ら・ら・ら 公演情報 ら・ら・ら」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.0
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  • 満足度★★★★

    ウェルメイド・ドラマとしての洗練
    劇団朋友の名前には馴染みがあり、いくつかの過去演目を覚えており、予約して観劇する寸前にもなったせいか一度は観た気で居たが、実は一度も観劇していなかった。が、想像していた通りの雰囲気を持つ劇団、舞台だった。「よく出来たホームドラマ的な芝居」を、観たいと期待し、その期待通りの芝居を、意外にも休憩を挟んだ(25分!)二幕構成でゆったりと、観劇できた。そして芝居の質としては洗練の域で、本の面白さもあるが、役者が十全に、破綻なく「らしい」庶民のそれぞれを演じ分けていた事により、意外にも(?)「真に迫った」芝居の瞬間を作れていたのだ。コーラスグループのメンバーとその家族(凡そはメンバーの抱える問題が会話の中で言及される)の話だから、「歌」は出てくるのだが、ミュージカルテイストにはならない。働いてたり定年を迎えてる庶民が作る地域のささやかなコーラスグループの、実にリアルな、バタ臭いドラマなのである。歌は二曲がフルコーラスで歌われる。真面目に歌っていて、そこそこ聞けてそこそこ素人臭い絶妙さが良く、選曲が良い。特に二曲目。だが決して「歌」に頼った感はない。深刻な社会問題をストレートに扱ったりしていないが、しっかり身につまされる部分が作られている、うまく出来た芝居。

    ネタバレBOX

    舞台は二幕とも、グループの練習場となっている定年夫婦の住居内で、後半で俄然話の中心になって来るのが原日出子と牛山茂(昴)の夫婦問題。事そこに至り、主役の原の存在感が増す。控えめで何事も穏便に済ませあまり自分を出さない妻の、これも絶妙な案配を、佇まいで見せるのはさすがである。一滴の墨の濁りが、いつしか水が蒸発する事により急速に黒い焦げを作るように一気に破綻が訪れ、しかも「不在」という形で、語る周囲の言葉で十分に想像させる。妻を無意識に追いつめてしまう夫の「家庭内無能」ぶりは古典的イメージだったりするが、それがコメディでなく「居そうな」像を作っており、私などはなるほどそうなるのかと、妙に納得させられた。こてこてと話を盛り上げるエピソードで繋ぐのでなく、人が接触し、ぶつかり、繋がる様を自然現象のようにさり気なく見せている。「よく出来た芝居」(通常は否定的な意味合い)も洗練されて光るという事があるのだと(ほめ過ぎか知れぬが)、また一つ発見させられた。

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