RENT 公演情報 RENT」の観てきた!クチコミ一覧

満足度の平均 4.7
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  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    これを逃せば機会は無いかな、と衝動的に(仕事のシフトが変わった事もあり)チケットを買って観に行った。
    マーク役の日本人俳優に特に注目していた訳でもなく、舞台に貢献してくれてさえいれば、とメインは歌でドラマを感じたく序盤のステージを観た。20数年前の日本版は日本人俳優による日本語訳での上演の一部が動画にも上がっていたが、やや興ざめ・・というのは日本語を当てた楽曲は「別物」に聞こえる。耳に入る語感の響き方は勿論違うのだがそこではなく、「歌い方」に影響を及ぼす。歌がドラマを伝えるのに役の心情のニュアンスが「歌詞を体現した楽曲」だけに歌詞が「変わる」と心情にも影響が。
    全編英語での上演は、字幕を追う作業で視覚的な集中に制約があったのは事実だが、やはりオリジナルのニュアンスは代えがたかった。
    私は散々DVDで観ていたつもりだが、微妙に初耳なメロディーが聞こえたりもした。だが大筋流れは分かっているから観劇に支障はなく、むしろ展開を先取りして涙腺が緩んでしまって困った。
    音楽のアレンジは若干DVD版と違っていたり、あとは役者の個性が幾分異なり、私としてはモーリーンのワンマンステージをどう演じるかが、中でも俳優の個性で随分違いそうだが、今回のキャストは(DVDの俳優と比べて申し訳ないが)モーリーンのチャーミングさとこの場面の意味がよく分かり、ドラマの成立を円滑にした。

    ネタバレBOX

    RENT=賃貸しの部屋代を払うべきか払わざるべきか、が開幕後一発目の歌で「選択肢」として提示され、芸術家を目指す(人間として何者かであろうとする事と重ねられている)者たちの生き方を分かつ分岐点である事も読める。だから「RENT、RENT、RENT!」と叫ぶ。家賃(にすぎない代物)に支配されてる現実を、相対化し、支配を否定し得る自負のある人間が、舞台上にまず登場するのが冒頭だ。(日本では起こり得ない現実味の無い場面に見えるだろうが、米国では権利を求めて声を上げる。舞台上の状況は現実を映してもいる。)
    魂を売れば金が入るという、うまい話を持ちかけられた主人公が一度そちらに靡き、このモチーフが再び首をもたげるシーンがある。
    そしてエイズに苦しむ、界隈の者たち。乗り越えて自分の愛を見つけ育む者たち。ホームレス支援の抗議デモといった話題もさらりと出て来る。そちら陣営のミューズであるモーリーンのパフォーマンスはその集会でのもの。一方この女性に先日まで翻弄された主人公(男)と今まさに翻弄される渦中にあるジョアンナ(女)とがモーリーンのタンゴを踊り共感する(つまり彼女はバイセクシュアルだ)。
    街で物盗りに遭って無一文になった黒人コリンズの前に現われ献身的に尽くす「エンジェル」。二人も彼らの仲間となる。主人公マークと同じアパートに住むギタリストのロジャー(ミュージシャンを目指し、今は死ぬまでに一つは名曲を作り上げたい)は電気の切れた夜に、上階に住むミミ(場末のダンサー)と出会う。二人の愛の困難と紆余曲折は中心的な筋となる。これがクリスマス・イブの夜の事。(原案となっているプッチーニの歌曲「ラ・ボエーム」もクリスマス前夜が舞台との事。)
    平和を愛し人の心を思いやる「エンジェル」の存在感は実は核となっている。彼女(性別は男)が病に抗えず亡くなり(コリンズが看病し続ける場面はマイムで、他の場面の進行する脇で音楽の中、演じられる)、彼女との思い出を語る仲間たち。最後にコリンズが語り始めると歌になるが、意外な響き。ブルージーな楽曲で、天に昇ったエンジェルを高らかに讃える。
    しかしその場でモーリーンとジョアンナ、ミミとロジャーの反目のやり取りとなり、コリンズは「今だけは辞めてくれ」と頼む。
    不穏な予兆はやがて、貧困と病(それによる心の荒み、自己不信・・)がミミとロジャーの間を引き裂き、また彼らを撮影し続けてきた映画志望の主人公マークが、恐らくは「傍観者」以上でない己に絶望し、週刊誌に身を売るという殺伐とした終盤へ展開する。
    マークとロジャーが久々に顔をつきあわせて語る。なぜミミを追いかけない? じゃお前はどうなんだ・・。底に届いたような冷たい時間が流れる。その時、寒空の下で倒れていたミミをモーリーン、ジョアンナが発見し連れて来るという事が起きる。それはマーク、ロジャーの間に忍び入ったニヒリズムにも鋭く分け入り、意識不明のミミの前で、ロジャーは、時既に遅かった「やっと作った歌」を歌う。ミミがまるで覚醒してそれを聴いているかのような場面を経過すると、ミミは突然咳き込み、息を吹き返す。そして、天国でエンジェルと会ったと言う。「彼の歌を聴いて上げて」、と言って送り返してくれたのだ、と。物語は結末を迎え、「No day, but today」のイントロとなる歌い出しから、コードチェンジしたタイトルのメロディが歩き出す。そしてやがて速度を上げて走り出し、幾回続くかと思われるリフレインに入る。
    その歌の間に背景に映し出されるのは、マークが撮り続けた仲間たちの足跡を映した映像であった。完璧な舞台が幕を閉じる。

