走れメロス ~TOKYO20XX~
劇団肋骨蜜柑同好会
サブテレニアン(東京都)
2021/06/08 (火) ~ 2021/06/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
太宰治の原典にトリビアや時事ネタ、本編考察などを加えてさらにあんな手法やそんな手法、それにあんなものやそんなものまで使って娯楽性をてんこ盛りにした80分余。内容といい尺といい万人に楽しめるのでは?
「走れメロス」のメロスはずっと走っていた訳でなく、寄り道・回り道とか想定外のことや邪魔とかが入ったようだが、本作も太宰自身のことや先述の考察などあってこれまた「寄り道・回り道」をしていると言えるのではないか。(笑)
JACROW#30『鋼の糸』
JACROW
駅前劇場(東京都)
2021/05/26 (水) ~ 2021/06/01 (火)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
現代日本経済史を踏まえ、時流に翻弄される企業ならびに人々を描いて巧み。会社員(どころか会社合併も(!))経験がある身としてそこまで極端ではないにせよ「あったあった」な出来事や「いたいた」な人物が続々出てきて身近に感じるったらありゃあしない(爆)。
それでありながらユーモアも交えて娯楽性も持たせるのはJACROWの真骨頂。
ところで時々昭和の政治家たちがいるような気がしたのはσ(^-^) だけか?(笑)
なお、当日パンフレットの登場人物の名前からピンとくるものがあったが、終演後に改めてネット検索したら事前に気付いた3人以外の名前も「ソレ」に関連しており「そういうことか♪」と得心。
獣唄2021-改訂版
劇団桟敷童子
すみだパークシアター倉(東京都)
2021/05/25 (火) ~ 2021/06/07 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
初演時に「悲劇ではあるが桟敷童子作品の中ではマイルド?」と思ったことを覚えていたが、終盤で「もしや受け取り方によっては悲劇性が強調されないか?」と気付き、しかし(忘れていた)ラストで「あ、それでそう思ったんだ」と納得。
幸せな孤独な薔薇
シアターキューブリック
浅草九劇(東京都)
2021/05/20 (木) ~ 2021/05/26 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
今一つ前に進めない人物(複数)が一歩踏み出す物語。21年前に一度観ただけなので観ていて「そういえばそうだったか」と時々思い出す程度だったが、当時よく観たやさしくあたたかい系の作品群をあれこれ思い出し、まさに記憶の虫干し状態。
超ではない能力
24/7lavo
新宿シアター・ミラクル(東京都)
2021/05/13 (木) ~ 2021/05/17 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
序盤で示される6人の能力の「超ではなさ」が絶妙。そしてそこで「その程度でどないすんねん!?」と思わせた(脚本・演出・演技の三位一体)ことで勝利は確実、みたいな? そんな彼らの能力が「役に立つ」クライマックスで「ブレーメンの音楽隊」を連想したりも。あと、エピローグも好きだなぁ。
うちのばあちゃん、アクセルとブレーキ踏み間違えた
劇団チャリT企画
座・高円寺1(東京都)
2021/05/16 (日) ~ 2021/05/23 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
笑えない、というかコワい。そして観ていて腹が立った……って、作品にではなく劇中のある集団に。
あのように(ゼーレみたいな?)合議制複数犯は架空だとしても(もしや実在する?)SNSで面白半分に話に尾鰭を付けて拡散する輩はいるだろうし。
類型的で先が読めたりもするけれどもけっこう心がザワついた。
ライライライ!
