初見。面白かったです。
チケットプレゼントで観劇。
原作は古典戯曲だし筋は予め、わかる人はわかる作品なので、どう見せてくれるのか、と興味がありました。
洪水のような台詞のやり取りを、当たり前だがスラスラ述べ、意外とストレートな見せ方で見やすかったし、わかりやすかった。狭い舞台内を脚立等を使い上下左右巧く使いこなし、正統派演劇を見たって感じ。
役柄上、考え違いから巻き起こる騒動に喜劇性も巧く加味し、面白かった。
休憩5分込み約2時間30分。
ネタバレBOX
うん、最後はなんだかんだでハッピーエンドだよね、わかる〜と言いたい所だが、今作に出て来た2組のカップル、一悶着起して最終的に別れちゃいそうな勢いあるカップルだったな、それも一興だけどw。
オリジナルで、あの2組のカップルの後日談を見てみたいw。
夜中に犬に起こった奇妙な事件
Quaras
世田谷パブリックシアター(東京都)
2014/04/04 (金) ~ 2014/04/20 (日)公演終了
満足度★★★
静かな舞台だった
海外戯曲の設定を静岡と東京に変更し、舞台上には常に役者待機の中、創作と現実が静かに進行していく。時折コンテンポラリーダンスのような緩急ある動きでメリハリをつけ、盛り上がりを見せてくれる。
役者の力量がないと途端シラける話の運びとも思ったが、主人公見てたら次第に観客の視覚聴覚も研ぎ澄まされていくかのように見ていた。
一歩を踏み出した彼の勇気と希望のある信念はとても素敵だと思う。
音楽がイキウメで聴いた事のあるかみむらさんで、なんか得した気分w
アンケートなし、休憩込約3時間。
カテコのあの証明演出は演出家の好みw?
ネタバレBOX
犬が死んだ事を端に話が始まるが、犯人探しをする第一幕。なんとなくあの人が犯人と予想はついたけど。他人を傷つけ、自分も傷つけ、死んだと思っていた母が東京で暮らしている事がわかり、自力で探し出す行動を起こした第二幕。
ステージ上に役者がほぼ出ずっぱり待機、その中で決まった人物とやり取りする場面が多く、話の性質上、あまり激しい動きもない。ラジオドラマや朗読劇でも通用しそうな印象を持った。
気になった事は、3階席から見ていたが、ピンスポットを多用していたので役者に光りを当てる度に、座席壁面に照明さんの動く影と光りの反射が見えて気になったけど、座席位置が位置だったので、我慢した。
マニラ瑞穂記
新国立劇場
新国立劇場 小劇場 THE PIT(東京都)
2014/04/03 (木) ~ 2014/04/20 (日)公演終了
満足度★★★★
アフタートークの日
恥ずかしながら、タイトル漢字名を一発では読めず、もちろん意味等もわからず。
読み方と意味が分かると戯曲の説明文もしっかりと理解出来た→遅いw
一つの国の中にある祖国。明治時代のフィリッピン(多分この時代はこんな発音?)領事館を舞台に男も女も雑多に生きる姿が魅力的。
タフで哀れな女達、いかにも九州男児然した秋岡、興奮時江戸っ子口調になるも育ちの良さが垣間見える高崎。言葉は発しなくても存在感を示すシズの末路や、祖国を思う男達の想い。
貧困、教育、植民地、運命等々、戦後間もない時期に書かれた戯曲なのに妙な空気感を醸し出している現代にも通じている、日本の演劇って感じだった。
どこから見ても役者の息遣いを感じ取れる中央囲み舞台。
休憩込約2時間40分。
終演後、出演によるアフタートーク実施。
質問したい事があったが自己の都合で途中までしか聞けず。
4/18 アフタートーク部分記述。発言の部分省略あり。
ネタバレBOX
秋岡、高崎、古賀、タキは、それぞれどういう思いでシズと接していたんだろう、とか聞いてみたかった。
終演後、司会に中井美穂さんと芸術監督の宮田慶子さんと私服に着替えた役者陣がステージ登壇、60分+αのアフタートーク開始。
司会/中井 並び/千葉、山西、古河、高島、宮田
・上演のきっかけ
宮田/もともと自分でやりたかった作品。作品同様、領土問題等あたらめて考えななければならない。2年前に(上演を)決めた。それから益々キナ臭くなったが、なぜ「マニラ」で「瑞穂」なのだろうと。秋元さんはなぜ、このタイトルを付けたのか、若い人にはわからないのではないか。2つの国をくっつけるのは問題提起でもあり希望や願いでもあり。一演出家としてみれば、栗山演出ならではのこの空間(四方囲み舞台)になった。
・キャストについて→研修生を多く使ってベテランを入れるのは元々の狙い通り?
