In The PLAYROOM
DART’S
ギャラリーLE DECO(東京都)
2010/04/27 (火) ~ 2010/05/02 (日)公演終了
満足度★★★★★
劇中虚構と劇中現実がシームレスにつながり観客を幻惑
劇中虚構と劇中現実が(いや、本当の現実までもが)クラインの壷の如くシームレスにつながり観客を幻惑させ、一旦謎解きをしてから複数回どんでん返しがあるのに破綻しないストーリーが鮮やか。
リピートしたいがコマがないのはつくづく残念。
初演を見逃したことも今さらながらに悔やまれる。
7の椅子 6
7の椅子
劇場MOMO(東京都)
2010/04/28 (水) ~ 2010/05/02 (日)公演終了
満足度★★★★
三編の取り合わせが絶妙
ちょっとコワい&ちょっと切ない、な、かすかにリンクした2編の後に嘘を重ねる王道コメディという取り合わせが絶妙。
また、王道コメディとはいえ終盤に一瞬ホロリとさせるのも巧い。
緑壁
public doc
ギャラリーサイズ(東京都)
2010/03/31 (水) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★
ジワジワと追い詰められる感覚
比較的近くにある2つのマンションの部屋での出来事を描いた物語、会場が「ギャラリー」ながら古いマンションの一室を改装したものなので臨場感たっぷりなのはイイが、何も変えないままで2つの部屋の様子を見せるので最初は同じ棟の違う階なのかと誤認してしまうのが珠に瑕?
そんな中での過去や現在にキズや悩みのある人物たちのザラついた日常スケッチ風、ジワジワと追い詰められる感覚が面白い。(決して「心地好い」ではない(笑))
また、「関西を中心にエキセントリックな映像・音楽を創作し続ける」(チラシより)umbrella film によるイメージ映像的なものが時に装置内のテレビに、時に後方の壁(&カーテン)いっぱいに映写されて不安感を煽る、な感じ。
で、新たに同居することになった男の分身かと思われた謎の男を、登場人物それぞれの心の暗部なのでは?とも思わせる(誤読かも)ラストも○。
復讐回帰
劇団銀石
シアターグリーン BASE THEATER(東京都)
2010/03/30 (火) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★
内容的には好きなタイプだが
「太陽系を作り出す」ハナシを縦軸に「復讐」に関するいくつかのネタを絡ませ、野田秀樹チックな(いや、もう少し地口寄りか?)言葉遊びをまぶした作品、内容的には好きなタイプながら、手法に既視感があるというか、何か借り物のような、板についていない感覚があるのはちょっと残念。
たとえば早口の台詞の部分、その手法の先達であるアソコなどと比べるまでもなく歯切れよさに欠けるために聞き取りにくいとか…。
とはいえ、内容については先述のように好き。「キラー・オブ・ゴッド」が「吉良上野介」、「朝の神さん」が「浅野内匠頭」に転じての「忠臣蔵」や「四谷怪談」、「アンネの日記」に「さるかに合戦」など、タテ軸から連想ゲーム的に横にも展開して行く構造は好みだし。
また、アフタートークで主宰から「当初は『ハムレット』もネタの候補にあげながらも使えなかったと思っていたら、亡霊が装置の下段から登場するシーンがあたかも先代王の亡霊の登場のようなので「後付けで」ト書きで指定した」というエピソードが披露されて「なるほどぉ」みたいな。
で、これって後付けと言うより、使おうと思っていたので無意識的に出たのでは?