トツゲキ倶楽部
「劇」小劇場(東京都)
2021/05/12 (水) ~ 2021/05/16 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
意中の人に家業(?)を偽り、部下(?)にも嘘を吐くよう命じる男……という出だしこそ典型的なコメディのようだが、併走する3つの軸の関係性が明かされた時の切なさたるや。そんな脚本に加えて配役・メイク・小道具も含めた演出の妙に舌を巻き、怒涛の伏線回収は圧巻。
タイダルロック【4月25日公演中止(配信あり)】
あひるなんちゃら関村個人企画
OFF OFFシアター(東京都)
2021/04/23 (金) ~ 2021/04/25 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「バンドやりたい」という三女の言葉が姉二人に引き起こす小さな波紋。芯は姉妹愛的なものながら世代間ギャップや思惑違いで微妙にスレ違う会話・想いで笑わせるのはあひるなんちゃらの真骨頂か?(笑)
フルハウス
ジグジグ・ストロングシープス・グランドロマン
こくみん共済 coop ホール/スペース・ゼロ(東京都)
2021/03/31 (水) ~ 2021/04/04 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
まさに「文字通り」な点(謎)も含めたバックステージもの。現実にはともかく、虚構としていかにもありそうな状況、いかにもいそうな人物設定で笑いも交えながら公演の裏側を描いて巧み。そして随所に演劇愛が溢れてしばしば眼が潤みそうになる。
一般的な芝居の場合は「劇作家は語らず 登場人物をして語らしむ」だが、バックステージものの演劇愛については劇作家のみならず演者のものでもあるのかも、などと思う。「役者は語らず 演ずる人物をして語らしむ」みたいな?
公演前日の場当たり直前に起こったトラブルを乗り切ろうとするスタッフ・キャストを描いているので改めて演出助手や舞台監督の役割を(比較的最近、他の作品でも描かれていたが)改めて確認。
また、場当たり開始前に客席内に設けられた演出卓にいる演出助手から「よろしくお願いします」と挨拶された照明・音響スタッフのオペブースからの「返し(の例?)」に納得。
あと、劇中に演劇に詳しくない(=演劇用語をよく知らない)運営手伝いを配し、彼女に関係者が用語を説明することで自然に観客にも伝えるのはさすが。
「TABOO」
TEAM空想笑年
王子小劇場(東京都)
2021/06/23 (水) ~ 2021/06/27 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「-BackStage II-」という副題を付けてもイイんじゃね?な典型的バックステージコメディの体で始まり演劇愛を謳ってから任侠系に転じ、さらに別な複数の要素を加えてそれらを融合させる構成の巧みさよ!
エピローグでちゃんと時の経過を表現しているのもイイ。
何を見ても何かを思い出すと思う
コンプソンズ
「劇」小劇場(東京都)
2021/04/07 (水) ~ 2021/04/11 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
冒頭で3つの場が交互に提示されるがすぐに「時空ねじれ系」と明かされる。それに得意の(?)メタ要素も加えるとは個人的には「鴨が葱背負って」と言おうか「盆と正月が一緒に来たよう」と言おうか好きなヤツの掛け合わせ。そして複数のモチーフが錯綜し終盤で再現される構成は交響曲の如し。
2作品同時上演 「ずっ止まってる」/「ラブ・ストーリーは特戦隊」
room42
OFF OFFシアター(東京都)
2021/06/09 (水) ~ 2021/06/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★
【ずっ止まってる】
2020年、部活に関してコロナ禍の影響をモロに受けた高校生たちとその後の彼らを描いているが、過去と未来を頻繁に行き来するので「またそっちか」と感じてしまい物語の流れがブツ切りになった印象なのが残念。あと、どちらのことかはよくワカるが、季節感があまりないのも何だかなぁ……。
2作品同時上演 「ずっ止まってる」/「ラブ・ストーリーは特戦隊」
room42
OFF OFFシアター(東京都)
2021/06/09 (水) ~ 2021/06/13 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
【ラブ・ストーリーは特戦隊】
「ヒーローたちが……」な設定(埋れ木作品も連想)で始まる前半はPeachboys寄り(もちろん下ネタはないし毒も薄い)のパロディ満載、が、熱血・感動系に転ずる後半はぺこペン寄りと「一粒で二度オイしい」ぺこさん世界。ぺこさんファンとして大いに満足。
スケールⅡ
劇団献身
OFF OFFシアター(東京都)
2021/10/15 (金) ~ 2021/10/20 (水)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
女子高校生があれこれ災難に遭った末に演劇の道に進む物語。次々に不運・不幸に見舞われる主人公、という流れは一歩間違うと暗くて重くなりかねないところ、翔んだ人物造形も含めコメディに仕立ててポジティブに見せるのが巧み。
ところで主宰の前口上から劇団員の納葉さんが演劇をするに至ったいきさつ……と思いそうになるが、それってミスリードでは?(笑)
紙屋悦子の青春【9月28日~29日公演中止】
(公財)可児市文化芸術振興財団
吉祥寺シアター(東京都)
2021/10/20 (水) ~ 2021/10/28 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★★
太平洋戦争末期、主人公の縁談を中心とする物語。そんな時期であっても明るく日々を送っていた人々もいたんだな、と思いつつも、そう振る舞わなくてはやっていられなかったのではないか?と深読みも。
そんな基本的にはユーモラスな日常の中にさらりと戦争に起因する哀しみを差し挟むのが、悲しみをより際立たせる印象。声高に反戦を謳うよりも効果的かも?