宮田/実習でもやった事あるが、中身、実年齢はもっと若い。若いうち苦労しながらも生命力持っている。今回は修了生多く選んだ。またベテラン陣はこの世界をがっつりくんでる3人を選んだ。
・千葉/演出家として最初この本を読んだ時の印象は
→わかんなかった。九州弁で書いてるんで。秋元さんは元々横浜の人。辞書を片手に美しい日本語として書いた(らしい)が、どこで句読点つけていいかわからなかった。(いつも激しい役やっているが)本当は静かな性格、古河さんみたいな役やりたいなー。
山西/正直よくわからなかった。マニラ〜なんて読むの?あー、みずほ、あー、日本と読むのかとわかった。明治時代中期の話だが、こういう時代あったのかーと読んでいくうち、歴史の勉強というより、一人一人が面白く描かれているなーと思ってやった。
古河/「長い墓標〜」以来の出演。政治の話は嫌いじゃない。この作品の(研修生?の)試演会をやったのを見た事あるが、見てもわからなかったが、見て読んで、改めて「あ、なるほど、細かい所がこうなのか」とわかった。
高島/今回、着物着て日本髪結って演っている。以前(研修生)見たら印象が強烈だった。政治の話は難しかったが演じるのを見て、知れば知る程、面白い。
・女性に対する部分は栗山さんの色が強いのでは
高島/叫びとか、勝手に女性を代表して言っていると思う。シズが日章旗に手を伸ばす場面があるが、もともと台本になく、これは演出として入れた。
山西/(火をつける場面があるが)火をつけて興奮してると解釈した。でも最後ここに置いていくんかい〜、ってなるんですがね。
・稽古場の様子
千葉/(山西さん、千葉さんは初共演だがどんな感じか)一個しか年違う、(山西さんは)先輩です、僕ベテランぢゃないんで若手なんでw(と言い張る)。本読みは短かった、栗山さんが忙しいから。3時〜6時の3時間、10日間くらい。九州弁が暗号みたいだった。(千葉さんは)東京の出身、九州弁の練習用テープの中身が台詞聞いていると「〜〜あ、間違えた」とたどたどしいので、もういいかっと(止めた)焼肉ドラゴンの時の大阪弁は上り下がりがあって、それと比べたら(九州弁は)平らの発音なので(苦労した)山西さんが羨ましいなー、標準語かーと。
山西/僕、京都(出身)なので、こんな「べんらんめぇ」口調って(あまり使った事ないけど)面白いですね。明治31年の話、秋岡と高崎のおじいちゃんおばあちゃん、親の世代は江戸時代の人?明治維新を体験した世代、それが天皇について(~語っているし)
・高崎、秋岡の人物像とは
山西/人物像?この時代の役人なので家柄は良かったと思うけど、高崎のお父さんお母さんは小さい頃から善悪について教えていたのでは。キリスト教の影響が大きいと思う。(→高崎さんはモノマネ好きですよね)あれは栗山さんの無茶ぶりで。稽古終盤「天皇のイメージでやって」「そこの一文、キリストで」それらが好きな人と云う事にしましょうで、やるようになった。高崎は秋岡にはなれないから、憧れがあったのでは。
千葉/秋岡役の人物、モデルがいるが元々、女衒(ゼゲン)を生業としていた。37歳くらいの人、いいんですか?(千葉さん)50歳で。写真見るとかっこいい、自伝も書いているが物凄く喰わせもんだと思うが、台本上は純粋な人。たまたま威張っているけど実は女の人に転がされるイメージなんでは。お金持っているけど使い方間違っている。
→古河さんと高島さんはこの職業の事は知らなかったそう。これについて職業補足説明あり(明治時代、国業として認められていた職業、外貨獲得の為の斡旋業、等)
・タキについて。役のアプローチ
高島/最初、そこまでリーダー格とは思わずやっていくうちに秋岡との関係の深さが自然に周りもそうなったのでは。
宮田/「からゆきさん」という宮本研さんの作品あるので。秋元さんとは違う視点の作品。「捨てられたら捨てかえて〜」って台詞があるが吉原とは違うシステム。一攫千金を夢見て作った。
→その当時の繁栄ぶりやそこが社交場のような意図であった、とか。
・背景の話し合いはした?
