じべ。の観てきた!クチコミ一覧

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ヒュプノス

ヒュプノス

Oi-SCALE

明石スタジオ(東京都)

2018/05/23 (水) ~ 2018/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/26 (土) 16:30

価格5,000円

5月26日に2プログラム共通券でB→Aの順で観劇。
氷河期が訪れ睡眠時間が長くなりやがて死ぬと言う奇病が蔓延した未来、患者たちを収容する施設での物語。
オイスケラボなるWS的公演ながら詩的で澄んだ感覚は従来どおりで林灰二的世界はゆるがず。
Aプリグラムの切なく優しいラストは漱石の「夢十夜」に通ずる気もして、観る順が結果的に正解だったか?と思ったり。
また、観終えてから全体を振り返って長野まゆみ作品も連想。
あと、舞台を覆う黒い布を使っての出ハケが妙案。

となりのところ

となりのところ

空晴

ザ・スズナリ(東京都)

2018/05/24 (木) ~ 2018/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/25 (金) 19:30

座席B列9番

誰かワカらない人物を勘違いしたりすることで笑いを生み出すお馴染みのパターンは古典落語の滑稽噺、その後の展開は同じく古典落語の人情噺を思わせるが、今回はそれにほろ苦さも加わり風格のようなものも備わってきたか?
あと、(関西居住経験がない身から見て)いかにも関西っぽい会話はリズムがあっていつもながら楽しい。

ニジイロ ニンゲン カガク

ニジイロ ニンゲン カガク

劇団ミックスドッグス

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2018/05/24 (木) ~ 2018/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/24 (木) 20:00

他者のオーラを見ることができる男を主人公に、組織とそこに所属する個人との関係=組織全体のカラーと個人の特質・個性を二つの例を通して考えさせる、的な。
奇しくもテーマに昨今の時事問題と通ずる部分があって、先見の明か?などと思ったりもして。
また、劇中の演出家がいかにもいそうな「困ったヤツ」で大笑い。

劇中の社長にしても演出家にしても、いわゆるカリスマ的な部分があり、「カリスマ批判」的な側面もあような気も=真のカリスマはいるかいないかの逸材なのに、半端に祀り上げられたり自らを過信したりですべてを自分の色に染めようとする「似非カリスマ」が多すぎる?

いわゆる「企業のカラー」や「オーラ」を「色」としてくくってストーリーの軸としたアイデアがイイ。

殉情わりだす演算子

殉情わりだす演算子

電動夏子安置システム

赤坂RED/THEATER(東京都)

2018/05/23 (水) ~ 2018/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/24 (木) 15:00

座席C列5番

価格3,600円

ワケありの面々が予期せぬトラブルにより山中の館に立ち寄り……というサスペンスコメディっぽい状況から始まり中心となる部分は「カードによる縛り」と電夏お馴染みのパターンで大いに笑わせてくれるが、そうして描かれるのは人間の欲とか業とかでラストには一抹のホラー臭も。うん、ベテランの味あるいは老舗の味だね。

害虫

害虫

劇団普通

ギャラリーLE DECO(東京都)

2018/05/22 (火) ~ 2018/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/22 (火) 19:30

価格2,300円

関係が複雑な5人の兄弟姉妹(と母)の会話劇、大半を占める場面は自宅(のLDKのテーブル?)での会話でその内容も一部不可解な部分はあれ基本的には普通なのに現実味が乏しく夢の中のように不確かに感じられてしまうのはこの会場の白っぽくてがらんとした雰囲気と1灯固定の明かりのせいか? 終盤の別の「場」での会話がよりそれを強調する感じ。
その終盤の別の場との対比に加えて、つい先日Gallery&Space しあんで観たあさがお企画「言葉を纏ふ 纏の二 太宰治「きりぎりす」」の固定5灯ながら組合せによる雄弁な明かりとの対比もあり、印象が深くなったかも。
さらに1灯というのが電柱の下での不条理系を想起させたのではないか?
本作を例えば東中野のRAFTで上演したら声は響かないし、会場の内装もしっとり落ち着いた感じなので、受ける印象がかなり違うのではないか?なんてことも考えた。

ネタバレBOX

終盤は明治通りに面した窓の下に置いた机を挟んでの二人の会話で、借景もあって劇中でも「外」であり(聞いたところによるとそこまでの場面は裸足で、そこから靴を履いているそうな)ハッキリと対比されている。
ワールドエンド

