何も変わらない今日という日の始まりに
劇団皇帝ケチャップ
ザ・ポケット(東京都)
2019/12/18 (水) ~ 2019/12/22 (日)公演終了
満足度★★★★
【Team海】
不老を研究する施設での被験者たちを中心に描いた「近未来SF」系。
「不老不死となった者の孤独」というのは好きなテーマの1つだが、本作は無条件でそうなのではなく、不老研究の実験体であり施設から離れると死を迎えるという設定により被験者が「自ら死を選ぶことも可能」として「生死」の問題を際立たせ、「不老」の残酷さや倫理観のようなものまで観客に問いかけるのが見事。
結局複数の被験者が命を落とすビターな展開だが、暗さや重さを感じなかったのは「その方が自然」と思ったからか?
Crime - 1st -
Sun-mallstudio produce
サンモールスタジオ(東京都)
2019/12/21 (土) ~ 2019/12/27 (金)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/12/24 (火) 14:30
価格3,000円
実在の事件を題材とした3編オムニバス。第一弾は女性による犯罪に限定しつつ、スタイルに加えサブテーマも「逃亡生活」「親子」「夫婦」と異なりバランスも良い。
それにしても各編とも逃亡者・加害者の心情を克明に描いているので納得するどころか共感してしまいそうでコワい。
【The Stone Age ブライアント「明日も逃げる」】
犯罪そのものではなく犯行後の隠遁・逃亡生活を描く。普通に振舞っていながらも内心は……などと想像させ、ある意味その豪胆さに驚くと言うか呆れると言うか。
【芝居屋風雷紡「Silent Night」】
小6で同級生を殺した少女が施設生活を終え帰ってきた犯行6年後の聖夜、被害者の父が訪れ……から始めて少女の犯行動機・心情のみならず親の気持ちをも描く。動機・心情は加害者・被害者とも「いかにも小学生」だが考えようによっては大人でも似たようなものではないか?などと思う。また、被害者父の心境は、事件に至るまでも含めて切ない。
ところで、メインの流れに集中するあまり、おそらく舞台端で同時進行していたであろうケーキの仕上げに全く目を向けなかったのは痛恨。(笑)
【singing dog「自由の果て、の不自由」】
エリート会社員を殺害した妻の心情。内容もさることながら終盤、「女の姿が見える」場面の照明(による影)の効果が内容を表現するとともに美的にも優れていたと思う。
【おまけ】
「-1st-」とあるように、今後第二弾、第三弾と続くことが予期され、するとあの団体やその団体が起用されることもあるのか?と早くも期待。
三獣士 ─ヴァリアント・マスケティアーズ─
X-QUEST
シアターサンモール(東京都)
2019/12/25 (水) ~ 2019/12/29 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/12/25 (水) 19:00
座席K列4番
価格5,000円
「あの三銃士」が「そのキャラ」で、に始まりあんなキャラやそんなキャラまで交えて展開するが芯はちゃんとしたSF(なのか?)だし細部にコアなギャグも挟むし……なのはX-QUESTの真骨頂。
三獣士が白塗りなことと主題歌の歌詞の投影に某若手団体を連想し、終盤の「驚愕の真相」には某SF作品を想起。にしても近年のX-QUEST作品の最高峰ではないか?