また、「太陽系を作っているその場も太陽系内にあるのでは?」という質問もあったという話からは、自宅のミニチュアを友人に見せて「音も聞こえるんだ」と超小型マイクを模型の窓に入れたら実際の窓からマイクが入ってきた、という広瀬正(だったと思う)のショートショートや夢野久作の「ドグラマグラ」を連想。
轟然~GO-ZEN~
ACTOR’S TRASH ASSH
シアターグリーン BIG TREE THEATER(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/30 (火)公演終了
満足度★★★★
ドラマ性が深いあるいはコクがある
修行のために寺に預けられている多田源氏の嫡男・美女丸は聾唖の娘・真名に一目惚れするが、彼女は雨乞いのため龍神様への生贄として白羽の矢が立ち…な物語。
生贄を要求する九頭龍も過去に恋人・伊月が(自ら)龍神様に身を捧げるという経験をしているし、いわゆる「悪役」というものが存在せず(強いて言えば龍神様が悪役か?(笑))勧善懲悪ではないのでカタルシスはないが、その分、因習に囚われる人々の哀しさや辛さ、それに美女丸の真名に対する想いなどが前面に出ていてドラマ性が深い(あるいは「コクがある」?)感じなのがオトナ向け?(笑)
ただ、老いた(?)主人公の回想的な構造はシリーズ(と言ってイイのか?)共通ながら、ストーリーの途中で最初に源賢(=美女丸のその後)が登場した時に時制がつかみにくいのが惜しい。
夢野久作 少女地獄
月蝕歌劇団
ザムザ阿佐谷(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/29 (月)公演終了
満足度★★★
観た甲斐はあったと思いたい
タイトル通り夢野久作の「少女地獄」をベースにしつつ他の作品をも混ぜ込んでいる(劇中でもそう言っているし(笑))とのことで、夢野久作は数えるほどしか読んでいない身として「元ネタを知っていればもっと面白かったんだろうなぁ」というクヤしさあり。
がしかし、「少女歌劇」(某メジャー少女歌劇団と違って男優も出演するが)の独特の様式美(?)やキッチュな感覚はそれだけでも観た甲斐はあったと思いたい。(爆)
立体文学 『笑ふ漱石』
ストーリーテラーズ
ぎゃらりい茶屋町三番地(東京都)
2010/03/26 (金) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★★
親しみやすさも感じる
漱石の「坊っちゃん」「吾輩は…」「夢十夜」(の抜粋あるいは中の1編)を中心に随筆などでつないだ構成、1編毎に区切るのではなく音楽で言えばメドレーのようにほぼシームレスにつないでいるのが面白いし、中心となる3編はいずれも読んだことがあったので親しみやすさも感じる。
また、猫に関する随筆の中の「黒猫」で全体を挟むスタイルも上手い。
もちろん、お得意の(?)鳴り物や折り紙の「顔」も登場し、「今回はそう使いますか」な楽しさもアリ。
しかし、鍵盤ハーモニカ(ピアニカとかメロディオンとかは商品名で一般名称はコレ)を楽器としてではなく、猫の胴体と尻尾に使うとは…(笑)
はなよめのまち【ご来場誠にありがとうございました!】
キコ qui-co.
王子小劇場(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/29 (月)公演終了
満足度★★★
どちらかと言えば苦手なタイプ
1984年、地図になく「特産品がはなよめ」である町を舞台にした物語、内容説明に「禍々しくも美しい」とかあったものの、禍々しいなんてことはなく(むしろそっちに興味があったんだが(爆))、しかし確かに美しい。
まずは冒頭の長めの説明台詞が純文学作品のようなタッチで、「ことば」として美しい。
また、「はなよめ」たちの衣裳の裾のグラデーションが美しい。
そしてあれこれ騒動がありつつ、主人公の「私の記憶はここまでです」という言葉で「え、まさかここで!?」と思わせた(ズルくね?(笑))後のラストシーンのワンショトが美しい。
そんなこんなで全体的に詩的であり、純文学っぽい雰囲気が漂っており、どちらかと言えば苦手なタイプ…(爆)