ワールドエンド

劇団やぶさか

WAKABACHO WHARF 若葉町ウォーフ(神奈川県)

2018/05/18 (金) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/19 (土) 15:00

タイトルの通り「一つの世界が終わる時……」なおハナシで、やぶさか作品としては珍しくビターな終わり方。
がしかし全体のトーンや表現は従来通りで喩えれば「糖衣錠の漢方薬」?(笑)
最初はその状況設定からアレックス・プロヤス監督の「ノウイング」(2009年)をイメージしていたが、形式からすると半世紀くらい前の石森(当時)章太郎のマンガを思い出した。
また、「こんな未来にもなりかねませんよ」という警鐘かと深読みしたりも。

休憩を挟んでの短編は次回(冬)公演の元ネタダイジェスト。こちらは明るく愉しい「従来通り」のノリで、本編のビターさを一掃?(笑) ←Straw&Berryの「おまけ演劇」的な犯行だね。

消す

消す

小松台東

三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)

2018/05/18 (金) ~ 2018/05/27 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/20 (日) 14:00

価格3,200円

終盤で各人の不満(?)が一気に噴出した時の居心地の悪さたるや!
口々に「自分のせいじゃないもんね」と言い逃れをする人物たちにかつて自分が不都合な状況に直面した時の記憶を呼び起こされて「七人の侍」の菊千代の如く「これは、オレだぁ!」だったもんなぁ。
映画「ポセイドン・アドベンチャー」にアーネスト・ボーグナイン演ずる刑事に「アンタを見ていると腹が立つのは何故だろう」と言われたジーン・ハックマン演ずる牧師が「自分を見ているようだからじゃないか、誰しも自分を見るのは嫌なものさ」と返す場面があったが、それとも通ずるのではないか?
そうして、そんな風に責任を逃れようとするのはいかにも日本的な気もして、ある意味本作は笑いのない「12人の優しい日本人」かとも思ったり。
またその言い逃れ合戦の直前の舞台上の構図がイイ。8人がほぼ等間隔に位置して背中を向けて顔だけ振り向いたり顔を背けたり椅子に寝そべって不貞腐れたりと、それぞれ逃げたい気持ちを体現していて、それはまるでダ・ヴィンチの「最後の晩餐」の如し。

真夏の夜の夢

真夏の夜の夢

ヨハクノート

王子小劇場(東京都)

2018/05/17 (木) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/05/14 (月) 14:00

価格2,500円

基調はオーソドックスで古典の格調高さ(?)や台詞の美しさなどを残しつつ絶妙の配分で現代的なモノを入れることで翻案したワケではないのにちゃんとイマのものになっているのがアッパレ!(※)
補足すれば白い布と紐によるシンプルな舞台美術は格調高さ、特に衣装らしくない現代の普段着っぽい衣装はイマな感じをだすのに一役かっていたかも。
アテネの4人が森で鉢合せして口論になった時のアレは愉しいし、人気シリーズ映画のあのキャラネタはあるし、終盤の劇中劇場面の演出も妙案だし、妖精の表現や原作の人物の省略も巧いし満足満足♪
しかしなんでここを今まで誰も勧めてくれなかったんだろう?いや、自分の情報収集力不足を嘆くべきか……。

※ レティクル座の「童貞キューピッド」(2014年1月)が現代語訳/超訳ながら実は原典に忠実だったのと対照的(ちなみに童貞キューピッドも個人的には高評価)

ネタバレBOX

【覚書】
口論になった時のアレ:序盤で慶事を知らせるために撒いてそのまま床に散らばっていたビラを投げ合う
人気シリーズ映画のあのキャラ:ダースベイダー
劇中劇場面の演出:結婚する三組が客席に座り上演中の劇中劇に茶々やツッ込みを入れる
妖精の表現:職人役の役者のうち2人が両手に人形をはめて声色を使う
人物の省略:ハーミアの父・イジーアスが出てこないし職人が3人しかいない
はりこみ

はりこみ

殿様ランチ

駅前劇場(東京都)

2018/05/16 (水) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/05/16 (水) 19:30