誰か忘れた/→作家の面白いところはその当時の領事とか女衒とか(近くに)一杯いて、会話が一緒になる。昔の領事館のイメージは今とは違うが。秋元さんの(この作品を)アメリカ敗戦した戦後間もない頃に書いたので、それも関係しているのでは。
古河/映画見たり。日清・日露戦争を取り扱った作品があまりない。最近(の作品)だと「坂の上の雲」見て。軍人はその当時は憧れの職業だが、(この舞台では)あまりカッコ良くさせたくないと、栗山さんは考えていたのでは。女達の台詞で口々に性格を見抜かれてしまう。
山西/栗山さんは「教育」と言っていた。軍人は教育を受けて軍人になる。それが出ているのでは。
・女達にとって秋岡はどんな存在なのか
→なくてはならない存在、仕事するには秋岡がいないと出来ないし、絶対になくてはならない存在。トップとしている存在。泥棒稼業でいきなりトップいなくなるけど。
・話の流れで秋元さんの描く女性は逞しい、最近の男性は弱々しくなった、云々
千葉/(役柄上、実際にも自分が)こういう人だと思われてるんですよ。幼稚園では一番後ろにつくタイプ。人気者に順番譲ってまた先行かせて、いつまでたっても自分の番が廻ってこないっていう。→ここで山西さんの「誤解を与える役割。(真の千葉さんは)ヒドくないです」とフォロー?に千葉さん爆笑。
山西/(自分の性格と役柄?)客観視している部分は共通しているかも。誰とでも均等に接するが、今回みたいな役柄のような濃い関係はない。普段の生活でもない、舞台だから出来る。→(千葉、舞台だからああいう切れ方をするんじゃないかな、でやっている)
初演では四幕あって、あの後、2年6ヶ月後が描かれている(らしい)。読んでいないけど。秋元さんが戯曲全集作るとき、ご自身がカットしたらしいが、その設定を聞いたらウィルソンの嫁が出てきたり、高崎はオーストラリアに赴任しているらしい。火をつけたのにー。或いは淡路に「すまんが替わりに火をつけた事にしてくれんか」って言って全て罪着せて肩代わりさせたのかもw。
古河/(最後)どうやられたのか、意識ないのでよくわからない。(伝達役の彼は)オッチョコチョイなので「致命傷ではないと思います‥!」と言っていたが、遅刻もするような彼なので、あーもうダメかもー、とも思いますw
Q&A
・台本もらって稽古までの間は何をしているか
千葉/台詞を覚えている。わからない単語を調べたり(例「ステレツ」→花街とか)歴史物は大変、ドラえもんが欲しいw (台本の)字が小ちゃかった、上下に分かれて(書かれて)るし。
山西/(参考に)今村昌平監督の映画「女衒」見た。面白いですよー。
あとは他の仕事してた(→千葉さんから「マニラ」と「相棒」でしょ?w) (台本)読んで覚えて途中で寝て(の繰り返し)
例えば「おめぇも変わったなー」という台詞、流れとかしっくり来ないと台詞も入ってこない。台本置いてボーっとして言えるまで待っとく。自分の中で理由を探して徐々に言えるようにしている。
古河/比較的時間あったので、勝手に(脳内)キャスティング設定して遊んでた。
高島/ひたすら方言のCDをリピートして。耳で覚えた。後はDVDとか手がかりになるものを漁った。
・役づくりについて
千葉/現場で人の台詞を聞いて考える。大きな声の人なんだろうな、とか、思考の回転が早い、とか。
山西/秋岡と拮抗する役。最初カッコいい役だと思っていたら栗山さんが大らかで良いのでは、と。この人が領事で良いのかと思う位。これで段々と臆病者だと(わかるようにした) 千葉さんとやり取りして見えてくる部分があった。
古河/悪役なんだなーと思って。悪人然としてやろうとしていたが、信念ある人の行為もある。意表をつかれた。
高島/色々やって栗山さんから「頭が良すぎる」と言われる。教育も受けていないのに(予め)行動がわかって(演って)いる。キリストの所も真似の仕方とか、発見あった。
話の流れで→若手に言いたい事は
千葉/滑舌良すぎる。テレビもあるし。怒る時どこかインプットされている。演じる事がわかっている。そこに立って生きる事、等が大事。
山西/本当にそうだと思う。上手い事は大事だけど、上手けりゃ良いのかと。これ言うと役者としてねー、また大変〜。
まだトークは続いていたが、都合で記述ここまで。
ザ・フルーツ
SPACE POND
駅前劇場(東京都)
2014/04/02 (水) ~ 2014/04/09 (水)公演終了
満足度★★★★
面白かった
流行に乗り遅れた中年GSデンデケバンド「ザ•フルーツ」の流転コメディ。オカッパ頭のメガネオジさん達の、どこまで曲調をパクっているのか不明だが、その歌も演奏も、本番は格好良くって上手‼︎
趣理ちゃん、劇中台詞同様得体の知れぬ存在で益々キュート、津村さんが漫画キャラみたいでモダンスイマーズとはもちろん違う巧さ。
出演者と同年代と思われる観客層、場内満席。約2時間。