私の子供=舞踊団 ソロシリーズ『イマダンス』
富士見市民文化会館キラリ☆ふじみ
planB(東京都)
2014/03/15 (土) ~ 2014/03/16 (日)公演終了
満足度★★★★★
表現とはこういうことだ!(と思った)
「私の子供=舞踊団」。<br>
ダンサー田中泯(みん)が、2011年に一般公募を始めたメンバーで作ったワークショップを母体とする舞踏団。埼玉県富士見市民文化会館「きらりふじみ」が田中泯とともに思案して立ち上げたという。
今回観た『イマダンス』は、この舞踊団初の「ソロシリーズ」。
内容は、舞踊団から選抜された男女六人が、一夜目に三人、二夜目に三人、多分一人30分弱くらい、たった一人で「オドリ」を観せるというものだ。
衝撃的だった。
登場する男女はただの素人である。たいてい普段はそれぞれ仕事をしている。
聞くところによると、各オドリは一から自分で動いて作り上げさせ、それを田中泯が追い詰めていくらしい。
本番の舞台には音楽や照明があるが、そういうものがない状態で。
え・・・?
課題もモチーフもなく伴奏もないまま、「踊ってみろ」と言われて、ヒトはどう動くのだろう?
しかし眼前に現れた「オドリ」は、一人の人間がとことん己と向き合って、絞り出して凝縮したかのような、濃密な「オドリ」だった。圧倒された。
一人目の大柄な男性は、30代後半くらいか。くしゃくしゃの髪。よれよれのジーンズの上下(作業着?)を着ている。何をするのかと思えば、入場してきて壁沿いに横たわり、そこから長い長い時間をかけて「立つ」のだ。
そこに至る、例えば腕を曲げる動き、膝を伸ばす動き、恐ろしくゆっくりで、その動きは時に畸形的ですらある。ただそれを観ることは決して退屈ではなく、それどころか非常に緊張感のある、濃密な時間として感じられる。ついに舞台の中央で直立した時には、言い知れぬ感動がある。しかしそこで終わりではなく、バランスは再び崩れていく。機械の音のようなBGMとも相まって、ギーコギーコと関節がきしんで呻いているようでもある。なんだか、途中からとても悲しくなった。悲しみが直接どくどくと流れ込んでくるような気がした。
二人目は、30くらいの女性。白い布を巻き付けたような姿から、細い右腕が虚空に突き出していく最初の動きから目を奪われた。繭から生まれる白鳥か鶴のようにも見えた。彼女の動きはとても美しくてしなやかで強靭で、どこか根源的な悲しみや不安や脆さのようなものもあり、動き一つ一つに目が惹きつけられっぱなしだった。
これだけイマジネーションを喚起してくる突き詰めた表現を、公募した素人によって結実させるとは・・・田中泯マジックなのか。
観ていて一番強く思ったのは、「ああ、表現って、こういうことだったんだ!」ということ。
世の中は様々な表現物(創作されたもの)であふれている。
が、観る者の嗜好に迎合したり、流行の要素を集めたり、定型のバリエーションで「まあいいか」で済ませたり、9割はそういうものばっかりだ。
どこかで何度も見たような、有っても無くてもいいような創作物が「フツーにいいんじゃない?」という「褒め言葉」で流通しているのはなぜなんだろう?