いかに普段娯楽要素の強いものばかり観ているかってことかな?(とほほ)
と、そんな中、途中で床にアニメーション映像(事前にパンフでそこまで見ていなかったが、すぐにそれとわかる荒船泰廣作品)を投射したり、STOMP気味のリズム・パフォーマンスがあったりするのがまた独特。
うん、継続観察ってことで次回も観てみよう。
死ぬ機械
虚飾集団廻天百眼
萬劇場(東京都)
2010/03/26 (金) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★★★
前回に引き続き「狂喜乱舞」
人間にこき使われ、故障すれば「新しいのを買った方が…」と解体処分されてしまうロボットたちが憂さ晴らしのため花見に行くが、酔った1人(1体?)が人間から投げつけられた石を投げ返すと他の者も投げ返し…な状況から始まる物語。
『片腕マシンガール』『ロボゲイシャ』など近年のスプラッタコメディ(爆)映画のテイストも取り込みつつ、ベースとなる物語は典型的な'60年代(あるいはそれ以前?)のロボットを扱ったレトロSFで、さらに結末は昭和どころか沙翁などに近い古典的な悲劇だし、まさに「温故知新」な感覚。
レトロSF的元ネタは小説に限らず「鉄腕アトム」も入っており、そのあたりが好きだった身としては「何もかもが懐かしい…」みたいな。(笑)
とはいえ、マリーの自爆時のポーズはア・バオア・クーにおけるラストシューティングとは限らないし、「それ以上でもそれ以下でもない」なんてフレーズはクワトロ大尉でなくとも使うだろうから、ガンダムもというのは深読み(あるいは考えすぎ)でしょうね。
ましてや「マリーの改造された左腕ってデストロイド・トマホークでは?」なんてのは考えすぎもいいトコロ…。
そんな懐かしくも切ない内容に、今回は音楽劇ということで歌をちりばめ(牛水里美ってば3作品連続で劇中で歌っているな)、若干の個人差はあるものの完璧に近いロボマイム(人間役の出演者もカーテンコールではロボマイムなのだ)も取り入れて十分に楽しめたので、前回の実験公演『御霊祭御祭騒』に引き続き評価は「狂喜乱舞」。
演劇機関説・空の篇
劇団再生
Asagaya / Loft A(東京都)
2010/03/26 (金) ~ 2010/03/27 (土)公演終了
満足度★★★★★
今回もヤられた、感服!
まずは入場時、入口で料金を払って奥のスペースに入る時に黒い幕があり、ここに来るのが半年ぶりだったこともあって「どっちだっけ?」などと惑わされてから(笑)入場し呆気にとられる。
まるで耳なし芳一の身体の如く、10cm角くらいの大きさの文字で文章(高木主宰による劇団論的なもの)が綴られた白い布によって壁・天井のみならず床まで(!)覆われている…。ある意味桟敷童子と同系統の趣向ながら、意外性もあってアチラを上回ったかも?
で、いつもの鈴木邦男氏が大阪での仕事により間に合わないとのことで、見沢知廉のドキュメント映画を撮影中の大浦信行監督を迎えてのプレ・パフォーマンス・トークに続く本編は、新型零戦を開発している整備士や航空隊員・隊長の物語…ではありながら敗戦色濃い第二次大戦末期には見えず、パラレルワールドの未来の日本のようにも見え、『スカイ・クロラ』(未見だが(爆))的世界のようにも見え、しかしそんな時代的考察はほとんど意味をなさず。
なぜなら表面的にはそうであってもそれは暗喩・隠喩であるから。
そしてその暗喩・隠喩は「マグロとパソコンを置き換える」なんてヤワなものではなく(笑)観る側の解釈の余地が非常に大きくて十人十色どころか百人百様の受け止め方がありそうだから。
その余地の大きさにより観ながらあれこれ考えていると頭脳がオーバーフローしそうになるので、途中からは敢えて読もうとせず「考えずに感じるまま」観ていたくらいで。
これがまた、ボーマン船長が光のあふれる中に飛び込んだ如く、感覚に直接シャワーを浴びているようで心地好い。
そうして迎えるラストは劇中での役を脱ぎ捨てた出演者自身にもつながって行き、劇団再生としての劇団論的なもので締めくくるワケで、このテーマも好きな身としてトドメをさされる。(笑)
いやぁ、今回もヤられたなぁ、感服!
