満足度★★★★★
トラムは小劇場と言われるが、本多と同様決して狭くない。天井も高い。その舞台いっぱいに奥行きとタッパのあるアパートの一室がズドンと、イイ具合にリアルに作りこまれ、のっけから目がさめる。記号としては窓のある奥の壁、そこから手前に広がる舞台式遠近法(右端の席だったが横の壁がギリ見えた)。唯一の出入口(ドア)が下手手前。右手前と左手奥にベッド。これらをランドマークに見ようと身構える。が、程なく「人物」にひきこまれた。
男3人の芝居。アパートの所有者、及び住人である若い兄弟(溝端&忍成)、そこへ連れられて来た中年(老年?)下層労働者(温水)。場面は暗転を挟み、時系列で進むが、観客は「初めてこの部屋にやってきた」労働者の視点で、謎めいた兄弟を眺める事になる。失職したばかりの労働者にとって、招き入れられた場所=アパートは重要なアイテム。このアパートと兄弟を巡る事情が少しずつ明らかになる経過と、労働者がふいに手にした恩恵を増幅させようと(まるで僅かな稼ぎを一攫千金とギャンブルに投げ出すノリ)奇行に走る哀れ。考えの無い行動が引き起こして行く結末は、不信仰なキリストの弟子らを思い出させた。私らの日常の中でも生起しては過ぎて行く何とはない光景を、ピンターは人生の本質を照らすものとして(あるいは、であるかのように)、絶妙な筆でサスペンスフルに描き出している。
ピンター作品初見は数年前の新国立『温室』、深津演出は美術が抽象的、演技も機械的で残念ながら「戯曲」を読んだ面白さを超えなかったが、今回の森新太郎演出は(演目は違うが)美術も衣裳も、演技もリアルベースで見せた(通常の)劇。リアルな人間像から立ち上る奇異さ、不気味さが、観る者にとっては快感。終演後に拍手したくなるのは役者が体を張って表現したものを受け取った、という実感からだろう。
著名俳優の競演には逆に心配もよぎったが予想外の(失礼ながら)出来。
満足度★★★
忍成修吾さんと溝端淳平さんの兄弟と温水洋一さんの浮浪者という3人の会話劇です。ベテランの温水さんは思いっきり人間的で駄目なジジイを演じます。それに対して若手二人は現実世界とは少し距離を置いた人格で、忍成さんは静的に、溝端さんは動的に温水さんに対峙して一歩も引きません。溝端さんは代役が出ているのかと思ったほど私の記憶と違っていました。役者さん目当てなら大満足でしょう。
この作品は不条理劇ということになっています。しかし、虚心に舞台を見ていても何も特別なものを感じませんでした。同じく不条理劇である「ゴドーを待ちながら」は全ての部分が理解を拒みますが本作「管理人」はほとんどの部分で普通に意味が通じ、ストーリーも進行します。私が大きな勘違いや見落としをしているのか、昔の不条理が今では現実になってしまったのでしょう。
何度も暗転し、謎めいた音楽がかかるのにはうんざりしました。
満足度★★★★
鑑賞日2017/11/27 (月) 19:00
ハロルド・ピンターの出世作となった不条理劇を日本で初演だとか。不条理と言っても、ピンターのは、ベケットとは違って、日常の会話としてありうるものなのに不条理という奇妙な舞台だった。ピンター作品は『ダム・ウェイター』『背信』くらいしか観ていないが、かなり多いセリフが実は何の意味も持っていないという不条理も感じる。温水洋一が、ホームレス寸前から兄弟の部屋に住まわさせてもらっている立場から、段々と偉そうに語っていくというポジションの変化を巧みに演じていたが、若い2人も独特の雰囲気を醸し出して名演と言える。
兄弟とホームレスという3人の男性がくっきり鮮やかに対比される。人物造形が面白いし分かりやすい。最後の最後に「ああ、そういうことか!(勘違いかもだけど)」と気づきがあるのは、2014年の森新太郎演出『幽霊』と似ている。教訓めいたものを沢山受け取ってじっくり考える帰り道が楽しい。演じる俳優さんはものすごく大変だと思う!
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「弱い者がさらに弱い者を叩(たた)く光景は、国力が低下するときに洋の東西を問わず現出するのだろう。」 (評・舞台)世田谷パブリックシアター「管理人」 国問わず通じる「弱い者叩き」:朝日新聞デジタル https://t.co/aenY0YITSn
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本日の朝日新聞の夕刊に、先日観た舞台についての文章を書いています。 (評・舞台)世田谷パブリックシアター「管理人」 国問わず通じる「弱い者叩き」:朝日新聞デジタル https://t.co/7cM08MtTzF
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[TV & Showbiz] 【鑑賞眼】世田谷パブリックシアター「管理人」 寄る辺ない現代映す不条理劇:
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『管理人』メディア情報 本日12/2(土) 産経新聞に、劇評が掲載されました。以下URLでも全文お読みいただけます。 【鑑賞眼】世田谷パブリックシアター「管理人」 寄る辺ない現代映す不条理劇 - 産経ニュース… https://t.co/1ooDrwvSUi
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【鑑賞眼】世田谷パブリックシアター「管理人」 寄る辺ない現代映す不条理劇 (産経新聞)
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[産経]【鑑賞眼】世田谷パブリックシアター「管理人」 寄る辺ない現代映す不条理劇 https://t.co/h51ii363uX 「ピンタレスク」という英語がある。ノーベル文学賞受賞者の英劇作家ハロルド・ピンターの作品に由来し、多… https://t.co/37vgDlpApY
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えんぶ情報館 : 世田谷パブリックシアター 『管理人』 11/26よりシアタートラムにて開幕! https://t.co/ZL0At1zOma https://t.co/m8x4jGgqSG
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