「パーマ屋スミレ」再演。語り部の酒向芳さんの観客との有機的な関わり方が方向を決めた気がする。過去と現在を同時に観る感覚で考え続けた。鄭義信三部作の中で一番冷静に鑑賞したかも。具象美術や事実を語る言葉が雄弁。スミレ(南果歩)の決意と行動から学ぶ。優しい言葉を使いたい。
満足度★★★★
有難いチケット
話の構造は三部作の第一作「焼肉ドラゴン」に似ている。炭鉱に近い、朝鮮人集落。災難は爆発事故による一酸化炭素中毒で、「焼肉・・」が差別とそれを被った彼らの心模様、そこから来る言動のありように焦点が当てられていたのに対し、日本人も受けた事故の悲劇に朝鮮人も同じくまみえて、豪胆にも闘って行く理髪店のおかみの姿が印象的なドラマになっている。今作では差別そのものが対象化されてはいない、「前提」となっている。
もちろん愛の物語は相変わらず、というか鄭義信の中心テーマであって、これは外せない。 最後には「焼肉」と同様、社会情勢の変化(石炭産業の衰微)により、人々が集落を去って行く場面が訪れる。
今回の語り部は「少年」ではなく、かつての少年が未来から故郷での物語を神様よろしく語る形式になっている。
南果歩演じる在日二世(スミ)をめぐり、現夫の千葉哲也、その弟村上淳が、境界の曖昧な心情を表現し、泥にまみれた戦後の庶民の物語に濃い陰影を与えていた。
満足度★★★★
DEEP!
濃いい話、小倉生まれの自分には炭鉱はやや近いものの
やはり、あの時代を生き抜くため
どれだけの方々が苦しい思いをして生き抜いてきたか、、、
皆さんの熱演、怪演もあり、
しっかり心に響きました。
満足度★★★★
炭鉱町での深いところの話。
差別的なところ、炭鉱事故、危険と隣り合わせの仕事だったということが改めてわかる。風化しないためにもこういう作品は今後も上演されるべきだと感じる。三人姉妹の生きざまも過酷である。
満足度★★★★
熱演
本物のミゼット!?さすがにエンジン駆動ではなく(2ストだから白煙がすごいことになる)、電気で動かしているようだが音響さんが頑張って本物らしい音を出していたのはスゴい。
満足度★★★★
アフタートークの日観劇
観劇済みの再演舞台はあまり見ないようにしているつもりだが、虹郎よりもムラジュン、その兄役が千葉さんが出演ならば再演でも見に行かねば、と思い立ちチケット確保。たまたま作家、劇場監督、出演者らによるアフタートークの日に観劇。初演の松重&石橋兄弟も良かったが、今回の千葉&ムラジュン兄弟もよろしかった。つーか、色気あり過ぎだよ、あの兄弟w
そして今回も物語自体が切なすぎて、泣きたいわけではないけど、その後の社会がわかるだけに気持ちの持って行き場に困った。
苦境の中で生きる鄭義信流の3人姉妹の物語であり人間賛歌。
同じネタふりを3回も見せられるのはクドくて好みではない。
満足度★★★★★
前向きに泣ける舞台
1960年代の九州、炭鉱町を舞台にした感動作。鄭義信の在日韓国人三部作の一つで、新国立劇場が一挙上演。三部作の中でもかなり悲劇的な物語だが、その涙はなぜか前向きな香りがして、心の底から見て良かったと思える。
東京五輪があり、高度成長の最中の日本で、石炭から石油へ世の中のエネルギーが変わる時代。その波に翻弄され、会社にも国家にも見捨てらた家族の人生。あの頃の出来事を歴史にしてしまうのはまだ早い。豊かになったはずの現代日本でも、会社や国家に捨てられて苦しんでいる家族への想像力が問われる。
この舞台は歴史を振り返っているわけではなく、私たちが気づかないでいる現実への扉となっている。
掛け値なしに見る価値のある舞台だ。俳優たちの実力が、それを支えている。