価格3,500円

とあるマンションの1室でその向かいに住む人物宅を張り込む刑事たちと対象である人物たちが織り成す物語。
派手さはないがリアリティのある(もちろんホンモノは知らないのでドラマや映画を通じて抱いたイメージ)人物たちをじっくり見せる味わいはNHKの警察ドラマのよう……でありながら、そこに笑いもまぶした秀作。
それぞれに人間臭い刑事たちの人物造形がいかにもで、一部については高卒のたたき上げで何度か痛い目に遭っているんじゃないかとかキャリア組だが現場のこともよく理解して信頼も篤いのではとかその背景も見えるようだった。
また、冒頭場面と最終場にとある映画へのリスペクトを感じ、序盤のある部分には公開中の某映画も連想。
さらにこのテの話にありがちな部分、世相を反映した部分かなどがあったり、終盤で一言だけで状況を観客に読ませる台詞があったりするのはさすが。
なお、本作が気に入った方にはジョン・バダム監督の「張り込み」(1987年)もオススメ。

ネタバレBOX

プロローグとエピローグは「羊たちの沈黙」の終盤で単身レクター博士のいる小屋に乗り込むクラリスを想起。
また、刑事・渡辺はカウンセラー・畑町に指摘される「正義」に関する部分に現在公開中(だよね?)の高木渉監督「映画クレヨンしんちゃん 爆盛!カンフーボーイズ ~拉麺大乱~」と通ずる部分があろうとは誰が予想し得ようか?
また、終盤の徳島逮捕の直前、松谷が渡辺に「お疲れ様です」と言うことで松谷も潜入捜査をしていたのか、と悟らせるのが巧い。
あと、舞台中央にある「押入れ」の戸が、押入れの時は引き戸で、それ以外はドアになるという装置のシカケも面白い。
『gokko』

『gokko』

BELGANAL

渋谷 宮益坂十間スタジオ(Aスタジオ)(東京都)

2018/05/18 (金) ~ 2018/05/22 (火)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/19 (土) 19:00

価格3,000円

同じ養護施設出身の3人と1人が再会したことから始まる「愛はガラス細工」的な一途な想いが引き起こした哀しい物語。まっすぐ過ぎる正義は必ずしも真の正義ではなかったりするように、一途な想いであろうと少しでも踏み外せばそれは暴走に近いものになってしまうのかもなぁ……おや、これって、江戸時代の心中ものや怪談などに通ずるのではないか?
そうして進む物語、カーテンコールがないことを事前に知らなかったらよりビターに感じたかも?
で、一瞬の場転と言うか時と場所が変わったことを一瞬で観客に悟らせるアイデアと映像の使い方もイイ。

ネタバレBOX

登場人物の1人が写真家であり、ストロボの一閃で回想場面に転移したり戻ったりというのは進行上のアクセントにもなり、「区切り」が付いた感覚もある妙案。
「言葉を纏ふ」

「言葉を纏ふ」

あさがお企画

ギャラリーしあん(東京都)

2018/05/18 (金) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/05/18 (金) 19:00

価格2,500円

2年ぶり2度目のオフィス再生・高木さん演出によるあべあゆみ一人芝居。
前回(「燈籠」)に引き続き今回も太宰治作品で画家に嫁いだ女性の独白。
考え方にしても言葉遣い(美しい!)にしてもイマドキの24歳よりもずっとオトナで隔世の感ひとしお。(昨今の言葉遣いを否定する意図はありません:念のため)
そして上手3灯下手2灯(うち1つの行灯風のもは常に点灯)の組合せによる明かりも雄弁。さらに終盤のあのギミック! 面白かった♪

ネタバレBOX

最前列下手端の席を選んだので終盤、玄関の人影に気付き何らかの演出要員と思ったが、その直後に庭側に吊るした着物などが落ちたのでああ、あのシカケの操作だったか、と納得。
夢で逢いま笑

夢で逢いま笑

劇団ズッキュン娘

吉祥寺シアター(東京都)

2018/05/10 (木) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/05/12 (土) 13:00

座席H列15番

価格4,500円

女優バージョンの2ステージ目を観劇。
解散したアイドルグループのリーダーがあるきっかけからお笑い芸人の世界へ……な物語。序盤で泣かせて終盤でも泣かせやがって、そういうのに弱いσ(^-^)と知っての狼藉か!(笑)
ある程度先が読める王道的な展開だったり終盤でのヒロイン・好子の行動がやや唐突だったり、な甘さもあるが、そんなところも含めて藤吉脚本でありズッキュン芝居であり今回も堪能。
今回は特に先輩芸人アマリリス、藤子姐さん、好子の母など年長者の言動が的確、というか事態を好転させるのが巧いところ。また、アリサを引きずり込む場面も良かったし。