一度は「表現」というものの根本、いちばんシンプルで純粋な「表現」の形、というものを知りたいと思っていた。
その体験が、この舞踏団で、見られた。
田中泯のルーツである「暗黒舞踏」は、頭を剃った裸の男たちが全身を白く塗りたくってパフォーマンスをする。
しかし『私の子供=舞踊団』では、田中泯は一切白塗りなどは使わない。
白塗りという記号性に頼ることを許さないのかも。
イメージを持たせない、テクニックに頼れない(頼らせない)。リズムや音楽に乗ることも許されない。また今回は、プログラムどころかやテーマすら与えてもらえない。
リズムどころか慣性に任せたような動きは一切ない。
普段何も考えずに歩いたり立ち上がったり呼吸していることの不思議さを、だからこちらは痛いほど感じる。
内面表現にも非常に共振した。しかしそれについても、一般の劇団員や大学の演劇部が練習(エチュード)でやるような、喜怒哀楽の感情表現など一切しない。悲しみや苦しみの表情や動作をすることは、定型もあり自身の経験もあるから結構やさしいように思える。けれど彼らはそれをしない(させられない?)。
表現って、オリジナルな創造って、こういうものかもしれない・・・(しつこくてゴメン)と、これほど腑に落ちたように感じたことはない。
舞踊技術の完成度とかは無縁に、あれで完成しているように感じた。
その後どんなにうまくなって経験を積んでも、あの夜のあのおなじ「オドリ」はできないんじゃないか。そう思って痛ましいほど厳しい道だと感じたものである。
しかし思い起こすと、発展の萌芽や可能性は多々感じさせられた。
清冽で美しかった女性の演技では、後半の髪を乱したエロティックな瞬間にドキリとした。今回の舞台では大きく発展しなかったが、「その先」を思うとゾクゾクさせられる。もしかしたらあの細い身体から、もっと「怖いもの」、「エロティックなもの」、「グロテスクなもの」が引き出されてくるのかもしれない。
畸形的で悲しみに満ちた(と思えた)男性の演技も、その先に「崇高なもの」につながる何かを感じた。
あのオドリは一夜限りだが、彼らの内面にはまだまだ表現を待つ多くの未知なるものが息をひそめているだろう。
いずれにしても、活動が続く限り観させていただきたい舞踊団である。
「ジャパニーズ・ジャンキーズ・テンプル」
ハイブリットハイジ座
シアター風姿花伝(東京都)
2013/03/06 (水) ~ 2013/03/10 (日)公演終了
満足度★★★★★
これは目撃しないと!!
大好きなハイブリットハイジ座の二都市公演企画。
感想もじっくり書きたいけれど、まずは行かずに後悔する人、見損ねて来週大阪まで新幹線で行かねばならなくなる方々のことを思って書く。
これぞハイジ座。シモネタ満載でぶっ飛んでいて危なくて、、それでいてどこか優しさに溢れた脚本。ばかばかしいほどのパワフルな役者たち。
最終日までに病院送りが出るんじゃないかと、本気で心配している。
鑑賞などというものではなく、体験に行こう!!
『豚引き剥がし騒動記』のような体液ダラダラ感(初体験がこれだったからやられた)はさほどなく、『立った立ったクララが立った!』みたいな重層的なドラマ感はさほどなかったかも・・・。題名に現れた「和風・狂気・寺」で想像した猥雑で混沌とした「世界観」の構築がまだ今ひとつかも・・・。
けれど、なんて愛おしい作品・・・・・。ネタバレになるので内容は書けない。
看板俳優の広井さんはやっぱりいい。去年のガクランが相当お気に入り?
女優では田中裕子もいいけど、南美桜から目が離せなかった。カワイイのに、怖くて残酷。ライト兄弟(一人なのに)とか、ゲッツな先生とか、ホモ坊主とか、ハイジ座らしい異形の者たちも健在。
・・・と、細かい見どころはたくさんあるし、ほとんど笑い続けていたが、ラストの一連のシーンですべて昇華された。見てはならない寺の本尊のご開帳とその祭りに参加した気分。私は舞台に向かって一心に祈り続けた。みんなも一体化してくれ!
日一日と変貌を遂げそうな舞台。事情が許せば大阪も行きたい・・・・。
第二回 演劇早慶戦
演劇早慶戦実行委員会
牛込箪笥区民ホール(東京都)
2012/12/08 (土) ~ 2012/12/08 (土)公演終了
満足度★★★★
パワーアップ!
