満足度★★★★
解り易いワルキューレ
今回の演出の特徴は場面転換が多いこと。狙いは①人間以外は神なので、周りの情景を変えることにより、自由に移動できるということを見せる。②過去の出来事などをフラッシュバックで見せ、場面転換の間に音楽そのものに語らせる。(特有のライトモチーフを聞かせ、想像させる)
私にとっては、舞台セットも色々見られ、非常に解り易いワルキューレで良かったです。ゲストのワーグナー歌手2人とも良かったです。特にヴォータン役グリア・グリムズレイは声が良く伸びていました。日本人ではフリッカ役の加納さんが印象に残りました。
満足度★★★
父と娘の愛憎
時代を現代に置き換えたりしていない、オーソドックスな設定の中に、物語を分かり易くする為の表現が盛り込まれた演出で、深読みし過ぎずに音楽と物語をゆったりと楽しめました。
ステージ手前に建築物風の大きなプロセニアムアーチがあり、その向こうで上げ下げされる暗幕に「兄と妹」や「逃亡」といったキーワードが映し出され、物語の流れが掴み易かったです。
本来その場面では登場しない役を黙役で登場させる手法が多用されていましたが、上手く行っている箇所とそうでない箇所のムラを感じました。
本来第1幕では登場しない神々の姿が数回フラッシュバック的に青い光の中で描かれていて印象的でしたが、その一瞬のシーンの為にいちいち暗幕を下ろして裏でセットを転換する物音が聞こえて来て、バタバタ感が気になりました。
子役が演じるブリュンヒルデの分身が、父の思う娘の理想像を表していて、父と娘の愛憎関係が入り混じる別れのシーンに深みを与えていました。
ラストシーンの情景を冒頭に一瞬だけ見せる趣向は歌詞との齟沍もなく、興味深い表現でしたが、冒頭からラストシーンまでのに4時間半以上経過しているので、もう少し印象に残る情景でないと意図が伝わりにくいと思いました。
歌手は皆安定していて、聴き応えがありましたが、演技に関してはぎこちなさを感じることがありました。歌手の声量に合わせたのか、オーケストラが迫力に欠ける様に感じられ、物足りなかったです。