さらに終演後は遅れて到着した鈴木氏を迎えてのボーナストラック的なアフタートーク(約25分)もあって、おトク感満載。
Snowball Earth
劇団Peek-a-Boo
劇場MOMO(東京都)
2010/03/26 (金) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★
Cプログラム
氷河期を迎えた地球から火星に移住した人類を描いた物語というのはA・Bプロの時にパンフから予想した通りではあったものの、今まで観てきた小林脚本作品(舞台・映像とも)からすると意外なほどドタバタ系の笑いがあってちょっとビックリ。移住した火星でもまた災難に見舞われて人類がかなり減り、なおかつ治安も維持されていないという悲劇的な状況を緩和するために笑いも盛り込んだのかしら?などと考えたりして…。
が、そんな状況の中、かつて火星に対して行なったテラフォーミング(「アースレッド」って…(笑))を地球に施せば帰れるのではないかという流れになり、青くなり始めた地球が臨まれるという楽観的なラスト(欲を言えば上手後方の白い地球が青くなるのも見せて欲しかった)は、地球が全球凍結してしまう物語でどちらかと言えば悲観的な結末のA・Bプログラムと対照的。
内容も含めてアチラが往路でコチラが帰路と、キチンと対を成している、な印象。
そんなワケで、それぞれ単品で観てもなんら問題はなく、両方観ればより楽しく、しかし両方観るのであればCを後にした方がより良い、ってところか。
Snowball Earth
劇団Peek-a-Boo
劇場MOMO(東京都)
2010/03/26 (金) ~ 2010/04/04 (日)公演終了
満足度★★★
A+Bプログラム
2040年から始まった氷河期をめぐるストーリーで、この日はAプログラム・劇団Peek-a-Booの「Blue Mola mola's Dreams ~蒼きマンボウの夢~」(約65分)とBプログラム・劇団居酒屋ベースボールの「pink irony」(約75分)のカップリング。(途中休憩10分)
同じテーマで書き下ろし競作というのは時々あるが、本作の場合は同じ世界を違う劇団・違う作家が連作中篇で描くスタイルで両編がリンクしているばかりか登場人物の一部は両方に登場しキャストが相互乗り入れしているというのが独特。
さらに「Blue…」は2040年から2090年までを年代記的に描いたタテ軸的なもので、「pink…」がその部分部分を描くヨコ軸になっている構成も上手い。
で、「Blue…」のラスト、火星へ移住せず地球に残ることを選ぶマスターに「滅びの美学」や「沈没する船に残る船長」など感じ、『コクーン』をもちょっと思い出す。
映画との関連では氷河期なので『デイ・アフター…』という表面的な部分でなく、未来に人類が直面するであろう全地球的災害を描くことにローランド・エメリッヒ監督の作品群を連想。
そんなワケでスケールの大きいSF作品ながらよくぞこのサイズに収めたもんだと感心。
また、居酒屋…は初見だったものの、それぞれの劇団の色がよく出ていたのではあるまいか。
才蔵-SAIZOH-
劇団 武士道
シアター風姿花伝(東京都)
2010/03/25 (木) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★★
キャラが立っている登場人物たち
真田十勇士から抜けて素浪人となり、追っ手から逃れるべく放浪している霧隠才蔵が、立ち寄った故郷で巻き込まれる騒動…な王道系娯楽時代劇。
具体的に言えばまんま昭和の東映時代劇映画(←あくまで私的イメージ)のノリ、みたいな。(笑)
いやホント、前半の強い才蔵は60年代のヒーロー系時代劇全盛期のそれだし、後半の…(ネタバレ自粛)…はむしろ終盤は70~80年代のニューウェーブ系時代劇的な…。
で、思いのほか早く居場所をつきとめる猿飛佐助と対峙する才蔵とか、オイしいところをさらう才蔵の師匠(主宰の役得?(笑))とか、才蔵の兄弟弟子だた悪の首領とか、やはりオトコたちのドラマ。
が、そんな中に女性陣による「想いは伝えなくては意味がない」なんて恋愛論も出てきて華を添えるのが上手い。
上手いと言えば、喀血(沖田かっっ!!!(笑))を赤いサスペンションで表現したり、装置内のスライドする部分を右に寄せるか左に寄せるかで屋外と屋内を表現するとかも上手い。
それになんたって、それぞれキャラが立っている登場人物たちが良かった。
Cage.