7丁目のながふじくん
なかないで、毒きのこちゃん
シアター711(東京都)
2021/11/02 (火) ~ 2021/11/07 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
久しぶりに出会ったかつての同級生二人が繰り広げる珍道中、ロードムービーと言うよりは東海道中膝栗毛的なオモムキ?(私見) 彼らが道中で出会う人々は劇団員がとっかえひっかえ演じて「キャラクターショーケース」の如し。
序盤でのながちんの「オレ、もう死んでいるんだ、オレの身体を一緒に探しに行こうよ」という言葉に落語「粗忽長屋」を想起したのはσ(^-^) だけではあるまい。
崩れる
アマヤドリ
シアター風姿花伝(東京都)
2021/11/04 (木) ~ 2021/11/08 (月)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
「覆った水は盆に戻せない」を具現化したビターで辛口な会話劇。舞台での気まずさが客席を浸蝕してゆく不気味さ・怖さといったら!
で、客観的に観ていると「あ、それを言ったらダメ!」とか思うけれど当事者はそうならないんだろうなぁ、とも。
4年前の初演(王子小劇場)と会場が変わったこともあろうが舞台美術が変わり(初演時は「青いポスト」と交互上演)やや具象に向かったこともあり、より「辛さ」が増したか? で、上演時間も15~20分長くなったが、宿のスタッフパートが増えた?
廻る礎
JACROW
座・高円寺1(東京都)
2021/11/04 (木) ~ 2021/11/11 (木)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
いわば「芝居で楽しみながら知る日本国憲法の成立過程」。
闇の将軍三部作と較べて創作部分の比率が高い(アフタートークより)とはいえ第九条や主権者をめぐる論争はイマに通ずる……どころか終盤などはまさしく現状そのもの。それでいながら娯楽性たっぷりのエンタメ芝居にもなっているのは中村主宰の「茶化して描く」(アフタートークより)作劇法ゆえ?
たましずめ
SPIRAL MOON
「劇」小劇場(東京都)
2021/11/10 (水) ~ 2021/11/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
漱石の「夢十夜」に通ずる味わいの奇譚系短編3(2?)編。人物や出来事についてすべては語らずそれでいて察することができる絶妙な匙加減、そしてその後を想像する余地がある余韻のある終わり方までがいかにも SPIRAL MOON らしい。60分余の上演時間も優しい、みたいな?
グランド・フィナーレで逢いましょう
えにし
萬劇場(東京都)
2021/11/10 (水) ~ 2021/11/14 (日)公演終了
実演鑑賞
満足度★★★★
前田主宰の「私演劇」第三弾、2017年の「クラゲ図鑑」(脚本・西村太佑)が「過去編」、2019年の「この海のそばに」(脚本・福田昭雄)が「近過去編」、そして本作が「現在編」なオモムキ。
時期的な変化に加えて関わって来る人も増えて、それはあたかも主人公の「心の開放度」があがっていくよう。そして、自分と通ずるものがある人物と出会い、そのことによって両者が救われてゆくというのが優しく温かい感じ。
さらに、自分の身上(「心情」の誤変換に非ず)が反映された(劇中の)芝居を上演しようとしている主人公、というのもまさに「今」であり、それに異を唱える人物がいることによる展開も巧み。