また、5つの可動式ユニットを中心とした装置を人海戦術で(笑)動かす場転や2段のギャラリーをも使う演出も印象的。

あと、(今ひとつ売れていない)アイドルグループの解散ということに坂下雄一郎脚本・監督の映画「ピンカートンに会いにいく」を連想。
あれを観た身からすると、この15年後くらいにマカロニガールズが「一夜限りの再結成」なんてイベントを演りそうに思えてしまうんだな。
どうすか、スピンオフというか続編というか、そういうハナシは?(真顔) > 藤吉主宰

【余談気味】
本作に限らず劇中に歌ったり踊ったりな場面があり客席からの手拍子などが入った方が効果的な芝居は、出演者や劇団のアカウントが「こういう場面があるので手拍子よろしくねっ♪」とかツイートしておけばもっと盛り上がるのではないか?(もちろんそれがネタバレでなければ)
なお、冒頭のコンサート場面、この回はプレミアシート(センターブロック前2列)のお客さんを中心にそれなりに盛り上がっていたが、サビのトコはPPPHではなかろうか?(他の回ではどうだったろう?)

火遊び公演「焔の命--女優の卵がテロリストになった理由」

火遊び公演「焔の命--女優の卵がテロリストになった理由」

オフィス上の空

恵比寿・エコー劇場(東京都)

2018/05/09 (水) ~ 2018/05/13 (日)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/05/11 (金) 14:00

座席D列6番

価格4,800円

「This is くれはマジック」か? いかにも松澤くれは作品で、観ているうちに虚構と現実の境界が曖昧になり虚構が現実を侵蝕してくる、あるいは劇中に自分の意識が取り込まれる感覚がアヤしくも心地好い。劇団が次第にヤバい方向に向かい始めてもそれを容認しそうになり何度「いやいやいや、違う違う違う」と自分を正気に戻したことか。
「大きな嘘を吐くには小さな嘘を積み重ねて」とよく言われるが、本作は小さなあるある・ありそーを積み重ねることによって大きなあり得ないことをありそうに錯覚させるのだろう。劇団内幕系ネタや現実にあったことなど身近なところから入って徐々に踏み外してゆくもんなぁ。

それにしてもあの重苦しい雰囲気の中で芝居としての出来(劇構造や各種仕掛けを含む)に笑みがこぼれてしまうってナンだよ!(笑)

ところで本作の感想に「あさま山荘事件」の記述が散見されるが、合宿での出来事は同じ連合赤軍関連であってもそれより以前のリンチ殺人を想起させるものであり、質の異なる両者の混同は世代/時代によるものか?

ネタバレBOX

劇団内の話し合い場面に「身内を集めて喜んでいる劇団も多いが……」という時々出る件に触れた台詞があり吹いてしまう。
また、集客は役者の仕事か?/集客できる役者が良い役者か?というのも比較的最近出た話題だし、ツイ廃として(爆)リアリティを感じたのだろう。

真理子は自分にストイックで自らを追い詰め、森は他者にストイックを求めて他者を追い詰め、その2つのストイックさが惨劇を呼んだと言えよう。

なお、ノンフィクションライターの取材により加害者家族が追い詰められる構図に劇団Bケイカクの「慟哭は戯言」と脳内でリンクしたりも。
健康への第一歩

健康への第一歩

制作「山口ちはる」プロデュース

「劇」小劇場(東京都)

2018/05/11 (金) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★

鑑賞日2018/05/11 (金) 19:30

価格3,000円

公演全体の初日、女性版を観劇。
社内健康診断の再々々々検査で集められた面々は部署も立場も違い……な内容はキャラ合戦、女優見本市の様相。がしかし前半がクドいし2時間弱は長過ぎる。各キャラへの焦点比率を調整し90分程度に収めればスッキリしたのではないか。
特に出だしのウザキャラはあそこまで演らなくても十分にウザいどころかむしろその傍若無人ぶりは社会人としての常識を疑うレベル、その分を他のキャストに割り振った方がバランスが良かったのではあるまいか?
(男性版のキャラはどうなんだろう?)