また、改めて台詞が耳に心地よいことを認識する。
X-QUESTの台詞の心地よさというのは、様々な要素が複合されて成立しているのではないか。
例えば七五調などのリズムの良さ、語彙の美しさ、良い意味での芝居がかった抑揚、聞き取り易い発声……などなど。
これ、トクナガ主宰が野田秀樹ファンである、というのも関係しているかも。
宇宙からの婚約者
川口菊池の二人芝居
イズモギャラリー(東京都)
2019/12/18 (水) ~ 2019/12/23 (月)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/12/20 (金) 19:30
価格2,500円
当日パンフレットによれば冨坂さんは仮面ライダーよりウルトラマン派だそうで、ウルトラマン系ネタ満載で、「そうきたか」な展開の後は冨坂作品としては珍しい(私見)パターンの結末に。
ウルトラセブンの「アンヌ、僕はウルトラセブンなんだ」をリアルタイムで観ていた身としてドンピシャ!(笑)
THE ROLE OF
埋れ木
Geki地下Liberty(東京都)
2019/12/18 (水) ~ 2019/12/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/12/20 (金) 14:00
価格2,800円
超能力やヒーローが普通に(?)いる世界の日常、ではありつつ、今までに観た2作とは少し切り口が違って、これもまた面白い。
また、舞台となるバーの美術、会場の内壁(下手側と舞台奥)を活かしていかにもそれっぽくてステキ。
(本公演)ギジレン島最後の7日間
guizillen
王子小劇場(東京都)
2019/12/13 (金) ~ 2019/12/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/12/18 (水) 13:30
価格3,000円
【Bチーム】
具体的な違いは多少ながらチョイ足しによる味変のように趣を異にする。
また、前日のAチームで聞き落とした台詞が確認できたり先を知っていればこそ頷ける部分があったりで観た甲斐は十分にアリ。
(本公演)ギジレン島最後の7日間
guizillen
王子小劇場(東京都)
2019/12/13 (金) ~ 2019/12/22 (日)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/12/17 (火) 13:30
【Aチーム】
宇宙規模の異変により地球上に唯一残ったギジレン島。
そこで生き延びたが七日後には皆滅ぶという状況下、人々は何を考えどう行動するかを通して生きるとは、生と死とは、を描いた感動超大作。
本来ならまだ長かった筈の人生が残り七日間と限られたことで圧縮・濃縮・凝縮されて噴き出す友情・愛情、エゴ、劣等感、やり残した事・最後にしておきたい事など様々な想い……定番っちゃ定番だけれど温故知新、イマの若者やそうでない者(笑)たちを活写。
状況・設定がそういうものだけに、10年前の某外国映画や、うんと昔に見たか読んだかした「地球最後の日」っぽいナニカを思い出したりも。
で、シリアス一辺倒ではなく、笑いや「青春」なども描いて重くしないのもイイ。
当日パンフレットがないのは「予備知識やら何やらなしにとにかく芝居を楽しんで欲しい、それだけのものを創ったから」という気概と受け取った。
出演者はチラシに掲載されているし役名はだいたい(愛称や例外もあるけれど)役者名だし。
しかしいかんせんなげーよ!
尺的には先立って1ステージだけ上演されたオープニングセレモニー(と銘打った演劇作品)とあまり変わらないものの、体験的にはけっこう違ったもんなぁ。
「くも行き」
ワワフラミンゴ
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/12/18 (水) ~ 2019/12/22 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/12/19 (木) 14:00
座席H列6番
ネジが2~3本弛んでいるようなすっトボけたしかしのどかな会話のスケッチ集的な独特な味わいはいつもながら。アフタートークゲストの鳥公園の西尾主宰が「いつまでだって観ていられる」と仰ったことに大いに納得。
尻を見てしまう
ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン
上野ストアハウス(東京都)
2019/12/04 (水) ~ 2019/12/10 (火)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/12/06 (金) 14:00
価格3,000円
「ラフカット」に書き下ろされた堤泰之作品3本の再演オムニバス。
「尻を見てしまう」
タイトル、内容とも記憶になかったが、もしかしてオトコの尻だらけの内容だけに(爆)記憶を自ら封印したのか?
内容的にはいかにもラフカットっぽくてニヤニヤ。
「背徳令嬢肉奴隷」
インパクトのあるタイトル、エロティックな内容ともに記憶に残っていた。こういうのはラフカット的に珍しいかも?(そこも含めて記憶に残っていた)
ちょこちょこ挟まれる映画ネタも楽しい。
「テオリ」
タイトルに記憶はなかったが、劇中の劇団が(劇中の)舞台からハケて(=現実の舞台に登場して)来た時に「あ、これか!」と思い当たる。
本作にしても「ダブルブッキング」にしても堤作品に登場するアングラ劇団は昭和ど真ん中のそれを戯画化したようで愉しい。
また、演劇讃歌とも言うべき演劇愛に溢れた内容はバックステージ系が大好きな身にはタマラン!
