双葉のレッスン
流山児★事務所
ザ・スズナリ(東京都)
2008/06/11 (水) ~ 2008/06/17 (火)公演終了
芝居の本質的な面白さ、アンサンブルの重要さがあった。
脚本ができあがったのが6月に入ってからという噂もありどうなることかと思っていた。稽古場を覗きにいくと流山児さんがダンスシーンでぶつかったりしていて、大変なのかなあと思いきや、本番を観劇したところとても面白く演劇的な悦びに満ちた作品だった。大雨で増水し浸水を逃れた民家に移り住んだ人々は団地の出身者や市役所の人、生きてる人も死んだ人も入り混じり、幻想と現実が入り混じり。めくるめく万華鏡のような芝居が続く。疾走する芝居であり、火事場の?アンサンブルの勝利である。古めかしく壁紙がはがれた室内は昭和の匂い、ダンスはテクノぽく、愛憎劇はさまざまで、愛情や追慕が中心となり進んで行く。特にリフレインの中で徐々に起きたことが解体されて行く様は記憶の中で過去の出来事が自分なりに変造されていく様を描いているようでもあった。
とにかく見ていて面白い。
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夕ーゆうー
東京セレソンデラックス
シアターサンモール(東京都)
2008/06/18 (水) ~ 2008/07/13 (日)公演終了
観客は湧いていた!
観客で満杯の劇場だった。前売り券は完売の上、通路にもぎっしり観客が入っている。シアターサンモールのお芝居でこれほど大入りだった芝居は見たことがない。それも東京だけで30ステージもやるのだ。きっと7000人を超える動員があるのだろう。これほどお客を呼べる劇団っていうのは東京でも数少ない。しかし、なぜか東京の演劇界であまり注目されていないのも事実だ。
台本は良く練られていた。観客も笑い泣きカーテンコールの拍手も本物だった。
これは好みなのだろうが、僕は苦手な芝居だった。
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審判員は来なかった
ペンギンプルペイルパイルズ
リサイタルホール(大阪府)
2008/07/27 (日) ~ 2008/07/27 (日)公演終了
倉持氏はきっと幸せだ!
好き勝手にやっているのに、面白い。そんな幸せな演劇人はどれだけいるのだろうか?初日の舞台を客席中央の最後列の通路際で倉持裕は時おり笑いながら見ていた。見事に描き分けられた登場人物はセンスのいい美術のポップアート、そう、レッドグルームスのような美術の廻り舞台で繰り広げられる。よくわからげな欧州の小国での出来事。
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かもめ
TBS
赤坂ACTシアター(東京都)
2008/06/20 (金) ~ 2008/07/12 (土)公演終了
赤坂ACTシアターはACTのための劇場か?
まさにオールスターキャストで、ロシアからの来日組や、例えば90年代のピーターブルックが作るチェホフとも、また日本の新劇やチェホフ研究会みたいな劇団がやるそれとは違って、非常に分かりやすいある意味チェホフらしくない「かもめ」であった。それが良くないとはいってない。
先ずは俳優の魅力を存分に引き出すことに演出の肝を老いたような気がする。藤原竜也を初めていいなと思うくらいに藤原竜也だったし、麻美れいなどはキチンとお客さんの笑いを取りに行くのだ。藤田弓子や藤木孝、中島しゅうなど脇役まで豪華である。もう一度申し上げる。栗山民也さんの演出は、初めて「かもめ」に触れる人にも分かりやすく丁寧に演出をしていた。大劇場の商業演劇でやる「かもめ」とはこういうものなのですね。
しかし、この赤坂ACTシアターはストレートプレイをするにはほとほと不向きな劇場だと思った。
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部屋と僕と弟のはなし
劇団スーパー・エキセントリック・シアター(SET)
シアターグリーン BOX in BOX THEATER(東京都)
2008/07/02 (水) ~ 2008/07/06 (日)公演終了
見事なアンサンブル、素敵な台本!