昨年誘われて第1回を観た。正直双方つまらなかった。早稲田には劇団がたくさんあり、面白いのもたくさん観たのに、なんでよりによって・・・と思ったくらい。結果、最後おちゃらけたような早稲田に愚直につまらなかった慶応が勝った。
今回は全然違った。どちらも本気で勝ちに来た。二回目にして「早慶戦」の名に値する歴史が始まったという感じ。嬉しかったし面白かった。
あのダイナミックな木組み四段の舞台装置にびっくり。早慶どちらも基本その装置を使ったのだけれど、どちらも十分高低差を生かし、早稲田は怪我するんじゃないかとハラハラするくらい転げたり滑ったりしてくれたし、慶応は装置を縦横無尽に使い、物語の大きさを表現してくれてた。
お題が「平成のシェイクスピア」という以外の予備知識はなかった。
しかし慶応の配役を見て山崎一平、神林美智子、桂木という役名を見つけ、「おお!これはロミジュリ飛龍伝か!!」とテンションが上がった。70年代、慶応大学在籍中のつかこうへいが早稲田に通って平田満や風間杜夫と劇団を立ち上げた経緯を思うと、演劇早慶戦で慶応がつかを演る、ということにたまらないロマンを感じてしまった(今の学生がそれを意識しているかは知らないが)
(以下勝敗の結果等に触れます)
船をたてる【全ステージ売り止め御礼!!当日券はキャンセル待ちになります!!】
海辺のマンション三階建て
早稲田大学学生会館(東京都)
2012/10/11 (木) ~ 2012/10/14 (日)公演終了
満足度★★★★
こんな作品世界があったのか・・・!
鈴木志保の漫画『船を建てる』の舞台化。
実はこの漫画、薦められて読み始めたものの、絵もコマ割りも文体も「なんとなくとっつきにくく」、わずか5ページくらいで挫折してしまった・・・。
舞台を観て、やられました。
こんな世界を描いた作品があったのか。
(それも一度は手にしていながら、中身に触れることなくすれ違ってしまうところだったのか!)
今回の舞台は、漫画と比べると非常にやさしく、迷宮のような物語の最初から最後まで連れて行ってくれた。
おかげさまで、理解しきれないながらこの物語の内部にすっぽり入り込むことができた。その後で、「あれはどういうことだったのかな?」「○○は何を表していたのかな?」と考え込むことが非常に多くなった。
もちろん、その答えは見るもの一人一人に委ねられるのだろうけれど。
観劇後に居ても立ってもいられず原作を開き、その深さにどっぷり。
徹底的に切り詰められた白っぽい画面の中に詰め込まれた物語は、濃密で深い。非常に多くの寓話的な物語がはっきりした説明もなく散りばめられている。
わずか70分の舞台の中では、大半のエピソードが省略されたり縮められたりしているのだが、エッセンスはしっかりと残っている。
そして、この漫画世界が演劇作品になっている。舞台に乗る作品に仕上がっている。
一番の違い。漫画ではさほど泣けない・・・泣いたとしても手放しではなく、どこか苦い涙だろうと思うのだが、この舞台では、たくさん泣いてしまった。
けれどそれが、なんというか気持ちよいのだ。どこか捉えどころのない原作と違い、この舞台は手放しで泣くことも許してくれる。
それによって心が浄化された気分になれた・・・というか、存分に泣いた後で、ようやく運命(もしくは終末・・・?)を受け入れることができるような気持ちになる。
>いろんなことが あったね
>そうね でも もう おしまい
ざら紙のチラシでこのフレーズを読んだ時は、なんとなく気取った感じがしたものだ。けれど、舞台でこのフレーズにたどり着いた時の「あああああっ・・・」という気持ちときたら・・・・!!