なお、これからご覧になる方には開演前に当日パンフレットの用語説明(3つだけ)に目を通しておくことを推奨。

俺の屍を越えていけ

俺の屍を越えていけ

feblaboプロデュース

新宿シアター・ミラクル(東京都)

2018/05/12 (土) ~ 2018/05/20 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/13 (日) 14:00

価格2,200円

惹句の「さぁ、気が重い会議を始めよう」の通り終始どんよりした雰囲気にならざるを得ない会議、7年半前に観た七里ガ浜オールスターズ版の感想によれば(もはや記憶の外で具体的には覚えていない(爆))前半はユーモラスだったようだがそれとは異なり、ある意味リアルタイプでこれもアリ。
また、本題に入る前の部分ではった伏線を回収しての幕切れが鮮やか。

事前に7年半前の七里ガ浜オールスターズ版の出演者(豪華!)を確認しておいたので、それを思い起こしたり相違点を考えたりしながら観たのもまた楽しかった。
CoRich舞台芸術!の公演情報で過去に他団体が上演した時の出演者を調べて、知っている役者がいたらどの役を演じたか想像しながら観るのも面白いかと。

なお、ほぼ四方囲みあるいは三方半囲みの客席、アガリスクの榎並さん、たすいちの中村さん推しの方には通常で言えば上手にあたるエリア、星澤さんと家のカギの高村推しの方には逆の下手にあたるエリア、エンニュイ高木さん推しなら通常の客席側、山田さん推しなら通常の舞台側を推奨。

13番地のパブロ・ピカソ

13番地のパブロ・ピカソ

新宿公社

サンモールスタジオ(東京都)

2018/05/09 (水) ~ 2018/05/13 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/10 (木) 19:00

価格2,800円

ピカソの評伝的なものでなく、画商やピカソをめぐる人々の群像劇的なところに漠然とナイロン100℃の「ノーアート・ノーライフ」を想起。端々に戦争の傷痕が見え隠れするのに井上ひさし作品に通ずる気も。
また、何度も結婚をしたという以外は漠然とした「巨匠」イメージしかなかったピカソ像が新たになり、こりゃあwikipediaで調べにゃあ、と。
あと、翻訳劇調の台詞が特徴的で序盤の口論場面など吹替えの外国映画の懐かしさがあった。(笑)

画廊を表現した装置、掛けられている絵画はすべて横長だったが、下手から2枚目(とあともう1枚?)は縦構図ではなかろうか?いや、あくまで私見ですが。(笑)
ちなみに下手から2枚目のものは右下に3本の横線があるが、時計回りに90度回すと水辺で金色の朝日か夕日を見ている3人の人物に見える気がした。(記憶だけで書いているので位置などは違うかも?)

ネタバレBOX

終盤、夫の生還を7年間待ち続けた妻に届く戦死の通知は戦争の悲劇を端的に表しているし、戦争で敵国であったドイツの人を毛嫌いするフランス人というのにも地続きの隣国と敵対する恐ろしさ/哀しさを感じ、そんなところに井上ひさし作品と通ずるものがあると思ったのだった。
あのひあのとき亜希子は

あのひあのとき亜希子は

リブレセン 劇団離風霊船

ザ・スズナリ(東京都)

2018/05/09 (水) ~ 2018/05/15 (火)公演終了

満足度★★★★★

鑑賞日2018/05/09 (水) 19:30

座席A列2番

価格3,500円

公表されている通りパラレルワールド系だがあれこれ斬新。
落とし所が予測不能どころか途中で「あの場と整合性がとれなくなるのでは?」「そんなことをやっちゃって大丈夫?」と観客に抱かせた疑問に納得できる形の回答を見せて落し前をつける最終場はさすが。
また、橋の場での亜希子の機転は巧いしその後、ワインをオーダーしてからの父の台詞は泣ける。
お得意の時事ネタを2~3ブッ込んでいるのは言わずもがな
四半世紀ほど前、フジテレビが「if もしも」というドラマを放映していた(余談:「打ち上げ花火……」はこの中の1編)が、アレよりもフェイズが1つ多い分、複雑化したと言えるか。

ネタバレBOX

自殺後、すぐに身元が判明するように残したバッグを取り、「自殺するならこのバッグを川に落とす」と脅す亜希子の機転には感心。
また「結婚を決めた娘を安いワインで祝うわけにはいかないだろう」と言う父もイイ。

老夫婦が「もしもあの時ああでなければ私たちは……」と馴れ初めを回顧する場面から始まり、それぞれが別の相手と結婚していたら、という場面を見せるのでどうまとめるのか?と思いながら観ていたが、よりによってその三組が同じ場に居合わせる展開になるとは仰天。