面白かった。満席の客席は大いに笑い、そして終盤ではすすり泣き、目をこするヒト多数。男女年齢問わずであった。スーパーエキセントリッツクシアターは三宅さんと小倉さんがどかーんと目立ち、特に若手の存在感はあまりないなあというのが正直なところなのだが、この芝居をみて、奥が深い劇団なのだと改めて思った。再演であるこの作品は、井上ひさし作「頭痛肩こり樋口一葉」、自転車キンクリーツの「蠅とり紙」や映画「ゴースト」「天国から来たチャンピオン」などなど、今までにも数多くある幽霊が出てくる。それだけに、大変むずかしく本当の名人芸が必要となるのだと思うのだが、台本がしっかりしている上に出演者のアンサンブルが素晴らしく見応えのある一級の作品に仕上がっていた。山崎大輔さんと安田裕のボケ突っ込みに三谷悦代さんが絡むだけで相当に面白いのだが、そこに杉野なつ美さんという大型キャラがいた。彼女は30年くらい前のゆうきちほ、今の樹木希林を思わせる独特の空気と時間軸を持つ素晴らしい女優さん。他の誰にも換え難い素晴らしさとがこのことだ!こんな素晴らしい女優がSETにはいるのだと今更ながら気がついた自分が恥ずかしい。
久下恵美さんの明るさは南イタリアの陽射しを思わせ、ハイテンションを揺るがすことなく突っ走る。また、出口哲也の抑えた演技は最後の仕掛けに重要な役割を担っていた。廻りが面白いから自分もやりたくなる。笑いが欲しくなる。それを全て捨ててやり通していた。すごいなあ。これに比べるとメインの3人はこれらの強力キャラの中で損な存在だが、軸をずらすことなく演じるところはスゴいなあと感心。
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パレルモ・マッシモ劇場 日本公演2007
朝日新聞社
Bunkamuraオーチャードホール(東京都)
2007/06/26 (火) ~ 2007/07/03 (火)公演終了
なにも残っていない
オペラは面白いと記憶にずーっと残ります。視覚も聴覚も知性も刺激されるからです。まだ見て1年あまりの公演ですが、もうほとんどなにも残っていません。「シチリア島の夕べの祈り」などは初見で大変楽しみにしていたのですが、楽しみにしていたことは覚えているのですが、何にも覚えていないのです。
ワーグナー「タンホイザー」
ドレスデン国立歌劇場
東京文化会館 大ホール(東京都)
2007/11/13 (火) ~ 2007/11/20 (火)公演終了
コンヴェチュニー演出…
コンヴェチュニーはいまやヨーロッパでは、新しい演出が最も待たれる演出家のひとりです。モダンでアイデアが満載で、オペラの原作に捕われないからこそ、何度も見ているオペラファンには溜らないものがあります。この作品も面白かったですけれど、それよりは歌手とドレスデン歌劇場の演奏の方が重厚で良かったですね。演出は、あまり派手にはやってませんでした。結構オーソドックスというか。
チケット代が高いなあと思いましたけれど、これくらいの水準でやってくれると嬉しいです。
何か書いているこちらも中途半端ですね。
R.シュトラウス「サロメ」
ドレスデン国立歌劇場
東京文化会館 大ホール(東京都)
2007/11/24 (土) ~ 2007/11/26 (月)公演終了
オーケストラと歌唱は良かった!