THE LAST DAY & THE NEXT DAY
Oi-SCALE
駅前劇場(東京都)
2019/12/18 (水) ~ 2019/12/23 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/12/18 (水) 19:00
価格4,300円
バイク事故で検査のため5人部屋に入院している男が経験する奇妙な出来事……。
コミカルな場面や人物によっていつもより笑いが多く、特色である「真冬の晴れた午前2時頃の澄んでいて張りつめた空気感」ではなく「秋の晴れた夜9時頃の空気感」のようではあったが、「あること」の後に起こるボタンをかけ違ったように捻れた平行世界的な不思議な現象はやはりOi-SCALE。
ラストもある意味「ドグラ・マグラ」的であり、これまたいかにも、な感じ。
グッドバイ,グッドボーイ
劇団ミックスドッグス
東京アポロシアター(東京都)
2019/12/12 (木) ~ 2019/12/15 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/12/12 (木) 14:00
発達しすぎたためにAIの所持が禁じられた未来、かつて祖父が開発したアンドロイドと遭遇する少年……というSFジュヴナイルの王道でありながら家族の絆(?)も描くという、キャラメルボックス作品にも通ずる物語はいかにもミックスドッグス。
もしもAIが……だけでなく、自分の年齢が年齢だけに(未来社会における)老後の生き方なども考えてしまった。
そんな内容もさることながら予期(というよりは期待?)した通り多かった早替えをし易くかつショーアップする美術に感心。
彗星はいつも一人
ことのはbox
武蔵野芸能劇場 小劇場(東京都)
2019/12/12 (木) ~ 2019/12/15 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/12/13 (金) 14:00
座席A列4番
価格4,000円
演劇集団キャラメルボックス2003クリスマスツアー作品のカバー。そちらも観ていたものの16年前につき内容はほとんど覚えていなかったが、ZABADAKの音楽はしっかり覚えていたのが記憶の不思議。
そうして内容は(どちらかと言えばしょーもない(爆))ギャグが入るかと思えばアツい部分もあり、(毎回ではないが本作は)超自然的な設定もあって、親子・家族もテーマという王道キャラメルボックス作品を忠実に表現。
脚本・演出・演技の三位一体により安心してどっぷり浸った。
ーサド侯爵夫人・わが友ヒットラーー
CroixProjec†
王子小劇場(東京都)
2019/11/21 (木) ~ 2019/11/24 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/11/23 (土) 19:00
価格3,500円
それぞれ単独でも長尺な2編をオフィス再生の高木主宰の構成・脚本で100分程度に統合しての上演にして文字通り「劇的(「演劇的」に非ず)」。
何が「劇的」って、大きな劇場で上演されるような作品を、エネルギーをそのまま保って小劇場サイズに落とし込んだと言うか圧縮したと言うか密度が濃厚。
また、フルオーケストラによるダイナミックな音楽(しかも大音量)を芝居で使うと時として「何か映画みたい」と違和を感じたり、芝居がチャチだとその音楽の圧に潰されたりすることが多いが、本作は音楽に負けていないどころか音楽を取り込んで作品のパワーにしている感覚。
さて、来年の第三弾はどのようになるのか、今から楽しみ。
終わりにする、一人と一人が丘
鳥公園
東京芸術劇場 シアターイースト(東京都)
2019/11/21 (木) ~ 2019/11/24 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/11/22 (金) 14:00
過去に何作か観た鳥公園の作品は、会場の使い方なども含めて「演劇表現の可能性を試している」ような印象があった。
本作はその集大成的なもので、ストーリーを語ることよりも「演劇としての表現」に重きを置いたいわば「純演劇」でなかろうか?
そしてそれゆえ、例えば作中の女性は実は同一人物ではないか?などという読み方も可能ならしめている、的な。
よって、ボンヤリ観ているのでは楽しめないかもなぁ。
フィクション
JACROW
駅前劇場(東京都)
2019/12/04 (水) ~ 2019/12/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/12/04 (水) 19:30
座席E列9番
価格3,500円
2020年の東京オリンピックから3年、日本の3箇所で進行する3つのストーリーが交錯する……。
事前にTwitterに「2023年が舞台だが今の物語」のようなツイートが公式アカウントからアップされたが、まさにその通りで(2019年やもっと前の場面があるというだけでなく)今と直結した物語。現状(と少し先)に対してトゲのある部分にニヤリ。
そういえば、当日パンフレットの挨拶文(開演時にアナウンスでも流れる)を読み始めて違和を感じるも「そういうことか」と気付き、最後の日時を見てニヤリ。