客席は、会場の長辺に椅子をたったの二段に並べてあるだけ。
波の音ともあいまって、細長い船のような舞台を船べりから観ているようにも感じられる。
ワンステージわずか50人くらいしか入らない。確か全6ステージでほとんど満席だったと聞くけれど・・・たった延べ300人しかこの舞台を体験できない。
もったいない・・・・。
もっと多くの人に観てもらいたい作品だと強く思う。
この世界観を構築するための音楽や照明もピタリと合っている。
開演前から、ずっと波の寄せては返す音がしていた。ここは船の上なのかなとも思わせられたが、そうでもあり、そうでもない。
役者さんたちは特に上手いというのではないが、非常に素直な演技。作品世界がストンと胸に落ちて来る。
特に印象に残ったのは女神さま。開演前からラスト近くまでずっと動くことなく、舞台の隅で片手を挙げて立っている。非常に背が高く筋肉質で、普段は舞踏(マイム)の方をやっている方とのこと。動きの美しさに何度もハッとさせられた。
物語が進むに連れて、次第に「ある予感」が高まってくる。
登場人物のそれぞれの物語が、本当にあったことなのかもわからなくなる。
最後には美しく哀しい、残酷な結末に連れて行かれる。
いくつもいくつも、「謎」が生まれてくる。観ている時も。見て数日が経ってからも。
世界の秘密。
人と人が出会い、愛し合い、別れることの秘密、
もちろんその答えは、観る人によって異なり、非常に幅が広いでしょう。
けれど、舞台と、そのあと原作コミックを読んで、いろんなことを考えてしまいました。
舞台と漫画ごっちゃになりましたが、こちらに書きましたので、もし興味を持っていただければ・・・。
http://yaplog.jp/kinoko2006kun/archive/1191
http://yaplog.jp/kinoko2006kun/archive/1192
「広島に原爆を落とす日」
★☆北区AKT STAGE
北とぴあ つつじホール(東京都)
2012/07/13 (金) ~ 2012/07/16 (月)公演終了
満足度★★
旗揚げは寿ぎたいが
待ちに待った北区AKT STAGEの公式旗揚げ公演。
客を呼べる演目には事欠かないのに、一番の問題作とも言われる『広島』を選んだ意欲は買い。
面白く観た。特に南海の孤島でのディープ山崎と部下達の納豆作り生活の楽しさ、リズム感はこの劇団ならではかな。
けれど観終わって、つか作品を愛する身には、サイズダウン感が否めない。
昨年渋谷で見た筧利夫主演の同作の方が、笑いこそ少なめだったがはるかにテーマが大きく、主演の迫力も上だった。
筧版は原作小説と同じ韓国人の「犬子恨一郎」だったのに、今回は以前稲垣五郎とかで上演されていた日系ロシア人「ディープ山崎」のまま。
ディープ山崎は、秀才ではあるけれど、優越感と劣等感に引き裂かれた、部下をこき使ったり甘えたりする温室育ちのせこいオトコ。杉山圭一のちょこまか感ともあいまって、面白いけれど物足りなかった。
正常な神経のまま原爆投下のボタンを押せる「たった一人の人間」とは到底思えない。ヒロインの夏枝も、特別な存在に思えない。
このカップルは、世界に選ばれたたった一組のペア、「核融合にも匹敵する愛」の物語だったと思うのだが・・・。
犬子恨一郎版なら浮き出てくる、差別に関する大きなテーマもどっかに薄れてしまった。もっと突き詰められた「広島」を観たかった。
同時上演の『我が上なる星空』は、劇団初のオリジナルだというので、まずは観ようと思ったのだが・・・。
平安時代っぽい設定で鬼と戦い、「どんな願いもかなう刀を見つける」って、まるで劇団新感線のミニ版みたいに見えた。
「お前の見方ひとつで世界はいくらでも変わる」「この世にいらない人なんていないんだよ」「信じれば、必ず見つかる」・・・・・
なんでしょうこのメジャーでJポップ的な世界観は。単なる市民劇団ならともかく、あの「アフターつか」のAKTとしては残念。
つかファンとして、この劇団についていけるかどうか、不安を感じました。
早稲田演劇週間
早稲田演劇週間
早稲田大学小野記念講堂(東京都)
2012/06/14 (木) ~ 2012/06/17 (日)公演終了
満足度★★★★
多彩で楽しかった!