    DVDには特典映像としてブロードウェイ上演最後の日の様子が収められていて、それが中々感動なのだが、その中にエンジェル・シートという格安チケットの抽選に並ぶ人たちの様子がある。劇場を取り巻くような数が列を成し、最後の日の当選者を読み上げる青年が涙しながら最後の仕事をする。空席の数は動くから、名前を読み上げるテンポも色々で、それでも最後の一人という番がやってくる。
    人々はインタビューにも答え、「RENT」が自分にとってどれほど大事であったかを語り、それぞれの人生を窺わせるものがある。何度もこの舞台を観て救われて来たのだ、と語る女性もいて、今自分もその気持ちが分かる気がする・・という事が言いたかった。
  • 実演鑑賞

    満足度★★★★

    鑑賞日2024/08/24 (土) 17:30

    「no day but today」を聴いて、とても心に響いた。
    舞台美術も雰囲気があり、良かった。

  • 実演鑑賞

    満足度★★★★★

    座席1階

    感動的なのは、山本耕史の抜群の英語力だ。クリスタル・ケイはお父さんが米国人だからネイティブと言ってよいが、このミュージカルのために1年前から英語の準備を妻(堀北真希)と重ねてきたというから役者魂、ここまですごいのかという感じだ。その努力の甲斐あって、見事な舞台に仕上がっている。

    ニューヨークで暮らす若者たち。rent(家賃)が払えず追い出されそうになっているところからこの表題がある。ウエストサイドストーリーの現代版というと少し趣は違うのだが、エイズに罹患しているが精一杯生きるカップル、貧乏だが映画監督の夢を追求してフィルムを回し続ける青年など、けして暗くはない、希望がその先に見えている若者たちの群像劇だ。
    日本国内でもこれまで日本語版が上演されてきた名作だ。今回は主人公のマーク役を山本が務め、日米合作とうたっているが、ブロードウエイの役者たちに山本が飛び込んだというイメージさえある。
    天井の高い東急シアターオーブの舞台をうまく使って、イーストビレッジの古びたアパートをうまく作ってある。全編ほとんどが楽曲で占めているという舞台だから、字幕を読まなくても十分に楽しめる。
    歌唱力に定評のあるクリスタル・ケイもきっちり主役級を果たしていた。また、歌唱や身のこなしも山本ならではの切れの良さがある。お値段は高いけど、一見の価値はあろう。

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