そうして終盤で3つのストーリーの関係性を明かす時の怒涛の伏線回収に舌を巻く。
リップサーヴィス
鵺が、大地とやまだのむら
イズモギャラリー(東京都)
2019/12/04 (水) ~ 2019/12/16 (月)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/12/09 (月) 14:30
価格3,000円
マンガ家の自宅兼仕事場を舞台に可憐な女性アシスタントの加入によって起こる波紋を描く。
基本的にはコミカルだが、終盤でのぼせた男たち(とσ(^-^)?(爆))に冷水を浴びせるような場面があり、さすがヨナさん、手厳しい。(笑)
(その方法も過激と言おうか何と言おうか(笑))
また、マンガ家、アシスタント、編集者もキャスティングと衣装が相俟ってそれぞれいかにもそれっぽい感じだったのもお見事。
泰山木の木の下で
劇団民藝
三越劇場(東京都)
2019/12/06 (金) ~ 2019/12/18 (水)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/12/06 (金) 18:30
座席8列19番
終戦間もない頃、堕胎の罪で逮捕されたハナ婆さんは広島原爆の被爆者だったが担当刑事もまた被爆者で……な物語。
妊娠しても産むことができない事情や被爆者の苦悩など、物語が進むにつれて戦争の傷痕が浮き彫りにされてゆく構造や全体的に落ち着いた雰囲気なのはやはりベテラン劇団の味わいか。
そんな作品自体に加えて1927年開館という古風な劇場の雰囲気もあり、「昔観ていた芝居はこんな感じだったな」という懐かしさに浸る。
ツマガリク〜ン
小松台東
三鷹市芸術文化センター 星のホール(東京都)
2019/11/28 (木) ~ 2019/12/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/12/01 (日) 14:00
価格3,200円
電材屋の社屋裏手で繰り広げられる社員たちのあれこれ。
会社員経験者として「ワカる~」「あるある」な人物・状況など多数。
そんな中、社会人としてそれはどうなの?な行動があり、漠然と「学校放送の道徳ドラマの大人版?」などと思ったり。
そういえば、大きな事件・展開はないが(会社員経験者は特に?)身近な人物・出来事が描かれて、もしかすると起こりかねない事態が起きて、それは明快な答えがあるものではなく観客に問いを投げかけるように終わるという、作品とその受け手との距離感は往年の道徳ドラマに近いような気がした。
それも含めて、ほのかなあたたかさもあるところが小松台東の魅力ではないか?とも思ったり。
CONTROL
劇団天動虫
王子小劇場(東京都)
2019/12/04 (水) ~ 2019/12/14 (土)公演終了
満足度★★★★★
鑑賞日2019/12/07 (土) 18:00
校長が定めたルールを守っていれば平和に暮らせるという学校に新たに加わった生徒はそのルールに疑問を抱いて……な物語。
それを守っていれば安寧でいられる規律に従っている共同体に異分子が参入し、その規律に疑問を抱いて先住の構成員たちを啓蒙する……という構造にデール・ワッサーマンの「カッコーの巣をこえて/巣の上を」を想起。アシカがマクマーフィーで校長が婦長、的な。
その校長はある場面で北の将軍様のように見え、さらにファシズム、レイシズムを匂わせる場面も出てくる。
「安心できる」という理由のもと、定められたことに盲目的に従い続けることは独裁制につながる、という警鐘と受け取った。
序盤で出てきた「とどまるために走り続ける」というフレーズが終盤で再度クローズアップされて物語は締め括られるが、その最終場で出演者は「劇中の劇中人物」から「劇中の役者」に変わって(戻って)いる。
そう、冒頭は劇団の稽古場で新人役者を主役に抜擢しての稽古の始まりだったのだ。この「劇中の役者」が発した「とどまるために走り続ける」というのはそのまま劇団天動虫の活動方針・決意表明ではないか。
こんな風に作品を通して自団体の姿勢や方針を表明するの、大好きなんだよなぁ。
あと、連想したものの1つに宇宙移民系SFがある。
何代にも亘り大型宇宙船の中で暮らして「第二の地球」を目指していて、実は目的の惑星に到着しているのにまだ航行中だと信じて船内での生活を続けているが、ある日「禁断のドア」を開けた者がいて……というヤツ。
年下のハハハ
交交
シアターカフェ&ダイニング プロセニアム(東京都)
2019/12/06 (金) ~ 2019/12/08 (日)公演終了
満足度★★★★
鑑賞日2019/12/08 (日) 13:00
価格2,800円
カフェを舞台にした女性二人の会話劇。
一方がもう一方を呼び出したことや二人が初対面であることを最初の二言三言の会話で観客に悟らせ、唐突に「アキラさん」という第三者の名前を出して「それは誰?」と観客に思わせてからその「アキラさん」に関する会話で二人の関係を表し、さらにその会話をしながらする動作やオーダーを巡るやりとりでそれぞれの人となりを示す導入部が特に鮮やか。
また、声量を会場サイズに合わせ小声ではあるが観客に伝わる会話にした演出・演技も見事。
あと、状況が状況だけに安易なハッピーエンドにはならないが、少しだけ希望を残すような終わり方も巧み。