そしてそれらすべてが娘を早くに亡くした老夫婦のシミュレーションだったという結末はある意味夢落ちだが、夫婦の哀しみも漂わせて鮮やか。

時事ネタは3人の亜希子のうち1人が同性婚を選ぶことと、三組が居合わせたところに大陸間弾道ミサイル発射の報が入ることなど。
幕末異聞 明治悪党奇譚

幕末異聞 明治悪党奇譚

(有)オフィス パラノイア

「劇」小劇場(東京都)

2018/05/03 (木) ~ 2018/05/08 (火)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/05 (土) 19:00

価格4,000円

黙阿弥の「三人吉三巴白波」を明治初頭に翻案した作品の改訂版、「伝統芸能の様式美と小劇場系演劇の融合」がいかにもここらしい。
3年前の初演も観ていたが冒頭から新演出はあるわ、内容からシェイクスピアやギリシア悲劇、それにとあるアメリカンニューシネマは連想するわで楽しかったぁ♪

去年観た野生児童「純惑ノ詩」(東海道四谷怪談を現代に翻案)でもシェイクスピアとギリシア悲劇を想起したし(←こちらは原典よりも翻案によるもの)、悲劇はやはりそんなパターンになる……と言うか劇作家脳というのは洋の東西や今昔を問わず似た発想をするのか?(笑)などとも考えた。

ネタバレBOX

3年前の初演ではシェイクスピアやギリシア悲劇は連想せず、「観てきた!」コメントには「ギャング映画」を想起した、とある。もはや記憶が定かではないが(爆)、滅びの美学ということで「俺たちに明日はない」ではなかろうか?
なお、今回連想したのは「明日に向って撃て」で、終盤、主人公たちが大勢の捕り方に囲まれている、という部分について。

物語本体の前日譚というか端緒となる冒頭部分、ワキとなる人物に面を被せ二人の黒子が操る人形のように見せた演出も面白かった。
溶けない世界と

溶けない世界と

mizhen

d-倉庫(東京都)

2018/04/25 (水) ~ 2018/04/29 (日)公演終了

満足度★★

鑑賞日2018/04/26 (木) 14:00

価格3,000円

十二角形の上に二十四角形を乗せた二段の台が特徴的な装置を使って繰り広げられるイマの日本を舞台としたチェーホフ「かもめ」の翻案……と言うより「かもめ」をモチーフとしたオリジナル、の方が的確? 「人名やモスクワをそうしましたか」と頬が弛む。
美しかったり妙案(綱とか)だったりの照明も印象的。

ただ、開演が7分押しても開演前、終演後を通じてそのことに全く触れないのは減点要素。黙っていれば観客は気付かないとでも思っているのかな?(毒)
押すこと自体はやむをえない事情もあろうから仕方がないとは思うが、その対応がなっていないのは困りもの。(よって☆は2つ減じた)

御釜怪奇譚

御釜怪奇譚

レティクル座

サンモールスタジオ(東京都)

2018/05/02 (水) ~ 2018/05/06 (日)公演終了

満足度★★★★

鑑賞日2018/05/03 (木) 19:00

限界村落の復興という軸にゾンビを絡ませ、社会派テイストと昭和の映画全盛期の怪奇ものの味わいを併せ持たせるのはいかにもレティクル座。。
そう言えば、哀女「JK OF THE UNDEAD」(3月)、スズキプロジェクトバージョンファイブ「Z-Studio ~ゾンビ映画は愛を育む~」(4月)、それに本作と3ヶ月連続で若手によるゾンビものを観たが、いずれもホラー一辺倒ではなくそれぞれに訴えるものがあり、ゾンビ現象をその隠喩として使っているのがイイ。
また、アレとソレを絶妙なバランスでブレンドしたラストも○。

ネタバレBOX

途中に出てくる「間違った方法で甦っても中身は空っぽ」という台詞がゾンビそのもののことでもあり同時にソンビによって復興した村のことも表現しており、さらに現実社会でのいろいろなことに対する皮肉にもなっていて秀逸。

不死身の筈の「ゾンビ」が朽ちてしまうのはマッドサイエンティストである父親(ボス村松:好演!)に対する娘の復讐によるもの、という怪奇映画・モンスター映画にいかにもありそうなプロットを入れたのも巧い。

さらに、(ゾンビを活用するのではなく)正しい方法での復興を目指す希望を見せつつ、ヒロインゾンビが朽ちる切なさを絶妙なバランスでブレンドしたラストシーンも余韻を残して上出来。

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