早稲田演劇週間、全7本中5本観ました。
無料で、各作品30~40分程度の内容。
層の厚い早稲田の演劇の中では、登竜門的な企画なのか、主宰(脚本演出を兼ねてる)が二年生というのがほとんど。金を払って見に行くのと違い、高校の演劇祭を見るような気分で(失礼)気軽に観られます。
● 「キリンズ」の『兄弟解散』。
吉本新喜劇を愛するという主宰の、練りに練られた脚本に唸らされた。熱もあり笑いもあり愛もあり毒もある。ラストに違和感も感じたが、その調和しない感じが余韻となって嫌いではない。
主演の長男役のハートのある演技は『一つ屋根の下』の江口洋介の過剰ポジか。うざさと滑稽さがすごく良くて、泣きそうになった。鍛えられた身体能力もすごい。
●「ポーラは嘘をついた」の『しらすがあなたを見ている』。
意外にも笑いを封印した男女の愛とすれ違いの物語。
一組の男女を二組の男女に擬して(?)、フーガのように紡がれた重層的な構成が面白い。象徴的な舞台で、照明や音楽に作者の世界観や美意識が現れ、引き込まれた。できればもう一度観て内容について考えたい。
役者さんたちが人形のようだったのは、演出意図かな。
●「un-call」の『引力に落ちる』。
「月」と「女性性」がテーマ?ちょっと甘くて、懐かしい感じの舞台。女性(うさぎたち?)三人の会話は、あまり共感できなかったが、舞台装置もほとんどないのにメルヘンの世界を感じさせたのは良い。
● 「劇団阿呆船」の『ホシヨミ』
『ひかりごけ』のようなプロレタリア演劇を思わせられて驚いた。劇団名も中高年の市民劇団っぽいが、今の学生達の中から出てきたものならかえってすごい。突き刺さるセリフ、労働者風の登場人物の存在感は印象に残った。
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早稲田演劇週間、実は昨年も行ったが、会場が一番のネックだと思っていた。
演劇をやる場というより講演会場。前席数列の後ろに広い通路があり、ほとんどの席はその後ろ。舞台がとても遠い。劇研アトリエの臨場感などとは大違い。
舞台の上でまとまった世界を作っている、客席へのストロークの少ない作品は損。
今回、そのデメリットを武器にして、小野講を最大限活用して見せた団体が現れた。それが「とろけるぱられる」。本企画の台風の目になり、動員数圧倒的トップを記録したという。
終わった公演とはいえ、以下は「ネタバレBOX」へ・・・。
パノプティコン【ご来場ありがとうございました!】
劇団てあとろ50’
早稲田大学学生会館(東京都)
2012/02/09 (木) ~ 2012/02/12 (日)公演終了
満足度★★★★
素晴らしかった!
これまで観てきた学生演劇とはずいぶん違っていてびっくりした。
この舞台には、物語があった。美意識があった。
かつ、テーマを重層的に構成していく知性があった。
舞台奥を要とした扇形のシンプルで象徴的な舞台。
男女5人の囚人たちの衣装は白いスエット上下。毛布の色とあいまって、蚕棚の「まゆ」のように見える。ゆるく仕切られた独房に備え付けられた大きさの違う四角い箱が、ラストになってあるものに変化するのがうまい。
音楽も、クラシック中心ながら、腹に響くような打楽器の音が緊張感を盛り上げる。
着想は、ベンサムやフーコーの監獄論によるものだという。しかし完全に自分のものにしている。
たった5人の登場人物のドラマは過去も含めて緊密に描かれ、キャラクター性もしっかりいている。「看守様」が神になるというルカの突飛な幻想も、次第に迫力を持って場を支配する。
魅力的な謎(ミシェルとベンについて)も仕掛けてあり、グイグイ引き込まれた。
テーマは明確なのに、理屈っぽかったり説明調になる部分はない。
役者たちは、特にうまいというわけではないが、しっかりと役になっている。半端でない演出上の追い込みが感じられた。
生の暴力、特にベルトでお互いを鞭打つシーンが何度も出てくるが、空振りもあるが断然身に当てている方が多い。必然性はあるけど、身体が痣だらけになっていることだろう・・・。(私が見たのは最終日の選抜メンバーの回)
ガチャガチャ作って、そこそこ笑わせて、、鬱屈した思いを吐き出して、最後パアッと盛り上がれば一丁上がり、みたいなシロウト劇とは一線を画す。観てよかった。充実した。
今回が第一回公演という演劇集団の「チト」。主宰にして作・演出の「ちょんよんぎ」は、今回は出演こそしなかったが脚本家・演出家としての才能と情熱を見せ付けた。役者としても美声美形で魅力的。羨ましい!
同じ早稲田系の「犬と串」とともに、今後注目していきたい。