劇団大富豪
ザ・ポケット(東京都)
2010/03/24 (水) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★
一粒で二度オイシイ
交通課出身の女性刑事を主人公に、棋士である父の不審な死や出没する謎の人物を絡めた物語。なのでタイトルは「刑事」と「籠」のダブルミーニングか?と思っていたら案の定で、プロローグで「かごめかごめ」が…(笑)
中盤までは比較的オーソドックスな(?)犯罪サスペンス風ではありつつ、時々挟まれていた『M.I.B.』風の2人組や「ナニカ」に憑かれたような男などアヤしげな部分がオモテに出て来る終盤はガラリとオモムキを変えて「一粒で二度オイシイ」な感じ。
実は THE 黒帯の『妖怪レストラン』(未見だが作品の存在だけは知っていた)の番外編(あるいは外伝とかスピンアウトとか)的なものだそうで、こんなことならそっちも観ておけばヨカッタというのは後の祭り。
とはいえ、観ていればより面白かろうけれど、単品でも十分面白くそれなりに満足。ただ、135分というのはちょっと長い。それを感じさせなければ問題ないのだけれど、観ながら「2時間は超えているな」という気がしていたもんなぁ。
『垂れ下がるロープ、手の中のカラビナ』
ポムカンパニー
ギャラリーLE DECO(東京都)
2010/03/24 (水) ~ 2010/03/28 (日)公演終了
満足度★★★★
順調な船出を祝す
松木円宏によるプロデュースユニットの第1回公演で、楽園王+の長堀博士による「明るい夜」と碧田直による「ハンケツ」の書き下ろし2本立て。
三者会談において同じテーマで執筆依頼したとのことながら、往年のEPレコード(古いねどうも)のA・B面の如く(すべてがそうだったというワケではないが)ガラリと異なった作品のカップリングなのが面白い。
「明るい夜」は自殺を図った女性が目を覚ますと彼女の兄・姉・妹・叔父だという(見知らぬ)人々に囲まれているが、次に気付くと夫との生活をしており…な「胡蝶の夢」系。
楽園王+よりも一般向けでわかりやすい(笑)ものの、いかにも長堀作品なので頬が緩みっ放し。(チラリと句読点ズラしも出てきたっけ…)
一方「ハンケツ」は殺人事件のあった部屋に刑事が関係者を集めて、真相を解き明かす名探偵の到着を待っているが…なおハナシ。
ゴドー(=説明不要?)や不動(=じんのひろあき作品)などと同系統の「待ち系」(笑)かと思いきや、徐々に刑事が切れ者ぶりを発揮する本格ミステリー風で、その展開の意外性が○。
しかしまさかタイトルが「判決」(これも出てくるが)ではなく「半ケツ」だったとは…(笑)
で、いくつかの疑問が残る憾みはあったものの、その後のエピローグが「明るい夜」冒頭のリプライズであり両篇をジョイントするカタチだったので「終わり良ければ全て良し」的な?
またこのエピローグでは姉のポジションが正編の主人公に代わっており、「もしやあの “家族” は、事ある毎に1人ずつ入れ替わってゆくのか?」などと想像させる余地もあるのが好み。
ということで、順調な船出を祝すとともに、今後どんなものを見せてくれるか期待。
大市民
ティーファクトリー
吉祥寺シアター(東京都)
2010/03/16 (火) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★★
混沌の中を浮遊するのが楽しい
市民ミュージカルのオーディション場面から始まるものの、一転して駆け込み乗車や車内での携帯電話使用を阻止していた「特命女子」チームに与えられた新たな任務は自殺願望男の脳内にミクロ化して潜入し(惑星ピスタチオかっっ!!!(笑))その願望をなくすことだった…なんて突飛な展開になり、そこに
・日曜夜の某アニメそっくりな一家(ただし名前は海系でなく山系(笑))とその後
・外見と中身が入れ替わった成功者と貧乏人
・公費でロンドン留学させてもらう演出家
・猫が接客する違法カフェ(爆)
などのネタが絡んで混沌状態。もうこれはそのノリに身を任せたモン勝ちで、その混沌の中を浮遊するのが楽しいのなんのって。(元ネタを知っていればいるだけ笑えるし)
パロディ、ブラック、ナンセンスなど各種の笑いを揃えているのも良かった。
揃えていると言えばオーディションで選ばれた33人の出演者も芝居系やダンス系など幅広く、適材適所な感じ。
そんなことに会場サイズや出演人数なども含めて、KERA・MAP に近い感覚と言えるか?