ドレスデン歌劇場ですから、リヒャルトシュトラウスのオペラをするのには最適でしょう。ファビオルイジもこの公演で次世代の指揮者としての評価を日本でも固めるような手堅さがありました。
歌手もそこそこ揃っていました。しかし、演出や美術に関しては何となく思いつきだけでやってしまった感がありまして、ドレスデンというRシュトラウスのど真ん中のオペラハウスのそれにはちょいと…なと思ってしまうのです。モダンでもオーソドックスでもない、中途半端なそんな印象を持ちました。
アイーダ
新国立劇場
新国立劇場 オペラ劇場(東京都)
2008/03/10 (月) ~ 2008/03/29 (土)公演終了
今回ではありませんが
この「アイーダ」公演の初演を見ています。もう10年以上前ですね。ゼッフェレリの演出に関しては、オペラを見尽くした連中は退屈だ。古くさいなどと言いますが、初めて観る人にはこの演出版でこそみてもらいたい。絢爛豪華。贅沢の極みという公演です。国立の劇場の予算があるからこそできる公演だし、何しろ通常のチケット価格では満杯でも赤字が出てしまうほどお金が掛かる公演なのです。
あの大量のエキストラ、動物、美術などなど。舞台でもここまでやるんだ!と思わせるのも、それを作り上げるのもイタリア貴族の流れを汲むゼッフェレリだからこそでしょう。
ゼッフェレリは、ニューヨークのメトロポリタン歌劇場でも「アイーダ」の演出をしていますが、新国立劇場版と細かい点でいろいろと違いました。新国立劇場の方がこぶりな分、細密にこだわったと記憶しています。
2009年にミラノスカラ座もゼッフェレリの演出版をもってきますがどう違うかが楽しみです。
アリアーヌと青ひげ
関西テレビ放送
Bunkamuraオーチャードホール(東京都)
2008/07/23 (水) ~ 2008/07/23 (水)公演終了
そこにはパリへの誘惑があった
パリオペラ座来日公演初日に言ってきた。この深い感銘はなんだろう。演出家や台本を書いた方には申し訳ないが、僕は筋などをあまり追っていない。その時おりの登場人物の舞台上での関係性とそれぞれが発するさまざまなエネルギー。例えば喜怒哀楽の、疑念とか、絶望とか…。そういうものを感じ取るだけなのだ。そして、このワーグナーのように深淵で、ラベルのように繊細であるフランス哲学のようなオペラを本当に楽しんだのだ。フランス哲学は知的水準が高いだけでなく、大切なことを直感で捉えようとするから、ドンドン先に非線形的に跳んで行く。そんなフランス文化と思想の最先端を行くような作品だった。
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トリスタンとイゾルデ
関西テレビ放送
Bunkamuraオーチャードホール(東京都)
2008/07/31 (木) ~ 2008/07/31 (木)公演終了
三ツ星レストランのごとく
最高にいい席で拝見した。18列目6番!58000円。高い。三ツ星レストランのフランス料理のように!しかし、モルティエはパリから最高のものをもってきてくれた。
音楽はビシュコフ!私はこの人のトリスタンをウィーン国立歌劇場で2001年に聞いている。天井桟敷のボックス席で舞台がほとんど見えない席だったが、この指揮者の辣腕ぶりに驚いたものだ。今日もそれは言えて、それも、パリのオペラハウスのオケは休暇も取れるように二編成が交替でやってるらしいのだが、それらから選抜したメンバーらしく、パリオペラ座の最高峰の技術力でこの大作に対峙してくれた。これらが生み出す音楽の官能は人類が生み出した最高峰のものであった。
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1K~山手線の左下から愛を叫ぶ~
劇団ギリギリエリンギ
ギャラリーLE DECO(東京都)
2008/03/18 (火) ~ 2008/03/23 (日)公演終了
スピーティで観やすかった!
