満足度★★★★★
圧倒的な身体表現力
バレエのテクニックを持ったダンサー達によるコンテンポラリー作品プログラムで、物語性に依らずに動きや形そのもので見せる身体の表現力が強烈でした。
『Sub』(振付:イジック・ガリーリ、音楽:マイケル・ゴードン)
上半身裸の男性ダンサー7人が床に置かれた照明に囲まれた中でストイックに踊る作品で、極端に速かったり遅かったりしない中庸なスピード感の動きの中に密度のある緊張感があって素晴らしかったです。複雑なフォーメーションの入れ替わりに引き込まれました。
暗めの照明が美しかったです。
『堕ちた天使』(振付:イリ・キリアン、音楽:スティーヴ・ライヒ)
太鼓のみの音楽のリズムに合わせて、黒レオタード姿の女性ダンサー8人がほぼユニゾンで踊る中で微妙な差異やズレを加える作品で、体操的でかつバレエ的なる動きの中にユーモアやコケットリーが感じられ、魅力的でした。
『Sub』と同様ミニマルミュージックで踊り、似たような演出効果があったりと、対になったプログラミングが良かったです。
『ヘルマン・シュメルマン』(振付:ウィリアム・フォーサイス、音楽:トム・ウィレムス)
古典的なバレエの動きを拡張した腕・脚の動き、気取ったポージング、素の状態で舞台を出入りする、といったフォーサイス節が満載の作品でクールな質感が印象的でした。敢えて照明の演出をしていないのも新鮮でした。
男性ダンサー達の均整の取れた切れのある動きが美しかったです。
『天井桟敷の人々 第2幕第5場よりパ・ド・ドゥ&ソロ』(振付:ジョゼ・マルティネズ、音楽:マルク=オリィヴィエ・デュパン)
新しい作品ですが古典的な趣きで、ドラマ性のある振付や、優美な美術や衣装、そしてピアノの生演奏によるロマンティックな音楽が、他の上演作品とのコントラストを生み出していました。
マルティネズさんが怪我で出演しなかったのは残念でしたが(開演冒頭にマルティネスさんによる日本語で謝りの挨拶がありました)、代わりに踊ったエステバン・ベルランガさんも素晴らしかったです。
『マイナス16』(振付:オハッド・ナハリン、音楽:ディーン・マーティン、リンキー・ディンクスほか)
物語は無いものの喜怒哀楽が強く打ち出された人間味溢れる作品で、有名な半円形に並べた椅子に座って踊るシーンや、終盤の観客をステージに上げて一緒に踊るシーンに高揚感がありました。
男女混合編成ですが、全員が黒スーツ姿で踊るときは男女差を感じさせない動きの質感の統一性がありました。休憩時間から1人ステージ上に立たされてコミカルな演技をするダンサーが芸達者で楽しかったです。