また、久米大作による音楽が時としてはにわ(嗚呼、懐かしや!)っぽかったりするのがいかにもな感じだったり、冒頭のオーディション場面の曲(特に出だし)が某有名ミュージカルのものに似ていたりで、そっち方面でも満足。
追われろ!卑怯者!!
ロスリスバーガー
RAFT(東京都)
2010/03/19 (金) ~ 2010/03/21 (日)公演終了
満足度★★★★
その場の空気がしっかり伝わる
バイト従業員が1人で切り盛りする喫茶店のスケッチ風の55分。若干デフォルメされているものの会話がリアルで、文章で言えば行間に当たる「台詞の間合い」や「………」な台詞(?)からその場の空気(軽い気まずさとか)がシッカリ伝わってくる感じ。
COUPLE
プロデュースユニット四方八方
アイピット目白(東京都)
2010/03/17 (水) ~ 2010/03/21 (日)公演終了
満足度★★★★
イイ作品に巡りあえてシアワセ
結婚後僅か1週間で事故死した男の葬儀当日、故人の母、妻、妻の姉・弟と配偶者、故人の大学時代の友人グループなどが集まるが、故人の霊とそのガイド役らしき男もそこにいて…な物語。
チラシに書かれた内容から想像したものとは若干違っていたものの、急逝した人物が遺した者たちに想いを伝える、という基本的な部分は期待通り(※)で満足度大。
※ 「椿山課長…」的かと思っていたら「煙が…」(奇しくも約1ヶ月前にここで観た)風だった、みたいな?
前半は故人の霊があまり登場せず、遺された者たちそれぞれの故人に対する想いが語られてしみじみ(←「予想よりシリアスなのか?」とさえ思ってしまった)、後半は笑いと感動が交互に押し寄せる、という構成もなかなか良く、「煙…」のおばあちゃんのように霊が見えるの?な妹が実は見えていないとか、想いを伝える方法がかなりチカラ技とか、そんなところも斬新で愉快。
またもやイイ作品に巡りあうことができてシアワセ。
おばあちゃん家のニワオハカ
鳥公園
市田邸(東京都)
2010/03/17 (水) ~ 2010/03/23 (火)公演終了
満足度★★★★
現実・夢・回想・幻想などの間を変幻自在に
川上弘美のちょっとフシギ系な小説を想起させる出だし以降、現実・夢・回想・幻想・そのどれでもないナニカ(笑)などの間を変幻自在に往き来し、時にシュール、時に優しく、時にワケ解らなく(爆)展開するさまが独特。
また、いかようにも解釈でき、深読みや誤読(笑)の余地が非常に大きく、逆にσ(^-^) はしなかったが「ワケがワカラン」と解釈を放棄して突き放しても許してくれそうな(爆)作風が面白い。
フジヤマタイガーブリーカー
MCR
駅前劇場(東京都)
2010/03/17 (水) ~ 2010/03/22 (月)公演終了
満足度★★★★
マシュマロ・ホイップ・パンク・ロック
当日パンフやPPTでさかんに「下ネタ」と言っていたがそんなことはなく(←私見)「艶笑」に昇華させておりそこにエミの過剰な気の遣いかた(櫻井智也自身が反映されているに違いない)や、彼の友人たちの優しさ、短い余命による切なさなどを絡ませて、なかなかの出来。
入れ替わる感覚が性的快感(アダルト版『転校生』とか?(笑))だけでなく痛みもなので「じゃあ何が入れ替わって何が入れ替わらないの?」という疑問や、暗示にとどめているとはいえ最終的にエミが救われないことでちょっと重い余韻を残す点など憾みがないでもないが、総じて満足。
あと、痛みが入れ替わるという点で斎藤久志脚本・監督の『いたいふたり』(02年)を思い出す。