宮益坂編 「アミーゴ」を観劇。若い人のエネルギーあふれる作品を若いノリで走りきった。観やすかった。初見の団体でしたが企画力が高いのに驚きました。
ドリル魂-ガ・ガ・ガ・ガ・ガー
劇団扉座
紀伊國屋ホール(東京都)
2007/04/24 (火) ~ 2007/04/30 (月)公演終了
作品って
横内謙介さんは、人の真似をおそれるなと良く言う。良いものを自分の作品に取り入れる、きちんと取り入れることは戯曲家としてとても大切なのだ…と。
この作品こそまさにその通りで、長年芝居、ミュージカルなどなどを見てきているものにとっては、あれはあそこから、これはそこからと思えるようなシーンが少なくない。しかし、それらをこうやって見事に作品として組み立てるのは長年の経験と才能があって初めてできるんだろうなと改めて思った次第。
LOVE LOVE LOVE R36
劇団扉座
新宿シアタートップス(東京都)
2007/12/12 (水) ~ 2007/12/20 (木)公演終了
伴美奈子のスゴさ
現代の巨匠たちが良い意味でさらっと書いた作品が並ぶ中で、横内謙介のまるでブリッジのような短編がとても面白かった。そして、この作品で活躍した伴美奈子。ホントに日本のコメディアンヌとしてもっともっと大切にされて良い名女優なのだということを改めて感じさせてくれた。技術もハートも華も存在感もある。いろんな役柄を演じ分けるその凄さよ!
ユタカの月
劇団扉座
新宿シアタートップス(東京都)
2006/05/16 (火) ~ 2006/05/28 (日)公演終了
演出家 茅野イサムの真価
扉座の俳優として長年劇団を支えてきた茅野イサムは近年ショー的要素の強い大型作品での演出が目立っていた。ではじっくりとした会話劇、人間関係をきちんと見せる作品での演出力は?と問われた作品で、茅野イサムはそれに見事に答えた。茅野イサムの演出は、俳優の自主性を大切にしたもので、決してゴールを強く見定めていくというものとは異なる。だからこそ、俳優たちが舞台で織りなす人間関係が重層的に広がり作品に深みが出たのである。演出家茅野イサムの評価を高めた作品として重要な作品だ。
お伽の棺
劇団扉座
テレビ朝日 多目的スペースumu(東京都)
2008/05/16 (金) ~ 2008/05/19 (月)公演終了
横内謙介の傑作
横内謙介の傑作であると同時に名優杉山良一、伴美奈子のあたり役だと思っていたが、今回は新しいキャストで上演された。テレビ朝日のスペースはこの作品を上演するのにふさわしい会場とは言えなかったが、役者のものすごい集中力で見事乗り切った。岡森諦ら見事な演技で、この作品の底力を観客の心に轟かせた。
かぶき座の怪人
花組芝居
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2007/03/15 (木) ~ 2007/03/25 (日)公演終了
再演を重ねる名作
花組芝居にとって再演を重ねていく名作であるけれども、単なる再演ではなく新しい才能もどんどん取り入れながら進化させていくのは花組芝居ならでは。今回も面白かったです。
KANADEHON忠臣蔵
花組芝居
世田谷パブリックシアター(東京都)
2007/11/30 (金) ~ 2007/12/09 (日)公演終了
やっと!
歌舞伎座などで長年見てきたこの演目の全体像がやっと分かった感じだ。松の廊下にいたるエピソード。終幕にいたる逸話。
美しい衣装と舞台装置とスピーディな展開。見事な演技で豪華絢爛に花組芝居の代表作が誕生した。
恐怖時代
花組芝居
ザ・スズナリ(東京都)
2007/07/06 (金) ~ 2007/07/09 (月)公演終了
ベテラン、若手の火花散る公演!
豪華絢爛な舞台装置の通常の花組芝居と違った、素舞台に近い状況で見事に世界を作られた加納さん。加納さんや水下さんといったベテランが見事なのは予想通りだが、花組芝居にこの数年で入座した若手勢のはじける才能が見られた貴重な公演となった。
ザ・漱石
花組芝居
「劇」小劇場(東京都)
2007/08/29 (水) ~ 2007/09/02 (日)公演終了
注目したい。大野さん
大野さんは長年花組芝居を中心に演出助手をされてきた。その大野さんの作演出作品として注目された。花組芝居で得たものと大野さんの世界が昇華し花組芝居の役者の見事な演技と相まって完成度の高い作品になっていた。今後も要注目の才能だ。