愛のおわり 公演情報 愛のおわり」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.5
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  • 満足度★★★★

    初演を観ていたが、それを今回の再演と見比べる「贅沢」を味わいたくアゴラへ。
    台詞の殆どは覚えていないが幾つかの要素を思い出しつつ、しかし芝居は初演に比べ詰まっている・・台詞を繰り出す役割を担う者、止まりでなく、そこに存在する者として観ることができた。よくある男女の別れ、それが互いに熟年にずれ込んでいる事により、多弁はむしろ嘘の上塗りとなる(何も言わなければ・・ただ「別れよう」とだけ告げていたなら、そこで終り、芝居にはならないが頭の良い男ならそうしただろう)。
     もっとも台詞にもある通り、二人は全てを曖昧にせず対話してきた関係ゆえ、男は何かを語らねばならなかった。が、その本音を語るに色々と修飾を施さずにはおれず、裏切った側の疚しさを認めては意思(離縁の)を貫徹できないそうにないから「正しい態度」は取れず、その「不適切さ」を女は見事に掬い上げて指摘し、男に突きつけ認めさせたという寸法だ。
    平田オリザによる改稿は、明らかにそれと判った部分もあり、どの程度変えたのか知りたくもあるが、いずれにせよ良い具合に台詞は流れていた(一箇所だけ語尾が気になる箇所があり「おや、オリザっぽい」と思ったがどこだったか・・)。
    初演と劇場が異なり、今回は二人の表情を近くから見る事ができた。私の目にはっきり認められたのは女の苦しむ表情。男に反駁する姿は痛快だが、その根底には二人の間で言葉を曖昧に(都合良く)使わせないという意志がある。即ち二人の間にいかがわしい言葉を通用させたくない、かつて存在した愛が偽物だった結論には決してしないという意志である。
    この女性の態度・・・好悪で人が離別する事はあっても尚言葉を交わし合う関係は続くのだ、と暗に告げる態度は、男に対する女の愛(=代替不能な関係)の告白でありながら、人間として向き合う(尊重し合う)関係を育もうとする意志・願望の表われでもある。それは言い換えれば希望だ。二人のドメスティックな事情を超えて、そう感じ取れるものがある。
     男女の関係である以上、恋愛である以上、好悪が事の次第を決めるに過ぎない。女はただ未練があるのだ、と一蹴することも可だ。男の心はとうに彼女から離れている。男はただ「そうなってしまった」己を恥ずかしく思っているようであり、その疚しさあってこそ、滔々と前半の1時間喋り続けた。が、男を手放す以上、どこまでも女が惨めなのであり、しかし一個の人間として、愛を知った人間として立ち続けようとする「意志」はやはり彼女自身に発するものだ。
    女の男に対する舌鋒が束の間溜飲を下げる一方、足場を失ったような脆さは女の孤独を示す。そして「攻撃」でない語りを語り始める女は、「愛」が確かに愛であった証を示し、「気分」などによっては容易に無に帰せられないと、信じようとする、だけでなく相手に向かって断じる。現在と未来を変えようとするのでなく、過去についての認識、共有し得るものについての議論。いかにも虚しい議論にも思えるが、女は「過去」を現在形に引き戻しそこに「愛」が存在した事を確認しようとする。その「過去」は過去ゆえに虚しいものだ、という考えを彼女は意志によって選択しない。
     現実には時間は流れ、やがて状況も変化するだろうが、その瞬間には「終わった」と感じたとしてそれも一つの真実である。希望というものは強い意志を持って、血の滲む思いで引き寄せるものだ、という事だろうか。否、そうせざるを得なかった彼女が居たに過ぎない・・・主客論争(運命論)の滝に流れ込みそうだから引き返す。が、「感動」の理由は間違いなく「意志」にある。

    途中に挟まれる絶妙なハプニングといい、憎い芝居である。

  • 満足度★★★★★

    ■パスカル・ランベール天才!/約140分■
    最初の50分くらいは「こんな劇を絶賛するフランス人って見る目ねえなぁ~。。」と呆れ、★★か★にするつもりでいたが、どっこい、大傑作でした。

    ネタバレBOX

    舞台演出家の夫と、女優の妻。ともに四十代くらいに見える夫婦の別れ話を描く。
    まずは夫が二人はなぜ別れるべきか、相手の短所をあげつらいながら延々50分ほどにわたって妻に説くのだが、己の繰り出すレトリックに酔い痴れているかのような夫の長口舌は独りよがりで退屈きわまりなく、寝落ちせず観続けるのにどれだけ苦労が要ったことか。
    が、合唱隊のくだりをはさんで妻が攻勢に転じると、劇は俄然面白くなる。それまで一言も発することなく夫の言い分を聞いていた妻は、夫の話を「観念的」と断じ、ついさっきの長口舌から観念的で空疎なフレーズを引用して夫を嘲り、客席をわかせる。
    しかし、二人が愛し合っていた頃の思い出話を始めると客席から笑いは消え、幸せだった過去をしんみりと語る妻の話に観衆は没頭。
    そのうち妻は「バラの刺繍入りの椅子は俺のものだ」などと物に執着する夫を蔑み始め、「私は●●●●を取っておく」と、忘れたくない思い出を列挙。このくだりこそが本作の見せ場。
    空港で拾った上記の椅子を手荷物として機内に持ち込み、膝に乗せて座る様を見て夫に惚れたという妻が、好きになったその時のことを思い出しつつ言うセリフ、「私は『あ、このひと好きだ。ヤバい』を取っておく」には胸が震えた。
    別れ話として展開してゆく恋愛論が、徐々に演劇論に重なってゆく二重構造も見事。
  • 満足度★★★★★

    鑑賞日2016/12/28 (水)

    2時間20分、休憩なし。役者泣かせで、なんじゃこりゃ。気に入った。

  • 満足度★★★★

    男女が舞台上で対角線に対峙した瞬間思い出しました。そして、舞台奥両端に置いてあるソテツの葉を青く染色したような観葉植物のようなものも記憶に残っていました。

    ネタバレBOX

    離婚を前提に、男女が一時間ずつ攻守を替えて言いたい放題責め立てる話。

    基本二人舞台で2時間20分は長いと思いますが、60分の一人舞台が二本と考えると辻褄が合います。

    一人で一時間しゃべりまくる役者の技量は大したものです。ただ、翻訳物のせいか、内容はあまり伝わってきません。

    2013年に観たときは夫婦の別れ話の話だと思っていましたが、途中この部屋、大スタジオ近くの控室に入ってきた合唱団の人たちが、大スタジオで自分たちの合唱コンクールがあることを話した後で、別のスタジオで演劇コンクールをやっていることを示唆した発言があり、『愛のおわり』という演劇の最終調整をしている二人の役者の話なのではないかとも考えました。

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